M042 ニコラス・メイヤー

作家番号	M042
作家	ニコラス・メイヤー	Meyer, Nicholas
国籍	アメリカ合衆国	生没年：1945/12/24～
ニューヨーク出身。作家、脚本家、映画・TV監督。スタートレック・ノベルの映画に関わったことの方がメジャーか？　「シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険」「ウェスト・エンドの恐怖」「The Canary Trainer(未訳)」などのホームズ・パロディでも有名。　なお、「マイヤー」と発音する方が原音に近いとのこと。

管理番号	書名		備　考
M042-001	シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険		新ホームズ・パスティーシュの先駆
M042-002	ウェスト・エンドの恐怖

		Ver. 2.15

管理番号：M042-001	42 シャーロック・ホームズ・ノベル			出版社：扶桑社
書名：シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険				ISBN4-594-00278-1 C0197
原題：The Seven-Per-Cent Solution　（1974）			扶桑社ミステリー　メ1-1　0009
翻訳：田中融二		価格：￥480	ページ数：321P		本のサイズ：文庫
初版発行：1988/5/19		購入：1988/5/22	表紙イラスト：富永　寿

　シャーロック・ホームズの物語は、出版代理人であるアーサー・コナン・ドイル氏の死の前からいろいろと書かれています。その時代を初期というのであれば、特徴はホームズのライヴァルとしてとパロディとしての探偵たちといえばいいでしょうか。
　これに対し、正面切ってホームズの物語を描き、聖典（オリジナルのホームズ譚）をまねし、越えようとした物語があります。特徴としては、聖典の中でワトスン博士がたくさんの未発表の物語があると書きつづっていることを利用し、ワトスン博士の未発表原稿が発見されたというパターンで語り始めるものです。
　その嚆矢の一つと言っていいのが、この「シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険」です。ベストセラーとなり映画化もされました。

　原題は、「7パーセントの溶液」です。これはなんでしょうか。
　多少なりともホームズに詳しい方ならご存じの通り、これはホームズの悪癖であったコカインの濃度です。
　ホームズには、偉大なその頭脳が活躍できるような事件や冒険がないとき、その無聊に耐えかねてコカインやモルヒネに逃げる悪癖がありました。
　ある夜ホームズが、結婚してベーカー街をはなれたワトスンの所にふらっと現れ、支離滅裂なことを言いだし始めます。また、モリアーティという人物を希代の悪党であると悪罵し、彼に襲われるという心配のあまり厳重に鍵をかけて部屋に閉じこもったりもします。ワトスンがそのモリアーティなる人物と会ってみると、これはまた小心な数学教師に過ぎない。
　しかし、その家の前で夜な夜なホームズが見張りをしたりし始めるに及んで、これは大変なことだと気づいたワトスンはなんとか彼を治療しようと考えます。
　文献を調べていてふと目にとまった名前はウィーンに住む若い学者でした。新しい精神治療を試みているという。
　ワトスンは、ホームズの兄マイクロフト・ホームズの助けを借りて、知性それ自体ではいまだに劣っていないホームズをなんとか瞞し、ついにウィーンにまで連れてくることに成功したのでした。
　その学者とは、むろんジグムント・フロイド。

　虚実取り混ぜた人物を配した面白いホームズのパスティーシュとして、この本は先駆的な一冊です。
　これに負けじと次々登場したパスティーシュたちと比較してしまうと、ちょっと色あせてしまいますけど、今読んでも面白い。　(07/2/23)

管理番号：M042-002		42 シャーロック・ホームズ・ノベル
書名：ウェスト・エンドの恐怖	シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険II		発行　1976年
原題：The West End Horror		扶桑社　メ1-2　0571
翻訳：田中融二	価格：￥520	ページ数：260P	装丁：文庫イラスト：小泉吉宏
初版発行：97/5/30	購入：97/6/21

　「シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険」の続編、といっていいのかな。

　前作と同じく、「ワトスン博士の未発表の原稿」であり、「当時の実在の有名人が出演」しており、「詳細な注釈がついている」というパターンが踏襲されています。実はこのパターンは、「S・H氏の素敵な冒険」が最初らしい。
　舞台に選んだのは、上層階級の住宅地のあるウェスト・エンド。国会議事堂や宮殿、官公庁、大英博物館なども点在します。
　出演（？）するは、まず、ジョージ・バーナード・ショー、オスカー・ワイルド、ブラム・ストーカーなどなど。
　つまり、演劇界の奇人変人たちです。(笑)

　事件は謎の連続殺人事件なのですが、暴かれた犯行の方法というか凶器というかについては、重大なネタバレになるので割愛。こんな方法があったのねぇ、と唸りたくなることは間違いありませんな。

　直接関係はありませんが、ジョージ・バーナード・ショーの有名な戯曲「ピグマリオン」の映画バージョンである「マイ・フェア・レディ」に、のちにホームズ役者として不朽の名をとどろかすジェレミー・ブレットが若い青年役で出ていたとか。
　なるほどねぇ、世界は面白くできている。　（05/2/27）