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| 管理番号 | 書 名 | 翻訳者 | メ モ | |
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| B072-001 B072-002 B072-003 |
HAMMERED 女戦士の帰還 SCARDOWN 軌道上の戦い WORLDWIRED 黎明への使徒 |
月岡小穂 | ジェニー・ケイシー三部作 | |
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Ver. 2.21 |
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| 管理番号：B072-001 | 12 新スペースオペラ | 出版社：早川書房 | |||||||
| 書名：HAMMERED 女戦士の帰還 | サイボーグ士官ジェニー・ケイシー 1 | ISBN978-4-15-011657-6 C0197 | |||||||
| 原題：Hammered （2005） | ハヤカワ文庫SF1657 ヘ9-1 早川文庫6251 | ||||||||
| 翻訳：月岡小穂 | 価格：820Yen | ページ数：495P | 本のサイズ：文庫 | ||||||
| 初版発行：2008/3/25 | 購入：2008/3/28 | 表紙イラスト：前嶋重機 | |||||||
 2062年8月29日(火) 0307時、コネティカット州ハートフォード市/シガニー街、さびれたノース・エンド地区。物語は「わたし」こと、ジェニー・ケイシーの一人称で始まります。本名ジュヌビエーブ・マリー・ケイシー。メイカーとも呼ばれます。50歳まであとひと月。左腕は鈍い銀色のスチール製の義手。 地球温暖化と内紛で世界情勢は大きく変わった世界。アメリカは宗教的暴走などの内紛で弱体化し、最強国として君臨しつつある中国に対抗できるのはカナダのみ。 カナダ軍兵士だったジェニー・ケイシーは、南アフリカに平和維持軍として出征し、プレトリア付近で戦闘で重傷を負いました。それが2037年7月15日のこと。左半身に致命的な損傷を負った彼女は、実験的治療として、ナノテクロボットを含めた高度な機能強化パッケージを体内に装備されたのでした。 その処置を施された患者4人のうち生存者は今はもう2人。一人は精神的に不安定になり、のこるはジェニー・ケイシーもと伍長だけ。それから25年。 カナダを逃れてアメリカに潜りこみ、町のチンピラたちと奇妙な交流を続けるジェニーの前に、奇妙な事件が多発します。 軍で使われていた特殊な薬品＜ハンマー＞で悲惨な中毒死する子供が増えている。＜ハンマー＞、正しくはリガサロニンもしくはハイパレックスですが、正しく使えば兵士を何週間も最前線で戦わせられるが、過剰に摂取すれば即座に死か植物人間。 そこから始まる謎と、陰謀。味方となるのはだれ？ ギャングのボスであるステンレスの歯をしたレザーフェイス、反骨の刑事ミッチ・コズロウスキ、ガブリエル・キャスティンあたりか？ エルスペス・ダンセイニ博士は敵なのか？ 「リチャード・ファインマン」というネット人格は何者なのか？ 敵となるのはヴァレンス元大尉、今は大佐か。そしてジェニーの姉、暗殺者のバーバラ・ケイシーは何を狙っているのか。 場面を細かく刻んで話が盛り上がり、ジェニーが軌道上のステーションにある宇宙船に乗り組む場面で第一巻は終わります。彼女に託された任務とは何か。彼女が選ばれた理由は何か。カナダという国家が求めるものとは何か。 出だしは重っ苦しいところがありますが、スリリングな展開に引き込まれますね。 最近のSFの、読者を引きずり込むうまさは読んでいて楽しい。 ところで2005年7月に、このコネティカット州ハートフォード市で、コネティコン2005というイベントが開かれたのだそうな。財政的に大失敗だったそうな。何かそれに関係があるのでしょうか？ と思ったら、作家の生まれ故郷だそうです。なぁんだ。 （2008/8/20） |
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Ver. 2.21 |
