F020 D・C・フォンタナ

作家番号： F020	D・C・フォンタナ	Fontana, D. C.
	国籍：アメリカ合衆国	生没年：1939/3/25～
ドロシー・キャサリン・フォンタナ（Dorothy Catherine Fontana、D・C・フォンタナ）はアメリカの脚本家であり、SFテレビシリーズ『スタートレック』の仕事でよく知られている。　最初はジーン・ロッデンベリーの秘書を勤め、1966年から1968年にかけて『スタートレック』のオリジナルシリーズである『宇宙大作戦』(TOS) に参加した。「宇宙暦元年7・21」、「宿敵クリンゴンの出現」、「惑星オリオンの侵略」のような記憶されるべきエピソードを書いている。また、彼女は1987年には『新スタートレック』(TNG) の第一シーズンパイロットの「未知への飛翔」、1993年には『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』(DS9) のエピソード「共生結合体生物“トリル族”」も書いている。

管理番号	書　　名		メ　　モ
F020-001	ヴァルカンの栄光		スポックの＜エンタープライズ＞初勤務

		Ver. 2.23

管理番号：F020-001

10S 宇宙大作戦（STAR TREK）

出版社：早川書房

書名：ヴァルカンの栄光	宇宙大作戦		ISBN978-4-15-011055-7 C0197
原題：Vulcan's Glory　（1989）		翻訳者：斉藤伯好
ハヤカワ文庫SF1055　ウ1-43　早川文庫3478	価格：560Yen	ページ数：322P		本のサイズ：文庫
初版発行：1994/4/30	購入：1994/4/23	表紙イラスト：金森達

　寝る前に書棚に手を伸ばして、何となくこの本を手に取ってみました。
　内容の記憶がない．．．　読み返せばわかるかな。（おいおい）

　時代は、かの有名な「エンタープライズの5年間」よりも10年ぐらい前でしょうか。時代が上手くかみ合わない。
　主人公はスポック。ヴァルカン人と地球人の混血である彼が、大尉となって始めて＜エンタープライズ＞に乗り組むところから始まります。
　USS＜エンタープライズ＞の艦長は、クリストファー・パイク大佐。副長は「ナンバーワン」と呼ばれる女性。
　ナンバーワン副長は第一副長（First Officer）なのだそうな。
　スポックは、大尉の階級で科学担当士官兼第二副長（Second Officer)として勤務します。異例の速さで昇進した、という話からすると、かなり若いらしい。母アマンダとは親密ですが、父サレックは、スポックが士官学校に入って以来、直接には口をきいてくれません。しかも、トゥプリングとの婚約関係をなんとかしろとアマンダ経由で叱りつける。
　トゥプリングは、スポックが婚約を履行しないことをなじりますが、スポックが次のポン・ファーまで待てという言葉に納得し、その間の婚資を払うことを要求します。そしてこの論理的で理性的で嘘はつけないはずのヴァルカン女性は、スポックが去ったのち、ストンという青年にしなだれかかって媚びます。ほうほう。

　機関部士官に、モンゴメリー・スコット中尉という新しい士官が同時に赴任し、＜エンタープライズ＞のエンジンのメンテナンスと捜査に関して優れた才能を発揮します。この世界では、Engineer OfficerはCommand Officerとしての教育を受けることはないようです。同時にその逆も。
　機関士は永遠に機関士のようです。
　また、不思議なことに＜エンタープライズ＞には、「5年間ミッション」の時には人類以外の士官はスポックのみであったはずなのですが、この時すでに数人のヴァルカン人やそれ以外の異星人が乗り組んでいますね。

　さて、ヴァルカンには「ヴァルカンの栄光」という巨大なエメラルド（22,890.4カラット）がありました。古代の、ヴァルカン暦1433年に戦勝の戦利品として入手したものだそうな。ある一族の所有であると共に全ヴァルカン人のシンボルとなっており、ヴァルカンが送り出す商船隊や探検隊が行うパレードで使われていたのだそうですが、航宙船＜ヘ・シイ＞の事故の時に失われたのだそうです。
　論理的で理知的なヴァルカン人がそんなものを何かの象徴に使って、まるで欧米人のようにパレードしていたってのは面白い話ですが、これが発見されたとき、パイク艦長はその神秘的な意味合いを考え、ヴァルカン人の乗組員のみで回収に行くように命令します。

　この本でスポックは、つらい体験をします。論理的で理知的なヴァルカン人たらんと願うスポックなのですが、トゥプリスというヴァルカン士官と恋に堕ち、任務中の軍艦の中で、ポン・ファーも来ないのに愛の快感に酔います。
　そして彼女を失ったことにより、スポックは悲痛なほどに非人間的な外観の士官となってしまうのです。なんだこりゃ。

　なんだか、あちこち設定が無茶苦茶な気がします。
　時間的なつじつまも、基本の設定のつじつまも、組織や政治体制のつじつまも、かみ合っていない。
　スタートレックものの小説には、いろいろなパターンがあるのですが、基本はアメリカ人がかくあれかしと思って作られた人々であることが、あまりにも多い。そしてその中には、設定がいいかげんに見えることが多い。
　たとえばヴァルカンって星は、理性と哲学の星であって欲しいのか、呪術的な信仰と慣習に支配される旧弊な星であって欲しいのか。
　困ったもんだな。D・C・フォンタナの本って、こんな程度だったっけ？　ちょっと悲しいなぁ。　　（09/5/22）