ローダン 390-399

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　宇宙英雄ローダン　390～399　

巻数	書　名	作　家
390	グッキーとグレイの父	エルンスト・ヴルチェク＆H・G・フランシス
391	青ハゲタカの入江	クラーク・ダールトン＆H・G・エーヴェルス
392	炎の飛行士	H・G・エーヴェルス＆クルト・マール
393	第一具象	ウィリアム・フォルツ＆ハンス・クナイフェル
394	ブロトグレーネの反徒	エルンスト・ヴルチェク＆ペーター・テリド
395	モジュールの秘密	H・G・フランシス＆ウィリアム・フォルツ
396	コンプとサイバネティカー	クルト・マール＆クラーク・ダールトン
397	細胞活性装置狩り	H・G・エーヴェルス
398	クリスタル保持者	マリアンネ・シドウ＆エルンスト・ヴルチェク
399	親衛隊惑星	ハンス・クナイフェル＆H・G・フランシス

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管理番号：R400-390	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 390巻					出版社：早川書房
書名：グッキーとグレイの父	ハヤカワ文庫SF1788　ウ1-390　早川文庫6792					ISBN978-4-15-

779 グッキーとグレイの父		Gucky und der Grauvater				エルンスト・ヴルチェク			1976年7月	翻訳：五十嵐洋
780 テスト惑星		Die Testwelt				H・G・フランシス			1976年8月

		価格：580Yen	ページ数：271P				本のサイズ：文庫
初版発行：2010/12/15		購入：2010/12/19	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　779 グッキーとグレイの父　
　このお話は、西暦では3582年9月のことです。
　グレイの父、とは愛と善意、賢明さに満ちあふれた二万の “父” たちの中に入り込んだ、地下組織 “ザールヨクス” の一員であるフェイヤーダル人。厳重なはずのシュ=マジノのテストを通過し、時代の摂政の “父” 候補となったもの。つまり、カーゾビルスの現摂政ハーレラトの任期の終わりがせまる中、新しい摂政の父となる可能性を持っている二万の一人になった訳。
　これはあってはならない。
　カーソビルスの守備警察長官クープターはその情報を知り、このグレイの父を捜索するために、伝説の捜査官であったディスコール人ダンジャーに未来を託します。期限はわずか6日。
　しかしダンジャーには、すでに過去の超能力はない。それを口に出せないまま任務を引き受けたダンジャーは、悩んだ末に異星人グッキーの手を借りることとなります。
　驚いたことにこのグッキーがダンジャーにそっくり。で、表紙絵はグッキーではなくダンジャーです。
　さて、彼らの捜査はどうなるのか。
　いささかじれったい幕間劇ですね。

　　780 テスト惑星
　ガルト・クォールファートというアンテナヘルメット男がなぜもてるのか、さっぱりわかりませんが、ともかくもてるらしい。本人は一向に気にせず、ひたすらポスビから逃げ回り、女を漁る。
　この何とも奇妙な人間の生態を見て、フェイヤーダル人は前回のエピソードでテラナーに対する感謝はあるものの、うさんくささを感じてしまったらしい。それやこれやでテラナーに対する不信が高まり、テルムの女帝に引き合わせてくれるはずだったのに、その前にカルジョールに行って“よき伝達者”として最低限の資質を備えているかどうかテストする、とローダンに言いだします。
　テストに参加するのは、女たらしのクォールファートと、クォールファートがたらし込んでいるアニーの父親である侏儒のペンギン、そしてクォールファートを苦々しく見ている天文学者のムリンと水耕生物学者のゲロムト、その他数名だという。
　ローダンはそこにさらにグッキーまで加え、カルジョールに乗り込み、テストを受けることとなります。いったいどんなテストなのか。
　奇妙な幕間劇ですが、これでクォールファートは左手を失い、またまた女を得るようです。ふうん。

　あとがきにかえて　は五十嵐洋さん。
　386巻の題　「＜ソル＞還る」　は、光瀬龍さんの「派遣軍還る」を念頭に置いたものなのだそうな。ほう。
　五十嵐さんは光瀬さんを師匠と仰ぎ、「宇宙塵版・派遣軍還る」は彼がSF界で食っていくきっかけになったのだそうな。
　それと、この巻の表紙絵。ここで描かれた＜ソル＞の絵が、ドイツ版のいろいろな絵と比べても遙かに優れた絵だね、とのこと。
　たしかにあの絵はすごかったなぁ。
　ところで、「派遣軍還る」も読んだことがない鐵太郎は、やっぱり異端児なんだろうなぁ。あ、異端中年か。(笑)　　（11/1/3）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-391	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 391巻					出版社：早川書房
書名：青ハゲタカの入江	ハヤカワ文庫SF1789　ウ1-391　早川文庫6793					ISBN978-4-15-011789-4 C0197

781 見えざる敵		Gegner im Dunkel				クラーク・ダールトン			1976年8月	翻訳：増田久美子
782 青ハゲタカの入江		Die Bucht der blauen Geier				H・G・エーヴェルス			1976年8月

