ローダン 480-489

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　宇宙英雄ローダン　480～489　

巻数	書　名	作　家
480	UFO血清	マリアンネ・シドウ
481	黄金都市の監視者	H・G・エーヴェルス
482	宙賊の使命	ペーター・グリーゼ＆エルンスト・ヴルチェク
483	播種船来たる	エルンスト・ヴルチェク＆ペーター・テリド
484	ミュータントの決断	クラーク・ダールトン
485	最後の深淵の騎士	ウィリアム・フォルツ
486	リルタと虚無の声	クルト・マール
487	監視要塞スカラベ	H・G・フランシス
488	ガルベシュの戦士	マリアンネ・シドウ＆H・G・エーヴェルス
489	強者とジョーカー	エルンスト・ヴルチェク

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		Ver. 3.01

管理番号：R400-480	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 480巻					出版社：早川書房
書名：UFO血清	ハヤカワ文庫SF1973　ウ1-480　早川文庫7419					ISBN978-4-15-011973-7 C0197

959 ルーワーと〝目〟		Der Loower und das Auge				マリアンネ・シドウ			1980/1/8	翻訳：嶋田洋一
960 UFO血清		Das UFO-Serum							1980/1/15

		価格：620Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：2014/9/15		購入：2014/9/13	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　959 ルーワーと〝目〟
　バリアも解除された恒星ドリンクに接近する＜バジス＞。むろん、惑星「グッキーの宿屋」に取り残された人々を収容するためなのですが、その行程が奇妙に遅い。
　＜バジス＞に乗船している泉のマスターであるルーワーのパンカ＝スクリンは、なぜ急行しないのかとロワ・ダントンに問いただしたい気持ちを抑えかねています。しかしそれは、かつて自分の左目の位置にあった〝目〟が発見されたことを聞いたロボット、ライレの方に先を越されたのでした。
　じっと何かを待っているようなロワ・ダントンに、苛立たしい気持ちをぶつけることをかろうじて抑えているライレ。
　あの〝目〟の所有権を主張しているのは、ライレだけではない。惑星「グッキーの宿屋」にいる100人のルーワーも＜バジス＞に乗船しているパンカ＝スクリンも、所有権を主張しています。暴力に訴えてでも手に入れたいと願う。ローダンらテラナーも、人類の未来を守るために必要としているので、さらに話はややこしい。
　また、このころのローダンらは、帝国の時代を終えて平和に問題をかたづけたいと願っているのでした。
　しかし時間が経ち、ついにローダンはじれる。

　「決着がつくまで三百年も四百年も、＜バジス＞をグッキーの宿屋の軌道上に待機させるわけにはいかないのだ、パンカ＝スクリン。きみもだ、ライレ。そんなには待てない。時間はかぎられている。この領域に迫る危険はあまりにも大きい。きみたちの揉めごとを顧慮しているひまはない。〝目〟は船内に運びこむ」　　（P82)

　そして、ルーワーの意志に反し、〝目〟はライレの元へ。ライレはそれをどうするのか。

　　960 UFO血清
　3587年7月、テラのジュリアン・ティフラーから始まります。地球テラより32,308光年彼方にある惑星タフンで、白血病の患者が急増している、というニュースに眉をしかめているところ。原因不明で、しかも血清が効かないという。恐るべき事に、病原体が存在しないらしい。とりあえず患者は数百人程度なのですが、死に至る病気であり治療法がなくなったというと、これは憂慮すべき事態と考えざるを得ない。

　テラから遠く離れたとある惑星に、UFOによって拉致された子供たちが収納されていました。合計97名。
　子供たちとしては、虐待されてはいないものの親から引き離され自由もなく、憤懣がつのる。看守となっている異星人は、この子供たちに誠実に奉仕して居心地をよくするために頑張っているのに、というスタンス。
　では何のために拉致したのか。──血清　がキーワード。

　ここで、ひとまずの大団円。なるほど、こうまとめたのか。
　マリアンネ・シドウさんのタッチが少しわかってきましたよ。優しいね。

　あとがきにかえて　は、嶋田洋一さん。
　茨城県つくば市で開催された第53回日本SF大会「なつこん」のこと。
　それと、年取ると無理は出来なくなるよな、ということ。あはは。　　（2015/3/6）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-481	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 481巻					出版社：早川書房
書名:：黄金都市の監視者	ハヤカワ文庫SF1974　ウ1-481　早川文庫7420					ISBN978-4-15-011974-4　 C0197

961 狂ったオービター		Der verrückte Orbiter				H・G・エーヴェルス			1980/1/22	翻訳：林啓子
962 黄金都市の監視者		Wachter der goldenen Stadt							1980/1/29

