M105 キャリー・マリス

作家番号： M105	キャリー・マリス	Mullis, Kary
	国籍：アメリカ合衆国	生没年：1944/12/28～
キャリー・バンクス・マリス（Kary Banks Mullis ）は、アメリカ合衆国ノースカロライナ州レノア出身の生化学者。ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 法の開発で知られ、その功績により、1993年にノーベル化学賞及び日本国際賞を受賞した。　誕生後、サウスカロライナ州コロンビアに移り住み、そこで成長した。ドレハー高校を経てジョージア工科大学卒。1973年にカリフォルニア大学バークレー校から博士号を与えられた。カリフォルニア州に移り、ニューポートビーチ、その後アンダーソンバレーに住んだ。バイオテクノロジーの企業シータス社に就職。そこでPCR法によるDNAの増幅方法を考案した。後に好熱菌のDNAポリメラーゼであるTaqポリメラーゼを用いる改良法が開発され、世界の分子生物学の進展に大きな影響を与えた。現在では免疫に関する研究を行うベンチャー企業を率いている。

管理番号	書　　名		メ　　モ
M105-001	マリス博士の奇想天外な人生		破天荒なある学者の自伝

		Ver. 3.01

管理番号：M105-001

58 歴史史料・歴史論・個人史

出版社：早川書房

書名：マリス博士の奇想天外な人生			ISBN4-15-208264-X　C0043
原題：Dancing Naked in the Mind Field　（1998）		翻訳者：福岡伸一
	価格：1900Yen	ページ数：264P		本のサイズ：文庫
初版発行：2000/2/15	購入：2014/10/22	カバー写真：Nancy Cosgrove Mullis 装幀：ハヤカワ・デザイン

　キャリー・マリス博士とは、上の経歴にありますように、1993年にノーベル化学賞を得た天才的科学者です。DNAの増幅方法を考案したことでこの賞を得ましたが、その功績よりも奇行で有名なのだそうな。
　そうな、というのはまったく知らなかったから。
　ネット上で、この方の名を聞いたので、この本を買ってみました。
　マリス博士自身が自分の言葉で、破天荒なその生涯を語っています。面白いね。

　ノーベル賞の元となったアイディアは、ホンダ・シビックでカリフォルニアの山中を走っているときに思いついたのだそうな。横には同僚で恋人のジェニファーがいて、デートの真っ最中だったとか。
　そのジェニファーとはのちに険悪な仲になって別れたそうですが、そこから始まるマリス博士の最先端の研究と、女遍歴と、経済的な成功物語と、いたずらっ子的な生活と、さまざまな世の中に対する考え方がこの本の骨子。

　日本国際賞に選ばれて来日したとき、天皇と皇后に拝謁し、日本の皇后に「スウィーティ（かわい子ちゃん）」と挨拶したのはたぶん後にも先にも私だけだろう、と自慢します。
　美智子皇后ですから軽くかわしたのでしょうが、香淳皇后だったらどうなっていたことか。
　その翌年の1993年に彼はノーベル化学賞を授与されますが、そのニュースを聞いて殺到してきたテレビ局のカメラ・クルーは、マリス博士がサーフィンをしているところに殺到したとか。翌日の新聞の見出しは、むろん「サーファーがノーベル賞獲得！」だったそうです。

　子どもの頃から物置に実験室を作り、ロケット燃料を調合しては頻繁に事故を起こしていたこと。高校生の時、科学の同好会の会長となって近くの小学校でサイエンス・ショーを行ったとき、ヨウ素と過塩素酸カリウムの反応実験をやっている最中爆発が起き、小学生ひとりにガラス片で怪我をさせたこと。ホワイトハウスで、時の大統領ビル・クリントンにマリファナ・タバコのことを聞いてみようとしたこと。
　武勇伝というか、稚気愛すべきエピソードには事欠きません。

　国防に関する論、自然に対する論、宗教論、環境を守ろうと狂奔する人々に対する軽蔑、星座占いへの理解、HIVがエイズの原因であるという断定に対する疑問、何やらいろいろ面白い。

　こんな人もいたんだ、おもしろいね、世の中にはさまざまな考えがあるんだな、と思う。
　同時に、マリス博士のユーモア感覚は自分と相容れないな、と思って本を閉じました。

　にや。　　（2015/4/27）