		価格：580Yen	ページ数：268P				本のサイズ：文庫
初版発行：2010/12/25		購入：2010/12/18	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　781 見えざる敵
　＜ソル＞に乗り組む人類はフェイヤーダル人から“よき伝達者”として最低限の資質を備えているかどうかテストされます。その結果、「合格」したのはローダンを含めた8人の男女。ミュータントが一人も入っていないこと、ローダン以外の合格者が一人も幹部クラスではなく、あまりにも一般的な、それほど知能が高そうな人々ではないところから、どうも恣意的な選択であるように見えます。
　ホンス・プリス=フェルマイデン、28歳のソラリウム技師。
　アスアー・ゲムロト、24歳の水耕学者。
　ガロ・ムリン、39歳の黒い肌の天文学者。卵形のオルガンを持っています。
　サグリア・エト、21歳のハイパー物理学者、幼稚園と学校の教師。美男子。ここまでは男。
　グール・トシラ、アジア系の女。体育教師。
　セシントラ・ワルドン、過去に三度結婚した二児の母。宇宙心理学者で＜ソル＞の水質監視員。
　アムジャ・ルチアーノ、31歳のほっそりしたブロンド。格納庫技師。
　プレーンドムに着陸したのは、ローダンを入れて男5人、女3人。異常なまでに虚礼だらけの礼儀正しさを要求する奇妙な世界の中で、＜ソル＞の未来を左右する「テルムの女帝」の謎を解くためにここに来た訳ですが、むろんダールトン世界ですので、男どもは女の関心を引くことが、女たちはいい男を捕まえることが一番大事な関心事らしい。
　一万人を超える＜ソル＞の運命を背負った彼らは、催された宴会で酔っぱらい、平気で馬鹿丁寧な言葉を使う努力を放棄する。なんて天下太平な展開。むろん、“よき伝達者”として虚礼に満ちていても丁寧な言葉遣いをすることが正しい行為であるはずのフェイヤーダル人の世界でも、一皮むけば「普通の人間」と同じようにその馬鹿馬鹿しさは承知しているらしい。素晴らしきかな、ダールトン世界。
　しかしその背後に、“言葉”と呼ばれる存在がおり、彼らが何らかの方法でフェイヤーダル人を精神的に操っているらしいことが判明します。
　その正体は何か、その目的は何か。

　　782 青ハゲタカの入江
　前巻と同じメンバーで同じ世界なのですが、なぜか今回はローダンの一人称です。
　テスト惑星カジュールでの混乱の後にようやく惑星プレーンドムに着陸を許されたものの、何者かの陰謀で、どう見ても公式な異民族交流の使節となる能力を持たない凡人7人とともに「選抜」されて来たローダンでした。
　しかしフェイヤーダル人たちの動きはおかしい。というより、妙ににぶい。彼らが崇める“言葉”という預言者たちへの疑惑をローダンに指摘されても、テラナーの宿舎が爆破されて8人が危ういところを助かったときも、ちゃんと判断を下そうとしない。
　そして“言葉”の命ずるままにローダンらを扱う。なぜ盲従するのか。
　やがてグライダーによって二人の「完全無比なる規律創造者」と対面した彼らは、この大仰な慣用句を駆使する割にはなにも考えていないようなフェイヤーダル人の姿に失望するばかり。
　“言葉”がいるという“青ハゲタカの入江”にいけば、何かを得ることが出来るのか。

　ローダンを「おじいさま」呼ばわりする若い＜ソル＞生まれのソラナーたちとローダンとの認識のギャップが、また描かれます。ローダンとしては、人として自然な姿は惑星上で生活して、母星となる星を故郷とすることなのですが、この巨大宇宙船で生まれて宇宙を旅して育ったソラナーにとって、地球は故郷ではない。惑星は面白い場所であって郷愁を誘うものではない。
　この決着は、どこで付けられるんでしょうか。

　あとがきにかえて　は増田久美子さん。
　ベルリンでホテルの場所がわからず迷子になった時の話です。“寄る辺のない”話なのだそうな。　　（11/1/21）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-392	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 392巻					出版社：早川書房
書名：炎の飛行士	ハヤカワ文庫SF1791　ウ1-392　早川文庫6802					ISBN978-4-15-011791-7 C0197

783 コンタクト・センター		Die Kontaktzentrale				H・G・エーヴェルス			1976年8月	翻訳：嶋田洋一
784 炎の飛行士		Die Rache der Feuernieger				クルト・マール			1976年8月

		価格：580Yen	ページ数：255P				本のサイズ：文庫
初版発行：2011/1/15		購入：2011/1/12	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　783 コンタクト・センター
　前回に続き、惑星プレーンドム。ローダンの一人称と、他の数人の三人称で語られます。
　＜ソル＞で生まれ育ったソラナー7人は、ばらばらに分散してテルムの女帝と接触するために行動しています。それぞれがいろいろな形で、惑星という新しい厳しい世界を体験しているところ。
　コンタクト・センターの中で、敵となってしまった「完全無比なる規律創造者」たちをどうあしらってテルムの女帝とコンタクトできるのか。
　やがてローダンは、単に彼らの行動が相手を怒らせていると言う事ではなく、いま宇宙規模の対立があり、彼らはそれに巻き込まれつつあることがわかります。この中でどう生き延びていけばいいのか。
　ジョージと名付けたロボットが面白いのですが、最後まで同行してくれなかったのが残念。
　このお話には生まれ育った環境とか、生命とは何かとか、面白い命題がちりばめられていますね。こういう思索が当時流行ったのでしょうか。なんか面白い。
　規律創造者という存在は、何かのカリカチュアなんだろうなと思うのですが、具体的に何だろう。
　分子変形能力者という敵が出てきます。人類の敵として、かつて二回ほど分子を変形して他者になりすます異星人が現れたとローダンは回顧しますが、いまはカピンぐらいしか思い出せん。（； ´Д｀)

