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| 管理番号 | 書 名 | メ モ | |
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| A039-001 | シャーロック･ホームズの大冒険（上・下） | 新しい解釈によるホームズ・パスティーシュのアンソロジー | |
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Ver. 2.23 |
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| 管理番号：A039-001 | 42 シャーロック・ホームズ・ノベル  |
出版社：原書房 | |||||||
| 書名：シャーロック･ホームズの大冒険（上） | ISBN978-4-562-04503-7 C0097 | ||||||||
| 原題：The Mammoth Book of New Sherlock Holmes Adventures (1997) | 翻訳者：日暮雅通 | ||||||||
| 価格：1800Yen | ページ数：433P | 本のサイズ：135×195HC | |||||||
| 初版発行：2009/7/31 | 購入：2010/4/22 | 表紙イラスト：山田博之 | |||||||
| 書名：シャーロック･ホームズの大冒険（下） | ISBN978-4-562-04537-2 C0097 | ||||||||
| 価格：1800Yen | ページ数：442P | 本のサイズ：135×195HC | |||||||
| 初版発行：2009/12/28 | 購入：2010/4/22 | 表紙イラスト：山田博之 | |||||||
  シャーロック･ホームズのアンソロジーです。上巻には作家名としてエドワード・D・ホック、下巻にスティーヴン・バクスターの名前が上がっていますが、これはあまり正しくない。作家名としては（著者じゃないけど）編集者のマイク・アシュレイを使います。 マイク・アシュレイは、たくさんのアンソロジーをまとめた編集者だそうですが、シャーロック･ホームズに対する愛情もなみなみならぬようです。この本は1997年に出版されましたが、その時点までの多種多様のホームズ・パスティーシュを見事にまとめ上げています。 設定としては、ホームズ正典のあちこちに書かれた「ワトスンが公開しなかった事件」を再構成したもの、という正統的なもの。これを年代ごとにまとめています。 「初期（ホームズの学生時代）」、「1880年代」、「1890年代」、「最後の日々（1890年代以降）」の四つに分けられ、最初とそれぞれの部の間、そして最後につなぎとなる解説を入れています。これも面白い試みです。 第一部 初期（ホームズの学生時代） 消えたキリスト降誕画 デレク・ウィルスン The Bothersome Business of the Dutch Nativity ホームズが死んだとされていた1893年にワトスンが知った事件。ワトスン夫妻（妻メアリがまだ生きていた時ですね）がオックスフォードに滞在していた時に、かつて大学でおきた絵画盗難さわぎをホームズが解決し、スキャンダルを闇に葬る片棒をかつがされたことを知ります。 その結果、ホームズは卒業前に大学をあとにしたのだそうな。 キルデア街クラブ騒動 ピーター・トレメイン The Affray at the Kildare Street Club 若きホームズが、兄マイクロフトと共にキルデア街のクラブで起きたスキャンダルを解決した事件。モリアーティ、モラン大佐との出会い。 ホームズがアイルランドの名家の一族の一員であったとか、兄と共にダブリンのトリニティ・カレッジを卒業したこととか、今まで聞いたことのないアイルランドへの傾倒ぶりにハテナと思ったら、作家はフィデルマを書いたトレメインさんでしたか。（苦笑） 第二部 1880年代 アバネッティ一家の恐るべき事件 クレア・グリフェン The Case of the Incumbent Invalid 1885年1月の事件だそうな。ホームズは公開をためらったそうですが、「六つのナポレオン」事件の頃になって関係者がみな南オーストラリアに渡ったことで、公表しても問題がないだろうと考えられたので、ワトスンが記録に残したのだそうな。 