ローダン 110-119

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　宇宙英雄ローダン　110～119　

巻数	書　名	作　家
110	虚空の死	クルト・マール＆クラーク・ダールトン
111	アンドロ・アルファ	ウィリアム・フォルツ＆カール・H・シェール
112	銀河侵攻計画	H・G・エーヴェルス＆クラーク・ダールトン
113	パラスプリンター	クルト・マール＆カール・H・シェール
114	ミュータントの復讐	ウィリアム・フォルツ
115	異銀河からの敵	クラーク・ダールトン＆H・G・エーヴェルス
116	恒星転送機を奪え	クルト・マール＆クラーク・ダールトン
117	秘密惑星トロヤ	カール・H・シェール＆H・G・エーヴェルス
118	ツーノーザー収容所	ウィリアム・フォルツ
119	危機の護送船団	クルト・マール＆カール・H・シェール

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		Ver. 3.00

管理番号：R400-110	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 110巻					出版社：早川書房
書名：虚空の死	ハヤカワ文庫SF610　ウ1-110　早川文庫1878					ISBN4-15-010610-X C0197

219 テレポーター、警戒せよ！		Teleporter Achtung!				クルト・マール			1965/11/12	翻訳：松谷健二
220 虚空の死		Der Tod von den Sternen				クラーク・ダールトン			1965/11/19

		価格：340Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：1985/5/15		購入：1985/5/12	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　219 テレポーター、警戒せよ！
　カハロ星域に緊張が走ります。警戒していたテラ艦隊の目前で恒星転送機が起動し、メタンズの巨大な宇宙要塞が出現したのです。第二次カハロ攻防戦の始まりでした。
　超弩級艦＜ナポレオン＞で二千隻の艦隊の指揮を執るのは、太陽系元帥アラン・D・マーカント。情報部の長であるはずの貧相な中年男が、いつの間にか軍籍にあって艦隊指揮官となっていることを不思議と考えたら、ローダンは読めませんな。よくあることなんだけどさ。(≧∇≦)
　ピラミッド転送機の謎を解明すべくカハロの基地内にいたテラ科学界の重鎮アルノ・カルプ教授は、マーカントから敵要塞の映像と共に連絡を受けます。

　「ゾンデが見つかり、やられました」冷静だ。「教授、車軸部は長さ200キロメートル、太さはほぼ50キロメートルあります。いかが？スポークも長さは50キロメートル。球の直径は2キロメートル。これほど巨大な構造物にはお目にかかったことはありませんな。この要塞の任務がカハロの占領か撃破にあることは確実。十分後に手持ち全兵力を持って攻撃にかかります。成功の見込みは大きくないが、カハロは守らなくてはならない。あなたも全力を挙げて転送機を防衛してください、地下の警備兵力は一万人。あなたの指揮下におきます。もう時間がない。最善をつくしていただきたい！」　　（P16)

　捕獲したメタンズ、マークスの宇宙服に、メタンズは前と後両方に目があるのに前にしかのぞき穴がなくて、これは安全性とコストのためだろうなどと言う変な解釈があったりしますが、ともかくマークスの攻勢は続き、ついにミュータント部隊の三人のテレポーターが投入されます。ラス・ツバイ、タコ・カクタ、そしてむろんグッキー。これもお茶目な展開のうちか！（違？
　巨大要塞の中にいる小柄なマークス、つまりマークスは子供まで含む世代宇宙船で、彼らがこの巨大要塞を運営しているという描写などが面白いのですが、なんと見たこともない超能力ミュータントへの対策まで行っていたマークスの防御網に引っかかり、彼ら三人は絶対説明。グッキーの、隠密作戦にふさわしいテレキネシスを駆使して敵を宙に浮かべて叩きつける攻撃も空しく、三人は捕まってしまう。さあ、どうなる？

　　220 虚空の死

　「どうしても信じられない、かれらが死んだとは！」ローダンの顔は石から削ったようであった。こわばり、生気がない。催眠暗示にかかったのごとく、銀河中枢の星の凝集体をうつす＜クレストⅡ＞の探知スクリーンを凝視している。「勝利になんの意味があろう、かれらが死んだのなら！　われわれが殺したようなもの。われわれが！　われわれの責任なのだ！」　　（P123)

　と言うわけで、命をかけて出撃したテレポーターの三人の捜索のため、危険をおして艦隊はマークス要塞に肉薄します。何百のテラ艦隊の艦船が沈もうと、何千何万のテラ将兵が失われようと問題ではない。なんとしてでもテレポーターの三人、なかんずくグッキーは救い出さなくてはならない。生命はなによりも大事なのだから。ダールトン節、快調。
　銀河系に侵入しつつあるマークス、つまり酸素呼吸生物にとって不倶戴天の敵である彼らは、テラに敵対するアコン人に同盟を持ちかけられます。敵の敵は味方になるはず、という理論は常に正しく、テラナーを憎む二種のまったく異なる種族は今後歩調を合わせることに。前途多難。
　太平洋戦争直前、日本陸軍の覇権をめぐる興亡で、皇道派がアメリカ共産党と共闘することもありえんじゃないか、と白昼夢に襲われ、吹いちゃったのは秘密さ。
　さて、三人のテレポーターはマークスに捕まり、脱出を試みますがまた捕まります。メタンの大気という人類にとって有毒環境に数秒間耐えたりする微妙な展開もあったりしますが、なんとかまた脱出。この過程で宇宙空間に漂う様子が、本の扉絵。
　そうそう、このエピソードのP195でマークスが後ろを振り返る場面などもあったりしていささかお茶目です。