ムシーラー　Mucierer

　　784 炎の飛行士
　3582年10月、＜テラ・パトロール＞のいるテラと、同じメダリオン星系にある惑星ゴシュモス・キャッスルが舞台です。
　主として炎の飛行士となったムシーラー（右絵）のワルシーの視点と、ワリク・カウクの一人称で語られます。
　ワルシーは長老の命で炎の飛行士としてゴシュモス・キャッスルを探索し、「悪しき神々」を殺し「謎の女神」を生かしておくこととなりました。この行為があとで大きな意味を持ちます。
ドウク・ラングル　Douc Langur

　ワリクは、前回愚かな行動でブラフ・ボールドウィンを死なせてしまった青年ブラフ・ポラードの異常な様子に心を痛めつつも、彼とアウグストゥスと名付けたK=2ロボットを連れて、ドウク・ラングル（左絵）の操縦する小型宇宙船＜ヒュプファー＞でゴシュモス・キャッスルに偵察に行くこととなりました。
　この作戦は、ノルウェーで起きた異星人の侵攻と、それによってテラの生き残りである＜テラ・パトロール＞の少数の生存圏が脅かされる可能性を考えたもの。生存できる場所を確保しておかなくては。未来には何があるかわからない。これには、テルムの女帝に仕える研究者でもあるドウクも賛成しています。
　ゴシュモス・キャッスルでは、とりあえず＜テラ・パトロール＞の面々が移住できる可能性は残したものの、一人を失って一人のテラナー生存者を発見できました。5つの墓を残して。

　あとがきにかえて　は嶋田洋一さん。
　湯河原（神奈川県）で行われたガタコン2010に参加した話。元は新潟で始まったのでガタコンなのだそうな。これは初回は1976年に始まったイベントで、5月に亡くなられた嶋田さんの奥さんも、かつてここに参加していたそうです。SFの輪、恐るべし。
　そうそう、ローダンの新・翻訳チームのリーダーである五十嵐さんも、これに参加したことをブログに書いていたことがあったっけ。世の中広いのか、狭いのか。(笑)　（2011/1/12）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-393	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 393巻					出版社：早川書房
書名：第一具象	ハヤカワ文庫SF1792　ウ1-393　早川文庫6803					ISBN978-4-15-011792-4 C0197

785 第一具象		Die erste lnkarnation				ウィリアム・フォルツ			1976年9月	翻訳：嶋田洋一
786 女帝への反逆		Rebell gegen die Kaiserin				ハンス・クナイフェル			1976年9月

		価格：580Yen	ページ数：267P				本のサイズ：文庫
初版発行：2011/1/25		購入：2011/1/22	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　785 第一具象
　3582年6月、黄色い征服者の痴呆化放射を中和する目的で作られたGrIko（重力定数=知性変更）ネットの設定を、異人のステーションの発する心理放射を中和できるように調整してたアラスカ・シェーデレーアは、これをテストしてみます。しかしその瞬間、すさまじい苦痛にのたうち回り、顔のマスクの下のカピンの断片が強烈な光を放ちました。そばにいたワリク・カウクがあわててネットを外して介抱すると、とりあえず正気を取り戻します。しかし一息入れたあとの夜、アラスカの意識の中に別な意識が入り込み、彼はドウク・ラングルを脅して小型宇宙船＜ヒュプファー＞を発進させます。行く先はノルウェーのナムソス。
　彼はそこで、力の具象クレルマク）に仕えるフルクース人の高官プロフミルシュに出会います。アラスカを第一具象であるクレルマクに会わせたのは彼。クレルマクは特殊なエネルギー形態の物体で、アラスカには人間の姿に見えるのでした。バルディオクには、他に炎の具象シェルノク、統合の具象ヴェルノクがあり、バルディオクは第四の具象を創造しようとしているらしい。これができればバルディオクは無敵になると。
　また、バルディオクには、テルムの女帝という強力な敵があるらしい。人類がテラから消滅したのは、この女帝の仕業の可能性もあるという。
　アラスカは、危ういところで自らの顔のマスクを取ってカピンの断片をむき出しにすることにより、フルクース人を狂気に追いやり、脱出します。そしてアラスカを追ってきた＜テラ・パトロール＞と幸運にも巡り会います。
　とりあえず、テルムの女帝の研究者であったドウク・ラングルがそのスパイではないらしいことは確認できましたが、謎はまだ解けません。

　　786 女帝への反逆
　3582年12月、今度はローダンら、＜ソル＞の世界です。
　ケモフリカ星系に住むフェイヤーダル人の物理学者テラルブロエは、抑圧者の頂点に立つテルムの女帝に対し抵抗する組織に属しています。衰退しつつあるフェイヤーダル人を立ち直らせるには、この精神的な桎梏をはねのけなくてはいけない。
　新たに現れたテラナーもしくはソラナーという種族は、テルムの女帝に対し堂々と立ち向かっているらしい。そうであれば、テルムの女帝はフェイヤーダル人を捨てて、このテラナーという種族をそのあとに据えようというのではあるまいか。であるなら、テラナーはまずわれわれの敵と言うことになる。
　なんとしてでも、排除しなければならない。

