ローダン 310-319

宇宙英雄ローダン　310～319
巻数	書　名	作　家
310	時間遠征	クルト・マール＆エルンスト・ヴルチェク
311	盗まれた脳	Ｈ・Ｇ・エーヴェルス＆ハンス・クナイフェル
312	ノパロールの地下霊廟	ウィリアム・フォルツ＆クラーク・ダールトン
313	ゼロ時間の橋	Ｈ・Ｇ・フランシス＆クルト・マール
314	マクツァドシュの地獄	エルンスト・ヴルチェク＆ウィリアム・フォルツ
315	秘密臓器コマンド出動！	Ｈ・Ｇ・エーヴェルス＆クラーク・ダールトン
316	無限からの警告	ハンス・クナイフェル＆Ｈ・Ｇ・フランシス
317	サイナック脳の謀略	クルト・マール＆Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
318	フルロックの聖域	ウィリアム・フォルツ＆Ｈ・Ｇ・フランシス
319	カトロンの異人	ハンス・クナイフェル＆エルンスト・ヴルチェク

★このページはUnicodeです。★

管理番号：R400-310		10R 宇宙英雄ペリー・ローダン
書名：時間遠征	＜宇宙英雄ローダン　310巻＞		発行　1973年
619 タイムマシン狩り	Jagd nach der Zertmaschine	クルト・マール
620 時間遠征	Reise durch den Zeitstrom	エルンスト・ヴルチェク
翻訳：五十嵐洋・青山茜・他	価格：560Yen	ページ数：266P	装丁：文庫イラスト：依光　隆
初版発行：05/4/15	購入：05/4/9

　　619 タイムマシン狩り　
　3457年5月7日、地球、テラニア・シティ。
　アラスカ・シェーデレーアは、「マスクの男」として知られています。転送機でのジャンプのときベド・トランスファー中のカピン（詳細は書くと長くなる(笑)）と交錯し、顔にカピンの断面が張り付いてしまった転送障害者です。その顔を見ると人類は発狂してしまうため、常に柔軟なプラスチックのマスクをつけています。虚無的な性格づけながら、あちこちに姿を現すなかなか魅力的な人物ですね。ミュータント部隊の一員という役どころ。
　彼が訪問した先は、コル・ミモ。
　かろうじてPAD病に耐えているアラスカ、この自称プロフォス人にしてパラアブストラクト数学倫理学者(？)である謎の男、宇宙でただ一人PAD病に罹病しないらしいコル・ミモを詰問します。
　コル・ミモの回答は恐るべきものでした。このカタストロフィがなかった時代に戻し、カタストロフィの鍵になった現象を起こさせなければいい、と。
　すなわち、ゼロ時間デフォルメーター(Nullzeit-Deformator)、つまりタイムマシンを使用すればいいのだ、と。

　かつて、アンドロメダの「島の王」たちが使用していたこのマシン、現在の銀河系には存在しないはず。いったいどこから調達するのか。また、どうやってまともな乗組員を確保してそこに行くのか。

　　620 時間遠征
　メントロ・コスム中佐は、＜マルコ・ポーロ＞の副長補。シミュルタン情緒反射トランスミッション(Simultanen Emotio- und Reflextransmission)、すなわちサート(Sert)システムを使いこなすエキスパート。このシステムにより、巨大宇宙船でも意志のみによって運航します。
　ゴシュモ・カーンはモンゴル系。ハイパーディム生物学者。身長160センチ程度だが、肩幅が異常に広くベルトの高さまで伸ばした髭にホワルゴニウムのクリスタルを飾っています。
　そして、マスクの男、アラスカ・シェーデレーア。
　この三人を前にして、謎の男コル・ミモは時間パラドックスを起こすための重要な鍵を示します。
　ローダンの平行世界からの帰還がPAD病を引き起こしたのではない、と。時間を遡ってこのカタストロフィを逃れる方法は、ローダンが平行世界に移行することを阻止することではない、と。
　では、どうすればいいのか。

　このエピソードの中で、歴史好きにはうれしいネタがあります。
　彼らはマシンの操作を誤って、過去の地球に飛んでしまうのですが、その先が面白い。
　イエナとアウエルシュタットの戦い後、ティルジット講和条約から二年後のプロシアなのです。
　ふと、アラスカがフランス語を使ってしまったことからプロシア軍に捕まり、スパイとして銃殺されることに。銃殺前の最後の願いとして、アラスカが聞いた日付。1809年6月14日、11時29分。
　ローダン作家チームの誰かの誕生日なんでしょうか？(笑)

