E012 ローレン・D・エスルマン(編集)

作家番号：E012	ローレン・D・エスルマン(編集)	Estleman, Loren D.
	国籍：アメリカ合衆国	生没年：1952～
アメリカ生まれ。イースタン・ミシガン大学卒業。新聞記者をしつつ小説を書く。初期にウェスタン小説を書いたあとは、ハードボイルド作家として知られる。　私立探偵エイモス・ウォーカーのシリーズで有名。　シャーロック・ホームズ関係のパロディとしては、「・・・　vs Dracula」「Dr.Jekyll and Mr. Holmes」「ワトスン博士夫妻の家庭生活」などがある。

管理番号	書名		メモ
E012-001	シャーロック・ホームズ対ドラキュラ		世紀末のロンドンを彩った悪魔とホームズの出会い

		Ver. 2.4

E012-001	42 シャーロック・ホームズ・ノベル			出版社：河出書房新社
書名：シャーロック・ホームズ対ドラキュラ		あるいは血まみれ伯爵の冒険			発行：1978年
原題：Sherlock Holmes vs Dracula, or the Adventure of the Sanguinary Count				河出文庫　ワ1-1
翻訳：日暮雅通		価格：￥590	ページ数：247P		本のサイズ：文庫
初版発行：92/4/4		購入：93/12/26	表紙イラスト：栗津潔

　公式にはこの本は、医学博士ジョン・H・ワトスンの著作で、ローレン・D・エスルマンは編者に過ぎないそうです。
　そして念の入ったことに、この原書のハードカバーの袖には、著者紹介としてこのように書いてあったとか。

　　医学博士ジョン・Ｈ・ワトスン、王立医学会会員
　1852年、イングランド生まれ。1878年にロンドン大学で医学博士号を取得、まもなく医学補として第五ノーサンバランド・フュージリア連隊に配属された。その後バークシャー連隊に転属、マイワンドの戦いで重傷を負い、除隊してロンドンに帰還した。そこでシャーロック・ホームズとの長きにわたる交際が始まり、彼を対象に六十編以上の作品を発表することになる。第一次大戦における軍医としての功労によりナイト爵に叙せられ、ニュー・フォレスト近くの郷里で1940年に死去した。

　ふむう？
　ま、一部の方をのぞいて十分ご理解いただいていると思いますが、これはホームズもののパロディあるいはパスティーシュの常道ですね。ワトスン博士描くホームズの事件簿、つまり有名なブリキの文書箱が偶然発見された、というパターンのバリエーションです。

　事件は、トマス・B・パーカーと名乗るジャーナリストが持ち込んだ事件で始まります。暴風雨のホイットビー港に一隻のロシア風のスクーナーが入港しました。奇跡としか考えれらない着岸をしたその船から、一匹の白い犬が走り出ます。
　そして船には、操舵輪についた死体以外、誰一人乗っていなかったのです。その死体の顔は、恐怖のあまりグロテスクに歪み、舵輪に縛り付けた手の中に手の中には小さな十字架が握られていました。
　なお驚くべき事に、船の積み荷は、土が入った7かける3フィートの木箱が50、それだけでした。

　かくしてホームズは、のちにブラム・ストーカーという作家が「ドラキュラ」という物語において故意に無視されていた、かの吸血鬼を退治するのに果たした重要な役割を、ようやくワトスンの筆によって正しく証明され、語られたというわけです。

　1980年頃、ホームズの出版代理人(！)たるドイル氏の版権が切れて、ホームズもののパロディ、パスティーシュが氾濫した黄金時代がありました。この本は、その頃に出版されたホームズと吸血鬼ドラキュラを絡めた楽しいパスティーシュです。
　ところが、ぼくはドラキュラのモデルたるワラキア公ヴラド・ツェペシュのファンですが、ホラー小説自体には興味がないので、この物語も半分も楽しめませんでした。そういう意味では残念ですが、そのわずかな部分だけでも結構面白かった作品です。
　ホームズ話とだけ考えてみれば、いろいろ面白い突っ込みができるのですけどね。　　(06/3/28)