ローダン 450-459

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　宇宙英雄ローダン　450～459　

巻数	書　名	作　家
450	隻眼のライレ	ウィリアム・フォルツ
451	少女とルーワー	エルンスト・ヴルチェク
452	ムルコンの城	クルト・マール
453	消えた女王ドラニア	H・G・フランシス
454	宇宙の子供たち	マリアンネ・シドウ＆ウィリアム・フォルツ
455	クリンの罠	ハンス・クナイフェル＆クラーク・ダールトン
456	狂戦士部隊	エルンスト・ヴルチェク
457	巨人の地にて	H・G・エーヴェルス
458	強者ムルコンの復讐	クルト・マール
459	不可視の境界	ウィリアム・フォルツ

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		Ver. 3.01

管理番号：R400-450	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 450巻					出版社：早川書房
書名：隻眼のライレ	ハヤカワ文庫SF1903　ウ1-450　早川文庫7192					ISBN978-4-15-011903-4 C0197

899 ハイパー空間の嵐		Orkan im Hyperraum				ウィリアム・フォルツ			1978/11/14	翻訳：五十嵐洋
900 隻眼のライレ		Laire							1978/11/21

		価格：600Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/6/15		購入：2013/6/7	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　899 ハイパー空間の嵐
　＜パン=タウ=ラ＞の中で苦闘するローダン一行。巨人が荒く短く呼吸するような猛烈な突風に驚愕します。驚愕したのはローダンら〝サスコーン〟だけではない。＜パン=タウ=ラ＞の中で何が起こっているのか。
　朗報としては、アラスカ・シェーデレーアの顔のカピン断片が回復し、彼が完全に元のままの「マスクの男」に戻れたことくらいか。
　いくつか分散して探索を続けている小グループの中で、ローダンのいる〝本部〟の合流が遅れていたフェルマー・ロイドのグループが、驚くべき情報を得ます。出会ったガルドのロボットにこう指摘されたのでした。

　「あなたがたが自称している存在ではないと、ラルドは最初から知っていたのです！　サスコーンでないことは、容易に確認できました」　　（P115)

　なんとラルドは、最初から彼らの正体を知っていたのだという。船の指令室に論理エレメントを運び込むために、彼らを単に利用していたのだという。
　となると、論理エレメントとは何なのか。ラルドとは、いったい何者なのか。
　アンスク人とラルドの戦いは、決着がつくのか。

　最後に現れたのは、2.5メートルの長身のロボット。洋ナシ型の頭部の左目のあるべきところがずたずたに切り裂かれた穴となっており、両手の先は切断されたように無残な姿。
　この姿を指し示して

　「バルディオクが＜パン=タウ=ラ＞に置き去りにしたロボット　・・・ライレです」　　（P140)

　と、ローダンはアトランに指摘する。この出会いを予期していたのか。

　ここで、　ローダン・シリーズ　第14サイクル　＜パン=タウ=ラ＞　は終了。
　次のエピソードから、　第15サイクル　宇宙城　に入ります。

　　900 隻眼のライレ
　長身のロボット、ライレは、左右の目が別々の機能持っていました。右目は、通常空間を見るときに使うものですが、左目は違う。物質の泉の彼岸で方向を定めるために使うのでした。
　このエピソードは、偽物の、七強者を名乗る偉人と出会ったライレが、いかにして左目をしない、両手先を失い、いかに壮絶に生きてきたかを伝える記録です。
　＜パン=タウ=ラ＞とバルディオク、そしてライレは、この世界をどのように変えたのか。

　ローダンらの前に披瀝された物語は、時間超越者の同盟のメンバーであった七強者の、ローダンらが知っていた歴史を全く別の視点から辿ったものでした。これで、ローダンらの持っていた様々な疑問への回答が得られ、多くのつじつまがあります。
　では、この先われわれはどうすればいいのか。

　次のサイクルが始まるこのエピソードで、ついにK-2ロボット・アウグストゥスは安住の場所を得ます。そして＜ソル＞は、ついにテラナーの手から離れ、ソラナーたちはテラナーと袂を分かつことになりました。

　あとがきにかえて　で、五十嵐洋さんによるローダン・チームからの決別の辞が語られます。
　いろいろあったのでしょうけれど、また一人、この世界は人を失いました。　　（2013/11/7）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-451	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 451巻					出版社：早川書房
書名：少女とルーワー	ハヤカワ文庫SF1904　ウ1-451　早川文庫7193					ISBN978-4-15-011904-1　 C0197