　トルーターリング星系を離れ、プレーンドムでの接触も失敗に終わった＜ソル＞のローダンらは、テルムの女帝からの命令あるいは懇願にどう対処すればいいのか頭を悩ましています。モジュールを探して欲しいというその願いを、どう受けとればいいのか。
　とりあえず、重要な接触サークルがあるらしいカイラアンドル星系にむかうこととします。その先はどうなるのか、まったくわかりません。

　あとがきにかえて　は引き続き嶋田洋一さん。
　ガタコンから三ヶ月遡った2010年8月7・8日に行われた、第49回日本SF大会。2010TOKON10のこと、いろいろ。
　紹介する順番が逆でしたね。
　なお、2011年は、9月3・4日に静岡市のグランシップで行われるそうです。　　（11/2/17）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-394	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 394巻					出版社：早川書房
書名：ブロトグレーネの反徒	ハヤカワ文庫SF1795　ウ1-394　早川文庫6815					ISBN978-4-15-011795-4 C0197

787 ブロトグレーネの反徒		Die Stode des Rebellen				エルンスト・ヴルチェク			1976年9月	翻訳：赤坂桃子
788 罠と生け贄		Eine Fane für das MODUL				ペーター・テリド			1976年9月

		価格：580Yen	ページ数：267P				本のサイズ：文庫
初版発行：2011/2/15		購入：2011/2/5	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　787 ブロトグレーネの反徒
　さて、発表時に人気者だったらしいガルト・クォールファートの一人称で語られます。
　例によって女あさりに忙しい。このアンテナ頭で片手が機械の手になった、ポスビとマット・ウィリーにまつわりつかれている小太りな男にどんな人気があるのかさっぱりわからんのですが、女性方もなぜかこの男にすぐなびくらしい。
　彼はローダンと共に恒星カイラアンドルの第二惑星プロトグレーネにむかうこととなります。目的はテルムの女帝に会わせたがらないようなフェイヤーダル人と交渉に行くこと。同行者は、ガルトとポスビ一体とマット・ウィリー一体に、フェイヤーダル人の「よき伝達者」が選抜した＜ソル＞のソラナー5人、ネモ・イルジュー・ジェンキンス、通称“ニーチェ”。フリーの作家なのだそうな。そしてその助手のチェリブとスキッロという、韻文でしか話をしない双子。さらに天文学者のピア・カラウ博士、異生物心理学のアマラ・オルログ博士。最後の二人はガルトが息をのむ美女。それとローダン。彼らは軽巡＜ハヴァマル＞でプロトグレーネにむかいます。
　どうやら、テルムの女帝がモジュールの探索という重大な任務を、いままでのフェイヤーダル人に命ぜずテラナーに命じた事で、フェイヤーダル人は不快になっているらしい。女帝には絶対服従なのですが、牛歩戦術というか、消極的なサボタージュを行っている様子です。
　さらに敵対行動も見せたために、＜ソル＞の留守をあずかるアトランは、ついに全面反撃に出ます。船体からSZ=1とSZ=2を分離し、さらにそれらの艦内に搭載した戦闘部隊、50隻の軽巡と同数のコルヴェット、スペース=ジェット100機、ライトニング戦闘機300機を展開して猛攻をかける。なんともはや、おそるべきワン・シップ・アルマダですな。
　フェイヤーダル人の“よき伝達”の改革を提唱する一派が離反したことなどで、事態はさらに新しい展開となります。

　　788 罠と生け贄
フルクース Hulkoos

　原題は “Eine Fane für das MODUL”、「モジュールのための罠」。新人ペーター・テリドの二作目。
　罠とは、バルディオクのもの。敵対するテルムの女帝の全権代行を捕らえるのが目的。その罠を監視する一人がフルクース（右絵）の司令官カアルマンシュ=クセスなのですが、その権威と技能を向上させるために訓練することがなんともはや。器用さを身につけるために仰向けになって、両手両足で小さなボールを宙で操るのだそうな。
　罠が閉じるという報告を受けて喜びます。これで敵を捕らえることができたのか。

　＜ソル＞の側のシーンは、相変わらずガルト・クォールファートの一人称です。
　バルディオクの罠である、恒星とそれに属する二惑星の分解によって発生した五次元指向性重力エネルギーと純粋物質によるハイパー空間に押し出された「塵」は、球形のシェルの中にテルムの女帝の研究船を生け贄として閉じ込めます。この「雲」を発見した＜ソル＞のローダンは、この中になにがあるのかを調査するために、軽巡＜蚕＞を派遣する事を決定しました。乗り組むのは、＜ソル＞の艦長を務めるメントロ・コスムその人と、ラス・ツバイ、メルコシュなどの超強力メンバー。そしてガルト、美女マルゴー・ウェイナルドとその夫など。
　ガルトとポスビ、マット・ウィリーのドタバタ劇が、羽根ぶとんの一件でグッキーまで巻き込まれることになり、もうてんやわんや。

　あとがきにかえて　は赤坂桃子さん。
　これで二作目になるペーター・テリドのはりきりぶりなどを書いています。P156に出てくるグッキーと羽根ぶとんのシーンは、第67巻「エヴァブラックの砲」で出てきた話で、2113年に当時の旗艦＜セオドリック＞上で椅子の硬さにグッキーの愚痴が