　さて、彼らは無事にタイムマシンを扱えるのか。発進前の＜マルコ・ポーロ＞に潜入できるのか。

　「あとがきにかえて」で、クラーク・ダールトンの凶報が。
　2005年1月15日、享年84歳。オーストリア、ザルツブルクにて。
　生年1920年6月13日。コブレンツ生まれ。ドイツＳＦ界の重鎮にして、ペリー・ローダン・プロジェクトの創始者の一人。
　黙祷。　　(05/6/14)

管理番号：R400-311		10R 宇宙英雄ペリー・ローダン
書名：盗まれた脳	＜宇宙英雄ローダン　311巻＞		発行　1973年
621 時間改変	Die Zenkorrektur	Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
622 盗まれた脳	Gehirn in Fesseln	ハンス・クナイフェル
翻訳：五十嵐洋	価格：560Yen	ページ数：268P	装丁：文庫イラスト：依光　隆
初版発行：05/5/15	購入：05/5/10

　　621 時間改変
　時間を超える旅の行き先は、恒星マラソン開始から6日後。
　＜マルコ・ポーロ＞の格納庫エアロックの下に立つ男たち。
　マスクの男、アラスカ・シェーデレーア。
　マルコム・デ・ラパルとも名乗るコル・ミモ。身長2メートルのさまよえる骸骨。
　エモシオ航宙士、メントロ・コスム。
　ハイパーディム生物学者にしてアブストラクト数学論理学博士、ゴシュモ=カン。
　7ヶ月前の＜マルコ・ポーロ＞に無事メッセージを伝達した彼らは、じっとその成果を見守るのみ。

　PAD病が蔓延する未来を「未来アルファ」と呼び、これから迎える新しい未来を「未来ベータ」と呼ぶ．．．　ローダンのつぶやき。

　氷惑星「D=ムナー」で繰り返される決闘。
　ビーム兵器ではなく、肉弾戦で、敵とコンタクトしながらローダン2を殺さなければ、「未来ベータ」は来ない。これが、ローダンに課せられた任務でした。
　そうでなければ、「未来アルファ」の再演となるというのです。

　「今日は何日だ？」
　「3456年10月31日です」
　「やはりシナリオどおりだな」

　チェス・プレイヤーの一人は満足げに盤を見おろします。
　人類はこの試練を克服して、新しい進化段階に踏み込めるのでしょうか。

　　622 盗まれた脳
　テラニアの要人たちが深刻な顔で討議するのは、コル・ミモまたの名をマルコム・デ・ラパルのこと。
　擁護するのは、ローダン、そしてジェフリー・アベル・ワリンジャー。
　最近ローダンを敵視する発言を繰り返すマルコルを危険だと判断するのは、白髪のアルコン人アトラン、ジュリアン・ティフラー、レジナルド・ベル。
　ともかく、彼にゼロ時間デフォルメーターを渡してはならない、ここだけは合意できました。

　警報！遅すぎました！
　ゼロ時間デフォルメーターは、地球の南極ともう一箇所、惑星アルケミストにあるはず。マルコルはどちらを狙うのか。

　罠の中の罠、陰謀の中の陰謀。
　意表をついて南極に向かったはずのローダンは、そこでマルコム・デ・ラパルに出会います。彼の後ろに立つ無表情の男の手にあるものは、切断面をしたにした半球状の透明な容器。表面にはコミュニケーション装置。中にあるのは、むき出しの脳。
　その脳とは、ローダンその人。
　では、ローダンの姿をして立っている者は、誰？

　あとがきにかえて。
　西欧では有名な話だそうですが、ファイア・ランドという島の伝説があるそうです。マゼランの航海の時、南米の最南端の誰もいないはずの島で炎が揺らめいており、そのおかげでマゼラン海峡が発見できたのだという。「火の島」。現代のフエゴ島です。そういえば、”Land of Fire”と言う原題の、ここを舞台にした冒険小説がありましたな。
　むろん、ここで合図のために松明を振っていたのは、「永遠に生きる男」アトランなのだそうです(笑)。知らなかったなぁ。　（05/6/21）

管理番号：R400-312		10R 宇宙英雄ペリー・ローダン
書名：ノパロールの地下霊廟	＜宇宙英雄ローダン　312巻＞		発行　1973年
623 脳マーケット	Market der Gehirn	ウィリアム・フォルツ
624 ノパロールの地下霊廟	In den Katakomben von Nopaloor	クラーク・ダールトン
翻訳：天沼春樹	価格：560Yen	ページ数：271P	装丁：文庫イラスト：依光　隆
初版発行：05/6/15	購入：05/06/15