		価格：620Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2014/9/25		購入：2014/9/27	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　961 狂ったオービター
　アンソン・アーガイリスとして知られる人物の正体というか本体は、全長半メートルのアトロニタル合金製卵形構造体のヴァリオ＝500型スーパーロボットです。「彼」はオリンプの皇帝である地位から、オービターの楔形宇宙船＜クーレル＝バル＞に潜入して人類反撃の突破口を開く情報をつかもうとしています。探索のために、バイオモルプラスト製のクニッター、折りたたみマスクを使う事に。
　それを使用してアクセ型のヒューマノイドに変身しようとしたのですが、このクニッターの細胞代謝に異常がある事が判明します。がん細胞のようなもの。その結果、このクニッターが独自の異常な行動を取るように。
　しかしそれをなだめすかしつつ探索を続けるアーガイリスの前に現れたシャッテン型のオービターはさらに異常。自分をこの世界の支配者であると宣言したのです。オルキラと名乗る彼女は、狂気の中にあるのか。さらにフィリバスターたちを原形として生まれた七種類のオービターの中に、異常な生命体となったクニッターを原形とする異常なオービターが誕生して量産化されたりして、てんやわんや。
　この決着はつくのでしょうか。

　　962 黄金都市の監視者
　惑星マルタッポンに舞台を移したアーガイリスの探査行です。遺伝子情報が狂ってしまったクニッターと、それをもとにして生まれたクニッター型のオービター群、そして(笑)気を失ったシャッテン型オービター、オルキラ。内戦状態となってしまった惑星マルタッポン状態。
　しかし徐々に、数にまさるフィリバスターたちの形状のオービターらと全方向戦士と名付けられたオービター側の戦闘ロボット群に押されていきます。このままでは敗北必至。

　アーガイリスはこの情勢の中で、不思議なロボットを発見します。大きさは4メートルほどで、二本脚で直立歩行する蜥蜴のような形態。テラのティラノサウルス・レックスに似た形ですが、もっと華奢。
　これは、ハープーンのアルマダンと名乗る伝説の〝深淵の騎士〟ではないのか。
　これが、人類をガルベシュ人だと思いこみ、銀河系から退去させるか殲滅することを固く誓っているオービターたちに対し、対抗できる突破口となるのか。
　この黄金の迷宮の、監視者と名乗る者は何者なのか。
　アンソン・アーガイリスは、絶望的な情勢の中でかすかな希望の光を見出したのか。

　あとがきにかえて　は、林啓子さん。
　「ごきげんよう」という挨拶が聞かれるようになったね、という話から、この巻の刊行当時放映されていたNHKの朝ドラ「花子とアン」にまつわる話。林さんの妹と姪は村岡花子さんの通った修和女学校（もしくはその後継校）に通った/通学中だそうで、その話題。「赤毛のアン」の話。そうか、何十年ぶりかで読み直してみようかな。　　（2015/3/24）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-482	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 482巻					出版社：早川書房
書名：宙賊の使命	ハヤカワ文庫SF1976　ウ1-482　早川文庫7433					ISBN978-4-15-011976-8　 C0197

963 宙賊の使命		Mission der Flibustier				ペーター・グリーゼ			1980/2/5	翻訳：青山茜
964 迷えるコンセプト		Schwingen des Geistes				エルンスト・ヴルチェク			1980/2/12

		価格：620Yen	ページ数：288P				本のサイズ：文庫
初版発行：2014/10/15		購入：2014/10/10	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　963 宙賊の使命
　いまさらながら、オービターに凶悪なガルベシュ人はこの銀河からでていけと言われ、政治的・武力的に無力な自分たちに絶望するジュリアン・ティフラーから始まります。ま、ストーリーの状況説明と思って良いのかな。ついでに、民主的な政体を強調するかのように、理不尽な要求をする野党の大物との論戦の描写。第一線で政治を行うわれわれの苦悩を知らずに何を言ってやがる、というネタだな。
　さて、テラナーの交渉役としてオービターに派遣されたフィリバスター７人組ですが、相変わらずオービターはテラナーがガルベシュ人であるという確信をいささかも揺るがしません。
　彼ら反社会的な宙賊たちでも心理療法により治癒可能だと考えるコバーン博士の処置により、どうも実力を発揮できないフィリバスターたち。両すくみの状態の中で、彼ら７人の未来はどうなるのか。

　　964 迷えるコンセプト
　七つの鍵を手に入れたもののこの先どうすれば良いのか暗中模索の＜バジス＞と、〝それ〟が去った後のエデンⅡのお話。どちらも、コンセプトが関係しています。
　ところで、プロレタリアの髭にかけてという＜バジス＞で今流行っている言葉は、もともとは預言者の髭にかけてという誓いのための慣用句から来ているのだそうな。口髭を生やしたレジナルド・ブルを嘲笑するこの言葉を、臆面もなく使う＜バジス＞の要員たちの自由さ加減がなんともはや。

　第七ドリンク、ドリンク星系第七惑星には、アンモニア化合物の結晶が存在していますが、上司を平然と侮辱する＜バジス＞の生物学者シーラ・ウィンターは、このアンモニア結晶は生きていると確信し、アンモニアー Ammonier と名付けます。