　あとがきにかえて。今後20編のタイトル予告。それと69ページでもマークスが　はっと振りかえ　るシーンが出てくるという指摘。

　たしか、以前、ブルー族についても同種のうっかりミスがあったように思う。昔からふたつ目玉の人間は、フィクションの世界であっても、なかなかおのれの殻からぬけられないものなのだ。かつてはこういうミスに出会うと、しっかりしてくれと、といいたくなったが、このごろは、ま、ご愛敬さ、と、にやにやするにとどまる。トシの功というやつかもしれない。関心とおひまと根気のある方は、このたぐいのミスをあつめてみたらいかがであろう。誤植さがしなどよりおもしろいはず。　　（P248-249)

　だってさ。誤植のあら探しでいいかげん嫌になっていたのかな。あはは。　　　（2013/2/23）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-111	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 111巻					出版社：早川書房
書名：アンドロ・アルファ	ハヤカワ文庫SF619　ウ1-111　早川文庫1904					ISBN978-4-15-012017-7　 C0197

221 アンドロ・アルファ		Verschleppt nach Andro-Alpha				ウィリアム・フォルツ			1965/11/26	翻訳：松谷健二
222 アンドロメダの分身たち		Die Doppelgänger von Andromeda				カール・H・シェール			1965/12/3

		価格：340Yen	ページ数：264P				本のサイズ：文庫
初版発行：1985/7/15		購入：1985/7/20	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　221 アンドロ・アルファ
　中枢ペストという疫病が太陽系帝国に蔓延しています。一名 “メドゥサ・ペスト” と呼ばれるもの。
　歴戦の戦士で中枢ペストに罹患してしまったヘゲテ・ヘガ軍曹の口でこれを説明すると、こうなる。

　自分が二ヶ月後には石みたいになって、ぶっ倒れ、ガラス細工のように割れてしまう──心に思いえがいてごらんなさい。
　おれにはすこぶる旺盛な想像力がある。本当だ。自分の最期を想像するのはさして難事ではない。ここアストⅣで数名の友人が中枢ペストで死ぬのをすでに見ている。死体はその場所でいくつにも分解した。結晶して。犠牲者の骨は粉々になっているので、ほうきで掃きあつめるのだ。　（P12)

　これにかかると人によりその時間に差があるが、ほぼ100％石化してしまうのです。身体の中、原子構造の中でハイパーベースの変異が発生し、特有の放射周波を持つ結晶グループを構成し、病気の最終段階で人体を硬直させてしまうのだそうですが、いまだに十分に解明されていない。むろん対策も出来ていない。
アラン・D・マーカント

　オリンピックにも出場したアスリートであるヘゲテ・ヘガ軍曹は、＜エクスプローラー＝8080＞で片足を失ったのちさらに大規模な探検行に参加して、ハルゴール・セルルンド少佐、コール・ハーパー大尉、ソン・ハオ少尉、イマール・アーカス軍曹と共に生き残り、中枢ペストに罹患します。もはや死を待つしかない彼らは、いきなり倦怠の中に押し込められました。
　そんな彼らの前に現れたのは、聖職者のような笑みを浮かべた男。
　その外観とはうらはらに、細胞活性装置を持った帝国で最も物騒な男の一人、太陽系元帥にして銀河系秘密情報局長間、アラン・D・マーカント。
　彼が持ってきた任務とは、捕虜として得た五名のマークスを連れて脱走し、人類とメタンズの平和を求める「良心的テラナー」として潜入せよ、というもの。ある意味、というかほとんどのテラナーにとって裏切り者となれ。

　作戦発動は、標準暦2401年4月1日、13時10分。

　　222 アンドロメダの分身たち
　圧倒的な戦力を持つマークスに対する太陽系帝国の作戦としてマークスの本拠地に潜入した五人の男たち。
　どうせ死ぬんだから祖国のためにその命を捧げろ、というまことに特攻精神溢れる作戦ですが、はたしてどうなるのか。
　潜入し、ツイン星系の転送機でとばされた場所は、アンドロメダ星雲ではなくその手前の小さな星雲。アンドロ・アルファと名付けられます。ここにマークスの基地があるのか。

　この潜入でいくつかのことがわかってきます。まずマークスは、アンドロメダ星雲の中で支配種族ではないこと。いわゆる「島の王」はマークスではないということ。そして彼らには恐るべき道具があること。

　のちに日本版マルペでは、複製のことをなんでもドッペルゲンガーという訳語を当てるようになりますが、この時点では分身、あるいは複製。しかし原題を見てもらえばわかるように、すでに〝 Doppelgänger〟という単語は使われています。
　この複製が、マーカントの作戦に対するマークスの答えとなるらしい。

　それにしても、久しぶりに100番台のマルペを読みましたが、今の500番台より殺伐としてますなぁ。

　あとがきにかえて。
　松谷さんがほんの数ヶ月在籍した中学校、つまり今の高校の話。在籍期間が短く、学友もいなかったのに卒業して同窓会の誘いが来るのはなぜかというと、戦時中で学校どころではなくそのまま工場に行っていた世代だから。
　発動機のバリ落としから四尺旋盤で部品作りに「出世」したはなしとか、当時の乱暴な受験とか、いろいろ。
　時代ですねぇ　と思ったら今日は終戦の日だった。　　（2015/8/15）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-112	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 112巻					出版社：早川書房
書名：銀河侵攻計画	ハヤカワ文庫SF623　ウ1-112　早川文庫1916					ISBN4-15-010623-1　 C0197