元ネタなんだそうな。
　こんなマニアックなネタを出してくるほどファンだったと言うべきか、粘っこい性格だと言うべきか。(笑)
　1949年生まれですから、これを書いた時はまだ20代後半の若さ。しかし1998年に49歳でなくなっており、今現在（2011年）から見ると10年以上過去に世を去った作家なのです。時の流れの不思議なところであり、これほど長期間にわたって連載と翻訳が続くローダン世界ならではですね。
　テリドの死を悼み、絶筆となったエピソード1955話を仕上げたアルント・エルマー（日本では未出）が、そこに“パトリック・ウィネス”という口髭を蓄えた人物を追加したのだそうな。これは、多作の作家であったテリドの数あるペンネームのひとつでした。
　なんか、いい話です。　　（2011/3/6）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-395	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 395巻					出版社：早川書房
書名：モジュールの秘密	ハヤカワ文庫SF1796　ウ1-395　早川文庫6816					ISBN978-4-15-011796-2 C0197

789 プレーヤーと異人		Der Spieler und die Fremden				H・G・フランシス			1976年10月	翻訳：五十嵐洋
790 モジュールの秘密		Das Geheimnis des MODULs				ウィリアム・フォルツ			1976年10月

		価格：580Yen	ページ数：262P				本のサイズ：文庫
初版発行：2011/2/25		購入：2011/2/19	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　789 プレーヤーと異人
　3582年12月。恒星コーステボウト領域内の重力定数を人工的に“重層過熱”した結果、25パーセントが五次元指向性重力エネルギーに、残る75パーセントは純粋物質に変換されたのでした。転送機爆発と同じ原理に基づくと思われる現象により、物質の80パーセントが超光速で恒星から投射されて再物質化できなかった、という理解でいいらしい。これによりド=モルヴィン銀河の状況が変わり、ゲームのルールも変わったらしい。

　本編は例によりガルト・クォールファートの一人称。恒星コーステボウト近傍をめぐる騒乱の中で、三隻の謎の円盤船が襲ってきます。全長が900メートル、厚さは200メートルに達する大型船。ガルトらの乗る軽巡＜蚕＞は、あわてて避待するのでした。
　この円盤船を指揮するのはフルクースのカアルマンシュ=クセスでした。彼は謎の球形船を追いますが、捉えられない。
　この状況が、モジュールの研究者、フルクース、球形船の異人を見ていたグラヴィホールをいたく楽しませたらしい。これらをゲームの駒として扱うことで、面白くなりそうだと判断。しかし駒はグラヴィホールの意図するようには動きません。
　最後にこの奇妙なゲームにけりを付けたのは、ガルトの思いつきだったらしい。

　　790 モジュールの秘密
　今回主体となるのは、383巻「世界支配者」で出てきた猫男プジョ・ブレイスコル。猫の姿の体を持つソラナーで、人々の思考を読む能力と共に、思念的あるいは技術的な謎のインパルスも捉えることが出来るミュータント。この本の表紙絵の顔ですね。
　コンプと呼ばれるモジュールのデータ貯蔵バンクを救うために物質の雲の近くにやってきたダンベル船＜ソル＞の中で、今回彼が捉えたインパルスは、モジュールのありかを示すものだったのか。
　モジュールは、未知勢力バルディオクがもたらした災厄によって喪失しています。なんとかしてこれを突き止めるのが、テルムの女帝の研究者の使命。モジュールには、テラの座標があるという情報に基づき、これに協力するのが現在のテラナーの立場。
　かくしてブジョは、ローダンの命令により、テルムの女帝の研究者タウル・ダローア、ルロウル・カヴェール、ランク・ポサーらと共にモジュールの捜索のためにその特殊能力を使う事となります。
　この母親に守られた青年が一人前の男になれるのか。時は、3583年1月になろうとしていました。

　あとがきにかえて　は五十嵐洋さん。
　ただし、特にネタはなし。紙数に余裕があるので、といって400巻から425巻までの仮タイトルの発表だけです。　（2011/4/16）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-396	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 396巻					出版社：早川書房
書名：コンプとサイバネティカー	ハヤカワ文庫SF1798　ウ1-396　早川文庫6828					ISBN978-4-15-011798-6 C0197

791 コンプとサイバネティカー		Der COMP und der Kybernetiker				クルト・マール			1976年10月	翻訳：渡辺広佐
792 時空を超えた救援		Hilfe aus Zeit und Raum				クラーク・ダールトン			1976年10月

		価格：580Yen	ページ数：271P				本のサイズ：文庫
初版発行：2011/3/15		購入：2011/3/19	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　791 コンプとサイバネティカー
　久しぶりにジョスカン・ヘルムートの登場です。ほらあの、セネカ配下の特殊ロボットのペア、ロミオとジュリエットを子分にしている不審人物。
　＜ソル＞のシリンダー型中央船体の重心近くにある大ホールに、「コンプ」、つまりモジュールのデータ貯蔵バンクは収納されています。ローダンらは、乗船しているテルムの女帝の研究者である三人、タウル・ダローア、ルロウル・カヴェール、ランク・ポサー、そしてケロスカーのドブラクらに意見を求めるのですが、彼らにもこの構造体を説明できない。
　＜ソル＞の船内の異常、まず食堂で供される合成食料の驚くほどのまずさから始まったさまざまな異常は、どうやらこのコンプが船内の全ての制御を統括するセネカに影響を及ぼして何かをしようとした副次的な結果のようでした。コンプはさらに、＜ソル＞の中で影響を与えやすい人間としてジョスカン・ヘルムートを選び出します。そして＜ソル＞を自由にコントロールしようとし始めたのでした。
　これに対抗してローダンのとった作戦は、タクヴォリアンのミュータント能力を使って、セネカ=セタンマルクトの機能を50倍に引き延ばした時間で押さえ込み、その間に船外にクレルマクの宇宙船の幻影を作ってコンプを騙し、協定を結んで＜ソル＞の支配権を取り戻すというもの。はたしてそれはうまく行くのか。