　「なんだって？」デフェルド艇長はタランチュラにでも刺されたかのように、成型シートから跳びあがった。「きみはどうかしているぞ。、シーラ」
　「そんなことはありません。　・・・　アンモニア結晶は思考しています。ハンク、それをわたしは証明したんですよ」　　（P199)

　本人がそう言うのだから根拠が見つからなくても自明の理なのです。ふむ。

　され、エデンⅡでは、人工恒星にむかって飛び立つイカリエン人、イカロスの末裔を自称する人々など、異常な衝動に駆られるコンセプトたちが蔓延しています。数え切れないほどのコンセプトたちを自分自身の中に納めて多重コンセプトとなったマイナは、ここで何を見つけたのか。

　そして、ドリンク星系に巨大な播種船が現れます。六隻。
　強者ガネルクの＜ゴル＝ヴァウル＞。強者ケモアウクの＜ホルドゥン＝ファルバン＞。強者アリオルクの＜ボルテル＝サン＞。強者ムルコンの＜ノーゲン＝ツァンド＞。強者パルトクの＜アベト＝デン＝マル＞。強者ロルヴォルクの＜ワステン＝ガルト＞。
　強者バルディオクの＜パン＝タウ＝ラ＞だけがない。
　なぜ現れたのか。誰が操っているのか。

　あとがきにかえて　は、青山茜さん。
　この後半に出てくるカルナックという地名から始まったモーリス・ルブランの方のルパンの話。「三十棺桶島」ってどんな話だっけ。また読み直したくなったな。ルパンの話は一通り詠んだのですが、すっかり忘れています。　　（2015/4/2）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-483	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 483巻					出版社：早川書房
書名：播種船来たる	ハヤカワ文庫SF1977　ウ1-483　早川文庫7434					ISBN978-4-15-011977-5　 C0197

965 播種船来たる		Die Sporenschiffe				エルンスト・ヴルチェク			1980/2/19	翻訳：渡辺広佐
966 最後の強者		Der letzte der Mächtigen				ペーター・テリド			1980/2/26

		価格：620Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2014/10/25		購入：2014/10/26	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　965 播種船来たる
　六隻の播種船は突然現れただけでなく、意表を突いてと言うべきか、沈黙を保っています。＜パン＝タウ＝ラ＞と同じ直径1,126kmの巨体を正六角形の頂点に正確に位置させ、なんの呼びかけもしてきません。
　第七ドリンクのアンモニアーは、何らかの突破口になるのか。UFOの正体とは。

　エデンⅡでは、〝それ〟の残した最後のメッセージ、

　〝助けようとしたが、むだだった！わたしは近づきすぎたのだ！いま、わたしは落ち、消えつつある．．．〟　（P36）

　の謎にさまざまなコンセプトが心を悩ませています。同時に彼らは、徐々にひとつの存在の中に吸収されていくようです。なぜなのか。
　そして、〝それ〟の探索に出たアシュトン＝エラートはどこへ行ったのか。

　　966 最後の強者
　それぞれ正六角形の頂点に位置する六隻の播種船を見て、アトランはかつてアンドロメダに存在した六角形転送機を思いだします。強者たちが七人いるように、あの時アンドロメダを支配していた島の王たちも、七人。これはなにか意味があるのか、それとも偶然のいたずらなのか。
　ペイン・ハミラーは六角形についても七人についても、それなりの科学的根拠を示しますが、これもまた意味があるのか。
　しかし播種船が活性化し、転送機効果が生じると、アラスカ・シェーデレーアの顔のカピン断片が動き始め、燃えるように熱くなります。これは事実。そして叫ぶ。　「かれがあらわれた！」
　そう、最後の強者、ケモアウクがついに現れます。

　ケモアウクはローダンからライレの〝目〟をとりあげ、そのままローダンとともに消えます。
　そして再び＜バジス＞に一人で現れ、ローダンの居場所を問うアトランらを前にこう言ったのでした。

　「どこにいるか？　物質の泉の彼岸だ」　　（P239）

　ついにローダンは、ケモアウクの助力によって物質の泉の支配者たち、つまりコスモクラートとコンタクトを取ったのか。ついに彼らはゴールにたどり着いたのかもしれない。
　しかし、とアトランはいつものように疑う。ケモアウクの言葉は真実か？

　あとがきにかえて　は、渡辺広佐さん。一ページ。
　秋桜子とは、俳人の水原秋桜子のこと。染井霊園で渡辺さんがそのお墓に墓参りする遺族らしい人と言葉を交えたお話。7月17日は、秋桜子の命日なのだそうな
　無学なので、残念ながらその名前に心当たりがありません。(-＿-)；　　（2015/4/14）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-484	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 484巻					出版社：早川書房
書名：ミュータントの決断	ハヤカワ文庫SF1979　ウ1-484　早川文庫7448					ISBN978-4-15-011979-9　 C0197

