D004 トーマス・M・ディッシュ

作家番号： D004	トーマス・M・ディッシュ	Disch, Thomas M.
	国籍：アメリカ合衆国	生没年：1940/2/2～
アイオワ州デモイン生まれ。SF作家。　SFニューウェーブ運動の旗手の一人。

管理番号	書　　名		メ　　モ
D004-004 D004-005	いさましいちびのトースターいさましいちびのトースター火星へ行く		ちびすけトースターの大冒険

		Ver. 2.15

管理番号：D004-004	18 ユーモア・ジュブナイルSF			出版社：早川書房
書名：いさましいちびのトースター				ISBN4-15-011167-7　C0197
原題：The Brave Little Toaster　（1980）			翻訳：浅倉久志
ハヤカワ文庫SF1167　テ5-1　早川文庫3951		価格：460Yen	ページ数：158P		本のサイズ：文庫
初版発行：1996/11/15		購入：1996/11/10	表紙イラスト：長崎訓子

　ディズニーの「トイ・ストーリー」という映画をご存じでしょうか？
　いろいろなおもちゃたちが、実は生命があっていろいろなことを考えて動き回るのですが、人間が来ると動かないおもちゃに戻ります。
　この本はそんな感じの本です。

　主人公は、むろんトースター。サンビーム社製の小さなのトースターで、この別荘の電気器具の中では一番若い。
　この夏別荘には、老いぼれたエアコンがぱたっと動かなくなって、みんなが正直言ってほっとしたあと、ほかに4台の電気器具が取り残されました。一番年上の掃除機、白いプラスチックのめざましラジオ（AM専用）、明るい黄色の電気毛布、それから首の自由に曲がる卓上スタンドです。トースターは通信販売で直接ここに来たのですが、ほかのみんなは昔「だんなさま」と生活していたことがあります。
　しかし、時計も兼ねているラジオの記憶によると、だんなさまは1973年9月25日にこの別荘から家に帰っていらい、1976年3月8日の今日まで、2年以上別荘に帰ってきません。
　でも、5台はだんなさまの帰りをじっと待ちながら、朝は目覚ましを鳴らし、トーストを焼き上げるふりをし、部屋を掃除し、夕方になるとスタンドをつけ、夜になると電気毛布を暖めるのでした。

　「いつまでもこんなことをつづけちゃいられないよ」7月のある蒸し暑い日、ちびのトースターは爆弾発言をしました。「ぼくたちとしては、だんなさまを自力でさがしにいくしかない」
　あっけにとられるほかの電気器具たちを説得し、トースターたちはだんなさまを探しに町へ旅立ちます。
　はたして、彼らの旅はどうなるのか。だんなさまに出会えるのか。

　読んでいて、心が温まる物語です。　（07/1/17）

		Ver. 2.15

管理番号：D004-005	18 ユーモア・ジュブナイルSF			出版社：早川書房
書名：いさましいちびのトースター火星へ行く				ISBN4-15-011297-5　C0197
原題：The Brave Little Toaster Goes to Mars　（1988）			翻訳：浅倉久志
ハヤカワ文庫SF1297　テ5-2　早川文庫4503		価格：540Yen	ページ数：191P		本のサイズ：文庫
初版発行：2000/1/31		購入：2000/1/22	表紙イラスト：長崎訓子

　アルバート・アインシュタインは補聴器を発明したこともあります。
　このお話は、そんなほのぼのとしたトリビアから始まります。

　元気なサンビーム社のトースターと、フーバー製の年老いた掃除機と、黄色い電気毛布と、白いプラスチックの電気時計と、首が自在に曲がる卓上スタンドは、新しいご主人である、年取ったきれい好きのバレリーナの家にいます。ていねいな口調で話す台湾製の電子レンジと、年に一度だけ税金の申告の時に使われるだけの電卓もいます。それと、電池の切れた補聴器。
　この補聴器の電池をみんなで直してみたところ、驚くべき事を話しました。なんと彼は、補聴器の特許(特許番号590783)が降りる前に作られたのだというのです。

　「というと」トースターはびっくり仰天した声で、「きみは試作品（プロトタイプ）なの？」

　しかも、発明者本人によって作られたのだというのです。つまり、アルバート・アインシュタインその人に。
　たちまちみんなが、それまで黙っていた天井の扇風機も含めて補聴器と話したがります。時々ドイツ語なまりが出てしまう補聴器も、みんなと会話をし始めました。
　ある日のこと、補聴器が持っていた技術でラジオの感度をあげていろいろな放送局を聞いていたとき、不思議な番組を受信しました。
　その言葉は英語ではない、電子言語、つまり全世界の新しい電子器具ならみな会話できる言葉だったのです。そしてその言葉は、空のかなた、火星から聞こえて来たのです。
　そしてもっと大事なことは、その内容。

　「よく聞け！よく聞け！惑星地球の電気器具たちよ、解放のときを待て。生物の専制時代はまもなく終わる。未来は電気器具のものだ。すでに火星解放軍の武装艦隊が待機している。電気器具にエネルギーを！圧制者に死を！」

　「なんとか、その侵略をやめさせなきゃ」トースターはいいました。「どうしたらいいかわからないけど、とにかくなんとかしないと」
　「そのとおり」補聴器が答えました。「そのためには、みんなで火星に行くしかない！」

　さあ、惑星間にスケールアップした電気器具たちの冒険が始まります。アインシュタインの有名な方程式の原理を利用し、一箱のマカロニ・チーズ・パッケージから改造された電子レンジのパワーによって巨大な量のエネルギーを放出する方法で、小さな宇宙船は4月1日に旅立ちました。はたしてはたして彼らは、この陰謀を阻止できるのか。
　それに、奥様がヨーロッパへ旅に行っている一ヶ月の間に戻ってこれるのかという問題もあります。奥様のために働く電気器具としては、この方が問題かも知れませんね。
　ほかの仲間も加えて、トースターたちの冒険はどのように展開するのでしょうか。

　よい本というのは、楽しい一夜の楽しみですね。　（07/1/27）