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| 管理番号：B072-002 | 12 新スペースオペラ | 出版社：早川書房 | |||||||
| 書名：SCARDOWN 軌道上の戦い | サイボーグ士官ジェニー・ケイシー 2 | ISBN978-4-15-011659-0 C0197 | |||||||
| 原題：Scardown （2005） | ハヤカワ文庫SF1659 ヘ9-2 早川文庫6266 | ||||||||
| 翻訳：月岡小穂 | 価格：880Yen | ページ数：575P | 本のサイズ：文庫 | ||||||
| 初版発行：2008/4/15 | 購入：2008/4/12 | 表紙イラスト：前嶋重機 | |||||||
 2062年11月2日(木) 1200時 / 航行中のカナダ軍恒星艦＜HMCSS-モントリオール＞ より始まります。何人かの視点で描かれます。今回新しく加わった中で興味深いのはシー・ミン＝スー中尉でしょうか。統合中国人民宇宙軍の若き士官にして詩人。 ガブリエル(ガブ)・キャスティン、エルスペス・ダンセイニ博士、ガブの娘リーアとジーニーの視点もある。ヴァレンス大佐、レザーフェイスらは健在です。 そしてあいかわらず、「わたし」はジェニー・ケイシー。 本名ジュヌビエーブ・マリー・ケイシー。メイカーと呼ばれる理由は、ジェニー（Jenny Casey）が、その本名ジュヌビエーブ（Genevieve）から紀元、創世（genesis）と言う単語を連想させ、それが創造者（Maker）というあだ名になったというのです．．． なるほど。ｗ 特殊な処置を施されて強化されたジェニー・ケイシーは、頭脳を新型宇宙艦に直接接続でき、ナノロボットにより自己修復能力も高く、スーパーマンとも言える肉体です。しかしそもそもこの処置は失敗率も高く、現時点で当時の処置を施されて存命なのは、彼女とトレヴァー・コスケという無愛想な中尉ぐらい。このコスケという男は、ジェニーに敵意を抱いています。 彼らが扱うのは宇宙船、戦闘艦です。何と戦うのか。 ナノテクまで含めた人類が持つ先進的なテクノロジーは、人類のものではなかったのです。火星において発見された遙かな古代の宇宙船より得たのですが、その宇宙船の年代は最初、2、300万年前と推定されたのですが、のちに1600万年前頃に訂正されました。その頃から太陽系は探検され、監視されていたらしい。むろん、超光速エンジンを搭載した宇宙船によって。 環境が破壊された人類が、それでも生きなくてはいけないとしたら、人類の叡智を振り絞って新しい技術を導入した防衛機構を備えるしかない。宇宙船だけではなく、それを操作できる人材も備えなくてはならない。 ジェニーとコスケだけではなく、新しい人材も集められます。もっと若い人材が。 ガブの娘リーアと、ヴァレンズの孫パティなども、ナノロボットで補完されコンピュータに接続できる能力を持ち、ジェニーたちと同じように宇宙船の操艦を行うことができます。電脳上の疑似人格である＜リチャード＞との会話もできます。 この＜リチャード＞が、統一中国人民軍恒星艦＜PPCASS 黄帝＞の第二パイロットであるシー・ミン＝スー中尉と接触したのでした。すなわち、カナダのコンピュータ網上にいた＜リチャード＞は、中国のコンピュータ網に潜りこむことができたのでした。なんのために。 異生物に対する防衛網としては、中国もカナダと同じはず。しかし、結局主導権争いという形で、覇権国家のしがらみは残るもの。 人類の生存という究極の目的に対して、アプローチが異なれば争いになる。常に監視し合わなければならない。 それでも、相手の意志を決めることはできない。断固とした行動を阻止できない。 統一中国の戦略が、地球に対する浄化作戦として小惑星の落下となったとき、カタストロフが起こります。 生き残るのは誰か。 ジェニーとガブ、そしてエルスペスとの奇妙な三角関係、あたらしい疑似人格＜アラン＞、崩壊の一途をたどる地球環境。 お話はつぎつぎと進展します。 環境が激変した地球に、テラフォーミング（惑星の地球化改造）を行うと言う発想は、笑うべきか。 あとがきで訳者は、ミン＝スーが引用する漢詩を、翻訳された言葉と漢字と両方で味わうことができる日本人の特権、と書いています。 そんな楽しみもありますね。 詠われる言葉は悲しいけど。