967 物質の窪地		Die Materiesenke				クラーク・ダールトン			1980/3/4	翻訳：青山茜
968 ミュータントの決断		Exodus der Mutanten							1980/3/11

		価格：620Yen	ページ数：288P				本のサイズ：文庫
初版発行：2014/11/15		購入：2014/11/9	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　967 物質の窪地
　強者ケモアウクへの不信感をかくさないのは、例によってまずアトラン。これ以上の継続捜査は不要であると判断したが、といってどうすればいいのか。強者としては、＜バジス＞を自分の支配下におきたいのですが、ローダンの居場所がケモアウクにしか分からない状態であっても、それを素直に許すアトランではない。

　「あなたはここで、＜バジス＞が自分のものであるかのようにふるまっているが、われわれのただの客なのだ。それにふさわしい態度をとってはどうだね」
　「客？　このわたし、強者が？」
　「客だ！」と、アトランは断固くりかえした。　　（P13）

　この強硬路線が功を奏したのか、紆余曲折の末ローダンの居場所はなんとか突き止められます。
　ハルノから道を示されて虚空を漂うエラート＝アシュドンとの合流がかない、苦境にある〝それ〟とコンタクトできたとなると、大団円は近いのか。
　いえいえ、このサイクルはまだ続きます。（あは）

　　968 ミュータントの決断
　冒頭、ペリー・ローダンによる現状報告があります。テラ標準時3587年9月28日現在の、エランテルノーレ銀河ドリンク星系における、今までの総括。
　ダールトンのダブル執筆の真ん中に何でこれを持ってきたのかよく分かりません。ドイツ版でも968話なのに。
　ま、いいか。ダールトンだもの。（おい）

　さて、ローダンがいる物質の泉に誰をやるか、ということで真っ先に白羽の矢が立つはずなのはナンバーワンのミュータントを自負するグッキー。しかしなぜかグッキーは最初に突入する名誉ある危険な任務をラス・ツバイに譲ります。

　「われわれのちびのいうことに分があるな。とにかく、かれは三倍ミュータントで、ラスはただのテレポーターだ。小物のほうからはじめることは、戦略的に正しいというもの」　　（P144）

　と、アトラン。壮大な皮肉なのか、博愛主義のダールトンさんの、いつもながらの政治的に正しい差別感覚なのか。
　ともかく、悪の軍団は弱い幹部から順番に出ていくもの。正義の側は最強のエースが先頭に立つもの。さて、ローダンはどっち？

　ライレの〝目〟やエラートの能力を使い、ついに〝それ〟と出会うのですが、かつて人類を教え導き、試練を与え、独特なユーモア感覚で嘲弄したこの偉大な存在が、ハルノとおなじ黒い球になっちゃったのは何の冗談なのか。
　で、失ったエネルギーを得るために、ミュータントたちを取り込む必要があるという無気味なお話に。広大な宇宙に勢力をおよぼす存在が、広大な宇宙の中の小さな小さな銀河の、微細な惑星上にすむ人類の一部に依存しているという驚くべき事実。
　ま、いいか。ダールトンだもの。（おい）

　そんな人身御供みたいな状況なのですが、PEW金属ブロックの中に閉じ込められてローダンが必要になったときに呼び出されるだけの旧ミュータントたちが、まず志願、いや喜んで〝それ〟に合流します。これに驚くローダン。
　それだけでなく、エラート＝アシュドンも。そして、今のミュータントたちの中でもいつの間にか影が薄くなっていたリバルト・コレッロ、バルトン・ウィト、ロード・ツヴィーブス、ダライモク・ロルヴィル、タッカー・ア・ハイヌ、メルコシュ、タクヴォリアンが続きます。
　このサブキャラ総ざらえのような状態の中で、〝それ〟のエネルギーは復活するのか。
　ま、いいか。ダールトンだもの。（おい）

　そういえば、＜バジス＞の中でささやかな叛乱事件が起きるのですが、この解決のために＜バジス＞を飛び立ったスターダスト級戦艦は、いつの間にか大昔の設定である直径800メートルに戻ってしまいました。1500メートルになったんじゃなかったっけ？
　ま、いいか。ダールトンだもの。（おい）

　あとがきにかえて　は、青山茜さん。
　昔よく読んだというジュール・ヴェルヌの話から始まって、青山茜というペンネームの由来。先輩である赤坂桃子さんにあやかって色のつく名字+花の名でこれを作ったそうですが、青山+花の名前というと、AV女優ばかり検索されてしまって困ったとか。
　そして、この484巻を持ってローダン翻訳チームから離れるとか。ほう。
　ローダン310巻からチームに入り、エピソードにして36篇、18巻分をこなしたことになります。
　これで今現在の翻訳チームは、渡辺広佐さん、嶋田洋一さん、林啓子さん、赤坂桃子さん、増田久美子さんの5人。ふむ。
　いつまで継続できるかな。　　（2015/4/19）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-485	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 485巻					出版社：早川書房
書名：最後の深淵の騎士	ハヤカワ文庫SF1980　ウ1-485　早川文庫7449					ISBN978-4-15-011980-5　 C0197

