トップへ戻る 読んだ本の分類		作家番号： N038 ローレンス・ノーフォーク Norfolk, Lawrence 国籍： イギリス 生没年：1963〜 　1986年ロンドン大学キングズ・カレッジの英語英文科卒。博士号を目指した研究生活のかたわらフリーランスのライターとして辞書類の編集などを手がけつつ、「ジョン・ランプリエールの辞書」を執筆し、サマセット・モーム賞を受賞。

管理番号	書　　名		メ　　モ
N038-001・002	ジョン・ランプリエールの辞書（上・下）		18世紀を舞台にしたゴシック・ミステリ

Ver. 2.16

管理番号：N038-001・002	32 歴史小説・西欧史					出版社：東京創元社
書名：ジョン・ランプリエールの辞書（上）						ISBN978-4-488-20203-9 C0197
原題：Lempriere's Dictionary　（1991）			創元推理文庫　M ノ-3-1
翻訳：青木純子		価格：\1100	ページ数：480P				本のサイズ：文庫
初版発行：2006/5/31		購入：2006/6/3	表紙イラスト：建石修志

書名：ジョン・ランプリエールの辞書（下）						ISBN978-4-488-20204-7 C0197
原題：Lempriere's Dictionary　（1991）			創元推理文庫　M ノ-3-2
翻訳：青木純子		価格：\1100	ページ数：470P				本のサイズ：文庫
初版発行：2006/5/31		購入：2006/6/3	表紙イラスト：建石修志

ジョン・ランプリエール（1765〜1824/2/1）とは、「古典籍固有名詞辞典（Bibliotheca Classica）」を執筆した、実在の古典学者です。この「辞書」というものは読んだことがありませんが、古今の事象、人物、神話などについて、持っている知識教養を駆使して解説した本であるとか。雑学家の面目躍如ですね。 　時代的には、アメリカ合衆国が独立し、フランス革命がおこり、ナポレオン戦争が終わり、動乱が一息ついた時代まで生きた人です。 　この時、英国にもさまざまな政治的動乱もありました。陰謀もありました。 　面白い時代です。 　実在のランプリエールは、英国領ジャージー島で生まれました。そこの漁夫の作業着が、運動着のジャージの語源になったそうですが、フランス沿岸にあるこの島に、今もその一族が住んでいるそうです。 　この動乱の時代を背景とし、「ランプリエールの辞書」という面白いネタを核として、1600年まで遡る陰謀の連鎖を描いた時代小説がこれです。特に後半に出てくる、歴史上名高い「ラ・ロシェル包囲戦」がすごい。 　お話は、気弱で強度の近眼で本の虫である少年が、眼鏡をあつらえてもらって世界が広がるところから始まります。 　神話の世界と現実が入り乱れる少年時代のなかで、父親が死にます。それも、ディアナの水浴を見てしまったアクタイオンのエピソードそのままに、近所の少女の水浴をつい見てしまったその瞬間に猟犬によって噛み殺されましたのです。 　歴史、幻想、神話、そして陰謀。1787年のロンドンの猥雑な喧噪。 　物語の各章、「カエサリア(ジャージー島の古名)」、「ロンドン」、「パリ」、「ラ・ロシェル」と、それぞれの地で起きる事件と過去の陰謀の歴史を積み上げ、最後に荒唐無稽な面白い大団円になだれ込みます。 　ラ・ロシェル包囲戦という悲惨な歴史について、興味はあったのですがよい史料がなくてあまり知りませんでした。この本で、興味深い事実らしきものを得ましたので、もっと知ってみたくなりました。1627〜28年のあの時代、あそこで何があったのか。 　大西洋に面した港町の要塞に立てこもるプロテスタント。リシュリュー枢機卿の指揮の下、外洋に巨大な堤防を築いて兵糧攻めを行うフランス国王軍。バッキンガム公指揮するイギリス艦隊の牽制攻撃。降伏を拒み、火の中に次々と落下する飢えきった市民たち。 　ダルタニャンが近衛銃士隊と共に従軍した時代。 　不謹慎かも知れないけれど、歴史は面白い。　　　　(07/5/10)