901 二重思考者		Die Zweidenker				エルンスト・ヴルチェク			1978/11/28	翻訳：渡辺広佐
902 少女とルーワー		Das Madchen und die Loower							1978/12/5

		価格：600Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/6/25		購入：2013/6/28	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　901 二重思考者
　ふたつの意識平面、実現態すなわち深層意識と通常意識を持ち、常に二重思考するルーワーにとって、単一思考しかできないてラナーのメンタリティーは理解の外。
　ルーワーがかつて地球に隠した〝目〟をテラナーの1人が発見して使いこなしているというのに、交渉相手をテラナーは、この〝目〟がどういう意味を持つのか知らない。〝目〟の護衛役に任じられた覚えもない、と主張します。また、この〝目〟がみつかったらすぐにルーワーに返却する、テラナーの一人がこれを所持してる事は認める、しかしその一人に言葉だけで命じて返却させる事は出来ないし、現時点ではその一人を特定することさえできない、と言うのです。
　ルーワー世界では、とても理解できない話です。

　そこでルーワーは対策を考えます。
　実現態を事故で失い、テラナーと同じように単一平面でしか思考できなくなったルーワー、ゴラン=ヴランをテラナー世界に潜入させること。これが第一案。
　もう一つの案は、テラナーの一家族を拉致し、ルーワー世界で教育して深層意識の概念を理解させ、テラナー世界に潜入させてスパイさせること。
　どちらも、圧倒的に優位に立つルーワーならではの作戦でした。

　　902 少女とルーワー
　火星にあるルーワーが建設した九本塔建造物に拉致された四人家族。ゲレル家のケリンニャ、アルディナ、そして二人の娘ハマンとバヤ。
　末子バヤは、両親も姉も大好き。しかし三人はめったにバヤの存在に気づかない。バヤが3人の姿を見て、話を聞き考えていますが、三人にはその姿は見えない。
　この子は馬鹿な子だから、いうことは馬鹿げた愚かなことであり、聞く価値は無い、と三人は思う。そしてあわれなバヤを愛しているけれど、それだけ。

　バヤひとりがルーワーに呼び出されたあとで、三人は驚き、戻ったバヤを取り囲み、泣きます。
　この子は、悪い異星人に騙され、洗脳されたに違いないんだと思う。

　しかしルーワーは、この家族の中で、バヤが一番知能が高く、優れた知性を持っている、と考えたのでした。

　あとがきにかえて　は　渡辺広佐さん
　パッケージツアーの広告に誘われて、石垣島に行った話。沖縄料理を食べオリオンビールを飲み、水牛車を楽しんだとのこと。ほう。　　（2013/11/11）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-452	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 452巻					出版社：早川書房
書名：ムルコンの城	ハヤカワ文庫SF1907　ウ1-452　早川文庫7205					ISBN978-4-15-011　 C0197

903 泉のマスター		Der Quellmeister				クルト・マール			1978/12/12	翻訳：林啓子
904 ムルコンの城		Murcons Burg							1978/12/19

		価格：600Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/7/15		購入：2013/7/25	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　903 泉のマスター
　数百万年来、物質の泉を探し求めてきたルーワー。このルーワー社会の最高位の地位、泉のマスターであるパンカ=スクリンは、体内にそなえる〝スクリ=マルトン〟が脈動するのを感じます。この器官は、泉のマスターのみが熟考と瞑想を重ねて身体的発展を遂げてはじめて手に入れられるもの。
　この脈動は、物質の泉がごく近くに存在することを示すサインの一つ。第二、第三のサインがそろってはじめて、真のサインとなるもの。
　テラ時間で23時間18分ごとに発せられる、弱いハイパーエネルギー性シグナル。これが第二のサイン。
　基準と外れた特殊な宙域の検出、これが第三のサイン。
　これら三つのサインがそろったのち、パンカ=スクリンはさらに確信を深めるためには第四のサインが必要ではないかと思うようになります。そのサインとは何か。

　標準暦3586年12月4日、インペリウム=アルファのモニター・センターで、リレーメッセージを受信した。内容は次のとおり。
　「モニター・ステーション、ベータ・ベータより本部へ。北方８度の方角から銀河系に侵入する未知の飛行体を発見。この飛行体は標準時14時28分、ハイパー空間から出現したもよう。それ以降、エンジンを停止、非相対的速度でもとのコースをたもっている。出現時の付随現象ならびに探知特徴によれば、ルーワーの宇宙船と推測されるが、介入は必要か？」　　（P95)

　この報告に対するロナルド・テケナーの指示は即座で、しかも明瞭でした。

　「ルーワー船を拿捕せよ。火星の基地と交信させてはならない」　　（P96)

