F048 リチャード・フォックス

作家番号：F048	リチャード・フォックス	Fox, Richard
	国籍：アメリカ合衆国	生没年：？-？
ラスヴェガス在住のSF作家。アメリカ陸軍士官学校を卒業後、10年間従軍し、2回のイラク派遣を経験していくつか勲章を得たのち除隊、SF作家となる。

管理番号	書　　名		翻訳者	メ　　モ
F048-001	鉄の竜騎兵		置田房子	荒廃した人類を救うために志願した若者

管理番号：F048-001

19 ミリタリーSF

出版社：早川書房

書名：鉄の竜騎兵

新兵選抜試験、開始

ISBN978-4-15-012280-5　C0197

原題：Terran Armor Corps Book One: Iron Dragoons（2017）

翻訳者：置田房子

ハヤカワ文庫SF2280　フ22-1　8501

価格：900Yen

ページ数：384P

本のサイズ：文庫

初版発行：2020/4/25

購入：2020/5/9

カバーイラスト：太田垣康男
カバーデザイン：岩郷重力+H.K.

　「宇宙の戦士」「終わりなき戦い」といった、パワードスーツを使う機動歩兵の系譜に連なるミリタリーSF、と考えていいのかな。
　異星人ザロスの侵攻を受けて荒廃した世界で、地球人は友好的な異星人の協力を得て復興し反撃を開始する物語。
　主人公はローランド・L・ショー。両親ともに軍人でしたが、母キャサリン・ショー大尉は月(ルナ)で死亡し、父トマス・ショー大尉は宇宙空間で行方不明、どちらも20代半ばでした。彼は一人残されて孤児院で育ち、ウェイターの仕事をしながら18歳の誕生日を迎え、兵役に就く決心をします。

　「宇宙の戦士」のジュアン・リコより真面目な意図は持っていたものの、同じような経緯を経て、兵種としては同じような評価をされているらしい装甲機動兵の志願兵として入隊したのでした。
　この世界は、「宇宙の戦士」と同じくこれだけ戦線が逼迫しているのに徴兵制度はとりません。自主的な意志によって志願する「空気」を醸成して兵士を集めます。民主主義国家だからでしょう。（無論皮肉で言ってますw）
　「宇宙の戦士」のように士官学校がなくてすべての士官が兵士上がりであるのかどうかはわからない。

　装甲機動兵とは、首の後のプラグを機械に接続して一体になるパワードスーツ式の「装甲」を装着して戦う兵士で、走行状態から人型状態に変形するしいろいろな兵器を装備しています。しかしこの装甲の中の、液体に満たされた「子宮」に身体を沈め、機械との同調率を上げるのがなかなか難しい。
　志願兵は、最前線の兵士としての訓練と、装甲と自分とを接続して兵士として戦えるようにする訓練に明け暮れます。どちらも適性がないと判断されればたちまち放逐される。
　つまりこの話は、「宇宙の戦士」テイストに「ファースト・ガンダム」「装甲騎兵ボトムズ」「攻殻機動隊」「ガンダム・鉄血のオルフェンズ」などのガジェット、ギミックをまぶしたもの、といっていいのかな。
　さらにその上に、装甲機動兵としての精神、仲間への従属意識を高めるための、宗教的な絆も要求、いや求められます。真の仲間になるためには同じ信仰を持つべきである、的な。

　「われは装甲」
　「われは憤怒」
　「われは失敗せず」

　危険極まりない最前線で肩を並べて戦うエリート兵士としての矜持とは、どこか神がかりになるものなのか。
　＜聖堂騎士団(テンプラー)＞、＜竜騎兵(ドラグーン)＞などという言葉も、そういう流れなのでしょうね。

　訓練の過程で最後まで残った三人、ローランドとレンジャー部隊から移籍した体のあちこちが欠損しているベテラン兵ジョナス・エイナー、そして友好的異星人であるチャ＝リルの三人は、終盤でまだ正式な兵士になれないうちに戦いに巻き込まれます。指揮官となったギデオン中尉を含めてもたったの4人で、彼らはなにをなし遂げたのか。

　いろいろ突っ込みたいところはあるんですが、魅力はあります。アメリカの民主主義絶対正義論とか鼻につくところはいろいろあるため、できれば20年前に出会えればよかったような気はしますけどね。
　なおこの本は、主人公が装甲機動兵の新兵となり、何か新しい秘密がわかってきたような所で終わります。
　そう、この本はシリーズもので、その先も原作は刊行されているのです。

　　　Terran Armor Corps シリーズ
　　Book One: Iron Dragoons　←本書
　　Book Two: The Ibarra Sanction
　　Book Three: The True Measure
　　Book Four: A House Divided
　　Book Five: The Last Aeon
　　Book Six: Ferrum Corde

　しかしハヤカワはこの一冊以後は訳出しませんでした。
　大人の事情、ってヤツでしょうね、きっと。(笑)　（2024/6/2）

　読書メーターの記録より　　読了：2024/5/23　