ローダン 420-429

トップへ戻る

　

　宇宙英雄ローダン　420～429　

巻数	書　名	作　家
420	コンセプトの大祭典	クルト・マール＆ウィリアム・フォルツ
421	ガラス世界	クラーク・ダールトン＆H・G・フランシス
422	早熟な夢想家	H・G・フランシス＆H・G・エーヴェルス
423	ラール人の逃避行	ハンス・クナイフェル＆エルンスト・ヴルチェク
424	最終要塞タイタン	H・G・エーヴェルス＆クルト・マール
425	バルディオク	クルト・マール＆ウィリアム・フォルツ
426	星々のあいだの孤島	ウィリアム・フォルツ＆クラーク・ダールトン
427	人類の故郷	H・G・フランシス
428	精神スペクトル	エルンスト・ヴルチェク＆H・G・エーヴェルス
429	アフィリーの遺産	クルト・マール

	★このページはUnicodeです。★	Ver. 2.23

管理番号：R400-420	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 420巻					出版社：早川書房
書名：コンセプトの大祭典	ハヤカワ文庫SF1842　ウ1-420　早川文庫6985					ISBN978-4-15-011842-6 C0197

839 コンセプトの大祭典		Das große Feuerwerk				クルト・マール			1977/9/20	翻訳：林啓子
840 ブルロクのシュプール		Auf BULLOC's Spuren				ウィリアム・フォルツ			1977/9/27

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/3/15		購入：2012/3/9	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　839 コンセプトの大祭典
　地球上の至るところに不意に現れた、三十億人のコンセプトたち。驚愕するテラ・パトロールの面々と、その他の地球に住むわずかな人々。大祭典があるのだとコンセプトらは言う。
　〝それ〟は何を考えているのか。
　しかもその中に、かつてのアフィリーの独裁者トレヴォル・カサルの姿があったのでした。どうやら彼は、アフィリカーの一員として、他の非アフィリーの人類と共にひとつの体に入れられてコンセプトとされたのですが、他の人格を駆逐して単一の個性の人間となれたらしい、半ば狂気に陥った彼の生きる目的は、できるだけ多くの人間とコンセプトを殺し、生き残ったものが不安に駆られて純粋理性の支配下に入るよう仕向けること。正気とは思えない陰謀に凝り固まっています。

　また、テラ・パトロールの一員、まだ19歳と若いブラフ・ポラードの前に現れたのは、ヴィアナと名乗る若い美女。彼より2、3歳年長らしいこの娘に恋してしまったブラフ。
　しかもコンセプトである彼女は、あっさりと彼の求愛を受け入れてしまう。
　ローダン・シリーズでは珍しいセックス・シーンを絡ませつつこの挿話は進み、最後はコンセプトの世界に戻らなければヴィアナの命はない、という悲恋に至ります。表紙絵のヴィアナの頬に流れる涙とは、いったい何を意味するのか。
　で、なぜヴィアナがブラフになびいたのかって？　マルペ話だから、と答える以外どうしようもないだろうなァ。（なんだよｗ）

　さて、コンセプトたちの大祭典は、巨大花火にいろどられて華やかに行われます。彼らの出現がトリガーとなってネーサンの機能が復活したことにより、地球上のハイパーポジトロニクスはいっせいに地球の工業・農業・気象の制御を再開します。そのため、交配しきっていた世界は再び自動制御のロボットたちによる復興が始まるのです。
　なんのためにこんな事が行われたのか。〝それ〟とネーサンとの取り決めとは何か。

　やがて祭りも終わり、多くの謎を残したまま、コンセプトたちは現れたと同じように去っていきます。

　　840 ブルロクのシュプール
　ところで、ブルロクという言葉で変な反応をした人、手を上げて。ｗ
　はい君、どこから来た？　エンコリ？　ゴコリア？　KJ？　それともゼフィリア？
　いやね、韓国語で ブログ と書くと、自動翻訳機のエンジンが ブルログ と変換するんですよ。だからこの言葉でお里が知れる。あは。
　ま、それだけ。
　さて、ブルロク（Bulloc）の話に戻ろう。 (,⌒-⌒)v