　言うは易く、を絵に描いたような命令でした　が。

　　904 ムルコンの城
　パンカ=スクリンがその船＜リーステルバアル＞で探し求めていた七つの城の一つ、それが大型宿と呼ばれた強者ムルコンの城でした。全長75キロメートルほどの大きさの、不格好な小惑星の外観をしており、今はツァフールという種族が多くの兄弟団やグループに分かれて支配しています。
　長年の間に人口が増加し、科学技術も進歩していたのに、彼らはこの狭い過密な世界の中で、宇宙に進出しようとしていません。なぜなのか。
　ここに住む種族の中で、唯一宇宙船や宙航技術の知識を持つテクノ=ソナーな、ツァフールをムルコンの城に留めて置こうとしているのではないか、とパンカ=スクリンは考えます。
　地下の暗闇の中で目が退化したツァフールたちと接触した泉のマスター。この世界の謎を探り、物質の泉格シュプールを追い求めます。

　あとがきにかえて　は　林啓子さん。
　恩師である岩淵達治氏（1927/7/6～2013/2/7）を偲ぶ会が7月7日に行われるとのことで、その思い出話。翻訳家としても重鎮だった氏に、いろいろお世話になったとのこと。
　優れた人物の謦咳に接し、教えを請うことができた林さん、お幸せな方ですね。ご本人の勉学などの賜物であるのはたしかですが。

　鐵太郎は思う。
　翻訳とは、文化と文化の橋渡しです。ブログや2ｃｈなどで、単なるネット翻訳機能などで他国の言語・文化を充分に移植できたと思い、翻訳家の一言半句にケチをつけて悦に入るヤカラは、まず日本語、日本文化、日本文学、日本の言葉を自分のものとしなければまともな翻訳文など書けない、ということを心に刻むべき。
　SF界の大家として名高い某氏の訳書で、日本語としては恥ずかしい直訳文としか見えないものを見ると、つくづくそう思う。それがその氏の味なんだ、といわれても、鐵太郎は納得しません、納得なんてするもんですか(笑)。　　（2013/11/26）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-453	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 453巻					出版社：早川書房
書名：消えた女王ドラニア	ハヤカワ文庫SF1908　ウ1-453　早川文庫7206					ISBN978-4-15-011　 C0197

905 宇宙の全車輪の使者		Sendboten des Alles-Rads				H・G・フランシス			1978/12/26	翻訳：赤坂桃子
906 消えた女王ドラニア		Das Gericht der Kryn							1979/1/2

		価格：600Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/7/25		購入：2013/7/25	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　905 宇宙の全車輪の使者
　宇宙の全車輪という「神話」が崩壊しつつある中で、ウィンガーたちの中に混乱が起きています。
　ローダンは、プロンドフェアとデメテルをウィンガーらのもとに宇宙の全車輪の使者として送りこみ、この神話をゆっくりと収束されることを計画します。しかしこれを察知したウィンビーと名乗るクリン、すなわち宇宙の全車輪の神官の一人は、この冒涜をどうやって阻止するかをじっと考えます。
　この情勢の中、ソラナーらが＜ソル＞を我が物として今すぐにでも宇宙の彼方に去っていきたい様子に頭を痛めるローダン。なんとか穏やかにこの混乱を収めたいもの。

　　906 消えた女王ドラニア
　アンスク人の惑星ダトミル=ウルガンへの遠征隊の宇宙艦＜ツンドラ＞は、アンスク人の新しい若い女王ドラニアの居場所が分からなくなったことで騒然としています。老いた現女王ブルイルダナの後継者となる初のドラニアの失踪は、何を意味するのか。
　同艦に勤務する「ロボット専門家」ガルト・クォールファートを始めとする調査隊は、惑星上でこの事態の解明を試みます。

　ウィンビーらに拘束されたプロンドフェアとデメテル、偽神の使者であると自白するように強要されます。きっぱりと断る2人に対し、ウィンビーの取った手とは。

　あとがきにかえて　は　赤坂桃子さん。
　ローダン世界の酒のこと。ここで酒というと、「ヴルグツ」なのだそうな。外伝に出てくるエピソードによるのだそうなので、日本では読めない可能性大。グッキー命名による、アルコール度数160パーセントというこの酒、マルペだったら愛飲しなくてはいけないのだろうか？　ちなみに、オイラは酒はあんまり飲まない人ナリ。(笑)　　（2013/12/27）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-454	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 454巻					出版社：早川書房
書名：宇宙の子供たち	ハヤカワ文庫SF1912　ウ1-454　早川文庫7222					ISBN978-4-15-011　 C0197

