A045 青柳碧人

作家番号： A045	青柳碧人	あおやぎ・あいと
	国籍：日本	生没年：1980年～
千葉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。早稲田大学クイズ研究会OB。

管理番号	書　　名		メ　　モ
A045-001	浜村渚の計算ノート		天才数学少女の大活躍！

		Ver. 3.00

管理番号：A045-001

46 ライト・ミステリ

出版社：講談社

書名：浜村渚の計算ノート			ISBN978-4-06-276981-5　C0193
講談社文庫あ118-1	価格：581Yen	ページ数：296P		本のサイズ：文庫
初版発行：11/6/15　第12刷：12/7/10	購入：2013/2/23	カバー装画：桐野壱カバーデザイン：藤澤拓也

　この本は、四つのミステリを繋げた連作短編集です。
　凶悪なテロ組織の主導者が、日本を震撼する事件を起こします。なんと、あるルールに従って人を殺していく。しかも、その実行犯は、悪いボスの催眠暗示に従っているだけらしい。そしてその催眠暗示は、とある教育ソフトの中に眠っていたもので、このソフトはここ20年にわたって全国の高等学校で使われていたものであるのだという。また、このボスには、犯行にまったく身に覚えのない催眠状態の犯行者だけでなく、彼に心服するシンパとか部下とかもいるらしい。
　これに対抗するため、警視庁対策本部は重大な決断を下し、特殊なプロジェクトチームを結成したのでした。そこには、この教育ソフトにまったく関わらなかった、20年前以降高校を卒業した39歳以上の面々と、高校卒業までアメリカで過ごしたという瀬島直樹、沖縄県の離島育ちのためこのソフトを知らなかった大山あずさ、そして理由は今は語られない僕こと語り手の武藤竜之介、そしてもうひとり。
　浜村渚、数年後は世の男どもを虜にする美少女となる素質は充分の、とろんとした二重まぶたの女子中学生。数学の天才少女。

　この悪のボスとは、高木源一郎という人物。日本を代表する数学者。
　とある心理学の権威が、昨今の少年犯罪撲滅のため、義務教育の内容を一変させることを提案します。その結果「心を伸ばす教科」、すなわち道徳、読書、音楽、絵画、工芸、書道、演芸、料理などを重視し、従来「勉強」と呼ばれていたもの、特に理系科目が激減してしまったのだそうな。数学・理科などはほぼ消えてしまったようなもの。
　この現状に激怒した高木博士、「黒い三角定規」というテロ組織を率いる「ドクター・ピタゴラス」を名乗って、無差別連続殺人を開始。これに対抗するため、くだんのプロジェクトチームが結成され、数学天才美少女の大活躍となった訳。

　お話は、数学ネタによります。一つ目が、「四色問題」。二つ目が、「ゼロ」。三つ目が、「フィナボッチ数列」。四つ目が、「円周率」。
　すべて、数学の根本的な、奥の深い命題を扱っています。美少女好きで数学好きのラノベ読者にとっては、ふるいつきたくなるネタでしょうね。なかなか、面白い。

　という訳で、こう言う世界に沈溺できる人にとって楽しいミニ・ミステリです、これ。登場人物も、なかなか個性的だし魅力的ですし。
　シリーズ化されて、これ以後もドクター・ピタゴラスの繰り出す数学ミステリを次々と解いていく設定らしい。売れているようです。

　でも。
　ごめん、鐵太郎はまぁ楽しめたけど、そこで終わりかな。鐵太郎的には、マイク（マーク4号・L型・ホームズ4超越計算器 High Optional Logical Multi-Evaluating Supervisor IV）の言葉を借りると、「一度だけ笑えるネタ」だな。それだけ。
　なにしろ、設定が子供だましなんだもの。
　警視庁というものは、日本警察の元締めではなくて東京都の警察に過ぎず、道府県警察より一段上ではあるけれど東京以外には原則として捜査権はないという基本的な事は、無知のなせる業でまあいい。よくあること。警察庁の間違いでしょ、多分。
　それより、科学・数学が軽視される社会ならともかく、理系教育がない社会なんて、仕入れ価格もおつりの計算もできない商店街とか、電子回路が入っていない携帯電話の世界ですか？　学校の生徒の数の合計ができますか、欠席率が計算できるんですか、テストの平均点を出せますか、センセイ方？　常識がないのか、この設定。（ちょっと怒、あるいは唖然）
　また、催眠教育なんて、数学者より心理学者、つまり遙かに人間に寄り添った学問の成果でしょ？ハリ・セルダンか、あんたは。
　実際の内容についても、あちこちつじつまが合わなかったり、リアルにはあり得ない設定があったり。おいおい。
　ま、天才少女の活躍というカタルシスを得るための舞台なんでしょうけど、ね。うーむ。　　（2013/6/23）