S113 イアン・サンソム

作家番号： S113	イアン・サンソム	Sansom, Ian
	国籍：イギリス	生没年：1966/12/4～
ケンブリッジ大、オクスフォード大出身。現在は北アイルランド、クィーンズ大学で教鞭をとっている。　本人のウェブサイト　→　Ian Sansom

管理番号	書　　名		メ　　モ
S113-001	蔵書まるごと消失事件		司書になったら、図書館も本も亡くなっていたお話

		Ver. 2.23

管理番号：S113-001

44 コージー・ミステリ

出版社：東京創元社

書名：蔵書まるごと消失事件	移動図書館貸出記録 1		ISBN978-4-488-29702-2 C0197
原題：THE MOBILE LIBRARY: The Case of the Missing Book　（2005）		翻訳者：玉木亨
創元推理文庫 Mサ3-1　29702	価格：1200Yen	ページ数：461P		本のサイズ：文庫
初版発行：2010/2/26	購入：2010/7/29	カバーイラスト：佐久間真人　カバーデザイン：大野リサ

　主人公はイスラエル・ジョゼフ・アームストロング。菜食主義者。ユダヤ系。まだ三十前。腕っ節も酒も弱いし運も悪い。ロンドンにいるガールフレンドには、愛想を尽かされているらしい。
　生まれたこの方、本の虫です。図書館にいれば心が安まるというタイプ。
　北アイルランドからイングランドに来た父の一族のためにロンドンに住んでいたのですが、今回北アイルランドへ来ることとなりました。アントリム県、ラスケルテアル市の図書館の司書として。ぶっちゃけた話、彼にはほかにできる仕事がなかったのです。
　アントリム県（あるいは州）ってのは見つかりましたが、ラスケルテアル市は見つかりません。架空の町？
　ところが、12月の寒風の中でこの町に来てみて驚いた。彼が赴任するはずのタムドラム地区公立図書館は、閉鎖されたのだという。あわてて、担当の「娯楽・レジャー・地域サービス課」に問い合わせると、そこのリンダ・ウェイ副課長は、移動図書館を用意する予定なので、そこで働いて欲しいという。
　じゃその移動図書館なるものはどこにあるのかというと、おんぼろで錆だらけのバスと酔っぱらった運転手があるだけ。バスの中には本を並べる棚もない。しかも本は一冊もない。一万五千冊あるはずの蔵書は、いったいどこに消えたのか。

北アイルランドとアントリム県の位置

　てなわけで、やる気の出ない仕事を押しつけられ、鶏小屋に下宿する羽目になったイスラエル君、七転八倒の活躍を始めることとなります。この町の図書館はどうなったのか。消えた本はどこにいったのか。町の人たちは何を隠しているのか。

　やがて、この本好きという以外はほとんど役立たずのイスラエル君、だんだんと見えてきます。この町に何があったらしい。
　そしてクリスマスまでにみんなが待ち望む図書館を開くために、なにをすべきなのかも、わかってきます。

　アイルランド人と図書館をおちょくったこのミステリ、今のところ4巻まで出ており、最終的には10巻まで出る予定だそうな。

　これ、ユーモアミステリであると共に、作者の図書館への思いがこもっているのでしょうか、そこはかとなく本の虫の琴線をくすぐるところはあります。
　解説を書いている穂井田直美が、今まで脇役に甘んじてきた本の虫を主役に据えたこのユーモア・ミステリの登場を喜んでいます。この方も図書館が聖域だったのだそうな。
　本に関するいろいろなウンチクというか、ネタがいっぱいあります。注釈がちょっとくどい所があるように思えますが、知らない人もいるでしょうからまぁいいか。
　うーん、このユーモア感覚とこの愛書家感覚、ちょっと鐵太郎と波長が違うかな。次巻を読んでから考えましょうか。　　（10/8/13）