ホームズが、相談者が高級住宅地に住んでいると聞いてやる気になったと言う描写が、らしくなくてちょっと引っかかりますけどね。 サーカス美女ヴィットーリアの事件 エドワード・D・ホック The Adventure of Vittoria, the Circus Belle 1882年8月、ベーカー街をサーカスの美女ヴィットーリア・コステロが訪問します。命を狙われているという。 捜査にかかったホームズですが、一歩遅く彼女が殺されてしまいます。しかしここで問題が。死んだヴィットーリアは、ベーカー街に来たヴィットーリアと同一人物なのか。 ダーリントンの替え玉事件 デイヴィッド・スチュアート・デイヴィーズ The Darlington Substitution Scandal 高価な絵画のコレクターである外務大臣ヘクター・ダーリントン卿の家で、ある名画が盗まれ、翌日戻される事件が起きます。彼の息子ルーパートの交友関係が鍵になりそうなのですが、事件は思わぬ方向に展開していきます。 怪しい使用人 バーバラ・ローデン The Adventure of the Suspect Servant 「四つの署名」事件の発端は、メアリ・モースタンが窮地に陥った時、かつての雇い主であるセシル・フォレスター夫人が、「ちょっとした家庭の問題」をホームズに解決してもらった事から始まります。この事件がそれなのだそうな。1886年におきたこの、フォレスター夫人の夫の小物ばかりが盗まれるという不思議な盗難事件は、むろん「四つの署名」より前のこと。 アマチュア物乞い団事件 ジョン・グレゴリー・ベタンコート The Adventure of the Amateur Mendicant Society 1887年4月、ホームズとワトスンは、失踪したと報道されたオリヴァー・ペンドルトン=スマイズ大佐の訪問を受けます。彼はどうやら若い頃から、ローマ皇帝コンスタンティヌスの時代まで遡るといわれるスパイのネットワークである「物乞い団」と関わりがあるらしい。 銀のバックル事件 デニス・O・スミス The Adventure of the Silver Buckle 1987年の夏の終わり、ワトスンの提案でスコットランドの北部に静養に行った二人は、ウファ島という小島に住むマグレヴィンという富豪の骨董品の中の銀のバックルが盗まれる事件に遭遇します。犯人と犯行方法が面白い。 スポーツ好きの郷士の事件 ガイ・N・スミス The Case of the Sporting Squire 1888年2月、ホームズはミス・グロリア・モーガンという女性の訪問を受けます。母が、父によって殺されたらしいので調査して欲しい、と訴えます。この父ロイストンは郷士（Squire 大地主）ですが、貴族のように狩りに憧れて身代を傾けたというところですね。。 「まだらの蛇」事件と似ているかと思ったら、すっと小粒でした。 アトキンスン兄弟の失踪 エリック・ブラウン The Vanishing of the Atkinsons 時期は1988年の「四つの署名」事件のあと、ワトスンがメアリ・モースタンと結婚してホームズと同居しなくなった頃の話だそうな。「グロリア・スコット号事件」でかかわったホームズの大学時代の友人ヴィクター・トレヴァーが、セイロン島より手紙をよこし、隣人のアトキンソン兄弟の失踪を解決して欲しいと書いてきました。当時のことですから、現代よりはるかな遠方に、単なる隣人の失踪で呼ぶというからには、さぞや重要人物か重大事件かと思われたのですが、さてその顛末は。 流れ星事件 サイモン・クラーク The Adventure of the Fallen Star とるに足らない事件だと思ったものが、ホームズの心に残るものになったのだそうな。 天から落ちてきた隕石の盗難事件がありました。好事家以外には何の価値もない石が、なぜ盗まれたのか。ホームズのトンデモ推理がなかなかの味を出しています。 第三部 1890年代 ドーセット街の下宿人 マイケル・ムアコック The Adventure of the Dorset Street Lodger なんとムアコックが書いたホームズのパスティーシュです。ワトスンの妻メアリが死んだ1893年末、ホームズが大空白時代ののちに姿を現したのが翌年初め。