　　623 脳マーケット
　テラ流の計算によると932歳になる「やさしき男」ドルンシュトは、優れた脳を求めて今日も脳マーケットを訪れます。
　大ホールの中は数段の棚。そして棚の一つごとに数千の透明な容器。一つ一つに入っているのは、脳。そこで彼は、一つの脳に目がとまります。
　脳は、モールク銀河から来たダンローと名乗ります。
　こんな知性のある脳には、めったにお目にかかれない。ドルンシュトは罠を疑います。
　この脳を買い上げたやさしき男ドルンシュトは、この脳を年老いたボルディンすなわち2メートルを超える長身の猿である、彼の患者テクトに移植します。テクトの頭脳の中で、テクトの脳の断片と「ダンロー」の脳が奇妙な共生を始めます。

　驚いたことに、対して知性を持たないはずのこの脳は、テクトの体を操り、あっという間に脱走してしまったのです。

　　624 ノパロールの地下霊廟
　やみくもに脱走したテクト=ローダンが向かった先は、使い物にならない脳たちの倉庫でした。そこで赤いアナトムと名乗る無頼の商人を救ったローダンは、彼の助けで新しい名前、新しいIDを手に入れます。
　しかし、姿は巨大な猿人のまま。
　放浪するローダン。
　しかし行き着いた先は、やさしき男ドルンシュトのもとでした。

　さて、ローダンシリーズ、いや西欧のファンタジーSFにはよくある記述ですが、異星人もみな西欧人と同じ動作をします。
　頷いたり、かぶりを振ったり、ほほえんだり、手を振ったり、肩をすくめたり。
　そういうところを見つけると、昔は訳もなく不愉快になったものですが、最近は笑えます。笑って見過ごしてしまいます。
　．．．こうして大人になっちまうんだよなぁ。(しくしく)
　あとがきにかえて　は、天沼さんの幻想夜話。
　それと、電脳世界のブログを、脳マーケットで聞こえる孤独な脳たちのつぶやきにたとえます。けっこうシュールです。
　天沼さんが書かれている体験を、つい最近ぼくも経験しましたっけ。　　　　　(05/6/23)

管理番号：R400-313	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 313巻			出版社：早川書房
書名：ゼロ時間の橋		ハヤカワ文庫SF1521　ウ1-313　5661			発行　1973年
625 ゼロ時間の橋		Die Nullzeit-Bruecke			Ｈ・Ｇ・フランシス
626 ヘルタモシュ誘拐計画		Karnpf der Gehirne			クルト・マール
翻訳：林啓子・青山茜		価格：\560	ページ数：266P		装丁：文庫イラスト：依光　隆
初版発行：05/7/15		購入：05/7/9

　　625 ゼロ時間の橋
　テラの大猿にも似たおぞましい姿に閉じこめられたローダンは、自分の体を嫌悪するとともに、体の制御が聞かないことに気づきます。もしかしたら、ローダンという人類の脳がこの体に適合しないのかもしれない。本当に適合しなかったらどうなるのか？
　また、そもそもローダンの脳は、人間としての年齢は千五百年を超えるもの。細胞活性装置なしでは、62時間経過すれば否応なしに細胞崩壊が始まるのです。そして彼が自分の体を奪われてから、間違いなくその時間は経過しているはず。
　不安に駆られるローダン。
　その間も、残された地球では、ローダンの「ドッペルゲンガー」がいよいよその政策を開始する。西暦3457年8月12日！
　いきなりローダンらしからぬ暴力的な政策に出たことで、違和感を感じたローダンの側近たちがいくら調べても、「彼」は間違いなく本物。恐怖政治が幕を開けるのか？

　やさしき男ドインシュトは、一つのアイディアを持ち出します。ローダンの脳が自分の体から切り離された際、五次元エネルギーのパラ等価移植のプロセスを経ているはずだが、その結果細胞活性化装置とほぼ同等のエネルギーが解放され、それにより擬似的に生体エネルギーが「充電」されたのではないか、と。
　また、ゼロ時間エネルギー・ベースで作動する脳移植の等価エネルギーが、ハイパー空間の五次元エネルギーに重層することで、二つの脳をむすぶ、「ゼロ時間ブリッジ」が作れるのではないか、とも。（ツッコミは勘弁してください！！）
　かくして、ローダンの脳を本物のローダンの体にあるドッペルゲンガーの脳に転移する試みが行われます。はたして結果はいかに？