223 第五列		Die fünfte Kolonne				H・G・エーヴェルス			1965/12/10	翻訳：松谷健二
224 銀河侵攻計画		Agenten gagen das Imperium				クラーク・ダールトン			1965/12/17

		価格：360Yen	ページ数：280P				本のサイズ：文庫
初版発行：1985/8/15		購入：1985/11/3	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　223 第五列
　第五列、という言葉を始めて本で読んだのは小学校だったような。今考えると、スペインのパルチザンのお話だったのかもしれません。敵対する組織の中に潜入してその味方のように振る舞い、時きたると本当の味方の進攻を助ける潜入工作員、という感じかな。
　あまり肯定的・好意的な意味で使われる言葉ではないのだそうな。

　いつ死んでも不思議はない中枢ペストに罹病したテラの五人、ハルゴール・セルルンド少佐、コール・ハーパー大尉、ソン・ハオ少尉、イマール・アーカス軍曹、そしてヘゲテ・ヘガ軍曹は、特殊任務を命ぜられマークスの基地に潜入したのですが発覚し、マークスのデュプリケーターによって分子レベルで完璧なコピーを取られたのち抹殺されます。
　この五人のコピーは、外観的にも能力的にもオリジナルそっくりですが、マークスへの忠誠心だけが異なっていたのでした。この五人がマークスの本拠から「脱出」するところから、このお話はスタートします。

　ぎりぎりまで計算され尽くしたマークスの潜入作戦は、見事テラ艦隊の防諜組織を打ち破り、彼ら五人は決死の任務から折檻した殊勲者として迎えられます。だれも彼らが第五列だとは思わない。
　ただ一人をのぞいては。

　アトランのため息。口の端に苦々しいかげり。
　「ペリー、わからないのか、わかろうとしあにのか、どっちかだな。しつこいと思うかもしれぬが、わたしは昔からマークスを知っている。テラナーはついこの前からだ。いいか、最盛期のアルコン人はいまの諸君同様生気にあふれ、機知に富み、おのれの無敵を信じていた。が、いわゆる一万年前のメタン戦争で破滅の淵をのぞきこんだのだ」　　（P79)

　　224 銀河侵攻計画
　さて、アトランがメタンズと呼ばれる水素呼吸生物と戦ったのは一万年前のことで、相手に対する知識は撃戦のさなかの前線指揮官としてのもので、メタンズのメンタリティや戦法の傾向を熟知できる立場とはいいにくい。しかもその後テラで流刑の状態となったアトランは、一万年もの長い年月の間にメタンズの一部であるマークスが昔と同じでわたしはその本性を知っている、となぜ断言できるのか。百年たてば環境は変わる、千年たてば文明は変わる。メンタリティだって。まして一万年。
　というツッコミは、しばらく自粛しましょう。
　ローダンが人を信じたいと願う平和主義の男であるように、アトランは懐疑主義で用心深くその悲観的な判断に誤りのない男なのですから。

　というわけで、マークスから脱出してきた五人を徹底的に信じたいローダンに対し、マークスの恐ろしさを知り尽くすアトランは疑う。どうもこの対比、互いへの意地でやっているように見えるんですが、まァそれはそれ。
　しかし、やがてついにこの五人の正体が暴かれるとき、二人はどうするのか。

　このニセ者、というかコピーを作るマークスの装置はデュプリケーターと呼ばれていましたが、それによって作られるニセ者を、この巻よりデュプロと呼ぶこととなります。
　もう一つ、ダールトン的おまけ。お気に入りのグッキーを主役にした冒険ドラマが大評判になっており、グッキーとしてはそれを憎からず思っているのですが、作者がシャルルブロルヴェという謎の人物。しかしどうやらその正体は、レジナルド・ブルらしい。こういうドラマでグッキーに憧れる青年たちが出てくるのもお約束か。

　あとがきにかえて。
　子供の時の妄想あれこれ。鉄棒にさかさまにぶらさがり、そのまま頭を下に砂場へ落下しなければならないを思い詰めたネタなどは、これは危ないですな。そんなこんな、子供時代の奇妙な思いこみの話。
　それとシャルルブロルヴェ（Scharlbrolwe）という奇妙な名ですが、これは　シェール（Scheer）、ダールトン（Darlton）、ブラント（Brand)、フォルツ（Voltz)、エーヴェルス（Ewers）から取ったんじゃないか、とのこと。ほう。　　（2015/9/1）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-113	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 113巻					出版社：早川書房
書名：パラスプリンター	ハヤカワ文庫SF628　ウ1-113　早川文庫1930					ISBN4-15-010628-2　 C0197

225 大宇宙でのランデブー		Randezvous im Weltall				クルト・マール			1965/12/24	翻訳：松谷健二
226 パラスプリンター		Die Parasprinter				カール・H・シェール			1965/12/31

		価格：340Yen	ページ数：264P				本のサイズ：文庫
初版発行：1985/9/15		購入：1985/9/15	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　225 大宇宙でのランデブー
　哨戒任務に就いていた軽巡洋艦＜カッソ＞は、ほんの偶然で宇宙空間に漂う死体を発見します。宇宙服を着たテラナーであった事も驚きですが、宇宙服の製品番号を調べてさらに驚きが。
　その番号の宇宙服は、補給輸送艦＜キタラ＞乗り組みのビング・ハルガン技師に支給されたものであり、その死体には中毒死した兆候があるのだそうです。しかも＜キタラ＞といえば、例の五人を輸送する任務の途中で何らかの方法で爆発したもの。爆破されたフネの乗組員が、なぜ中毒死して外観は無傷の姿でいるのか。情報は即座にカハロに伝えられます。

