 トップへ戻る  読んだ本の分類 |
|
 |
|||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 管理番号 | 書 名 | 翻訳者 | メ モ | |
|---|---|---|---|---|
| M113-001 | シャーロック・ホームズの事件簿 芸術家の血 | 日暮雅通 | 子供の失踪と国際的陰謀事件 | |
| M113-002 | シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 | 日暮雅通 | 生首がテーブルに出たお話 | |
 |
Ver. 3.03 |
|---|
| 管理番号：M113-001 | 42 シャーロック・ホームズ・ノベル | 出版社：ハーパーコリンズ・ジャパン | |||||||
| 書名：シャーロック・ホームズの事件簿 芸術家の血 | ISBN978-4-596-55038-5 C0197 | ||||||||
| 原題：Art in the Blood（2015） | 翻訳者：日暮雅通 | ||||||||
| ハーバーBooks M・マ 2-1 | 価格：880Yen | ページ数：368P | 本のサイズ：文庫 | ||||||
| 初版発行：2016/10/25 | 購入：2016/12/11 | 表紙イラスト：竹中 ブックデザイン：albireo | |||||||
 こんな 序 で始まります。
出だしはまずベーカー街の火事のシーンから。 メアリ・モースタンと結婚したばかりのワトスンの元に、ホームズが221Bの下宿に火をつけたからすぐに来て欲しいとのメッセンジャーの手紙。出したのはむろんハドスン夫人。駆けつけたワトスンの目の前にあったのは、消防士が火を消し止めたあとの水浸しの惨状と、その中で長いすの上で震えている蒼白な顔のホームズ。しかも、彼はそれまで数日拘置所に収監されていたという。 ああ、新時代のホームズだな、これは。BBCの「シャーロック」というよりは、ロバート・ダウニーの映画版のスタイル。バイオレンスとアクション。しかも露骨にコカインまみれ。こんなホームズを求める人が多いんでしょうな、今は。 ヴィクトリア時代の紳士であったホームズは、もはやお呼びでないのか。 いろいろ複雑な謎を保留にしたままで、パリから来た手紙を開くホームズ。フランス語で書かれていましたが、読み始めるとみるみる文字が消えていく。見えない第二のインクで書かれた文面を読み取ったホームズは、10歳の息子が父親のところから行方不明になったので調べて欲しいという。依頼者はどうやら、イングランドの最上級の貴族ペリンガム伯爵との間に子供を作ったパリのコンサート歌手らしい。その捜査に向かおうというホームズの身を気遣い、愛妻メアリが母親の元に行っているワトスンは彼と同行することに。 こうして物語は始まります。単なる失踪事件と思われたものが、美術品の窃盗事件、そして英国の影の重鎮であるマイクロフト・ホームズまで絡む国際的な陰謀に広がっていきます。この本の副題となる 「芸術家の血」 とは、いったい何だったのか。 悪くない、と最初思いました。ちょっと乱暴だけど。 しかしこの暴力描写が、ホームズ譚と言うにはどうなのか。そして、ドラッグ。捜査すべき事件がないときの無聊、回転していないと焼きついてしまう脳を落ち着けるために麻薬を常用していた、と描写されていたホームズの7パーセントのコカインが、危機的状況の中でポパイのホウレンソウの如く精神を高揚させるために使われるとは。 うーん。アクションミステリとして悪くないけど、これが新時代のシャーロック・ホームズなのだとしたら、それでいいのか悩む。 車椅子の偽装がバレたシーンなど、失笑してしまいましたし。 むう。（2017/3/10） 読書メーターの記録より 読了：2017/1/9 |
||||||||||
 |
Ver. 3.06 |
|---|
| 管理番号：M113-002 | 42 シャーロック・ホームズ・ノベル | 出版社：ハーパーコリンズ・ジャパン | |||||||
| 書名：シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 | ISBN978-4-596-54116-1 C0197 | ||||||||
| 原題：Unquiet Spirit（2017） | 翻訳者：日暮雅通 | ||||||||