二人が再び同居したのはそれ以後のことでした。ベーカー街の下宿が改装されるため、二人はハドスン夫人の義理の妹が経営しているドーセット街の下宿に二週間ほど滞在することとなりました。 この同じ下宿にテキサスから来た男が滞在し、フェリーニの作った名高いペルセウス像を手に入れたことで、不思議な事件が起きます。 アドルトンの呪い バリー・ロバーツ The Mystery of the Addleton Curse 1894年10月の事件です。サー・アンドリュー・ルイスがある古墳を暴いて以来、アドルトンの村にはおかしな病気が蔓延します。死産、奇形児なども産まれます。その古墳の上は、なぜか雪がない、つもってもすぐ溶ける。皮膚障害、頭痛、失神の発作、脱毛、激しい嘔吐。しかも、写真を撮ろうとしても、なぜかぼやけてしまって撮れない。 ホームズはフランスの研究所で聞いてきた話を思い出します。ムシュー・ベクレル。ピエール・キュリーとその婚約者、マリーのことも。 パリのジェントルマン ロバート・ワインバーグ＆ロイス・H・グレッシュ The Adventure of the Parisian Gentleman 同じく1894年10月の初旬。ホームズはパリ警視庁のジラック警部の訪問を受けます。誇り高いフランス警察が、公式にイギリスの民間探偵に捜査を依頼するはずがない。これは、なにやら秘密の匂いがします。 ドレフュス事件の余波で、ユダヤ人の暗殺と変装の名人ジャック・ユレがフランス大統領の暗殺を企んだのだそうな。ホームズはそれだけではない、フランスの政府と軍部に巣くう暗黒を目にしたのでした。 慣性調整装置をめぐる事件 スティーヴン・バクスター The Adventure of the Inertial Adjustor ハードSFの大家が発掘したホームズ譚。ホームズの前に出されたコダック写真に写っていた者は、巨大なヒルでした。しかもその大きさでは自分の重さでつぶれるはずなのに、丸い体を維持しています。ホームズは、写真をもってきた男にウェルズという名で呼びかけました。 神の手 ピーター・クラウザー The Adventure of the Touch of God 1984年11月のある日、ノース・ヨークシャー警察のジェラルド・ジョン・メイキンスン警部から事件の依頼があります。まず町の有数の地主が、次に農夫が、そして教師をしている若い女性が、さらに町の銀行の支店長が殺され、死体がそれぞれ驚くべき方法で毀損されています。心臓を摘出されたものもあります。だれが、なんのために。神の手に触られたと思った人は誰なのか。 悩める画家の事件 ベイジル・コッパー The Adventure of the Persecuted Painter 1895年3月、「三人の学生」事件の直前にドーセットシャー州で起きた事件です。雨の中をベーカー街に現れた40代の画家は、山荘のアトリエが荒らされ、しかしなにも盗まれなかったと言います。さらにその山荘に興味を持つ人が出てきたのだそうな。 病める統治者の事件 H・・F・キーティング The Adventure of the Suffering Ruler 1896年の初秋、往診を頼まれたワトスンの患者を、ホームズはヨーロッパの小さな国の君主だと喝破しました。 一体ホームズになにがあったのか。 忌まわしい赤ヒル事件 デイヴィッド・ラングフォード The Repulsive Story of the Red Leech 莫大な遺産を相続した若い青年がホームズを訪ねます。しかるべき法律文書にサインすることができないために、その遺産を使えないのだという。霊魂の存在が、彼が署名をすることを許さないのだそうな。署名しようとすると、手に取ったペンが火がついたように熱くなるらしい。 この奇妙な現象が、はたしてなにを意味するのか。SF作家による奇妙なホームズ譚でした。 聖杯をめぐる冒険 ロジャー・ジョンソン The Adventure of the Grace Chalice グレイス聖杯と呼ばれる黄金の杯を手に入れたという男が、それが盗まれたとベーカー街に現れます。ホームズが意志もうぬぼれも強そうだと評したこの富豪は、窓の外にくっきりとした足跡もあるので、すぐに調査に来て欲しいという。 忠臣への手紙 エイミー・マイヤーズ The Adventure of the Faithful Retainer 1897年の事件を振り返って、1911年のサセックスに引退したホームズがワトスンに語った物語です。