国家を守るのも、帝王の覇権を守るのも、庶民の血によって贖われるもの。 「それで」と、ガブ。ずっと息を止めていたかのように大きく息をして、わたしを見つめた。「さっき言ったことを、本当に実行したいのか？」 「いいえ」実行したいわけじゃない。「でも、やらなければならないのよ」 さて、人類の運命はいかに。 (08/10/2） |
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Ver. 2.21 |
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| 管理番号：B072-003 | 12 新スペースオペラ | 出版社：早川書房 | |||||||
| 書名：WORLDWIRED 黎明への使徒 | サイボーグ士官ジェニー・ケイシー 3 | ISBN978-4-15-011663-7 C0197 | |||||||
| 原題：Worldwired （2005） | ハヤカワ文庫SF1663 ヘ9-3 早川文庫6284 | ||||||||
| 翻訳：月岡小穂 | 価格：860Yen | ページ数：556P | 本のサイズ：文庫 | ||||||
| 初版発行：2008/5/25 | 購入：2008/5/31 | 表紙イラスト：前嶋重機 | |||||||
 2063年9月27日(木) 1030時 / 地球周回軌道上のカナダ軍恒星艦＜HMCSS-モントリオール＞ での、レスリー・ジャカマラ（宇宙記号学者）のモノローグで始まります。異星人の宇宙船 ─ かごのような形から＜鳥かご船（バードゲージ）＞と呼ばれる ─ を見ていると、話しかけてきたのは左手に黒い革の手袋をはめた女性。伝説的英雄、ジェニー・ケイシー。彼女はこの＜鳥かご船＞ともう一つの異星人の船、＜樹木船（シップツリー）＞を示す。この二隻に乗っているのは、どんな異星人なのか、どんなコミュニケーションをするのか、まだわかっていません。＜贈り主＞の船です。 中国によって北アメリカに落下した小惑星により、2063年1月1日までに、アメリカ人の約25人に1人、カナダ人の約3人に1人が犠牲になりました。広島やムンバイやドレスデンのような惨劇、と言われます。 それを阻止するためのぎりぎりの作戦の中で、ガブの娘リーアを含めた多くの人々が戦い、オンタリオ湖に落下したカナダ軍恒星艦＜HMCSS-カルガリー＞の中に眠っています。 ジェニーにとっては、レザーフェイスも、ミッチも、ボビ・イーも失われた。 この犠牲が、この本の中で最初から最後まで暗い和音を奏でていますね。 地球環境の激変への対策として、＜カルガリー＞が行ったことは、ナノロボットの大量散布でした。人類の機能を越える量子レベルの微少ロボットは気象及び生物の生態をコントロールし、この危機的な世界の救世主となるかもしれない。しかし同時に、それを支配する者が世界を支配することになるかもしれない。 この微少ロボットが人類をどう変革するのか、がテーマの一つかな。 疑似人格である＜リチャード＞も、この量子ロボットネットワークの上に存在します。 地球環境の修復と、異星人とのコミュニケーションと、微少ロボットによる電脳世界（ワールドワイヤード）の支配。大まかに言うと、これがこの本のテーマですね。 ストーリーは、例により主として二等准尉ジェニー・ケイシーを中心にしたたくさんの人々でパッチワークのように継ぎ合わされます。 准将となったフレデリック・ヴァレンス、その孫娘のパティ・ヴァレンス。 ＜モントリオール＞の艦長ウェインライト大佐、ジャカマラと共に異星人の探索に当たる地球外生物学者チャーリー・フォースター、ガブ・キャステインとエルスペス・ダンセイニ。いつの間にか忠誠心の先を変えることとなってしまったシー・ミン＝スー。 カナダ首相コンスタンス・ライエルと中国人民共和国のシオン首相。＜黄帝＞のウー艦長。 世界はどんな方向へ沈んでいくのか。 ジャネット・フライ将軍はどうするのか。ユニテック社の社長であるトバイアス・ハーディ、中国国防大臣のシジュ・シュウの動きは。 クライマックスの格闘シーンまで、次々とフラッシュバックしながら話は急展開しますが、不満点もいくつかありますけどね。 いいところで切って、次の舞台に話を飛ばすってのは、いかがなものかなぁ？ 最後のアクション・シーンを除くと、面白そうな場面は直前まで引っ張ったあげくにカットされてしまう。ちょっとわかりにくい。 ま、それでも、こんな世界の再出発もありか。 （08/11/6） |