　　626 ヘルタモシュ誘拐計画
　危ういところでハクチュイテンという無法の臓器ブローカーの体を手に入れたローダン、この体を持っていた男の陰謀を知ります。
　なんとこの世界、ナウパウム銀河の星間帝国レイチャトの次期総帥となるであろうヘルタモシュを暗殺しようという計画。首謀者はハクチュイテンその人。
　さあ、知ってしまったローダンは、いかにすべきなのか。
　陰謀と冒険。はたしてローダンの成すべき道はなにか。事態は急展開？　　(05/12/8)

　あとがき（にかえて）は、新登場の翻訳家林啓子・青山茜の両名を代表して、林啓子さんのご挨拶。
　某大企業で秘書として長年勤務し、英語・ドイツ語に堪能とか。ドイツ語翻訳者の世界は意外に狭いので、顔見知りによく出会うのだそうな。ぼくの姉にあったこともあるのかもしれないね。
　いつの日か、企業勤めの日々の体験を元に、『秘書室のひしょひしょ話』という大ベストセラーをものする予定とか。(笑)
　そのときは是非ともここで取り上げさせていただきます。　　(,⌒-⌒) v

		Ver. 2.2

管理番号：R400-314	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 314巻			出版社：早川書房
書名：マクツァドシュの地獄		ハヤカワ文庫SF1525　ウ1-314　5680			発行　1973年
627 マクツァドシュの地獄		Die Holle von Maczadosch			エルンスト・ヴルチェク
628 サイナック・ハンター		Der Ceynach-Jager			クルト・マール
翻訳:渡辺広佐		価格：560Yen	ページ数：271P		装丁：文庫イラスト：依光　隆
初版発行：05/8/15		購入：05/8/13

　　627 マクツァドシュの地獄
　プロローグの中で、太陽系帝国のローダンは、以前と変わったことをアトランに指摘されます。
　にせの、アンドロ脳に操られているローダンは、「反乱勢力」に対する果断な処置がアトランに驚きと共に評価されたことを知り、ほくそ笑みます。
　敵に対して強圧的な手段を執る傾向のあるアトランと、あくまで人道的な手ぬるさを大事にするローダンの二つのおもりでバランスしていた天秤が、一つの方向に傾き始めたとき、人類の社会で何が起きるのか。

　星間帝国ナンパウム・レイチャトの総帥レイチャの、後継者としての地歩を固めつつあるヘルタモシュの知己を得たローダンは、脳密輸商人ハクチュイテンの体にいまだとどまったままです。
　「マト・プラヴト」すなわち支配者レイチャの後継者としての称号を持ったヘルタモシュですが、その地位はまだ安泰ではありません。このあたり、絶対支配者を前支配者の死後に選挙で選ぶという制度、ローマ法王選挙を連想させます。あるいは、神聖ローマ帝国の選挙侯かな。いずれにしても、東洋では考えられない発想ですね。
　今回舞台となるのは、その星間帝国の首都である巨大都市マクツァドシュです。人口四億八千万をかかえ、人口稠密度は地獄的。惑星レイトの赤道地帯にありますが、このレイト自身も人口320億の人口に呻吟しています。
　この帝国は2098の星系すべてで人口問題を抱えています。膨張する人口をどう処理するかが、重要な政治課題です。
　保守派は、彼ら自身の倫理観年に反してでも厳しい産児制限をし、現状維持を唱えます。
　急進派は、他の異種族国家群への侵攻、併合、絶滅、植民を唱えます。
　ヘルタモシュの率いる改革派は、国家を統合して資金をまとめ、隣接銀河への植民を主張します。

　ヘルタモシュがすんなりレイチャの後継となれるのかがキーポイント。ローダン＝ハクチュイテンは、否応なしにこの暴力を伴う政争に巻き込まれ、生きるか死ぬかの戦いを体験します。

　　628 サイナック・ハンター
　犯罪者であるハクチュイテンを追求するGOK（秘密臓器コマンド）は、このサイナック犯罪者に対し、サイナック・ハンターの投入を決定しました。サイナック・ハンターとは、交換用の独立頭脳 ─ サイナック ─ の非合法売買をするサイナック犯罪者に対する切り札です。
　ナウパウム銀河でもっとも古い文明種族ユーロクの最後の生き残りである二体、ノクとトリトレーアがこのサイナック・ハンターであることは、厳重な秘密とされています。彼らは、現在のヤアンツトロン人とはなんの関係も持っておらず、通常はただひたすらに脳の状態のままで眠り、あるいは沈思黙考し、呼び出されると新たな体に移植されて捜査に当たります。
　前回彼らを呼び出したのは14年前。そのときはノクが捜査に当たり、わずか7日で解決しています。
　今回はトリトレーア。
　ヴロテシュと名乗る、前屈みに歩く、ヤアンツトロンの老人の体で現れます。
　彼の心の底は謎です。何を目的に生きているのかも、謎です。しかし彼の、仮借ない捜査はたちまちドインシュトに伸びます。
　彼の本当のねらいとは何か。　　　(05/12/14)