969 偽の騎士		Der falsche Ritter				ウィリアム・フォルツ			1980/3/18	翻訳：増田久美子
970 最後の深淵の騎士		Das Ende der Wächter							1980/3/25

		価格：620Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2014/11/25		購入：2014/12/13	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　969 偽の騎士
　過去の話であることを暗示する出だしから始まります。
　惑星カルトレベックの砂の道を歩く家族。家長はチャンですが、それ以外はみな市場で買われたものたち。奇妙でわかりにくい家族構成。
　この家に最近加わったのは、市場で買われたハーデン・クーナーという赤ん坊。
　隠者シクルに会った彼らは、望みます。この子を深淵の騎士にしたいと。

　そして現代。ヴェイルトのイグソリアンと名乗る深淵の騎士が、自分が実は騎士でも何でもないハーデン・クーナーである事を告げられます。では、最後に残った深淵の騎士ではなく偽物だったのか。

　　970 最後の深淵の騎士
　ノルガン・ティア銀河の惑星カルトレベックのグリイの市場で、商品として立つのはサムカーと名乗る戦士。彼を買った四人の異人は、ハーデン・クーナー、またの名をヴェイルトのイグソリアンを追っていると言います。それは自分だ、と言うサムナー、いやイグソリアン。
　この奇妙な男が、銀河系でガルベシュ人と決めつけて人類を攻撃するオービターたちとどう関わるのか。

　いろいろなものがほどけていく二篇だけど、ぶっちゃけ読みづらいな、これ。フォルツなのに。

　あとがきにかえて　は、増田久美子さん。一ページのみ。
　春に沈丁花、秋にはキンモクセイという香りの話から始まり、最近匂いに出会わなくなっているな、とのこと。
　たしかに。　　　・・・でも鐵太郎は、子どもの頃蓄膿気味だったから嗅覚に鈍感なの。残念。(笑)　　（2015/5/6）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-486	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 486巻					出版社：早川書房
書名：リルタと虚無の声	ハヤカワ文庫SF1982　ウ1-486　早川文庫7461					ISBN978-4-15-011982-9　 C0197

971 マルタッポンの警報		Alarm auf Martappon				クルト・マール			1980/4/1	翻訳：嶋田洋一
972 リルタと虚無の声		Die Stimme aus dem Nichts							1980/4/8

		価格：620Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：2014/12/15		購入：2014/12/5	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　971 マルタッポンの警報
　惑星センチメンタルを離れたハーデン・クーナーは、転送機で惑星マルタッポンに現れて目の前にいる卵形のロボットに、自分はハープーンのアルマダンであると名乗ります。これで相手を畏敬させられると考えて。
　「すばらしい。騎士よ、これからどうしますか？」
　と言う返答に満足したのですが、このロボット、ヴァリオ＝500、通称アンソン・アーガイリスが、この深淵の騎士を名乗る異人を作戦に使うためにテラに連れて行こうと瞬時に判断したとは気づきません。
　しかしやがて、単に深淵の騎士ヴェイルトのイグソリアンに仕えたものだを白状します。自分自身がそのイグソリアンであったとは言わず。
　アンソン・アーガイリスはこのクーナーを詐欺師と判断しつつも、彼を使ってこのオービターの拠点でなんとかしてオービターたちの「ガルベシュ人妄想」を止められないか、人類への侵攻をやめさせられないか考えるのでした。

　ハープーンのアルマダンが120万年前に24の惑星に巨大施設を作り、ここを拠点として未来のガルベシュ人の侵攻に備えていたのは事実ですが、何故かそのシステムは破綻しました。今銀河系に存在する人類をあらたなガルベシュ人の来寇と考えて、これに対抗するために最初にとらえたフィリバスター七人を原形としてオービターの大軍が作られ、人類抹殺を図っています。
　彼ら新たに作られたオービターたちは、人類がガルベシュ人ではないとは信じません。違う可能性があると検討することすらできません。これは彼らの遺伝子情報にしっかり刻み込まれているらしい。

　アンソン・アーガイリスは、ハーデン・クーナーを使って突破口を見いだせるか。だんだん不安定になっていくハーデン・クーナーは、その思惑に従ってくれるのか。
　オービターが銀河系ヒューマノイドに対し、お前らガルベシュ軍団は3587年9月20日までにこの銀河系を退去しろと一方的に命じたその期限まで、あとわずか。

　　972 リルタと虚無の声
　オービターの重要拠点惑星ドゥルズウルの作業指導者であるリルタ・ルフルは、惑星マルタッポンから運ばれてくる奇妙なガルベシュ人ハーデン・クーナーとその従者ロボットを待ち受けています。部下の立場にあるロル・ペルプランたちに、遺伝子の欠陥があるオービターであるという非難を浴びている上、暗殺されかけたりもしていますが、指導者としての立場を失っていない。

