トップへ戻る 読んだ本の分類		作家番号：K013 小林司・東山あかね こばやしつかさ・ひがしやまあかね 国籍：日本 生没年：1929/3/21〜2010/9/27 1947年〜

管理番号	書　　名		メ　　モ
K013-001	ガス燈に浮かぶシャーロック・ホームズ		六分の侠気四分の熱、とホームズを評したホームズ研究

		Ver. 3.06

管理番号：K013-001

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出版社：立風書房

書名：ガス燈に浮かぶシャーロック・ホームズ						ISBNなし
初出：週刊誌『朝日ジャーナル』 1977年10月7日号〜1978年1月6日号
		価格：1200Yen	ページ数：288P				本のサイズ：135×195HC
初版発行：78/12/15　第2刷：79/4/10		購入：1979/5

日本のシャーロッキアンの草分けとして名高い「二人で一人の」小林司東山あかね御夫妻による、シャーロック・ホームズ研究書。元は『朝日ジャーナル』に連載されたもので、それを加筆し掲載写真を増やして一冊にまとめたものだそうです。なお、『朝日ジャーナル』は1959年に創刊されたのち1992年に廃刊となりましたので、今はありません。 　あとがきによりますと、ちょうど「シャーロック・ホームズ ガス灯に浮かぶその生涯」を翻訳しつつあるときに、のちに朝日ジャーナルの編集長となる筑紫哲也氏などのすすめで連載したのだそうな。研究と言うより軽い読み物、とのこと。 　いやでも、これは素人にとっては立派な研究書ですとも。いまもなお。 　さすがに今の目で見ると、アラとか間違いとかあります。でもそれを補ってあまりある幅広く奥深い記事や、さまざまな角度からの深い考察などは、今も色褪せてないと思います。PCもインターネットもない時代に、よくここまで目を配り記事にまとめたもの、といま読み直して感嘆するばかり。 　14の章でホームズとホームズ世界、そして英国が世界に君臨しその頂点となった時代を描いています。 　1. 探偵の理想的人間像　　2. 推理学を分析すれば　　3. 麻薬と精神分析　　4. ロンドンに足跡を探る　　5.「禁じられた性」のあかし　　6.「栄光の時代」の舞台裏　　7. すべての水はテムズにつながる　　8. 登場人物の謎を解く　　9. 19世紀英国の「外国人」　　10. ドイルも筆の誤り　　11. 事件のかげの女たち　　12. 霧のロンドン1887　　13. 世界的人気の秘密　　14.シャーロッキアンの読書の楽しみ 　また、各章の扉にさまざまな種類のガス燈のイラストが載っています。これも楽しい。 　ホームズの魅力について、こんな言葉が光ります。 　与謝野鉄幹の『人を恋ふる歌』に、「友をえらばば書を読みて、六分の狂気四分の熱」とあるが、ホームズはまさにそのような人物であった。ひとことで言うならば、理性の影に情を秘めていて、いくらか反体制ぎみは正義の味方だというところが、ヴィクトリア朝のイギリスだけでなしに世界中の現代人をも引きつける彼の特性であろう。（P30-31） 　この言葉、素敵。 　ちなみにあとがきの中で、作者はこんな事を言います。 　さらに、テレビの普及と共に映像世代が育ってきて、最近の子供たちはさっぱり本を読まなくなったと言われている。ところが、一方ではルパンやホームズが子供の人気のトップを占めているという事実がある。大人の世界でも松本清張、横溝正史、森村誠一氏らの推理小説がブームを呼んでいる。スリラーなどの軽い読み物だけが読まれるのは好ましい傾向ではないという識者の声もあるようだが、推理小説によって読書の喜びに開眼したり、眼光紙背に達する読書法を身につける子供もあるに違いない。問題は、何を読むかと言うことよりも。どう読むかという点にあるのだろう。わずか九冊のホームズ物語ではあるが、その中には無限の話題が隠されていて、「こんな読みかたもできる」という読書の醍醐味の一つのサンプルとして本書を受け取って欲しいと思う。（P284-285） 　あは。当時（1978年・昭和53年）でもこんな事を言っていたんだ。 　今だったら、ゲームや携帯の普及と共に、という言葉で始まりそうですが、どの世代でも読書離れ現象は起きていたんでしょうな。 　子どもの頃から本好きだった鐵太郎などが少数派だったのは、今も昔も変わらないのですね。あはは。 　シャーロッキアンに目覚めて読み始めた中の一冊で、巻末に前年（1977年）結成した「日本シャーロック・ホームズ・クラブ」への入会方法が書かれていたのですが、自分程度の新米がと思ってビビってそのままになりました、 　入っていればよかったのになぁ。（2021/07/03） 　読書メーターの記録より　　読了：2021/6/29