　あとがき（にかえて）は、大学の講義での一こまから。
　TVドラマ、「タイガー&ドラゴン」のことが、話題に出ます。落語と現代を絡めたこのスピーディなドラマ、実はぼくは見損ねているんですよね。なにしろ、ドラマをやっている時間帯には家にいないから。（怪しい仕事じゃないですよ。(；゜〇゜)アセアセ。）
　落語ファンでもあるぼくとしては、こうまで説明されると見ないわけにはいきません。再放送をお待ちしています。　　(,⌒-⌒) v

Ver. 2.2

管理番号：R400-315	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 315巻			出版社：早川書房
書名：秘密臓器コマンド出動！		ハヤカワ文庫SF1529　ウ1-315　5680			発行　1973年
629 秘密臓器コマンド出動！		Duell mit dem Ceynach			Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
630 ユーロクの遺産		Das Erbe der Yulocs			クラーク・ダールトン
翻訳:田中栄一		価格：560Yen	ページ数：264P		装丁：文庫イラスト：依光　隆
初版発行：05/09/15		購入：05/09/10

　　629 秘密臓器コマンド出動！
　ローダンのいまの体はハクチュイテンと呼ばれるヤアンツトロン人。腕と足は二本ずつのヒューマノイドで、直立歩行し、身長は1.65～1．80メートル。体をのぞく全身がさまざまな色の短い体毛におおわれており、テラのコウモリに似た長い耳をもち、2本が親指の6本指。
　あれ、表紙の絵はおかしいぞ？(笑)

　ナウパウム銀河の最大勢力、ナウパウム・レイチャトの総帥レイチャは、テラ歴に換算して1482歳になる高齢です。おそらく延命のための脳移植を何度も行ったのでしょう。その後継者たる地位にあるヘルタモシュの信頼を得たローダンは、レイチャトから次のような提案をされます。
　現在ローダンが体を借りている犯罪者ハクチュイテンの体は、ヤアンツァル警察とGOKつまり秘密臓器コマンドのお尋ね者であり、彼らはサイナック・ハンターまで動員している。そこで、彼らの目を出し抜いてローダンが別な体に脳を移動させ、そのあと「ハクチュイテン」の体を殺せばいいではないか、と。
　狡猾であり、特殊能力を持ったサイナック・ハンターの目をごまかすことができるのか？

　　630 ユーロクの遺産
　新しく「トラシュティン」の体を手に入れたローダンは、故郷銀河の位置を探るためヘルタモシュに援助を求めます。
　ヘルタモシュの提案で、銀河でおそらくもっとも古い文化を持つユーロク種族の惑星に行くことが決定され、パートナーとしてガイト・コールという非ヒューマノイド知性体が呼ばれます。全身ブルーグリーンの光沢のあるウロコで包まれ、トカゲに似ているが丸みを帯びた頭部の銀河学者。
　彼らはユーロクの惑星の一つトレーチャーにむかうことになります。ヘルタモシュの艦隊によって現地にむかいますが、彼は宗教的なタブーがあるとして惑星まで同行できません。
　文明が退化した惑星は、かつて全天をおおっていた浮遊都市、浮遊島、浮遊住戸の大半が地上に落下し、野蛮人が群れを成すところでした。ローダンとガイト・コールの探検は、はたして成功するのか。　　(05/12/22)

　あとがき（にかえて）は、田中栄一氏のローダン翻訳に入ってからの思い出話。この方は、小さな翻訳会社を経営されているとか。
　いろいろな方々がローダンを支えていますね。

		Ver. 2.2

管理番号：R400-316	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 316巻			出版社：早川書房
書名：無限からの警告		ハヤカワ文庫SF1532　ウ1-316　5680			発行　1973年
631 飛行都市		Die fliegenden Stadte			ハンス・クナイフェル
632 無限からの警告		Ruf aus der Unendlichkeit			Ｈ・Ｇ・フランシス
翻訳：五十嵐洋		価格：\560	ページ数：281P		装丁：文庫イラスト：依光　隆
初版発行：05/10/15		購入：05/11/02