　　792 時空を超えた救援
　故郷銀河世界のエピソードです。
　太陽系から21,275光年離れた銀河イーストサイドのある恒星系に、ノオ（No）と呼ばれる惑星があります。ここに120年前の3460年、地球と月が恒星転送機で遠いはるか彼方に飛び去ったのち、ラール人や超重族から逃れるために2万人のテラナーが移住した惑星です。
　あわただしい逃走の結果、満杯で人々を運んできた二隻の宇宙船は使用不能となったこともあり、彼らはラール人らの捜索から隠れるために宇宙船は解体し、注意を引きかねないエネルギー放射を出さずにこの惑星の自然の中で生活する道を選びました。マシン類やロボットは隠されて維持管理はされていますが、使う事は禁じられています。一機だけ残ったスペース・ジェットも同じ。
　西暦3483年、農場で働くファルク・ベルントアは、嵐の中で不思議な声を頭の中に聞きます。この星には今まで存在しなかった思考インパルスらしい。敵意はない、という相手の言葉に従って洞窟に入ると、そこにあったのは直径半メートルほどの微光を放つ黒い球体。
　千五百年以上前、人間はわたしをハルノと名付けた
　球体は言います。そしてそれは、時間と空間を漂って来たのだが、恒星エネルギーがなければ動けないし、枯渇寸前なので助けて欲しい。核バッテリーを使わせてもらえないだろうか。
　悩んだ末に友人の技師ヴァルル・テムボや市民議会の議長らと相談の上で承諾したファルクは、このハルノから恐るべき事を知ります。
　ヘトソンの告知者であるラール人のホトレノル＝タアクと銀河第一ヘトランであるマイルパンサーが、対抗勢力であるテラナーのジュリアン・ティフラーに罠をかけようとしていることを。どうやら、細胞活性装置がらみの陰謀らしい。
　今のハルノでは、直接ティフラーにメッセージを送る力はない。
　ファルクは友人と共にハルノを連れ、この惑星にただ一つ残ったスペース・ジェットで太陽系にむかいます。はたして警告は間に合うのか。

　ああダールトン節だ。久しぶりのハルノの登場です。しばらくティフラーと行動を共にするようですね。

　あとがきにかえて　は渡辺広佐さん。
　ブルーレイディスク/DVDレコーダーを初めて購入した一騒動と、「宇宙（そら）をかける少女」の第4話と、フランク・シェッツィングの近未来サスペンス「LIMIT」の中にペリー・ローダンが出てきたことを息子に教えられた話。ほう、どちらも見ていないのでわかりません。
　けっこう自分もSF界に対し情報オンチなんだよなぁ。（； ´Д｀)　　　（2011/4/14）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-397	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 397巻					出版社：早川書房
書名：細胞活性装置狩り	ハヤカワ文庫SF1799　ウ1-397　早川文庫6829					ISBN978-4-15-011799-3 C0197

793 細胞活性装置狩り		Die Aktivatorjagd				H・G・エーヴェルス			1976年11月	翻訳：林啓子
794 時間爆弾、活性装置保持者		Zeitbombe Zellaktivator				H・G・エーヴェルス			1976年11月

		価格：580Yen	ページ数：268P				本のサイズ：文庫
初版発行：2011/3/25		購入：2011/4/1	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　793 細胞活性装置狩り
　ラール人のホトレノル＝タアクは、銀河系に残る細胞活性装置を集めることを決意します。
　理由は、単に自分の寿命と独裁者としての政治生命を文字どおり永遠のものとする事ではない。細胞活性装置を解析し、それを自爆させるエネルギー帯域を発生させる方法を作り上げること。それによって、ラール人の支配に抵抗しているＮＥＩ（新アインシュタイン帝国）の指揮官である永遠の生命をもつジュリアン・ティフラーらを暗殺する、これが目的。
　そのため、かつて銀河系の一大勢力であったエルトルス人によるカルスアル同盟の三巨頭が所有する細胞活性装置が狙われたのでした。現在それを所有している三巨頭は、テルセル・フラスカーティ、ノス・ヴィゲランド、ルネメ・シルテルの三人のエルトルス人。
　彼らにホトレノル＝タアクと超重族のマイルパンサーの手が伸びる。

　　794 時間爆弾、活性装置保持者
　三巨頭の一人、ルネメ・シルテルはホトレノル＝タアクの手に落ち、細胞活性装置を奪われて衰弱死します。この情勢の中で、ノス・ヴィゲランドはＮＥＩとの共闘を考えます。
　暗黒星雲の中を航行する技術を持ったヴィンクラン人との間がこじれつつある中で、対応に苦慮するＮＥＩ政府主席ジュリアン・ティフラーは、この情報を聞いて驚愕します。現在ＮＥＩの中で細胞活性装置を持っているのは、彼と元USOのスペシャリストであるロナルド・テケナーだけ。一定の距離に入ると細胞活性装置が自爆する装置が開発されたとしたら、その爆発で周囲の人々や機材に大変な被害を与えることは明白でる。どうすればいいのか。
　苦渋の末、ティフラーの取った対応とはなんだったのか。

