H090 ヴォーン・ヘプナー

作家番号：H090	ヴォーン・ヘプナー	Heppner, Vaughn
	国籍：アメリカ合衆国	生没年：？

管理番号	書　　名		メ　　モ
H090-001	喪われた巨大戦艦		圧倒的な敵を倒すため未知の世界へ

		Ver. 3.04

管理番号：H090-001

12 新スペースオペラ

出版社：早川書房

書名：喪われた巨大戦艦			ISBN978-4-15-012077-1　C0197
原題：The Lost Starship（2014）		翻訳者：中原尚哉
ハヤカワ文庫SF2077　ヘ12-1　7792	価格：1200Yen	ページ数：576P		本のサイズ：文庫
初版発行：2016/6/25	購入：2018/1/9	カバーイラスト：浅田隆カバーデザイン：早川書房デザイン室

　宇宙監視軍情報部のマドックス大尉が、巨大複合企業ネルバ・コーポレーションの総帥オクタビアン・ネルバの最年少の息子カイウス・ネルバと決闘をする場面から始まります。メトセラ処置を受けて若返り、通常人と比べて肉体的に発達しているこの男と戦っては絶対不利。この窮地を救ったのは、彼の介添えとしてついていた隻眼の老軍曹ライカー。
　危ういところで二人は宇宙監視軍の海兵隊に召喚されてその場を離れますが、ライカー軍曹は結果としてカイウスを殺した罪で収監され、監獄惑星に送られることに。

　人類がローマー・ドライブを得て太陽系外に拡がってから二世紀が経過し、人類の大半は惑星連坊に属してテラフォームされた惑星に居住しています。拡大していく人類文明圏に挑戦してきたのが、異人(ニュー・メン)と呼ばれる異星人。人類によく似た外見だが、やや長身痩躯で肌は金色。
　彼らと単独で戦って勝てる人類はいないし、彼らの戦闘艦と遭遇して生還できたものもいない。人類に対して送ってくるメッセージは〝降伏か、死か〟のみ。
　マドックスはこの異人との戦闘状況を確認し今後の戦略を討議する会議に参加することとなります。ずらりと政府、軍の高官たちが席に着く中で、他の副官たちと共に壁際に立って。

　いくつかの情報整理と討議ののち、極秘任務に就いた光速打撃戦闘群の報告がなされます。フォン・グンター提督指揮下で行われた遠征計画で、通常の戦闘群の倍近い戦力を持ったこの部隊が全滅したという。事実上ただ一人の生き残りが、ガレン級護衛艦の艦長ヌーナン中尉。彼女の報告が会議室に嵐を起こします。
　人類側の艦船のシールドはまったく効かず、たった3隻の異人の戦闘艦に、大型艦14隻を基幹とする強力な戦闘群が数分で壊滅したという。指揮官の最後の命令に従って脱出を計った数隻は、異人の追撃にたちまち追いつめられます。ヌーナン中尉は、とっさの判断で艦を自動航行させつつ救命艇で全乗組員を脱出させたのでした。しかし、そこでとんでもないものを見たと報告します。
　なんと、脱出中の巡航艦と駆逐艦から発艦した戦闘機と爆撃機の一部が、異人に対して歓迎の挨拶を通信していたのだとヌーナン中尉はいいます。
　会議室を包む、この中尉を臆病者、卑怯者と罵る怒号をついて、会議を主催するクック元帥はこの報告を繰り返します。そして今の人類の戦闘艦では異人の艦艇にまったく対抗できないこと、人類の中にスパイがいることを明確にします。

　「諸君、これは深刻な事態だ。もう一度攻撃をしかけるまえに、敵の圧倒的に優秀な艦艇にどうすれば勝てるのか、作戦を立てなおさなくてはならない。秘密漏洩についても対策が必要だ」

　「諸君の提案を聞きたい。異人が侵攻してきたら、それを止める手だてを私は思いつかない」　（P42）

　で、紆余曲折の末に建てられた計画が、マドックス大尉を指揮官として人類の領域のはるか彼方、圏外領域にある古代の異星種族が残した一隻の哨戒船を捜索し、そのテクノロジーを奪取して帰還し、それで異人に対抗するというもの。
　これには、マドックスの謎、絶対の体力差のあるはずのメトセラ処理人を圧倒する能力も絡んでいるらしい。
　チームのメンバーは、まず敵前逃亡の汚名を着せられているヌーナン中尉、刑に服しているライカー軍曹、そして異人についての研究を行ったというルーデンドルフ教授のノートを保管しているデイナ・リッチ博士。後者の二人は監獄惑星であるロキ・プライムに収監されているのだという。

　かくして、マドックス大尉の活躍が始まります。

　で、だ。
　この本は、面白いと評判を取っているらしい。確かにスリリング。
　内容を平たく言うと、これは、カーン・ノニエン・シンの乱、つまり人為的に作られた超人たちの一族が人類を裏切って攻め込んできたことで始まります。そのためにチームを集め、なかなかいうことを聞かないメンバーをなんとか頑張って心服させ、イスカンダル、というかなんというか、だれもその正体を知らない役に立つかたたないかわからない「古代の遺物」を奪取し、それをどうやってか役立てて人類を勝利に導く、というお話。
　どう考えても設定段階で破綻してないか？　まァキャラは立っているからお話としては成立するんだけどさ。
　面白いっちゃ面白いよ。それには異論はないけどね。

　続編が出るそうです。読むかどうかは現時点で未知数。　（2018/3/25）

　読書メーターの記録より　　読了：2018/3/4　