907 宇宙の子供たち		Das Weltraumbaby				マリアンネ・シドウ			1979/1/9	翻訳：増田久美子
908 平和のオーラ		Aura des Friedens				ウィリアム・フォルツ			1979/1/16

		価格：600Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/8/15		購入：2013/8/10	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　907 宇宙の子供たち

　「さ、約束をはたしてください」ガヴロ・ヤールが、ペリー・ローダンの前に立っていった。「あなたもテラナーたちも、もう＜ソル＞を必要としないでしょう」　　（P9）

　一刻も早く＜ソル＞を自分たちだけのものにしたいソラナーたち。12月18日をもってテラナーたちに退去することを求めます。この日付に何の意味があるのか、いぶかしむローダンたち。
　また、得意げに＜ソル＞の内部を案内するソラナーの態度から、ローダンは彼らが何かを隠していると判断します。
　＜ソル＞がソラナーのものになる記念祝典で、それまでのソラナーの身勝手な言動にいらいらを募らせていたローダンは、爆弾発言をします。

　「わたしはきみたちに＜ソル＞を譲渡する」ローダンはくりかえした。突然、静寂がふたたび訪れる。「セネカを＜バジス＞に移送しおえたら、船は自由に使ってよろしい」　　（P64）

　セネカすなわち＜ソル＞を管制する超巨大なポジトロン脳がなければ、＜ソル＞はただの難破船に過ぎない。
　ローダンのこの言葉は、事実を述べたものなのか、単なる恫喝なのか。
　3586年12月24日、＜ソル＞は人類のくびきから解放され、ソラナーと共に旅立ちます。

　　908 平和のオーラ
　＜パン=タウ=ラ＞の内部に居住するアンスク人たちを静めるために送りこまれるドラニア。＜バジス＞に戻りたがっている300人を救い出すためにも、一刻も早く彼女を＜パン=タウ=ラ＞に送りこむ必要がある。
　スタルショでは、宇宙の全車輪の神話を平和的にこわす作戦を敢行中のプロンドフェアとデメテル。なんと、展開に絶望したプロンドフェアはデメテルに駆け落ちまで持ちかけたりもする。(笑)

　プロンドフェアは窓ぎわからはなれ、デメテルのところに行くと、
　「ここから姿を消そう！」と、いきなりいった。
　「なんですって？」デメテルは理解できずにたずねる。
　「身をかくせるウィンガーの居住惑星は、いくらでもある。いまなら、われわれには宇宙船を一隻、手にいれるくらいの影響力があるぞ。それで、行きたいところにいこう」
　デメテルは目を大きく見ひらいた。
　「本気なのね！」　　（P151）

　ドラニアははたしてうまくアンスク人たちを平和裏に支配できるのか。プロンドフェアとデメテルの作戦の帰趨は。

　あとがきにかえて　は　増田久美子さん。
　通勤電車での席取りの話。このところ吸われる確率は30パーセントを切った、などと実に小市民的なお話。
　こんなマッタリしたあとがきも、いいな。　　（2014/2/15）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-455	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 455巻					出版社：早川書房
書名：クリンの罠	ハヤカワ文庫SF1913　ウ1-455　早川文庫7223					ISBN978-4-15-011　 C0197

909 クリンの罠		Die Falle der Kryn				ハンス・クナイフェル			1979/1/23	翻訳：青山茜
910 テレパスの惑星		Planet der Telepathen				クラーク・ダールトン			1979/1/30

		価格：600Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/8/25		購入：2013/8/28	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　909 クリンの罠
　第19惑星スペルターロジェを宇宙の全車輪の名の元に支配していたクリンたちは、その支配体制を揺るがそうとするプロンドフェアに対して陰謀を企む。彼のなすがままに宇宙の全車輪の信仰を消滅させられてしまえば、自分たちの地位が崩壊してしまう。デメテルという美女がプロンドフェアの元を去ったという情報もありますが、それでもこの若者の影響力は油断できない。
　去ってしまったデメテルのことを「宇宙の大車輪のもとにもどった」と誤魔化したプロンドフェア、クリンの陰謀をどう乗り切るのか。
　で、そこにデメテルの尻を追ってわざわざ現れた、お馬鹿なテラナー三人組。ロワ・ダントンとペイン・ハミラーとハイタワス・ボール。はたしてこの決着はどう付くのか。