　あとがきにかえて　は林啓子さん。
　この最後のシーン、ティフラーの決断とテケナーと恋人のジェニファー・ティロンのやりとりを読んで、林さんは通勤電車の中で不覚にも涙したのだそうな。A4用紙に打ち出された無味乾燥なドイツ語のテキストを読んで涙する女性、たしかにちょっとシュールかも。
　テケナーのファンである林さんは、細胞活性装置を持って相対的な不死を維持しているテケナーと、その今の恋人である不思議な能力を持つジェニファーの未来もちょっと気になる様子。
　それから話題は手書きの文字について。パソコン全盛の時代になって、意外なところで現れる美しい肉筆の価値を書いています。自分の悪筆の頃と考えると、身につまされますなぁ。

　ジュリアン・ティフラーというキャラは、長いローダンの物語の中で唯一と言ってもいい、いきなりある年齢で現れたのではなく、一人前少し手前に現れてそれ以後ずっと活躍を続けている珍しい人です。長年このシリーズに付き合っているファンとしては、なんとなく気になった人物の一人であるはず。経歴によれば、彼は1961年9月15日にニューヨークに生まれ、ローダンが人類の指導者となる前に宇宙軍の士官候補生として表舞台に登場し、のちにローダンの元に移り、それ以後ローダンに信頼される作戦家、実戦指揮官、司政官として大活躍します。
　この人物の未来はどうなるのか、鐵太郎もちょっと心配。　　（2011/5/5）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-398	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 398巻					出版社：早川書房
書名：クリスタル保持者	ハヤカワ文庫SF1802　ウ1-398　早川文庫6845					ISBN978-4-15-011798-6 C0197

795 死のネット		Netz des Todes				マリアンネ・シドウ			1976年11月	翻訳：五十嵐洋
796 クリスタル保持者		Der Kristallträger				エルンスト・ヴルチェク			1976年11月

		価格：580Yen	ページ数：270P				本のサイズ：文庫
初版発行：2011/4/15		購入：2011/4/9	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　795 死のネット
　不意に直径200メートルのテラ級軽巡洋艦＜レッドホース＞で、銀河系の外にある「二百の太陽の惑星」に行ってマット・ウィリーを連れてくるように命じられたロナルド・テケナー、だんだんと不審がこみ上げてきます。なぜいきなりこんな奇妙な任務に任じられたのか。しかもこのフネは、なぜか20名の乗組員しか乗っていない。自動化が進んだ新鋭艦なのだから、操艦はわずかな人数ですむけれど、これではいざという時に対応できない。命じたのはＮＥＩの首席ジュリアン・ティフラーその人であるだけに、なにか奇妙。

　ラール人が、細胞活性装置を解析して、ある特殊なエネルギー波を放つことによりこれを爆発させる事が出来るようになったという。遺伝子コード破壊フィールド放射、いわゆるＧＫＤフィールド放射。活性装置の罠。死のネット。これが銀河系に広がれば、細胞活性装置を持っている相対的不死者は爆弾となる。
　エルトルスの三巨頭の生き残り、ノス・ヴィゲランドは、自分の手にしている二つの細胞活性装置が、福音ではなく悪夢となったことに慄然としています。部下たちは自分と少しでも距離を置こうとするのです。
　もとUSOの少佐であったヴィゲランドは、ティフラーに連絡を取る事を考えたのでした。
　その信号をキャッチしたのは＜レッドホース＞。この騒動の結果、細胞活性装置の一つは、意外な人物の手に渡ることとなります。
　この期間に、銀河ではGKDフィールド放射により5つの爆発が認められました。一人は遭難したテラナー、三名は原始種族の長老らしきもの、最後の一人は小型宇宙艇に乗っていたエルトルス人らしい。はたして、これは何を意味するのか。

　　796 クリスタル保持者
　舞台は再びテルムの女帝にコンプを運ぶ＜ソル＞に移ります。3583年
　今回の主人公は、ローダンと共に久しぶりのイルミナ・コチストワ。ミュータント部隊の一員で、メタバイオ変換能力者。かつては「敵」の生体細胞の遺伝子を瞬時に破壊して殺す能力を発揮していたのですが、最近は対象者の細胞組織をかなり自由に変換して治療を施したりすることも出来るようになったらしい。
　ちなみに彼女、3412年4月生まれですから今年3583年で171歳になりますが、細胞活性装置のリストに載っていないので、いくら寿命が延びた超未来とはいえ、そろそろ老いを感じる年代じゃあるまいか？　この号の表紙絵は彼女のようなんですけど、美化していないか？(笑)
　ところがイルミナは、P143で140年にわたって生きてきた、と言っています。謎だな。
　彼女が出会ったのは、アンタペックスという「隠者」。身長2メートル以上あり、肩幅が広く上体はでっぷりと大きい。奇妙な顔、奇妙な動作。その存在が伝説と思われていた男。宇宙船とはいえ、＜ソル＞は巨大だし、世代宇宙船と言っていいほど長期間宇宙を航行しています。誰も知らない謎の領域や、名も知らぬ放浪者などもいても不思議はないらしい。しかも彼、不思議な超能力を持っているようです。