　　631 飛行都市
　惑星トレーチャーで苦戦する二人に襲いかかる野蛮人の群れ。彼らは、数百年前にここに放置された脳移植の手術後障害者たちでした。その背後に誰がいるのか。
　やがて姿を現した謎の男、ゼノ。彼もまた、ローダンと同じに、悪意によって脳だけがこの世界の居住者に移植された人物だったのでした。しかしそれだけではない。
　ローダンはその男の出自と、それがもたらす結論に慄然とし、絶望することになります。
　これでは、彼が帰還できたとしても、元に戻ることは不可能．．．

　さらに探検を続け、ユーロクの集合知識にコンタクトすることにも成功します。その正体とは？

　　632 無限からの警告
　冒頭、「それ」と「反それ」による冷ややかな会話で始まります。
　今や勝利を確信した「反それ」。沈黙する「それ」。打開策はあるのか。

　「反それ」からの声にならないメッセージをうけて、サイナック・ハンターであるトリトレーアはついに謎の犯罪者のシュプールをとらえ、惑星トレーチャーに急行します。仮借なきトリトレーアの目的は、サイナック犯罪者の摘発と抹殺。
　辛くも逃れたローダンがむかう先は、やさしき男ドインシュトのいる惑星ヤアンツァル。目的は、太陽系帝国を支配する「アンドロ・ローダン」が、いったい何をたくらんでいるのか確認するために、ゼロ時間ブリッジによって確認すること。
　このため、地獄のように人口過剰な惑星ヤアンツァルに再び潜入します。

　あとがきにかえては、「無限からの警告」の冒頭で引用されている『成長の限界』という1972年に発表されたレポートのこと。
　著作権問題を別にすると、内容としては人口増加や経済成長を早期に抑制しない限り、21世紀末までに地球と人類は破滅するという話がネタですかね。
　ヤアンツァルの世界は、この警告を受けてシミュレートされた作品でもあります。それだけではない。ナウパウム銀河自体が、人口爆発で限界をむかえており、この世界の構想自体にこのレポートが大きな影響を与えているのだろう、という。
　半可通的に考えると、人口抑制ができないタブーを抱えているという宗教的な不合理の解決ができないことも奇妙だし、宇宙の大きさやエネルギー量などを考えれば、ダイソン球とかいろいろな解決方法があると思うのですが、まあそれは寓話としてのお話の中で指摘するのは野暮というものでしょうね。　　（05/12/28）

		Ver. 2.3

R400-317	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 317巻			出版社：早川書房
書名：サイナック脳の謀略		ハヤカワ文庫SF1536　ウ1-317　5737			発行　1973年
633 サイナック脳の謀略		Die psionsche Jagd			クルト・マール
634 ムクトン＝ユルの叛乱		Aufstand der Mucton-Yul			Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
翻訳:天沼春樹		価格：\560	ページ数：271P		本のサイズ：文庫
初版発行：05/11/15		購入：05/11/12	表紙・イラスト：依光　隆

　　633 サイナック脳の謀略
　冒頭、「反それ」は「それ」の、ゼロ時間ブリッジを再び使ったというルール違反をとがめます。「それ」はもともとの「反それ」のルール違反で反論しますが、むろん水掛け論。形勢はいかんともしがたく、「それ」の敗北は決定的とも言える情勢。

　太陽系帝国大本営、インペリウム＝アルファ。標準時間3457年10月25日。
　叛乱を起こしたいち星系を鎮圧すると言いだすペリー・ローダン大執政官の語調に困惑するレジナルド・ブル帝国元帥とアトランUSO長官。勝手に一休みすると宣言して仮眠するローダンの頭脳に突き刺さるエネルギー。急いで駆けつける側近たちに下したローダンの命令とは、先ほどの叛乱鎮圧対策を反故にして、平和的解決を図ること。驚く側近の前で、大執政官は気を失います。