　　910 テレパスの惑星
　〝それ〟の悲痛なテレパシー・メッセージを受けてエデンⅡからスペース=ジェットで進発したエルンスト・エラートたちのお話。たち、といっても宇宙艇に乗る人数はひとり。がっしりした体躯の男の体を二重コンセプトとして支配する精神がふたり、エルンスト・エラートと少年ゴルスティ・アシュドンがいるから。また、アクロバスという円盤形のロボットも同行しています。
　ガヌール銀河の虚空の中で、彼らはテラナーとまったく異なる進化をした、しかも何の問題もなくコミュニケーションが出来る知性体のいる惑星に出会います。よくあること。
　できればもっと良い宇宙船を手に入れたいと「たまたま」考えていたところ、地上から強力な牽引ビームで強引に着陸させられます。んとこの惑星では、住民はテレパシー能力を持っていて全ての思考を互いに読み会うことが出来るらしい。むろん、彼らは思考をブロックすることが出来るし、エルンスト・エラートも当然思考に障壁を張る能力を持っているので問題なし。（じゃあいったい何のためのテレパシー能力か、と言う突っ込みには、要するに原語の問題をクリヤする方便じゃないの、と答えるしかあるまい。ダールトン世界だもの。まったく異なる生物として進化した世界で、平気で獣を狩って肉を食べる事ができるのも、ダールトン世界だからと答えるしかない。ふう。）さて、ここで〝それ〟のシュプールを得ることができるのか。
　単なる幕間劇だから、読まなくても問題なし。　　　・・・と言うことを確認するために読んだようなものだな。

　あとがきにかえて　は、青山茜さん。
　東京の猛暑を書いた後、それとは桁違いにすさまじいスペインの夏の話。マドリッドの街中にあるデジタルの温度計が、一斉に摂氏45℃を示している様子は信じられない光景だったとのこと。
　そして、6月2日に紅一点のマリアンネ・シドウが亡くなったというニュース。おお。　　（2014/2/23）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-456	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 456巻					出版社：早川書房
書名：狂戦士部隊	ハヤカワ文庫SF1917　ウ1-456　早川文庫7237					ISBN978-4-15-011　 C0197

911 泉のマスターのヘルク		Der Helk des Quellmeisters				エルンスト・ヴルチェク			1979/2/6	翻訳：嶋田洋一
912 狂戦士部隊		Die Truppe der Berserker							1979/2/13

		価格：600Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/9/15		購入：2013/9/6	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　911 泉のマスターのヘルク
　バヤ・ゲレルとボイト・マルゴルの会話から始まります。自らの超能力を持ってしても、パラテンダー詰まり精神的な奴隷にすることが出来ないこの不思議な少女をもてあますマルゴル。
　その陰で、ルーワーはついにマルゴルが〝目〟を持っている情報をつかみ、その奪回をめざす。

　ラール人の120年以上の絶対的な支配の間も発見されなかった太陽系内の秘密監視ステーションというものが現れます。ステーション識別番号ORG=Z=12、固有名＜ドゥッコ＞という名で、土星の環の一つに潜伏していました。今もなお太陽系でもっとも厳重に秘匿され、転送機以外では行くことが出来ないこの小さな基地は、直径725メートルの皿を伏せた形。中心部の厚みが112メートル。
　ただしこの＜ドゥッコ＞、登場するシガ星人のレイン・ヴェルサーやヴァヴォ・ラッサの凸凹コンビなど、面白いキャラがいたりするのですが、これ自体はこのエピソードだけで消えます。

　九つ目だからイオタ、とボイト・マルゴルが命名した惑星の住民は、すさまじい激情や攻撃性を持っていました。それを見てマルゴルは音楽用語から、彼らをイオタ=テンペストと名付けます。彼らはマルゴルの持つ〝目〟ではなく、首に下げたアミュレットを見て平静を取り戻し、彼を乙女の使者として崇めるのでした。マルゴルはむろん彼らもパラテンダー、彼の精神的奴隷とすることにして、特別にテンペスターと呼ぶことにします。

　　912 狂戦士部隊
　テンペスターを何か破壊工作に使おうとしているマルゴルの企みを知ったバヤ・ゲレルは、彼らのひとりジャコにそっとささやきます。

　「まず、ここはイオタ=テンペストみたいな世界じゃないことを理解して。惑星上じゃないし、通常の宇宙でさえない。ここは上位空間で・・・」
　「わかっている。無人地帯だ」ジャコはバヤの説明をさえぎった。「ここは七つのハイパー空間泡のうちの、大部屋２だ」
　「それでいいわ」バヤが満足そうにいう。「トーテム所持者のボイト・マルゴルは、このハイパー空間に逃げ込んで、敵から身をかくしている。ハイパー空間のかくれ場からは、通常空間にあって人類が入植しているどの世界にも、移動時間ゼロで行くことができるわ。事実上、ほんの一歩でイオタ=テンペストに行けるわけ！」　　（P137-138）

