M090 森瀬繚（編）

作家番号： M090	森瀬繚（編）	Morise Ryo（edited）
	国籍：日本	生没年：

管理番号	書　　名		メ　　モ
M090-001	シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ		ホームズ本の各種カタログ？

		Ver. 2.23

管理番号：M090-001

42K シャーロック・ホームズ研究書

出版社：エンターブレイン

書名：シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ	未公表事件カタログ		ISBN978-4-7577-4571-1 C0098
	価格：1500Yen	ページ数：215P		本のサイズ：150×210SC
初版発行：2008/12/26	購入：2009/9/14	表紙イラスト：團夢見/imagejack

　シャーロック・ホームズとは文化である、と言った人がいます。
　しかしどちらかというと、この本のオビにあるように、　シャーロック・ホームズはそれ自体が一つのジャンルである　というフレーズの方がいいのかも。
　出版業というものが始まり、現代まで発達する中で、シャーロック・ホームズほど広い範囲にファンを得た物語はない、とも言われます。

　むろん、ホームズとは何かどころか、その名さえ知らない人が世界にはたくさんおります。
　知っているという人でも、右の本の表紙のような、インバネス・コート、鹿撃ち帽、曲がったパイプという、実際のホームズが使わないスタイルでしか知らない人も多いでしょう。
　アンケートを採れば、もっと人気のあるキャラクターも古今東西にたくさんいるでしょう。

　しかし、にもかかわらず、シャーロック・ホームズは独特なのです。なぜか。
　これほどまでに研究され、模倣され、茶化され、しかも尊敬されたキャラクターはないから？
　いや、それも原因ではなく結果です。

　同時代、さまざまなキャラクターが表れました。ルブラン、ハガード、バローズなど、時代の中で光を放つ冒険作家がいます。ヴァン・ダイン、クリスティ、クイーンなど、ミステリ作家としてはドイルより一段上であることに誰も異論は挟めない作家たちが、ドイルの後を追いました。
　しかし、ホームズの独特な牙城を崩すことは出来なかったのです。

　理由としては、いくつか考えられます。
　ドイルの、スピーディな吸い込まれるような筆の冴え。愛すべき独特なキャラクター。ホームズとワトスンの性格の見事な対比。4作の長編を含め、ほとんど短編だけで構成されたわずか60編の手頃な物語群。要所要所にちりばめられた、気を持たせる　「語られなかった事件簿」。意識的、あるいは誤記による年代の微妙な不整合。一度は死んで葬られながら、読者の熱烈な声により復活した経緯。
　主人公ホームズの自信家でエキセントリックな性格。また7パーセントのコカインに沈溺する性格の弱さ。
　常連の、またはわずか数度現れる、強烈な個性を持ったサブキャラクターたち。
　こんなことは、愛好者ならなんとでも書けます。と同時に、ホームズを知らない人にとってはまったく意味のない言葉の羅列でしかない。
　でも、見て欲しい。これほど引用され、模倣され、パロディやパスティーシュが膨大な数が書かれ、そして今もなおその勢いが止まらないキャラクターが、他にあるだろうか。

　てなわけで、この本はそんなホームズの世界を、出来るだけ広い範囲で並べてみたカタログです。そう、単なるカタログ。
　巻頭に出てきたインタビューが、キム・ニューマンだと言う事でもう痺れましたね。「ドラキュラ紀元」ではなぜホームズを正面に据えなかった理由は、そうするとこの話が、ドラキュラ世界が現実化したら、という一種のファンタジーであるはずなのに、ホームズの個性に食われてしまうであろうから、という趣旨のことを言っています。なるほどね。
　そして、120年にわたるパロディ、パスティーシュの歴史がざっと綴られ、ホームズに絡んだ多種多様なミステリ、解説本、映画、コミック、アニメ、その他の商品について、驚くべき数をカタログとして解説しています。
　すごいね。
　少なくともここに書かれた中で、本に関しては、少なくとも7割以上を読んだことがちょっと嬉しい。残りの中で半分以上が題名は知っていました。しかし、まったく知らない本がいくつも出てきて驚いています。
　鐵太郎の自慢もたいしたこたァないんだよね、結局。(笑)
　そんなことで、シャーロッキアンの端くれとして、見るだけで楽しい本です、これ。
　「本」と言うよりは、「読み物」と言うべきかな。　　（09/10/2）