　自分の意識を取り戻したローダンは、アンドロイド・ローダンとのコンタクトは容易になったものの、むこうに常駐できない上にむこうの情勢が悪化する一方であることを懸念します。さらに残念なことは、故郷銀河のポジションがつかめないこと。
　しかしその間にも、サイナック・ハンタートリトレーアの追求は続きます。ローダンは意を決し、トリトレーアをのコンタクトを試みます。
　話せばわかる相手ではないのか？　そして、数千年の経験を誇るハンター相手に、二重三重のトリックを仕掛けます。
　
　　634 ムクトン＝ユルの叛乱
　もう一人のユーロク、ノクが、トリトレーアの調査の遅延にいらいらするヤアンツァルの政府主席であるチャトロによって、新しい身体を得て舞台に参加します。彼もまた、アブストラクト再構成、異質計画の解釈、ハイパー論理監視という能力を備えたサイナック・ハンターです。トリトレーアとノク、二人の関係はどうなのか。そしてヤアンツァルの思惑と、ナウパウム・レイチャトの思惑のずれは彼らに何をもたらすのか。
　ノクの追求が始まると共に、ノクの異常な行動が見受けられます。彼の本当の目的とはなにか。それは、ローダンらにとって益になるのか。謎また謎の連鎖の中で、ノクに率いられた叛乱計画があきらかになります。その目的は、やはり．．．？
　今回、「ブルーノ」と名乗る小人が登場します。赤い肌、ふっくらした人間そっくりな顔立ち、ちぢれた黒髪、小さな黄色い角。足の先は山羊のような蹄があり、そのすぐ上は黒い毛の房。サティロスと言った姿形。本のイラストにある、グッキーそっくりなしゃべり方。
　こういうトリックスターというか道化役は、ローダンによく出てきますね。ざっくばらんな話し方、不思議な超能力。
　この「ブルーノ」は、ローダンの味方なのか敵なのか、どちらになるのでしょうか。
　
　あとがき（にかえて）は、天沼さんの仕事のお話。
　なんだかんだの事情があって、上野23時33分発の急行「能登」に乗ったときのお話。上越市高田ので、午前10時に開かれる小川未明文学館のオープニングセレモニーに列席するためだそうな。
　夜の十時近くまで会合があり、上野に向かう途中で山手線が人身事故でストップしたトラブルがあってあせったり、誰もほかに乗客のいない列車でシュールな体験をしたりといった思い出話でした。

　上越市高田というと、祖父母が壮健の頃、夫婦二人で冬に旅したことがあったそうな。雪原のまっただ中の標識があって、「この下に駅舎あり」と書かれていたとのこと。それ以来、上越高田というと豪雪を思い出します。今年の冬は、大丈夫でしょうか。
　そういえば、祖父にもらった岩波の「北越雪譜」、まだ読んでいないなぁ。　　(06/1/14)

		Ver. 2.3

R400-318	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 318巻			出版社：早川書房
書名：フルロックの聖域		ハヤカワ文庫SF1540　ウ1-318　5758			発行　1973年
635 フルロックの聖域		Das steinerne Gehirn			ウィリアム・フォルツ
636 レイチャの後継者		Der Rayischa stlfbt			Ｈ・Ｇ・フランシス
翻訳：増田久美子・青山茜		価格：\560	ページ数：282P		本のサイズ：文庫
初版発行：05/12/15		購入：05/12/10	表紙・イラスト：依光　隆

　　635 フルロックの聖域
　おやま！なんと前回現れた楽しそうなキャラ「ブルーノ」は出てきません。一回でお払い箱とは、やはりグッキーに似すぎたキャラが災いしたのかな？
　爬虫類人類の銀河学者ガイト・コール、遠い銀河の彼方からサイナック脳として連れてこられたアッカローリーであるゼノ、そしてレイチャの後継者であるヘルタモシュは、ローダンの友、同盟者となっています。しかし、彼らのメンタリティはそれぞれに異なります。
　トリトレーアの提案にしたがって、古代種族であるユーロクに匹敵する別な古代種族「「フルロック」の惑星を訪ねることとしたとき、ヘルタモシュは種族としておタブーを犯すことをためらい、なかなか協力してくれません。ようやく説得して、フルロックがかつて居住した惑星の一つホルントルに到着したときも、上陸は拒みました。むろん、ヘルタモシュにはマト・プラヴト、すなわちレイチャの後継者という地位もあるし、艦隊司令官という重責もあり、なかなか自由に動けるものでもないのですが、それだけではない。種族としてのタブーに縛られているのです。
　三人だけで上陸したローダンたちの前に現れたのは、フルロックを神としてあがめる神官たち。その一人、上級神官らしい男はこう名乗ります。
　「わたしはドライモン」
　コーヒーを吹いては失礼でしょうな。（笑）

　　636 レイチャの後継者
　ナウパウム・レイチャトの統治者レイチャであるオフパノカト（こんな名前だっけ？）は、高齢のため、ついに死の時を迎えます。
　後継者は、すでにマト・プラヴトとして指名してあるヘルタモシュ、のはず。
　しかし公式発表は、レイトの過激派リーダーマイチェタンが後見するピクショルという若者だという。
　陰謀なのか、これは。
　どうする、ヘルタモシュ。