　「通常空間の距離も関係なくなるわ。無間隔移動では、文字どおり距離がゼロになるから。ただし、通常空間の一地点から別の一地点に移動するには、ハイパー空間泡を経由しなくてはならないの」
　「それが七つある」
　「そう、七つあるわ。いいかえれば、通常空間でべつの場所に移動しようとしたら、そのたびにかくれ場のひとつにもどってこなくちゃいけない。その力をあたえているのが、いつも身につけている〝目〟なの」　　（P138-139）

　これが、マルゴルの秘密。マルゴルの影響を離れると狂戦士と化してしまうテンペスターにこの知識をそっと与えることによって、バヤはこの情報を外に漏らそうと計画します。これにより、今までまったく捕らえることができなかったマルゴルがつかまれば、この怪物をなんとか処理できるかもしれない。
　そして、この何もできないように見える少女バヤが、この状況を変えることができるかもしれない。

　あとがきにかえて　は、嶋田洋一さん。一ページのみ。
　彼が所属する日本SF作家クラブが、今年創立50周年になる、というネタでした。ほう。　　（2014/3/11）

　あ、今日はそういえば、震災三年目だ。

		Ver. 3.01

管理番号：R400-457	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 457巻					出版社：早川書房
書名：巨人の地にて	ハヤカワ文庫SF1918　ウ1-457　早川文庫7238					ISBN978-4-15-011　 C0197

913 巨人の地にて		Im Land der Riesen				H・G・エーヴェルス			1979/2/20	翻訳：嶋田洋一
914 ツァルテルテペでの邂逅		Begegnung auf Zaltertepe							1979/2/27

		価格：600Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/9/25		購入：2013/9/21	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　913 巨人の地にて
　惑星ツァルテルテペには、テラナーの末裔であるエルトルス人が居住しています。故郷の3.4Gという重力に比較して、わずか2.77Gしかないこの惑星では、いささか居心地が悪いけれど、常に彼らはトレーニングを欠かさないのだそうな。高重力星で育った彼らは身体が大きくなると共に寿命が延び、30歳ではまだ少年。体重は数百キロに上り、身長も2メーター以上があたりまえ。
　この惑星にはシガ星人がいる、というのが彼らの間に伝わるジョーク。何の根拠もないただの噂が、都市伝説となったもの。悪い事なら何でも、悪天候でさえシガ星人のせいにする。

　この巨人の地に、世代を重ねて平均身長が76.5ミリほどに小さくなってしまったシガ星人の一団がひそかに住んでいたのでした。シガ星に移民したテラナーの末裔である彼らは、この星の環境に適応するにつれて身体が劇的に矮小化したことでその寿命も延び、100歳ぐらいではまだ成人とは言えないほど長命です。（そこ、笑うなよｗ）

　特殊なキノコの存在に気がついたのは、シガ星人の方でした。このキノコは

　菌糸はあらゆる物質に貪欲にとりつき、有機物をかたっぱしから〝消化〟していった。床や壁の塗装から、炭素素材の鎖やポリ重合素材のメタルプラスティックまで、見さかいなしだ。　　（P83）

　というシロモノ。今はシガ星人の居住空間の中で猛威をふるっているが、この先はどうなるのか。

　で、この惑星に、〝目〟を持ったバヤ・ゲレルがルーワーの多目的ロボット、ヘルクのニストルと共に現れる。ふむ。

　　914 ツァルテルテペでの邂逅
　未知の宇宙船が惑星ツァルテルテペに着陸します。こいつらはこんどこそシガ星人だ、と色めき立つエルトルス。しかしエルトルス人の中央ポジトロニクスにハイパーフィールド罠をプログラミングしてもぐり込んでいるシガ星人のバグノ・カヴァレットとしては、苦笑しているだけではいられない。彼はエルトルス人の都市ナゲリアの重層センターに身を潜め、エルトルス人の動向を探るのが役目。
　シガ星人がその居住する母なる木の内部を殺人キノコ〝ピロボルス・ツァルテルテペウス・マトリス（Pilobolus Zaltertepeus Matris）〟に侵食されて存亡の危機となっているいま、エルトルス人への諜報活動は欠かせない。
　しかしそのキノコが、エルトルス人の体内に入るやその脳に作用して、彼らを痴呆化させるとは。
　で、未知の宇宙船でこの惑星に降り立ったのは、むろんバヤ・ゲレルと泉のマスターであるロボット、ニストル。九つのエレメントに分離できる性能を備えたニストルは、ボイト・マルゴルとの戦闘によって損傷し、バヤを相変わらずルーワーだと思いこんでいる様子。
　この三者の邂逅は、どういう結果を招くのか。エルトルス人とシガ星人は、和解できるのか。
　しかしバヤは、〝目〟を持って去ります。いったいどこへ。何をしに。