| ハーバーBooks M・マ 2-2 | 価格：991Yen | ページ数：544P | 本のサイズ：文庫 | ||||||
| 初版発行：2019/6/20 | 購入：2020/10/15 | 表紙イラスト：竹中 ブックデザイン：albireo | |||||||
 原作の「Unquiet Spirit」とは、ワトスン医師にとって超自然現象に対する疑念を脅かされるような試練であったから、と冒頭に書かれています。ワトスンのみならずホームズにとっても、らしい。だから「Unquiet
つまり眠らない Spirit 精霊事件」なのだぞうな。またホームズはこの事件の公表を彼の死後50年まで禁じたそうですが、その理由は彼の大学時代最後の日々について書かれているからではないかとワトスンは推測しています。 ま、ともかくこの1889年12月の事件は、「ブリキの文書箱」スタイルではなく「偶然発見された原稿」式に世に出た訳ですな。 いささか経済的に追い詰められた、しかしプライドばかり高いホームズが、依頼に来た若い女性に不快な表情を示すところから始まります。女性は、20代の終わりの年格好。アイラ・マクラーレン夫人と名乗ります。スコットランド北部、ハイランドのブレイディーン城の領主サー・ロバート・マクラーレンの三男の妻なのだそうな。 マクラーレン家はウィスキーの生産で名をなした大富豪で国会議員。代々の家系と言いますから、サーと言っても騎士ではなく準男爵らしい。国会議員でトーリー党員というから、上院議員ではなさそう。（このへんの設定にはなんだか怪しいところがあるのですが、まァしかたない） ホームズはこの才気走ったレディが気に入らないようですが、この家で起こった不思議な事件に関わらざるを得なくなる訳。 一番奇妙な事件とは、若い美人の部屋係メイドであるフィオナ・ペイズリーが行方不明になり、二日後に戻ってきた件。かごに入れられ、縛られて薬を飲まされ、腰まであった見事な赤毛を根本から剃られた姿で。 彼女のかごに入っていた、「マクラーレンの真の友人」を名乗る人物からの詩のような手紙がホームズの興味を引きます。しかしホームズはそれ以上関心を示そうとしません。館の中で次々と起きる幽霊事件を聞かされても。 しかしマクラーレン夫人がハンドバッグから導火線のついたダイナマイトを取り出し、銀のケースのマッチで火を付けるとそうはいかない。これは偽物でしたが、園芸小屋でこの本物が大量に見つかったとなるとホームズも乗り出さざるを得ない。 と言う訳で、事件が始まります。 なんやかんやでこの事件のためにスコットランドに向かったホームズとワトスンですが、その前に謎めいたホームズの大学時代を知る男に襲われた件や、マイクロフト・ホームズに聞かされたワインの樹の病気の話やそれに伴うフランスとの険悪な外交関係とかが絡みます。これが、スコットランドの事件とどんな関係があるのか。 で、マクラーレン邸での晩餐。ホームズを芸人扱いする当主サー・ロバートにいらいらしつつ料理が進む中で、デザートの登場となります。大きな皿に銀の半球状の蓋が乗ったもの。その蓋が開けられ、家族とホームズらが戦慄します。 その中にあったのは、髪を剃り落とされた人間の凍結した頭部。
えーと、当時の家庭には、というか一般的に、人間の頭部を凍結させるほどの冷凍機などあったとは思えないのですが。物理的に零下何十度まで冷却する冷凍庫が、たとえ大富豪だろうと家庭に据えられるものではなかったはずですし、「冷蔵庫」と呼べる食糧保管庫は、たとえ塩を使ったとしても氷を使うのですから、せいぜい摂氏マイナス数度が限界。そしてその程度では、数日間鮮度を保つことはできたでしょうが凍結させることは無理でしょう。数時間で凍結させるなら摂氏マイナス10℃以下でないと。 なんてことが頭に浮かんだので、この時点でこのミステリの技術的な側面が信じられなくなって興味が薄れたのは事実。 しかたないよね。鐵太郎はそんな理系突っ込みをする人なんだから。 このミステリで描かれるのは、まずは映画的な暴力とアクション。地方の領主の（よくある）御乱行の果て。おどろおどろしいスコットランドの亡霊と恐怖。 大学時代のいじめられっ子ホームズのお話といじめたヤツ。 続けざまに起きた、あの人は実は○○だったのだ！ という急展開のドッキリのくり返し。 展開は面白いんだけど、ホームズ・パスティーシュとしてはこういう路線はあまり好みじゃないな。（2021/02/12） 読書メーターの記録より 読了：2021/1/4 |
||||||||||