H047 リチャード・ハワード

作家番号：H047	リチャード・ハワード	Howard, Richard
	国籍：イギリス	生没年：1958年～

管理番号	書名		備考
H047-001 H047-002	囚人部隊誕生激戦！エジプト遠征		ナポレオンの勇者たち

管理番号：H047-001	32 歴史小説・西欧史	出版社：早川書房
書名：囚人部隊誕生	ナポレオンの勇者たち		発行　1997年
原題：Bonaparte's Sons	ハヤカワ文庫NV979　ハ24-1　早川文庫4746
翻訳：佐和誠	価格：￥840	ページ数：474P	装丁：文庫イラスト：生頼範義
初版発行：01/4/15	購入：01/4/13		装丁：文庫イラスト：生頼範義

　フランス革命の時代は、革命そのものより、革命後の混迷の方が歴史に大きく名を残しています。彼らはたくさんの私利と私欲を持ち、たくさんのイデオロギーを持ち、たくさんの思想を持って時代を乗り越えようとしました。王党派と革命派、穏健派と過激派、国内治安派と海外遠征派。
　その中で最後に残ったのが、ナポレオン・ボナパルト。
　フランスの英雄であり、イギリスの悪魔です。

　そのナポレオンがただのボナパルト将軍だった時代、フランス政府は不足する兵士たちを求めて、徒刑囚たちに目を付けました。結局のところ、軍隊と刑務所は同じようなものであり、軍隊でなら金と名声を手に入れるチャンス自体は存在します。
　たくさんの兵士が、囚人の中から生まれます。
　何人かは、その中でチャンスをつかみ、はい上がっていく事ができました。

　パリ、高等法院付属監獄を訪れたニコラス・デシャン大尉とレジエ軍曹は、さまざまな男たちを選別します。
　　ルサール、偽金作り。
　　ジレース、馬泥棒。
　　モロー、狂信者。
　　ロストフ、ロシア人の政治犯。
　　ドラコル、婦女暴行犯。
　　ボネ、学校の先生。
　そして

　　アラン・ローザール、窃盗犯。

　彼は、貴族の家に生まれ、騎兵としての教育を受けた男ですが革命で落魄し、窃盗犯として処刑を待つ運命でした。彼は、上の凶悪犯たちとともに兵士になる道を選びます。

　彼らはやがて、ボナパルト将軍麾下の竜騎兵となり、彼のイタリア遠征の先兵となって闘う事になります。
　連戦、転戦、そして食料の自給。ボナパルトがヨーロッパを席巻し、ヨーロッパすべての国家が怨嗟の声を上げた戦法と戦略です。ローザールは同僚たちとともに戦い抜きます。そして、上官の陰険な策謀を眼にし、起死回生の反撃に打って出る。
　本のコシマキに、「佐藤賢一氏推薦」とありますね。
　むろん、そういう佐藤賢一節的な所もある。でも、性格はあれほどせせこましくない（笑）。

　貴族出身であるローザールがなぜナポレオンに忠誠を捧げるのか、という全く見当はずれな書評もありますが、多種多様な意見が言える著作であるとも思えます。考え方が違えば、感想も異なる。それはそれでよし。
　痛快です。次巻に期待がもてます。　（05/2/17）

　なお、あとがきの最初の１ページめ、言いたいことはわかりますが、紋切り型、教科書型すぎます。歴史を一方からだけ見ると、こういう事になると言う見本のような気がします．．．　確信犯的な書き方なので、承知で書いているのでしょうけどね。

管理番号：H047-002	32 歴史小説・西欧史	出版社：早川書房
書名：激闘！エジプト遠征	ナポレオンの勇者たち		発行　1998年
原題：Bonaparte's Invaders	ハヤカワ文庫NV987　ハ24-2　早川文庫4794
翻訳：佐和誠	価格：￥880	ページ数：495P	装丁：文庫イラスト：生頼範義
初版発行：01/7/31	購入：01/7/20		装丁：文庫イラスト：生頼範義

　イタリア遠征の後、ナポレオン・ボナパルトはエジプト遠征に旅立ちます。
　文明の火を世界に広めるため、そして太古の文明の発掘のため。
　ナポレオン自身が、考古学や歴史にどれほどの価値観を持っていたのか、ちょっと謎です。単なる自己顕示欲だったのか、それ以外の何かがあったのか。

　いずれにしれも、アラン・ローザールと彼の仲間たちも、行く先を知らされぬままに船に乗せられ、エジプトに向かいます。
　途中、マルタ島に寄港し、文字通り鎧袖一触の勢いで制覇した後にベドウィンの支配する熱砂の砂漠に上陸します。
　苦闘、苦戦の中で、歴史に名高いアブキール湾の戦いがあり、フランス海軍はネルソン麾下のイギリス艦隊の前に壊滅し、彼らは帰る手段を失って孤立します。
　これも史上名高いピラミッドの戦いでエジプト軍を撃破しますが、先はどうなるのか。

　ローザールとその一行は、ボナパルト将軍の前ではただの使い捨ての兵士にすぎません。ナポレオンはなんとしてでも故国に帰るでしょうが、彼らは帰還できるのか。

　戦うことでしかその存在を示せず、戦うことでしか生存することのできなかった時代、フランスは苦闘しつつ勢力を伸ばしていきます。その先に何があるのか、何があるはずだとナポレオンは信じていたのか。
　歴史は、面白い。

　ところで、この続巻は出版されるのでしょうか？　心配です。　（05/2/17）