　「本当にそうなら．．．」ペリー・ローダンは右のこぶしを左のてのひらに打ちつけた。
　アトランがにやりと、
　「そうなのさ、本当に！　わたしにははじめっからわかっていた、どこかおかしいとな」　　（P15)

　つまり、＜キタラ＞は爆発して失われたのでは無い可能性が高い、例の五人がそれにかかわっている可能性も非常に高い、ということ。つまり奴らは、スパイである。
　かくして、＜キタラ＞探索のために太陽系帝国の艦隊が出動します。そのフネを発見して、なぜ五人が帝国情報部の尋問をくぐり抜けたのか、マークスはなにを企んでいるのかを大至急調査しなければならない。

　　226 パラスプリンター
　いよいよパラスプリンターの登場ですね。
　パラスプリンターとは、特殊なミュータント。電波や、電線の中の電流を媒介としてテレポーテーションできる能力を持ち、その名で呼ばれる者は、トロナル・ウールヴァとラカル・ウールヴァの双子だけ。
　彼らはガトル第二惑星イマルトに植民してその環境に適応したテラナーの末裔で、樽状の大きな肺を持ち、緑色の皮膚が特徴。ウールヴァ兄弟はその中でも特殊な存在です。なにしろ、兵器のエネルギー・ビームまでも媒介にしてジャンプしてのけるのだから。
　彼らはローダンではなく、USO長官であるアトランの秘蔵っ子。アトランはマークスの陰謀を暴くため、ついにいままでその存在を隠していた切り札、USOスペシャリストのウールヴァ兄弟を投入したのでした。
　しかし、マークスの戦艦に潜入した二人は、ついに発見されます。はたして彼らは脱出できるのか。マークスの謎の兵器を発見できるのか。マークスの陰謀を察知できるのか。

　さすがはシェール、常に飛び抜けたアイディアをぶつけてきます。しかもアイディアだけではない。その結果としての飛び抜けたストーリーも、必ず書き込んでくれます。その結果、登場したばかりのウールヴァ兄弟に驚くべき運命がぶつけられたのでした。
　そして苛酷な運命と共に太陽系帝国にもたらされたのは、マルティデュプリケーターというものの存在。

　あとがきにかえて。
　30年前、というから1950年代半ばか。戦争が終わって10年ほど経ったころ、松谷氏は南アルプスの赤石岳に登っている途中、霧の中で突然とんでもないものを見てしまったそうです。飛行機の破片と大きな空冷星形発動機、つまり大戦中の航空エンジン。
　思わず合掌、黙祷してからその場を去ったとのこと。こわかった、という。
　そんな時代だったんですね。　　（2015/9/14）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-114	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 114巻					出版社：早川書房
書名：ミュータントの復讐	ハヤカワ文庫SF633　ウ1-114　早川文庫1943					ISBN4-15-010633-9　 C0197

227 デュプロとその影		Der Duplo und sein Schatten				ウィリアム・フォルツ			1966/1/7	翻訳：松谷健二
228 ミュータントの復讐		Die Rache des Mutanten							1966/1/14

		価格：360Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：1985/10/15		購入：1985/10/20	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　227 デュプロとその影
　マルティデュプリケーターによってトロナル・ウールヴァは生まれました。元のトロナルは、USOのスペシャリスト。つまり、アルコン人アトランを長官とする太陽系帝国の中の遊撃軍の精鋭。しかも、パラスプリンターという他に類を見ない特殊能力を持ったミュータント。このトロナルが潜入したマークスの基地で捕らえられ、彼を元にその複製、デュプロが作られたのち抹殺されてしまったのです。
　マークスはいったい何を企んでいるのか。
　しかしそのマークスも知らなかった事実があります。トロナルには、まったく同じ能力を持った双子の弟ラカル・ウールヴァいたこと、そしてデュプロはパラスプリンターとしての能力がなく、弟の記憶がまったくなかったこと。

　やっとの事でマークスの基地から脱出したラカルは、マルティデュプリケーターとデュプロの情報を旗艦＜クレストⅡ＞のローダンらに報告します。マークスがなにか重大な作戦を企てており、そのためにトロナルのデュプロを使うつもりであろう事も。
　ローダンらの迎撃作戦は、どのような形を取るのか。

　　228 ミュータントの復讐
　マークスとは、なにか。

　テラ科学者の著書には、マークスについてとんでもない叙述をしているのが多い。たとえば、死に飢えた怪物で、権勢欲の権化で、ほかの種族を片っ端から皆殺しにしようとしている、などと。どんなにばかばかしいものでも、科学者が意見を公表するのを妨げるわけにはいかない。が、そういう話を信用すべきいわれもない。
　マークスは血に飢えてもいないし、権力亡者でもない。感傷というものとは無縁なだけなのだ。だから冷厳な論理家で、利益になることはとことん利用する。
　銀河をめぐる第一次戦争では、まだ征服計画があったかもしれぬが、いま準備中の第二次戦争は、彼ら自身の考えにそぐうものではなかった。
　メタンズは銀河をめぐる第一次の戦争でアルコン人に敗れ、銀河から追放されてしまった。いままたそこにもどったのは、自分の意志によってではない。アンドロメダの謎の支配者たる島の王たちの命令のためなのであった。　　（P155）