　審問中の捕虜が気取ったポーズをとり、自分はハープーンのアルマダンであると宣言した事で事態はややこしいことになります。誰一人その言葉を信じてはいなかったのですが、リルタも、リルタの地位を狙うペルプランらも、この狂ったガルベシュ人を利用しようとするのでした。

　そっと拘禁室を抜け出したヴァリオ＝500は、この施設のデータバンクより、オービターの拠点を調べ上げます。三つの星系があり、恒星名はエルグエイン、マルグエイン、ログエイン。ここに合計24の拠点惑星があり、マルタッポンはログエイン第四惑星。チュルウデはマルグエイン星系にあり、ドゥルズウルはエルグエイン第三惑星でヴァロヴァアルが第四惑星。この三恒星からテラまでの距離は、ほぼ五万光年ほどらしい。

　作業指導者リルタに虚無の声として助言・会話を始めたヴァリオ=500は、奇妙な自惚れ男ハーデン・クーナーが起こしたこの拠点での勢力争いを利用して、なんとかしてオービターと交渉できないかと考えます。リルタひとりでいいから、なんとか銀河系ヒューマノイドはガルベシュ人ではないと納得させられないか。

　あとがきにかえて　は、嶋田洋一さん。
　八月（2014年）に福島県の南相馬市と浪江町に行ってきた話。
　日本SFクラブの会員としての企画があり、このツアーになったのだそうな。線量計の音と時が止まった街。
　この先の未来、この街はどうなってしまうのだろう。　　（2015/5/7）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-487	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 487巻					出版社：早川書房
書名：監視要塞スカラベ	ハヤカワ文庫SF1983　ウ1-487　早川文庫7462					ISBN978-4-15-011983-6　 C0197

973 不思議な天才		Das seltsame Genie				H・G・フランシス			1980/4/15	翻訳：嶋田洋一
974 監視要塞スカラベ		Wachfort Skarabäus							1980/4/22

		価格：620Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：2014/12/25		購入：2014/12/21	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　973 不思議な天才
　ジュリアン・ティフラーに会いたい、と不意に望んだのは、小柄で見ばえのしない空調エンジニアのジェン・サリク。聞いた人すべてが何を言っているんだという視線で彼を見ます。
　オービターの大部隊が太陽系を包囲し、わずかな刻限で人類は統べてここから退去せよ、さもなくば全滅させてやる、と宣言したなかで、自由テラナー連合の首席テラナーであるジュリアン・ティフラーは対応に追われ、一睡もできずに激務に追われているさなかです。その中で、何か案がある者は申し出て欲しい、というティフラーの言葉に数千人が殺到してさまざまな意見を述べたことは事実ですが、現実的なアイディアが何一つ出てこなかったこともあり、いまは簡単に会えるわけではない。サリクが面会を申し出たとき、二年近く先の予定を提示されたくらい。

　ジュリアン・ティフラーは政治的な危機にあります。オービターの艦隊によって一触即発の危機にある太陽系の中で、打開策もなく退去期限すなわち太陽系最後の日がせまる軍事的な窮状だけでなく、政治的にも追い詰められています。
　野党勢力はいまの危機を、相対的不死人であるために永遠に政権の首座に留まるかもしれないティフラーを追い落とすチャンスととらえ、彼の決断を責めます。過去にもっと早く決断していれば危険を回避できたのではないのか。いまもっといい決断をすればより多くの人類を救済できるのではないのか。いま経済的な混乱が起きている責任をどう取るのか。市民の財産はどうやって守るのか。
　軍事指揮官であることが主だったローダン大執政官の時代と異なり、ティフラーには政治的な首班であるウェイトが大きい。そしてその地位は、議会によって不信任案を突きつけられれば選挙に訴えなくては守れない。
　いまこの時に、選挙などをやっている余裕はない。まさに内憂外患。
　こんなとき、不思議な報告を聞きます。ポジトロン錠などで厳重に管理されているインペリウム＝アルファに、計算ペン一本で侵入した男がいる、と。

　天才ジェン・サリクが表舞台に。

　　974 監視要塞スカラベ
　ジェン・サリクの提案に従い、太陽系の木星と土星の間の軌道をまわる監視要塞F=3489、固有名スカラベを使ってオービターに対しトリックを仕掛けることに。
　トリックとはいっても、できることは数日間でもいいからオービターが宣言する退去期限を延ばしてもらうことくらい。とはいえ、現状では地球上にあるすべての宇宙船を人類退去に使ったとしても、時間的にも容積的にも間に合わない。少しでもいいから時間を稼げれば、というのがこの作戦の目的。
　政治的にもぎりぎりまで追い詰められているティフラーとしては、ジェン・サリクを信じてこの賭けにのるしかない。いまこの瞬間にさまざまな思惑で首席テラナーの地位を狙う野党に政権を明け渡したら、太陽系の人類にはカタストロフィしかもたらさない。なにしろ、政権交代などで時間をかける余裕がないから。まして政策変更などすれば、破滅しかない。

