M078 ヴァレリオ・マンフレディ

作家番号： M078	ヴァレリオ・マンフレディ	Manfredi, Valerio
	国籍：イタリア	生没年：

管理番号	書　　名		メ　　モ
M078-001	カエサルの魔剣		西ローマ最後の皇帝の謎

	Ver. 2.17

管理番号：M078-001	32 歴史小説・西欧史			出版社：文藝春秋社
書名：カエサルの魔剣				ISBN978-4-16-770548-0 C0197
原題：L'ultima Legione　（2002）			文春文庫　マ22-1
翻訳：二宮磬		価格：876Yen	ページ数：574P		本のサイズ：文庫
初版発行：2007/5/10		購入：2007/5/25	表紙イラスト：石崎健太郎

　ロムルス・アウグストゥス（Romulus Augustus)という人物をご存じでしょうか。

　460年に生まれ、511年頃死んだとされている、西ローマ帝国最後の皇帝です。即位は475年10月31日つまり15歳の時ですが、一年もたたない476年9月4日に、ゲルマン人の将軍オドアケルによって退位させられました。
　オドアケルは西ローマ皇位を奪取したのではなく、形式上は西ローマ帝位を東帝ゼノンに返し、その配下でローマの総督権を与えられた形になっています。しかしむろん、オドアケルは略奪者でありローマに自分の王国を築いたのですが。
　このオドアケルの寛大な処置によって、幼帝ロムルスは年金まで与えられてその生涯を終えます。牢に閉じこめられたのではないにしても、緩やかな軟禁状態であったでしょう。その最期が自然死だったのかどうかははっきりしませんが、オドアケルのあとローマを支配したテオドリックの時代でも年金生活が送れたとのこと。滅びた帝国の廃帝としては、幸運と言うべきでしょうな。

　この幼帝が、もし忠実な配下の手によって軟禁から「救出」され、ローマからもゲルマンからも脱出し、新天地で新しい生活をすることができたら。たとえば、カエサルによって開拓され、ローマ軍の撤退によって蛮族の跳梁する場所となったブリタニアとか。
　それがこの物語です。

　主人公は記憶をなくしたローマの若き軍人アウレリウス。いわくありげの過去がありますが、ローマに忠実な熱血漢。
　西ローマ帝国総司令官であるフラウィウス・オレステスは、過去の栄光を少しでも回復するために、ローマ市民だけで構成された「無敵軍団」を結成しました。アウレリウスはその一員。ゲルマンとの戦いでこのささやかな軍団は全滅し、アウレリウスと数人の兵だけがかろうじて生き延びます。オレステスも殺されますが、死に際にアウレリウスに、我が子を守ってくれとたのみます。
　そう、幼帝ロムルスとは、オレステスの息子だったのでした。
　幽閉されたロムルスは、地下の秘密の部屋で不思議な剣を発見し、それを持ってアウレリウスとかつての無敵軍団の残党と共に脱出し、新たな土地で新しい伝説となりました。
　伝説とは何だったのでしょうか。

　ペンドラゴンと呼ばれた男。岩に突き刺さった剣。
　その剣には銘として、CAI. IUL. CAES. ENSIS CALIBURNUS　と彫ってありました。　　「ユリウス・カエサルのカリビ人の剣」
　土に埋もれ、雨風に曝され、かろうじてこれだけ読める。　　　　　　　E S CALIBUR

　面白い展開の、スリリングな時代冒険小説ですね。ロマンチックですらある。読んでいて楽しい。
　つじつまの合わないところの最右翼は、おそらくは鋼で鍛えられた剣が、500年の時を経て、何の異常もなく元のままであることかな？
　ほかにもご都合主義的展開はさまざまありますが、面白ければいいじゃないかと言う展開ですね。

　デジャブを感じて記憶をたぐってみたら、銀英伝のいちシーン。フェザーンに向かうユリアンが見た子供向けドラマ。悪い家臣に追い出された王子が、艱難辛苦の末に王位を取り返す（らしい）話。
　それともう一つ。引退を要求され、むしろ喜んで怠惰生活に入った男に希望を託す人々と、彼らによる奪取作戦。非合法組織への奇妙な期待と、意外な存在感。
　そんな雰囲気で楽しめばいいかもね。

　あとがきによると、この本を原作として映画が作られたそうです。日本では公開されるのでしょうか？
　そういう経緯があったせいでしょうか、この本はイタリア語からではなく、英訳された「The Last Legion」からの翻訳なのだそうな。
　それはそれでいいのかも。(笑)　　　(07/8/1)