　この、論理的で冷酷なメタンズ、メタン＝水素呼吸生物の一員であるマークスとの最初の戦いが始まります。

　テラ暦2401年5月19日、USO少佐ラカル・ウールヴァは、マークスの巧緻極まる作戦を覆して復讐を遂げる決心をし、兄トロナルの仇を討つべく＜クレストⅡ＞を発進しました。
　マークスの秘密作戦を暴き、彼らの銀河系侵攻をくい止めることは出来るのか。

　あとがきにかえて。
　このシリーズのちょっとおかしな〝あとがき〟の言い訳から。まァいろいろな経緯からこういう変則的なあとがきモドキを書くようになったんだよ、と。そして本文はワープロで書いているけれど、あとがきは原稿用紙に万年筆なのだそうな。　　（2015/10/6）

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管理番号：R400-115	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 115巻					出版社：早川書房
書名：異銀河からの敵	ハヤカワ文庫SF638　ウ1-115　早川文庫1957					ISBN4-15-010638-X　 C0197

229 異銀河からの敵		Feind aus fremder Galaxis				クラーク・ダールトン			1966/1/21	翻訳：松谷健二
230 ツインへのフィナーレ		Finale für Twin				H・G・エーヴェルス			1966/1/28

		価格：360Yen	ページ数：280P				本のサイズ：文庫
初版発行：1985/11/15		購入：1985/11/10	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　229 異銀河からの敵
　カハロから40光年離れた赤い巨星の周囲を廻るマークスの宇宙艦から始まります。
　侵攻作戦が失敗し、艦隊の中でただ一隻残った一隻。推進機関は壊れ、半壊した姿。

　そこから500百万キロほど離れたあたりに遊弋する＜クレストⅡ＞の中では、ラカル・ウールヴァのパラスプリンターとしての能力に嫉妬するグッキー。ふむ、ダールトン節だな。
　で、双子の兄であるトロナル・ウールヴァはマークスとの戦いで命を失っているのですが、なんということか、トロナルの魂はまだ残っていることが判明。ナンテコッタ。
　そこでまさかの展開。なんと、マルティデュプリケーターの中から、トロナル・ウールヴァは蘇生したのでした。さすが、博愛主義者のダールトン。
　そして、マークス艦隊の最後の生き残り、グレク１も、グッキーらの説得が功を奏して、人類の敵であったものが太陽系帝国の賓客として迎え入れられることとなります。しかしそのグレク１、何やら秘密をかかえているよう。これは、＜クレストⅡ＞にどんな影響を与える事になるのか。

　　230 ツインへのフィナーレ
　眇たる輸送艦艦長であるテラナー、スン・ヤン少佐を拷問するアコン人のシーンから始まります。それを見て、じっと怒りをこらえるテラナーのリチャード・エドワーズ大尉。かつてキント・センターを救った工作員グレン・エドワーズの息子。潜入工作員としてアコン士官になりすましています。
　さらにアルコン帝国亡き後太陽系帝国への憎悪をつのらせるアコン人の海賊行為は、ますますエスカレートしています。

　＜クレストⅡ＞では、グレク１との会話にローダンらが苛立っています。敵意は感じられないものの、何か秘密を持っているらしい、それは重大なこととなるのかどうか、まだわからない。
　六角転送機を秘匿してきたテラナーですが、その謎がついにアコン人に暴かれたとき、はたしてどうするのか。タテマエとしては、こう言う情報は全銀河系種族に公開すべきもの。テラナーが独占していると非難するアコン人は、自分たちこそその秘密を独占したいと考えています。つまり、奴らは悪い方。(笑)

　銀河系宇宙を越える航行を可能にする六角転送機を、テラナーは放棄せざるを得なくなるのか。ツイン星系のステーションはどうなるのか。アコンの大艦隊の攻勢が始まります。
　グレク１の秘密とは何だったのか。最後の瞬間、戦場を支配したのはどの艦隊だったのか。
　リチャード・エドワーズの運命は。

　シビアでリアリスティックなエーヴェルス節でした。

　あとがきにかえて。
　西穂高の山頂を、奥さんといっしょに楽しむ松谷さんの前に現れた可愛いマルチーズ犬。聞くと、槍ヶ岳以外の付近のすべての山を踏破した「山女」だったそうな。
　ぼくは犬には信用されるんだ、という松谷さんのプチ自慢も楽しい。　　（2015/11/17）

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管理番号：R400-116	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 116巻					出版社：早川書房
書名：恒星転送機を奪え	ハヤカワ文庫SF642　ウ1-116　早川文庫1973					ISBN4-15-010642-8　 C0197

231 恒星転送機を奪え！		Das System der Verlorenen				クルト・マール			1966/2/4	翻訳：松谷健二
232 時間の罠		Die Zeitfalle				クラーク・ダールトン			1966/2/11

		価格：360Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：1985/12/15		購入：1986/1/22	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　231 恒星転送機を奪え！
　二つの巨大な恒星が形成する恒星系にある、クロッホという大型惑星がはじけ飛んだシーンから始まります。地球時間で約千年前のこと。

　アコン人への復讐によって心を満たしたグレク1は、ローダンの友となったとまではないにしろ、今や信頼して身を任せた状態。彼はローダンに、「失われし者たちの星系」へ行くことを提案します。それが、貴殿の目的に最適のもの　であるという。失ってしまったツイン星系の恒星転送機の代替になると言うことか。
　指定された座標の星系に＜クレストⅡ＞で到着したローダンらは驚きます。そこにはかつてあったはずの惑星クロッホがなく、二つの恒星の周りには無数のアステロイドがあるばかり。
　しかも接近していくと、無数とも言える小型の戦闘艦が迎撃してきます。一対一なら、いや一対百であっても、無敵の大戦艦＜クレストⅡ＞の敵ではない相手ですが、数千数万と犠牲もかえりみず襲ってくると、これは分が悪い。ついにバリアを破られて損害を受け、星系外に撤退を余儀なくさせられます。