　監視要塞スカラベには、わずか26人の守備隊員しか駐留していません。ティフラーの緊急命令を受けても心持たないところ。。
　しかしここの指揮官は、“鉄人”ことハルガス・クルランド。かつて公会議時代に秘密作戦に参加して生還した特殊部隊の、最後の一人。彼は、部下たちにロボットに変装して人類の敵となった要塞のロボットの目をかいくぐることを命じます。
　一歩間違えればロボットのブラスターによって全滅してしまいます。はたして大丈夫なのか。

　地球にいるのはガルベシュ人ではないというテラナーの主張を頑として聞かないオービターに対して、ティフラーの作戦は、成功するのか。ティフラーの政治的な地位は守れるのか。
　ジェン・サリクとは、何者なのか。

　あとがきにかえて　は、嶋田洋一さん。
　ネット通販で、何やらいろいろな肉類を取り寄せて食べているんだそうな。国内のブランド肉や、ワニやダチョウ、カンガルーまで。まだまだ意欲は衰えないとのことです。(笑)　　（2015/5/8）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-488	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 488巻					出版社：早川書房
書名：ガルベシュの戦士	ハヤカワ文庫SF1985　ウ1-478　早川文庫7476					ISBN978-4-15-011985-0　 C0197

975 第二の波		Die zweite Welle				マリアンネ・シドウ			1980/4/29	翻訳：渡辺広佐
976 ガルベシュの戦士		Kämpfer für Garbesch				H・G・エーヴェルス			1980/5/6

		価格：620Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2015/1/15		購入：2015/1/11	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　975 第二の波
　オービターが最後通牒を延長してひと息ついたインペリウム＝アルファ、テラ標準時3587年9月11日。銀河系を“宇宙震”が襲います。これは、オービターによるものではない。「物質の泉」を操作するコスモクラートによるものです。
　コスモクラートは、悪意をもっているのではない。播種船＜パン＝タウ＝ラ＞に今もなお搭載されているオン量子とノーオン量子を葬り去るために、荒療治として行っているもの。しかしこれは、人類にとってもオービターにとっても致命的なのです。

　オービターは、これをガルベシュ人の陰謀と見なします。そしてガルベシュ人の代表である（と自称する）ジュリアン・ティフラーの、よいガルベシュ人と悪いガルベシュ人がいて自分たちはよい側である、という苦しい言い訳をもとに、お前達が悪いガルベシュ人にこの“宇宙震”を止めるよう要求しろ、と命じます。
　できる訳がない。テラナーの知る限り、ガルベシュ人など銀河系に存在しないし、ここにはるかな昔から住むのは、レムール人を始祖とする人類の子孫なのだから。よいにしても悪いにしても、ガルベシュ人など存在しない。

　苦悩するティフラーの前に、再びジェン・サリクが現れます。そして言う。

　「銀河系から退避しなければなりません」ジェン・サリクは首席テラナーの執務室にはいったとたん、いう。「しかも、即刻」　　（P129）

　人類の苦境と、オービターが切った期限まででは銀河系からの人類の退避は不可能であることを百も承知しているはずのサリクは、いったい何を言いたいのか。
　ジェン・サリクとは、そもそも何者だったのか。

　　976 ガルベシュの戦士
　二つの話が交錯します。
　ラボリ人のイェセヴィ・アトが、彼の種族を率いて頭角を現し、暴力に満ちた世界で領袖の一員から頂点に立っていく話がひとつ。もう一つはLFTの重巡洋艦＜ハルモス＞を指揮するサーロウ・ヴェレドの話。
　しかしその背後には、この二つのグループが交錯するワヒアト・ウェント星系をじっと見守っていた知性あるマシンも。

　このマシンは、退化して過去の栄光をすっかり忘却した、かつてガルベシュの勇敢なる戦士だったラボリ人を見守っています。やがてイェセヴィ・アトがその部族を率いてついにその前にまで進んでくると、ついにその姿をあらわす。

　「わたしはアムトラニクの秘密ステーションの主ポジトロニクスです」と、低い声。いたるところから聞こえてくるように思われる。「アムトラニクがわたしを創造しました。かれとガルベシュ軍団の持つ全知識をわたしに付与し、かれの遺産の番人かつ執行者にしたのです。
　標準時間で百二十万年前、ガルベシュ軍団は、ワヒアト・ウェント星系が属する銀河系銀河で、“深淵の騎士”ハープーンのアルマダンひきいる敵と戦いました。
　不幸な状況がつづいた結果、ガルベシュ軍団は敵に制圧され、銀河系を追放されたのです…アムトラニクをのぞいて。
　　　　・・・
　おまえたちは、遺産の武器を装備してアルパ・チャイを出発し、ほかのガルベシュ軍団と合流して敵に壊滅的打撃をあたえるため、選びだされました」　　（P235-237）