　あとがきにかえて　は、嶋田洋一さん。
　7月19日、広島でSF大会〝こいこん〟が行われたのだそうな。同時に広島で、日本SF作家クラブ五十周年記念事業の一環である「第二回国際SFシンポジウム」の皮切りとなる広島大会も開催されたそうです。嶋田さんはその実行委員として両方に顔を出したのでした。そしてSF大会の歴史と、今回の広島大会の様子。ほう。　　（2014/3/19）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-458	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 458巻					出版社：早川書房
書名：強者ムルコンの復讐	ハヤカワ文庫SF1921　ウ1-458　早川文庫7251					ISBN978-4-15-011921-8　 C0197

915 強者ムルコンの復讐		Murcons Vermächtnis				クルト・マール			1979/3/6	翻訳：青山茜
916 泉のマスターと怪物		Der Quellmeister und die Bestie							1979/3/13

		価格：600Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/10/15		購入：2013/10/10	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　915 強者ムルコンの復讐
　泉のマスターであるルーワーのパンカ=スクリンはムルコンの城をさまよっています。彼を手に入れて利用しようという勢力から逃れて、〝目〟を探してさまよう旅。
　はるかな昔、ムルコンは自分の城に宙賊を迎え、住まわします。当然、宙賊たちはこの城を征服してやろうと考える。見た目だって、強者ムルコンと言ってもわれわれと同じような存在ではないか。権力の奪取はまるぺキャラの義務らしいしね。(笑)
　こうして6人の宙賊は、ある日叛乱を起こし、ムルコンを追い詰めます。で、追い詰められたムルコンは、彼ら宙賊から肉体を奪い、精神だけの存在として永遠に生きる存在としてしまう。それが、強者ムルコンの復讐。死んだ方がましな状態にさせられた宙賊は、どうするのか。

　　916 泉のマスターと怪物
　光細胞と呼ばれる小型の飛翔体で強者ムルコンの居城にむかうのは、侏儒カリブソの姿となったかつての強者ガネルク。侏儒とは小人のこと。なぜわざわざこの漢字を使うのかな。矮人、小人という言葉を訳文として使いたくなかったからかな。言葉狩りの尻尾なら寂しいけれど、エキゾチックな言葉として選んだのなら面白いかな。
　兄弟の誰かから来たようなメンタル・インパルスをキャッチしたのでしたが、消えます。なぜなのか。

　ムルコンの城では、勢力地図が複雑の一途をたどります。地上世界の無数の兄弟団、組合組織、会派、同業者団体。そしてそれらツァフールたちの祖先である宙賊たちの亡霊。いや、肉体を奪われ不死にさせられた五人。彼らは生きたものの精神を吸収して自分たちを補強することで、精神の平衡をはかっているのでした。呪わしい存在となって生きているのです、今もなお。
　この城に侵入したガネルク、いやカリブソの求める先に、いったい何があったのか。
　〝瓦礫人〟として知られたルーワーの存在を知って、カリブソは何を考えたのか。
　ムルコンの、身の毛もよだつ復讐とは、いったい何だったのか。

　あとがきにかえて　は、青山茜さん。
　記録的な暑さとなった2013年の夏のこと。ドイツ語の〝Nonplusultra〟この上ないもの　のこと。
　いつの日か、人類が太陽系から出て行くとき、冥王星当たりにローダン立ちが残したメッセージを発見したら楽しいだろう、とのこと。
　そう、我らSF者の心の夏は、いまだ終わらず。うん。　　（2014/3/27）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-459	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 459巻					出版社：早川書房
書名：不可視の境界	ハヤカワ文庫SF1922　ウ1-459　早川文庫7252					ISBN978-4-15-011　 C0197

917 不可視の境界		Grenze im Nichts				ウィリアム・フォルツ			1979/3/20	翻訳：林啓子
918 強者の墓		Das Grab des Mächtigen							1979/3/27