　「保安部より艦長へ」かすれかすれの声だった。「命中弾が三発。艦外被が三ヵ所で破られました。やられた部屋は十四。他区域への影響はくいとめました。人員の損害は四十八名とみこまれます」
　ルドは振りかえり、
　「何者でしょうか、敵は、サー？」命令をがなりつづけてさすがのルドも声がかすれてきた。「お願いします、必要な修理のすみしだい、いま一度進出させてください。思いしらせてやります、やつらに！」
　ローダンは許さなかった。気落ちしていた。
　「いずれな、大佐」そう疲れた声でいっただけである。　　（P77）

　星系外で体勢を立て直した＜クレストⅡ＞は、謎の敵の意図を探る作戦に出ます。ドン・レッドホース大尉の指揮する都市名クラス巡洋艦が先行して、星系内を探索します。
　発見したのは、月ほどの大きさのアステロイド。内部から間違いなく拡散放射が探知されています。これはバグダッドのカリフと名づけられました。ここに何か秘密があるのか。いずれにしても、このままでは＜クレストⅡ＞はどうにもならない。
　※月ほどの大きさなら冥王星より大きいのだから、アステロイドというにはどうかと思うけどまぁいいか。カリフという名は、岩のドームから来ているのかな？

　　232 時間の罠
　初めてグッキーの姿を見たとき、グレク1は何か異様なものを感じたのだそうです。どちらかというと好意的な何か。それは何なのか。

　2401年12月18日、クリスマスをひかえてレジナルド・ブルはカハロで不安を抱えています。アンドロメダに＜クレストⅡ＞で進出したローダンに何かあったのはないか、と。いちおう八日ほどたって音沙汰なければ用心のため三隻ほどよこしてくれ、とローダンに言われていたのですが、気になります。
　太陽系帝国秘密情報部長官であるアラン・Ｄ・マーカントのすすめもあって、救援艦隊としてなんと病院船まで含め321隻を集め、グレク1の示した星系に急行します。散弾星系と名づけられたこの星系に、絶妙のタイミングで合流できたのでした。

　この星系のマークスは、千年前に主人であるアンドロメダの支配者「島の王」の懲罰艦隊によって惑星を破壊された生き残りなのでした。その災厄の中でこのマークスはミュータントと化し、島の王への憎悪の中で生きてきたらしい。
　何の誰何もなく＜クレストⅡ＞を襲ったのも、そのため。
　しかし過去に、その惑星が破壊されるさなか、グッキーの姿をした異星人に救われた伝説がある。むろんグッキーはいくら何でもそんな時代から生きていたわけではない。これはいったいどういうことか。
　で、そのときの記憶が、この惑星クロッホとはなんの関係も無かったグレク1にも残っていたらしいのです。むろんマークスはみな友達らしいから問題なし、か。
　この先繰り広げられるグッキー無双の物語といい、ダールトンさんの設定はどうもなぁ。

　あとがきにかえて、はまた山の話。
　宮城県と岩手県の県境にある栗駒山の産女川(うぶすめがわ)()を三人で攻めた話です。沢マニアの中で名の通った川なのだそうですが、素直に山を登ればいいのにわざわざ川に沿って山を上がるってのは、実に酔狂なものですなぁ。　　（2015/11/18）

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管理番号：R400-117	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 117巻					出版社：早川書房
書名：秘密惑星トロヤ	ハヤカワ文庫SF646　ウ1-117　早川文庫1984					ISBN4-15-010646-0　 C0197

233 秘密惑星トロヤ		Geheimsatellit Troja				カール・H・シェール			1966/2/18	翻訳：松谷健二
234 アンドロ・ベータ警固団		Wachkommando Andro-Beta				H・G・エーヴェルス			1966/2/25

		価格：380Yen	ページ数：280P				本のサイズ：文庫
初版発行：1986/1/15		購入：1986/1/15	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　233 秘密惑星トロヤ
　2402年7月1日、ローダンが散弾転送機と名づけた人口の星系でアトランが語り始めます。この不思議な世界に至った理由、そしてバグダッドのカリフと名づけた小惑星の上で何を考えているのか。
　太陽系帝国の首脳たちが期せずして集まったこの世界で、ローダンは一つの計画を立てます。このままではじり貧。では突破口はどこにあるのか。
　トロヤ、と名づけた小惑星が答えでした。ほぼサイコロ状。一辺の長さは38キロメートル。この中をくりぬき、最新、最強の超弩級戦艦を５隻、そして歴戦の＜アンドロテストⅢ＞を潜ませた上、小惑星自体を超光速航行はできない巨大な補給基地兼移動要塞とする。そして、アンドロメダ星雲の十万光年手前にあるアンドロ・ベータ星雲までの４０万光年を転送機によって飛翔する、というもの。
　そうして、散弾転送機星系から時たま転送機によって運ばれる小惑星の一つに偽装し、潜入しようとするもの。

　旗艦は＜クレストⅡ＞、カルト・ルド艦長。そして＜トーラⅢ＞、ブロードォ・ザウワー艦長。＜アラリッヒ＞、テレン・マシス艦長。＜ナポレオン＞、バプティスト・リガール艦長。USO艦＜インペラトール＞、ヘスケ・アルリン。＜アンドロテストⅢ＞は、パーヴェル・コトラノフ艦長。

