C074 ベッキー・チェンバーズ

作家番号：C074	ベッキー・チェンバーズ	Chambers, Becky
	国籍：アメリカ合衆国	生没年：1985～
宇宙開発に携わる家族のもとで育ち、ビデオゲームや非電源系ゲーム、養蜂や天体観測を興味にして育つ。現在は妻と共にカリフォルニアに住む。

管理番号	書　　名		翻訳者	メ　　モ
C074-001・002	銀河核へ（上・下）		細見遙子	銀河の陰謀と、緩い乗組員たちの物語

		Ver. 3.05

管理番号：C074-001・002

12 新スペースオペラ　　

出版社：東京創元社

書名：銀河核へ（上）			ISBN978-4-488-77601-5　C0197
原題：The Long Way to a Small, Angry Planet（2015）					翻訳者：細見遙子
創元推理文庫SF チ-2-1　77601	価格：1040Yen	ページ数：336P		本のサイズ：文庫
初版発行：2019/6/28	購入：2019/10/26	カバーイラスト：K, Kanehira カバーデザイン：岩郷重力+W.I

書名：銀河核へ（下）			ISBN978-4-488-77602-2　C0197
原題：The Long Way to a Small, Angry Planet（2015）					翻訳者：細見遙子
創元推理文庫SF チ-2-1　77601	価格：1040Yen	ページ数：352P		本のサイズ：文庫
初版発行：2019/6/28	購入：2019/10/26	カバーイラスト：K, Kanehira カバーデザイン：岩郷重力+W.I

　長距離航宙船＜旅人＞(ウェイフェアラー)に、それまで不足していた事務職をこなす新しい乗組員が乗船するところから始まります。
　長距離航行の経験はないらしいのですが、事務処理能力はたしからしい。その方面がずさんだった＜ウェイフェアラー＞の船主にして船長であるアシュビー・サントソにとって、渡りに船というもの──だったはず。
　しかしその、新人の事務員ローズマリー・バーバーが、ちょっと謎めいていたのでした。

　船の乗組員は、まず藻類学者のアーティス・コービン、機械技師のキジー・シャオ、コンピュータ技師のジェンクス、エイアンドリスク人パイロットであるシシックス、「現在は」男であるグラム人の医師・調理師ドクター・シェフ、船長のアシュビー・サントソ、シアナット・ペアのナヴィゲーターであるオーハン（複数形）。
　地球の大災厄ののち地球人は、地球を離れた離郷船団(エクソダス・フリート)の人々（離郷人(エクソダン)）と、火星に居住した富裕な人々に別れます。その「火星人」であるローズマリーにとって、忸怩たる思いがあるのはしかたがない。しかし彼女にはそれだけではない秘密があった。
　この見知らぬ乗組員たちと勤務し、ともに生活し、隠れた実力を発揮していくローズマリー。ほかの乗組員たちも、ひとりひとり問題を抱えています。それぞれ、悩みながらあれこれ考えているところ。この中で、ローズマリーはどう変わり、どう成長せいていくのか。
　ああ、この展開はA・ノートンの「太陽の女王号シリーズ」じゃないか、と思わせる懐かしい流れ。でも題名からしてネタはそんな簡単なものじゃないよね。

　＜ウェイフェアラー＞のような船の主な仕事は、〝トンネル〟を掘ること。〝トンネル〟とは、簡単に言うと宇宙空間に、二つの端をつなぐ道。パンチする、と呼ばれるらしい。星系間を移動する方法としてもう一つ、超光速航法があるのだけれどこれは禁止されているから、現時点では銀河系を飛び回るにはこの方法で道を作るしかない。
　新たに＜ウェイフェアラー＞のアシュビーに依頼された仕事は、現在の銀河辺境部から銀河系の中心部にある星系を直接繋ぐ〝トンネル〟を明けること。一年間という期限付きで。いったいなぜ、なんのために。
　謎また謎の中で、＜ウェイフェアラー＞はこの大仕事に取りかかります。その結果何が起きたのか。

　銀河を揺るがす大パニックとか巨大な陰謀かと思ったら、ひとりひとりのキャラをじっくり描写した展開のままでフィナーレへ。＜ウェイフェアラー＞を管制するAIであるラヴィーの最後は、まさか物語的にそんな事になる訳ないよと思ったけど、世の中そんなものかもしれないね。主人公格のローズマリーもおっきな存在にもならず、作者の目はひとりひとりの運命を優しく見つめています。柔らかく続編に至る、そんな優しいスペースオペラです。なんか、いいな。
　続編、あるよね？　（2020/04/14）

　読書メーターの記録より　　上巻読了：2020/1/1　下巻読了：2020/1/4　