A056 赤坂真理

作家番号：A056	赤坂真理	あかさか・まり
	国籍：日本	生没年：1964/5/13～
東京都杉並区高円寺出身。吉祥女子高等学校、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。雑誌「SALE2（セール・セカンド）」の編集長をつとめる。 1995年、「起爆者」で小説家デビュー。1999年、『ヴァイブレータ』が第120回芥川賞（1998年下半期）の候補となる。2000年、『ミューズ』が第122回芥川賞（1999年下半期）の候補となる。『ミューズ』、第22回野間文芸新人賞受賞。2003年、『ヴァイブレータ』は廣木隆一監督、荒井晴彦脚本、寺島しのぶ主演で映画化された。2012年、『東京プリズン』により第66回毎日出版文化賞、第16回司馬遼太郎賞受賞。2013年、同作により第23回紫式部文学賞受賞。現在、文化学院総合芸術学科文芸コース講師を務める。法政大学客員教授（日本文学）でもある。

管理番号	書　　名		メ　　モ
A056-001	東京プリズン		普通の日本人にとって過去とは何なのか

		Ver. 3.05

管理番号：A056-001

60 現代小説一般

出版社：河出書房新社

書名：東京プリズン			ISBN978-4-309-41299-3　C0193
河出文庫　あ9-4	価格：920Yen	ページ数：536P		本のサイズ：文庫
初版発行：14/7/20　3刷：14/7/30	購入：2019/5/7	カバーデザイン：鈴木成一　カバー装画：夏目麻麦（「硝子」より引用）カバーフォーマット：佐々木暁

　主人公は誰なのか。2009年8月の暑い日に、遠いアメリカにいる自分と話をしている中年女性なのか。日本の学校にいられなくて、アメリカの西の果て、メイン州の学校に行った1980年の私なのか。

　1980年の私は、15歳。日本の中学校を卒業した後、日本になじめず、進学できる見込みもないままロス・アンジェルスにいる十歳年長の従姉のところに行ったのち、いろいろあってアメリカの反対側のメイン州の学校に行くことに。日本のことなど何も知らない家にホームステイして。
　11月1日に16歳になった私は、教育的配慮、つまり学力不足のため本来より一つ下の九年生になっていたのですが、校長先生から十年生に戻してあげると言われます。条件は、日本について全校生の前で発表すること。それにより、取れていない単位に代えてくれるというもの。
　日本についてだって？
　日本って、なんだろう。日本ってどう説明すればいいのか。日本の習慣ってなに。日本の宗教ってなに。

　そして求められたのはアメリカ式ディベート。題目は「天皇の戦争責任」。私のポジションは、天皇の擁護。
　でも、天皇ってあの戦争で何をしたの。軍部の暴走を押さえられなかったのはなぜ。天皇の権力は。天皇は何をしたのか。天皇って、日本人にとって何なのだろう。それをアメリカ人にどう説明できるのだろう。
　日本人にとってさえうまく説明できないことを、アメリカ人は理解できるのか。
　そもそも、ディベートってなに。

　神であることとは、どういうことなのか。
　天皇が神であったことが偽物なら、大工の子として生まれたとほぼすべての人々が理解しているイエス・キリストが、アメリカ人にとって、意義を持つことが許されない絶対の神であることは矛盾しないのか。

　東京裁判とな何か。事後法によって国家を裁いた行為は正当だったのか。
　アメリカ人の考える民主主義、正義、公正とはなにか。
　日本人にとっては、どうなのか。

　末尾で池澤夏樹氏がこんな題で解説しています。「小説にはこんなこともできるのか」と。たしかに。
　これはすごい問題提起です。（2020/02/04）

　この本は、いったいどの分野に分類すればいいのかわかりませんので、60 現代小説一般に入れました。O|￣|＿

　読書メーターの記録より　　読了：2019/11/17