　この時、千年以上に渡って政治的、軍事的陰謀を乗り越えてきたローダンは、敵の陰謀に一歩も引かず戦うことを主張します。
　絶対不利な情勢の中で、ローダンが断行した奇想天外な賭の行方はいかに。
　ヘルタモシュは無事に即位できるのか。
　
　あとがき（にかえて）は、310巻から新登場のもう一人の翻訳家増田久美子氏の自己紹介です。
　音大のピアノ科卒で音楽関係の仕事をしながら、ドイツ語が大好きという奇特な人。
　ドイツに旅するのに、ドイツのメル友を頼って行くという度胸の良さ。うむ。
　全く異質でありながら、心惹かれ、許し合い、支え合う仲間。ローダン、ゼノ、ガイト・コールに自分を重ね合わせた、とのこと。
　なんか、いいなぁ。　　　　（06/1/19）

		Ver. 2.3

R400-319	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 319巻			出版社：早川書房
書名：カトロンの異人		ハヤカワ文庫SF1543　ウ1-319　5775			発行　1973年
637 カトロンの異人		Der Fremde von Catron			ハンス・クナイフェル
638 対抗策		Der Konterplan			エルンスト・ヴルチェク
翻訳:渡辺広佐		価格：\560	ページ数：271P		本のサイズ：文庫
初版発行：06/01/15		購入：06/01/10	表紙・イラスト：依光　隆

　　637 カトロンの異人
　老人マイチェタン、すなわちナウパウムの人口爆発の対策として、敵対種族の根絶を提案する過激派のリーダーは、早朝の窓から見下ろす路上に、おかしな老人を見つけます。ふらふらと家を出た公園で、二人の老人は睨み合う。セルタシュと名乗る老人は、マイチェタンに予言をします。我々より年老いたハンターが、マイチェタンの死の天使になると。

　アンドロ・ローダンに蹂躙されているであろう故郷を思うといたたまれないローダンですが、今はヘルタモシュをレイチャの地位につけることに全精力を注ぐしかない。マイチェタン率いる過激派の抵抗はまだまだ崩れそうにない。
　かくしてローダンは、再び大トリックを提案します。自分自身が近辺のカトロン銀河の遠征艦隊の指揮官であると公言し、カトロン銀河への移住こそがナウパウム銀河の人口爆発の救世主となると告げる事を。
　千隻に上る宇宙船をどうやって偽装するのか。人種の違いをどうごまかすのか。
　果たしてこのトリックは成功するのか。
　このトリックを悟ったサイナック・ハンター、トリトレーアはどう判断するであろうか。

　　638 対抗策
　二人のチェスプレーヤーの会話から始まります。
　好転する状況に勝利を確信しつつある「それ」。対抗策をほのめかす「反それ」。
　ところは、アルゼンチン、北西アンデス山脈、アントファガスタ・デ・ラ・シエラ。海抜3500メートルの高地にある、かつての貧しい集落。
　35世紀の今、銀河に名だたる百万都市の保養地。
　3457年12月20日、事件は起こります。

　突然のローダンの乱心に心を痛める側近たち、友人たち、ミュータント部隊のメンバー。
　今回のローダンは、太陽系帝国に反意を示す辺境惑星を、断固とした経済封鎖、すなわち餓死への袋小路に追いやることを示唆します。困惑する側近たち。
　USO長官にして政務大提督アトラン、ローダンの代行である帝国元帥レジナルド・ブル、帝国第一感情エンジニアにして太陽系秘密情報局長官ガルブレイス・デイトン、本国艦隊司令長官ジュリアン・ティフラー太陽系元帥、帝国財務省長官ホーマー・G・アダムス、主席科学評議員にしてローダンの娘婿ジェフリー・アベル・ワリンジャー、そしてローダンの息子ロワ・ダントン。
　ミュータント部隊の精鋭たち、グッキー、フェルマー・ロイド、ラス・ツバイ、リバルド・コレッロ、ダライモク・ロルヴィク、イルミナ・コチストワ、ガラス男メルコシュ、タクヴォリオン。
　その面前で、再び謎の発作を起こす。
　原因は何か。犯人はいるのか。太陽系帝国の中枢は全力を挙げて捜査にかかります。
　やがて暴き出された謎。
　はて？　アトランは首をかしげる。何かがおかしい。
　
　
　あとがきにかえては、渡辺広佐さんのお茶会体験記。
　靖国神社の奥に茶室があったって、知らなかったなぁ。（まあ、今のところ行く気もないので縁がないのですが）
　日本って面白い国です、ホント。　　　(06/1/25)