　ついに、本物のガルベシュ軍団の姿が見えてきます。それにしては、チンケな連中ですけどね。(笑)

　あとがきにかえて　は、渡辺広佐さん。
　ぎっくり腰（ドイツ語でHexenschuss）のせいで、トルコ旅行をキャンセルする羽目になったお話。それをネタに俳句を作って投稿したけどあっさり没になった話。俳句を楽しみながら熱海を散策した話。うむ、平和だ。(笑)　　（2015/5/14）

		Ver. 3.01

管理番号：R400-489	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 489巻					出版社：早川書房
書名：強者とジョーカー	ハヤカワ文庫SF1986　ウ1-479　早川文庫7477					ISBN978-4-15-011986-7　 C0197

977 強者とジョーカー		Kemoaucs Bestie				エルンスト・ヴルチェク			1980/5/13	翻訳：林啓子
978 ルーワーの帰郷		Helmkehr der Loower							1980/5/20

		価格：620Yen	ページ数：288P				本のサイズ：文庫
初版発行：2015/1/25		購入：2015/1/25	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　977 強者とジョーカー
　四人のミュータントと半ミュータントが〝それ〟のもとへ去った＜バジス＞から始まります。
　長年の友人たちとのあっけない別離を悲しむローダン。

　銀河系にせまる危機を回避するために物質の泉を探索するローダンらですが、いまだに発見されない。バヤ・ゲレルとシガ星人を載せたルーワー船＜ドロゲルコンド＞がエランテルノーレ銀河に出発したのは半年前ですが、彼らと合流したいまになっても手がかりはない。船内にはかつての強者ケモアウクとロボットであるライレもおり、その行動に油断ができないところ。

　ペイン・ハミラーの助手であるトビアス・ドーフィーのウザさはなんなのだろうと考える間もなく、ケモアウクは謎めいた言葉を発します。第一ドリンクつまりドリンク星系の灼熱の第一惑星に基地を持っており、それは切り札、ジョーカーのようなものなのだ、と。
　そして彼ら二人は、ローダンからライレの“目”を奪って＜バジス＞を去ります。おそらく、播種船に。
　ここで生まれた、最初“繭”でありのちケモアウクに“ジョーカー”と名付けられた生命体は、ケモアウクの従者ですが、奇妙な姿に変身します。この生物はなんのためにいるのか。

　ライレとケモアウクの二人の、人類に対する考え方の違いが、なにかを生みだしそうです。ライレはローダンらの信頼を裏切っているようなのですが、その行動は人類の未来を案じているかのよう。

　　978 ルーワーの帰郷

　「時はきたり。ゴールに到達したのだ！」　　（P145）

　という、ルーワー七千人を率いて宇宙をさまよっていたバッカ＝ローンが断言する場面から。
　惑星アルキラⅡに向かうようにという六次元メッセージを受けたのです。大群の行動に抗議して〝目〟を奪ってから数百万年、その奪われた〝目〟をついにテラナーと合意して受け取ることができ、しかもゴールさえ指定されたのです。
　ルーワーは24隻の円錐船に分乗したまま、アルキラⅡに向かうのでした。

　＜バジス＞では、ルーワーのパンカ＝スクリンと、かつてルーワーの遠い祖先から〝目〟を奪われたライレが会談しているという情報に、緊張が走ります。これがトラブルの元にならなければいいが。
　しかし、奇妙な、漫画的な顔と四肢の付いた巨大豆の形状をしていたジョーカーは、友好的な“におい”をふりまくグッキーと仲良くなっていたのですが、船内のことは“におい”でほぼすべて探知しており、この二人のことも承知しているからか、にこやかにオブザーバーに徹しているのでした。
　このエピソードも前のものも、ほとんどの場面がジョーカーの『一人称で語られる、その行動には謎が多い。しかしグッキーが嗅ぎつけたように、どうやら主人であるケモアウクの奴隷ではないらしい。

　ジョーカーの示唆によって、謎の通信インパルスがローダンとアトランの細胞活性装置と同調していることが判明します。これは何を示すのか。
　七千人のルーワーたちはどこへ帰郷することとなったのか。
　ジョーカーは何に名を変えるのか。

　ゆっくりゆっくりとこの回のサイクルの終結に向かって、風呂敷がたたまれていく感じがするエピソードでした。

　あとがきにかえて　は、林啓子さん。
　メンタル・トレーニングのお話なのですが、音楽家のメンタル・トレーニングとそれを発展させたトータル・トレーニングの話をしたかったけれど、ページ数の関係で497巻に書きます、とのこと。残念だけれど、一ページしかないものね。　　（2015/5/20）

　宇宙英雄ローダン　480～489　