1902年6月に、エドワード7世新国王の即位にあたりナイトの爵位授与を打診されながら断った事件とは、これだったのだそうな。 依頼人はマイクロフトを仲介して顔を揃えた英国首相ベリンジャー卿、国王の重大案件を処理する事務弁護士サー・ジョージ・ルイス、首相のヨーロッパ担当アドバイザーであるミスター・ロバート。マナリング。 さる高貴な女性、レディXが、晩年になって忠義に厚いある家臣に心を許したのだそうな。その忠臣へレディXが書いた手紙がもとで、スキャンダルにもなりかねない事件が発生したらしい。これは下手をすると、英国の屋台骨を揺るがしかねない重大問題なのです。 むろんこの話は、「至上の恋」という、映画にもなったある歴史的事実を下敷きにしています。 第四部 最後の日々 自殺願望の弁護士 マーティン・エドワーズ The Case of the Suicidal Lawyer 1901年2月の朝、多忙のせいで健康に心配のあるホームズに、ある手紙が来ます。ある弁護士のジュニア・パートナーとなった青年が、ある時いきなり正確を一変させて無能な放蕩者になってしまったのだという。高名な弁護士で有名な作家でもあった友人の弟なのだそうな。 最近新作を書いていない兄と、人が変わってしまった弟の謎とはなにか。 レイチェル・ハウエルズの遺産 マイケル・ドイル The Legacy of Rachel Howells コナン・ドイル自身が見た出版社宛の奇妙な手紙を元に、この事件が現れました。 時は1901年、春。ちょうど、あのレジナルド・マスグレイヴが死んだ直後。ワトスンが出版を依頼したこともある出版人がある手紙をもってきました。出版社気付でノーマン・マスグレイヴ宛の手紙なのだそうです。しかしその中身は二枚の白紙。その編集部には、数年前マスグレイヴという課長はいたのですが、数年前に死んだという。しかも彼はノーマンではなくニューマンなのだそうな。 ブルガリア外交官の事件 ザカリア・エルジンチリオール The Adventure of the Bulgarian Diplomat 1903年1月の夕方、ある君主の関係者らしき人から事件の依頼の手紙が来ます。ホームズはこれを、トルコの高官よりのものと推理しました。現れたオルマン・パシャと名乗る老人は、トルコ、ロシア、ブルガリアにまたがる国際的な陰謀を語り、英国外務大臣の自宅で殺されたブルガリアの特使が殺された事件の解決を求めました。まずくすると、世界を戦場にした戦争が起きかない状態なのでした。 ウォリックシャーの竜巻 F・グインプレイン・マッキンタイア The Enigma of the Warwickshire Vortex 1875年に起きた、ジェイムズ・フィリモア失踪事件が30年ぶりに解決したのでした。時は1906年4月のこと。 どこにも続いていない足跡、焦げた床、切断されたこうもり傘、非の打ちどころのない二人の目撃者。二人のジェイムズ・フィリモア。 最後の戦い L・B・グリーンウッド The Case of the Last Battle 1914年11月、イープルの野戦病院で、不眠不休で傷病兵の治療に当たっていたワトスンの元に、交替の医師（なんと国王の主治医の一人）を連れて現れたホームズは、容赦なくワトスンを連れて車から汽車への旅に連れ出します。行き先はなんと、ベルリン。 インフルエンザで病の床にあったマックス公、マクシミリアン・フォン・バーデンが渡した暗号文がこの戦いに終止符を打ってくれたのか。 それから、補足としてシャーロック･ホームズの事件年表が付きます。これは、マイク・アシュレイの解釈によるホームズ聖典と外典、つまりレベルの高いパスティーシュの歴史年表です。ホームズ以外の人物（アイリーン・アドラーや給仕のビリー、レストレード警部、モリアーティ教授、ハドスン夫人など）を中心にした作品や、ドラキュラ、フー・マンチューなどの別な作家による架空の人物がかかわるような作品は、偽物として別にされます。またリストに上げる価値もない稚拙なパスティーシュもある、とのこと。 こういう割り切り方も、面白い。 中には波長も合わない作品もありますが、なかなかいいアンソロジーでした。問題は、見直しながらだったために、これを書くだけでまるまる10日もかかってしまったことかな。(笑) （2011/4/1） |