　＜ソル＞の船内で、マスクを外した顔を人に見られると相手を発狂させてしまうことが原因で、隠者のように人を避けた生活をしているマスクの男アラスカ・シェーデレーアは、ドウク・ラングルの突然の訪問を受けます。ラングルらテルムの女帝の研究者たちは、今日の日付3584年10月15日を指摘し、カヌール銀河中枢部でローダンと共に消え去ったブルロクを探し始めて半年経ったと言います。
　もはや、アラスカがローダンから受け継いだテルムの女帝のクリスタルでは、ブルロクのシュプールは追えないのではないか、と。
　そして、クリスタルを自分たちに渡すようアラスカに要求したのでした。驚いて拒否するアラスカをパラライザーで麻痺させてクリスタルを奪い、ラングルの研究用宇宙船＜ヒュプファー＞で、他の三人の研究者と共に＜ソル＞から飛び立ちます。出発に当たっては、自分たちが何者であるか知りたい、という要求を持ち出して、友好的に出て行ったのでした。
　彼らがクリスタルを盗んだことを知ったのは、猫男ブジョ・ブレイスコルだけ。彼はこっそりと、＜ヒュプファー＞から反重力ハチの巣シリンダーを外しておきます。

　＜ヒュプファー＞は、ガヌール銀河の中枢部にあるメダイロン星系から41,000光年離れた赤色恒星クルームの第二惑星に着陸します。
　そこで発見されたのは、チョールクのリーダー、プーカル。重傷を負ったこのプーカルは、いったいどんな役割を果たしたのか。
　自分たちは何者か。知的生物なのか、ロボットなのか、それ以外なのか。ずっと悩んでいたラングルはようやく答を得ます。

　ラングルの仲間三人が死んだことを悼んで、この惑星は〝ホープレス〟と名付けられましたが、ここに現れた第四具象ブルロクは何をしようとしているのか。ローダンのクリスタルとプーカルのクリスタルの二つを手に入れた＜ソル＞のリーダーたちは、ブルロクとローダンを追うシュプールをつかめるのか。
　未来はまだまだ混沌としています。

　あとがきにかえて　は　林啓子さん。
　秘書として活躍している林さんですが、不意に上司がドイツに帰るというメールを受け、驚愕したのだそうな。彼と共にドイツに行ってそこで仕事しようか、とも考えたけれど、年齢を考えてやめたのだそうです。
　悩んだ末に、ローダンのこともあるし(笑)、日本に留まることとなったのだそうな。人生いろいろですね。　　（2012/5/8）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-421	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 421巻					出版社：早川書房
書名：ガラス世界	ハヤカワ文庫SF1843　ウ1-421　早川文庫6986					ISBN978-4-15-011843-3 C0197

841 ガラス世界		Die Glaswelt				クラーク・ダールトン			1977/10/4	翻訳：五十嵐洋
842 無限への門		Tor in die Unendlichkeit				H・G・フランシス			1977/10/11

		価格：580Yen	ページ数：288P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/3/25		購入：2012/3/31	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　841 ガラス世界
　惑星フォグルから転送機によって無限の彼方に投げ出された、エルンスト・エラートとテラナーの少年ゴルスティ・アシュドンによる二重コンセプト。どのくらいの時間がたったのか、そのくらいの距離をこなしたのか、まったくわからないままに宇宙を漂っているうちに、〝それ〟のコンタクトを受けます。〝それ〟はある惑星で救難作戦を行う道具として、彼らを呼び出したのでした。
　〝それ〟が介入するほど重要なものとは何か。
　ローダンです、むろん。