　さしたる危険はなかろう──　　（P41）

　そう思われたこの作戦で、彼らが出会ったものは、モビー。全長一万四千メートルの巨大な怪物。なんと。

　　234 アンドロ・ベータ警固団
　アンドロ・ベータ星雲はわずか七千二百光年。ここに到着した遠征団。＜アンドロテストⅢ＞を散弾転送機星系に戻します。巨大な怪物モビーへの対処方法もなんとかこなしたローダンらが出会った次なる敵は。
　イワン・イワノヴィッチ・ゴラチンやウールヴァ兄弟など、さまざまな奴らが出てきますね、この回。
　そして現れた、アンドロ・ベータを警護する謎の種族。

　「ツーノーザー！　ツーノーザーといいます！」
　「だれのことだ？」アトランがたずねる。
　マーシャルが額の汗をぬぐい、
　「攻撃者はそれぞれ二本の赤く長い鼻を持っています、サー。だから、味方はツーノーザーと命名しました」息をととのえ、ついでのようにいいそえた。「連中、パラライザーしか使っていません。われわれを殺すのではなく、生捕りにする気のようです」（P225-226）

　この敵は、何を企んでいるのか。

　あとがきにかえて。
　松谷さんが1956年に静岡から山形に転任したとき、月給のほかに薪炭手当てなるものをもらったのだそうな。当時の寒冷地手当と言うべきものか。
　この時代に松谷さんは、炭焼きをやったことがあるんだそうな。敗戦直後のもののなかった時代、いろいろ工夫したとのこと。研究熱心な松谷さんらしい、挑戦的な話。いいなぁ。　　　（2015/12/28）

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管理番号：R400-118	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 118巻					出版社：早川書房
書名：ツーノーザー収容所	ハヤカワ文庫SF654　ウ1-478　早川文庫2006					ISBN4-15-010654-1　 C0197

235 ツーノーザー収容所		Die Kaste der Weißrüssel				ウィリアム・フォルツ			1966/3/4	翻訳：松谷健二
236 無法者たちのアジト		Im Camp der Gesetzlosen				ウィリアム・フォルツ			1966/3/11

		価格：360Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：1986/3/15		購入：1986/3/16	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　235 ツーノーザー収容所
　焦点が当たったのは、＜クレストⅡ＞の技術部所属の候補生、ケンダル・ベイネス。ほら吹きで自惚れ屋。下手なハーモニカを吹いて周囲の眉をひそめさせ、自分は人より優れているという妄想に取り憑かれて周囲の怒りをかう。しかも、臆病者ときた。
　その自惚れた言動から、ロード・ケンダルと呼ばれています。
　同じ部隊のカピタンスキー軍曹にとって、やっかいな若者。
　この男が、ツーノーザーの捕虜となり連れ回される現状の中で、ローダンの指揮ぶりに不満を抱きます。それだけでなく、積極的に戦うべきだと考え、行動を開始したのでした。なんとも、間抜けた方法で。その結果起きた混乱の中で、彼はローダンの側近チームの中に加わることに。
　三つのカーストに別れ、互いに憎み合う奇妙な社会状態のツーノーザーの中で捕囚生活を送るテラナーたちは、いったいどうなったのか。ロード・ケンダルは何をしたのか。

　　236 無法者たちのアジト

　ツーノーザーとは、一つの巨大な複眼を備えた頭部から左右に伸びた象のような、把握力のある鼻の姿から名づけられた名。小銀河アンドロ・ベータの中を漂う巨大生物モビーの死骸の中に住む知的生物です。最下層に住む鼻が何も塗られていない白のＡカーストと、真ん中の層に住む青く鼻を塗ったＢカースト、そして最上段に住む赤い鼻のＣカーストの三つに分かれています。
　赤鼻は青鼻を低級な存在と軽蔑しています。兵士たちで構成される青鼻は白鼻を使役し、低級な存在と考えます。
　白鼻は、まともな鼻さえないテラナーを、当然のことのように劣等な下級生物と蔑むのでした。
　この世界で、三つのカーストのいずれにも属さない無法者の一団がいます。彼らはカースト制度それ自体を否定し、新しい未来を夢見るツーノーザーたちです。
　経済犯と呼ばれるこの無法者たちと接触したローダンらは、彼らの対立を利用して脱出を計ります。はたしてこの作戦の結末はどうなるのか。
　すべてが終わったときの日付は、西暦2402年8月16日。ローダン・チームはどうなったか。

　あとがきにかえて　は、松谷さんのプールでの体験。
　週に一回、温水プールに通っているのだそうな。昼間行くので、圧倒的に女性が多いのですが、年齢層はおばさんばかり。むろん少数派の男性陣もおじさんばかり。
　その中で、得意とする潜水泳法を楽しむ松谷さん。常連のおじさんと演じた、意図しない妙技に起きた拍手のこと。
　楽しんでいる様子がうかがえ、こちらもほっこりします。　　（2016/2/5）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-119	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 119巻					出版社：早川書房
書名：危機の護送船団	ハヤカワ文庫SF659　ウ1-479　早川文庫2019					ISBN4-15-010659-2　 C0197

237 星の三兄弟		Dei drei Sternenbrüder				クルト・マール			1966/3/18	翻訳：松谷健二
238 危機の護送船団		Der Geleitzug ins Ungewisse				カール・H・シェール			1966/3/25