　さてローダンらは、テルムの女帝の代行と名乗るチョールクという生物とコンタクトします。その姿は異形そのもの。表紙絵の左下の姿です。
　それは、テルムの女帝のために査察に来たといい、査察ののちに宣言します。この船にのせられているコンプは、危険すぎるのでそのままテルムの女帝の元に送るべきではない、アルウールクという惑星にまず運ぶと。
　約束が違う、と抗議するローダンら。しかしアンタペックスの意を受けたイルミナはローダンに言う。
　「あなたにとって重要なのは、座標ですか？　それとも＜ソル＞乗員の命ですか？　アルウールクに飛ぶほか、選択肢はありません。それ以外では、＜ソル＞を破滅にゆだねることになります」
　さて、ローダンはどう判断するのか。
　このチョールクは「クリスタル保持者」だそうですが、＜ソル＞船内にそれに呼応するもう一人のクリスタル保持者がいるらしい。これも謎です。

　あとがきにかえて　は五十嵐洋さん。
　ローダン執筆チームの中で現時点で紅一点のマリアンネ・シドウの紹介。1944年7月24日生まれなのだそうな。76年にチームに参加し、61編を書いて92年にリームを離れたのだそうな。
　とりあえず今回は、クナイフェルがかなり加筆したらしいので、彼女の文体はよくつかめないそうです。今後に期待しましょうか。
　そうそう、5/11の早朝、民放のニュース番組『ZIP!』で、ローダン400巻の出版をネタにしました。全巻を並べると5メートルになるのだそうな。創刊でした。ネットに挙げた人がいましたが、早々と削除されていました。残念。いずれYoutubeに上がるかもしれませんが、正味2分かそこらしかやっていませんので、あまり期待はできませんよ。(笑)　　（2011/5/11）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-399	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 399巻					出版社：早川書房
書名：親衛隊惑星	ハヤカワ文庫SF1803　ウ1-399　早川文庫6846					ISBN978-4-15-011803-7 C0197

797 親衛隊惑星		Planet der Leibwächter				ハンス・クナイフェル			1976年11月	翻訳：嶋田洋一
798 黒いクリスタルの呪縛		Im Bann des schwarzen Kristalls				H・G・フランシス			1976年12月

		価格：580Yen	ページ数：271P				本のサイズ：文庫
初版発行：2011/4/25		購入：2011/4/23	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　797 親衛隊惑星
　光と闇があと8回交替したら、わたしは大卵のなかに回収される。そうひとり言をいうのは、チョールクの一員ドゥーン13。職能13の最上位者。異人の心理を読解する第一人者。ドゥールトの誇り高きしもべにして親衛隊戦士。
　テラナーと呼ばれる異人がコンプを運んできたが、コンプを受領次第彼らは追い払われなければならないという。この世界にいられる時間が刻一刻とせまる中、わたしはこの異人と接触することになります。

　3583年1月22日、＜ソル＞は直径502光年のモルヴ・アラン小銀河の辺縁部に位置する恒星を回る惑星アルウールクに接近します。ここは、テルムの女帝の親衛隊が住む重要な惑星だそうな。
　地球の座標を知るためには、ローダンはテルムの女帝に従わざるを得ない。しかしコンプは、女帝の意志なのか、それを餌にローダンや＜ソル＞を支配下に置いて引きずり回すばかり。ローダンのフラストレーションは募ります。
　しかしローダンらに興味を持って接触してきたチョールクがいます。なんと、ドゥーン13。なぜ？なんのために？
　このドゥーン13が明かした事実は、テラナーを驚愕させることとなります。彼らチョールクは、人口の増減を極端なまでに抑えられたこと、ドゥーン13はその生涯の中で5回も卵を産んだのに、それを孵すことを許されなかったこと。
　テレポーターの二人、ラス・ツバイとグッキーは、寿命の最後が目前のドゥーンとどんな会話を交えたのか。

　　798 黒いクリスタルの呪縛
　またまたガルト・クォールファートの回です。いつもの通り女に目がないこの男、今回特殊任務のために組まされた女性の容姿があまりにも酷いので、いささか愕然。女に目がないといっても、ブスは守備範囲外というのがなんともはや。
　黒いクリスタルの影響を受けたチョールクが孵化した結果、惑星アルウールク、とりわけ宇宙港のあるカルウーグ地区はカオスが支配するようになりました。プルールあるいは戦争クリスタルという言葉も報告されているそうな。宇宙心理学者の説明によると、チョールクの間に新しい支配者が誕生したこともあり得るらしい。
　ローダンはこの状況を利用し、新たな方法で揺さぶりをかける作戦を進めます。テレポーターらが消耗しきっているので使えないため、通常の要員を使って5機のスペース・ジェットで撹乱しようという。
　その一機の指揮官としてガルトが選抜され、宇宙心理学者であるジョーン・コナーフォードという不細工な女性が組むこととなったそうな。
　かくして、ポスビとマット=ウィリーに取り巻かれ、美人が大好きだがブスは大嫌いという男尊女卑を絵に描いたようなガルトの冒険がこのお話ということになります。
　最後にコンプがくれた座標はいったい何なのかが楽しみですが、いささかガルトには食傷気味だなぁ。

　あとがきにかえて　は嶋田洋一さん。
　この本の校正刷りが着くはずだった日の前日、3/11、東北で大震災が発生しました。これが書かれた時点では、まだ震災の正式名称は決まっていなかったそうな。
　このときすでに、放射能による風評被害が心配されていたそうです。へえ、そんな早くに懸念されていたのか。
　それから二ヶ月たちますが、いまだに風評被害は収まる気配もありません。困ったものです。　　（2011/5/18）