		価格：600Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/10/25		購入：2013/10/25	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　917 不可視の境界
　ガネルク＝カリブソが＜バジス＞と合流し、ローダンとの旧交を温めた場面から始まります。登場している小型飛翔体でこの巨船に移乗しようとして、内心で呟く。

　ガネルクの飛翔体は多くの点で＜バジス＞にまさるだろう。それでも、＜バジス＞が技術的に非常にすぐれた船であるのはたしかだ。一方で、この船は、宇宙の探求において人類が選択した道もしめしてもいる。つまり、かれらは科学技術のみに依存し、宇宙の探求には精神的方法も存在するということを無視したわけだ。　　（P15）

　まァこのあたりが、この時代のマルペの背景を流れるモチーフと言えばいいのか。でもむろん、テラナーは科学技術を優先する。ドイツ人だから、という事もあるのでしょうが、「精神的方法」とやらいう奇妙に理想化された概念が現実には存在しないんだから、どうしようもない。(笑)
　ガネルクが面白い情報を携えてきます。強者（Mächtige）たちの宇宙の城を発見して中に入るには、相対的不死者であるか不死者が同行する必要があるらしい、ということ。老化が始まったことで不死ではなくなったガネルクでは、城に入れないと言う事。
　ジェント・カンタルに＜バジス＞の指揮を任せ、やっと発見した、廃墟と化したロルヴォルクの宇宙城に乗り込むのは不死者であるローダンとアトラン。
　そのロルヴォルクの宇宙城には、泉のマスターであるパンカ＝スクリンが。

　さてこのエピソードに珍しくロワ・ダントンとデメテルの濡れ場シーンがあります。ここで＜バジス＞の被服支給事情に関して、恐るべき窮乏状態があらわになるのです。デメテルが自分の衣服をつかんで部屋を飛びだしたのですが、ダントンの制服を持って行ってしまう。裸になったダントンは困って備品庫から制服を持ってこさせようとしますが、管理官は規定以上の支給は規則違反だと拒否。
　なんと＜バジス＞では、乗組員一人に一着ずつしか制服が割り当てられず、それ以上の要望には特別許可がいるらしい。(笑)

　そういえば、デメテルはかつて宇宙の大車輪の命令で地球に派遣され、何千年もの虜囚体験を強いられました。その結果大車輪の正体である片目のライレを恨んでいるらしい。なんて気の長い恨み。おお。

　　918 強者の墓
　ロルヴォルクの宇宙城で捕虜となったローダン、アトラン、そして殲滅スーツを着込んだガネルクの三人を、物陰からじっと見つめるパンカ=スクリン。誰だかわからないが救出しなければ、と決心する。その過程で、ローダンは彼らを捕らえた宇宙城の中を徘徊する種族が、かつてライレからその左眼を奪った盗賊の末裔である事を確信します。
　この世界にいるのは、もと宇宙城の建造者セルヴェロー。異生物を発見して拘束したのですが、逃げられます。娘細胞組織（Tochtersysteme）と呼ばれる配下を従えていますが、どうやらこれはクローンのことらしい。
　ここに何万年もの間、墓の中に自然に保管されていたロルヴォルクの遺体、いったいこれは何を意味するのか。ロルヴォルクの墓の前で自嘲するガネルク。

　小人と死者・・・これが七強者のなれの果てというわけか。そう皮肉に考えた。　（P190）

　パンカ=スクリンとローダンらという新しい出会いも。顔を合わせた彼らは、いったいどんな会話を交え、なにを決めるのか。〝目〟を発見する糸口になるのか。
　パンカ＝スクリンが取り出したムルコンの鍵。では、ほかの強者たちの鍵はあるのか。それが揃ったとき、何が起きるのか。
　セルヴェローの体内に潜んでいたものは、いったい何だったのか。
　事態は展開し、徐々に新しい謎が広がってきます。
　そして、ライレは不意に要求する。

　「あなたの故郷銀河に向けて、ただちに出発しなければなりません」　　（P259）

　なぜなら、そこに〝目〟があるから。なんと。

　あとがきにかえて　は、林啓子さん。
　この本のあとがきの締切、9月17日のちょっと前に決まった、2020年のオリンピックが東京となるネタがまず最初。
　そして、9月17日、林さんのご母堂がお亡くなりになったこと。そこに至る数日間のこと。後悔と思い出。
　今年初めに父を失った鐵太郎にとって、他人ごとと思えないヴィヴィッドなお話でした。ご冥福を。

　ちなみに、鐵太郎はいまだにブログの再開をしていません。心臓にかさぶたがこびりついた図太い鐵太郎も、結構気にすることがあるらしい。（ふふん）　　　（2014/4/3）