		価格：340Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：1986/4/15		購入：1986/4/10	カバー/口絵/挿絵：依光隆

　　237 星の三兄弟
　のちにこの試みは島宇宙アンドロメダへの第一次進出と言われたらしい。三千年後の、E・B・ルーンケと歴史書の一節が冒頭で紹介されます。ま、それはそれとして。

　恒星転送機を使わず、カルプ･エンジンを多段式に積み上げて使い捨てにする方式の補給船を使ってローダン遠征隊の救援にむかう船団を見送るレジナルド・ブルから始まります。一段目で25万光年として、三段積み重ねて千二百メートルの不細工な円筒を直径千五百メートルの球形艦にくっつけた異様な形の船をブルは罐からと呼ぶ。護衛に当たる重巡＜バガロ＞と共に船団が旅立ったのは、2402年8月10日。向かうは、アンドロメダ銀河の手前、アンドロ･ベータにいる＜クレストⅡ＞。
　行ったはいいが帰りはどうするのか、などと突っ込んではいけません。

　ツーノーザーの捕虜となっていたローダンらの＜クレストⅡ＞は、モビー･トロトと名づけた巨大生物モビーの死骸から脱出しつつあります。ここを基地とするツーノーザーの内紛を利用したのですが、焚きつけたのはローダン本人。ていよく利用された方がいい迷惑なんだけど。
　しかしこれでテラナーがアンドロメダに進出した証拠は消せたと思ったら、そうはいかなかったのでした。三千隻にものぼるツーノーザー艦隊がこのモビー基地に迫ってくるのです。このままでは、テラナーが潜入したことがアンドロメダの島の王に知られてしまう。
　さあ、どうする。

　その影でもう一つの物語が進行します。
　六隻の輸送船団を護衛していた＜バガロ＞が奇妙な信号をキャッチし、船団を先行させて単独で調査に行くと、その先にいたのは死んだモビーとその中に生まれた奇妙な生物。星の三兄弟とは彼らのこと。
　まったくメンタリティも異なるこの三体は、いったい何を考えていたのか。

　　238 危機の護送船団
　ツーノーザーの艦隊が集結して内紛を鎮圧しつつあるモビー･トロトを見つつ、ローダンとアトランは深刻な対立を深めつつあります。
　ここまで来たら、テラナーの秘密を守る手段としては＜クレストⅡ＞の圧倒的な戦力を使い、モビー･トロト自体をツーノーザーの三千の艦隊もろとも破壊し尽くすしか方法がない。アトランと艦隊のメンバーはその手段に訴えるしかないと考えます。
　しかしローダンはこう宣言する。

　「軍事的戦術のために罪もなき無数の生物を犠牲にするぐらいなら、むしろ、この作戦を中断、逃亡し、将来人類はおのれの銀河で満足するとの誓いを立ててもよろしい」　　（P60）

　これでは、現時点で謎であり、銀河系に対して敵対心を持ち、圧倒的な戦力を持っているであろうアンドロメダ星雲の島の王たちにテラナーの意図を喝破され、その侵攻をまねく事になりかねない。人道的な理想では人類の存亡がおびやかされかねない。
　しかしローダンがそう決定した以上、アトランといえども反論はできても反することはできない。
　ここで、運命的な事件が起きます。合流した＜バガロ＞にアトランと共に移乗したローダンが、反重力シャフトの事故で頭蓋底骨折の重傷を負ってしまったのでした。

　総指揮官が倒れたあと、指揮を取るのは序列からいってもアトラン。彼はこの機会を利用する意図はなかったのですが、迫り来る情勢の中で、自分の責任において決断を下します。モビー･トロトを破壊せよと。

　意識を取り戻し、病床でこれを聞いたローダンは憮然。しかし理想は理想として、現時点ではアトランの決断の方が正しいことは承知しています。こんな時のローダンは、医師、看護人泣かせのとんでもない患者。八つ当たりされた衛生兵はいい面の皮。
　ここでちょっと良い場面。あ、これボライソーごっこ、とは帆船ファンのひとり言。(笑)

　太陽系帝国の大執政官ほど扱いにくい患者ははじめてだとフェーカーは思った。公正で知られた最高上司なのに、きっと気分がよくないのだろう、と想像する。事実そのとおりであった。
　去りかけたフェーカーの背後からローダンが声をかけた。
　「すまん、グス。気が滅入っていてな。きみは一流の衛生軍曹だ」
　キャビンの前にいたふたりの衛兵は、フェーカーのにこにこ顔に一驚した。そのひとりが自分の額を指でたたき、
　「おい、大丈夫か？」
　グス･フェーカーはとがった鼻を高くあげる。
　無言で衛兵の前を通過。皿をてのひらでゆすりながら。
　「狂っちまいやがった」衛兵がささやいた。「チーフにいじめぬかれたな。かわいそうに」　　（P136）

　アトラン率いるUSOと太陽系艦隊の違いなど、アトランというキャラを愛するシェールらしいネタもあります。なんか波長が合うな、この話は。

　あとがきにかえて、は本編52ページにあった “人間は、もともと右脚より左脚を短く出すくせがあるから、直進しているつもりでも、たいていは左に曲がるコースをとっている” という話を裏付けようとした話から。研究熱心というか、思いついたら一途というか。
　まぁ結論としては、納得いかん、ということになったようです。
　それから山の話。濃霧の中でありえないような道の迷い方をした経験。ちょっと怖い話でした。　　（2016/2/21）

　宇宙英雄ローダン　110～119　