　ローダンが目覚めたのは、奇妙な、ガラスが散乱する世界。
　偉大な文明が一度栄えて滅びたその遺跡か。このガラスは、かつて惑星の気温低下に対抗するために、一つの大陸全体を温室としたそのなごりでした。
　割れにくい耐候性のある透明物質の開発ができない文明とは情けない。　(≧∇≦)
　ここで出会ったフェレットに似た生物は、地面に小枝で　ELLERT　とならべて見せます。エルンスト・エラート！　なぜ彼がここに、しかも口もきけない小動物の中にいるのか。
　ブルロクが意識を失っている間に、ローダンはこの小さな動物の中に宿ったエラート＆アシュドンと共に探求を進めます。

　3584年12月、＜ソル＞の天文物理学者ウィッガーマン博士が、指揮官アトランに一つの発見を伝えました。ローダンが、ほぼ二千光年ほどの世界にいる、と。
　急行した＜ソル＞が発見したのは、ガラスが散乱する惑星とローダンの痕跡。すでに去ってしまったものの、ようやくローダンのシュプールをつかめたのです。

　　842 無限への門

　「地球は全人類の原郷である！」とジュリアン・ティフラーは演説した。「したがって、そこに帰還することは、人類にとり希望の象徴となる！」　（P159)

　こう主張する、ＮＥＩ、新アインシュタイン帝国の政府主席ティフラー。
　しかし、５０万を超える聴衆の心をつかめた様子はない。ティフラー自身も、その自信はない。ガイアで生まれ、ここで育った人々にとって、はるかな過去にラール人の侵攻を恐れて銀河系を去って行方不明になった地球は、もはや戻るべき故郷ではないのです。
　ラール人が銀河系から駆逐されつつある今、その現実は彼らの未来をどう導くのか。

　しかしGAVÖKと共闘してラール人を偽ブラックホールに追い込んで全滅させる計画は、まだ完了していません。政治的状況も重大ですが、ラール人駆逐計画〝巡礼の父〟をまず進めなければなりません。
　ＮＥＩの中にも、この〝巡礼の父〟計画に反対し、失敗させようと動く地下組織があるらしい。ラール人の動きも、ちょっと怪しい。
　政変によって〝ヘトソンの告知者〟の地位を追われたホトレノル=タアクは、ラール艦隊を離脱します。彼の運命はどうなるのか。

　126年にもわたるラール人支配が終わるとしたら、銀河系はどうなるのか。
　人類世界は、新たな時代に入ろうとしています。

　あとがきにかえて　は　五十嵐洋さん。
　426巻から450巻までの原書と日本版タイトルの紹介と共に、半球型惑星エデンⅡのかたちのこと。そう、このモデルとなったことになっている人工惑星ワンダラーは、半球型じゃないんだよね、という話。
　鐵太郎でも指摘していた事であった、とすこし内心で威張ってます。（爆）　　（2012/6/4）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-422	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 422巻					出版社：早川書房
書名：早熟な夢想家	ハヤカワ文庫SF1846　ウ1-422　早川文庫7000					ISBN978-4-15-011846-4 C0197

843 早熟な夢想家		Die Frühträumer				H・G・フランシス			1977/10/18	翻訳：渡辺広佐
844 オリンプの異人		Fremde auf Olymp				H・G・エーヴェルス			1977/10/25

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/4/15		購入：2012/4/6	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　843 早熟な夢想家
　カドとシグの男女は、ツグマーコン人科学者マッカル・カルフによって作られた実験的な非造物。外観はツグマーコン人に酷似しておりますが、特殊な能力を持っています。早熟な夢想家と名付けられた彼らは、エネルギーを自在に扱い、空間を自由に飛び越します。
　彼らに自らをタートと呼ばせるカルフは、彼らを手先として銀河系を放逐されたラール人との確執を何とかしたいと考えていたのですが、この二人が自由意志を持つようになったために、情勢は変わっていきます。

　同じころ、3685年3月末、ガイアにいるジュリアン・ティフラーは、〝巡礼の父〟計画に従ってガヌール銀河にある地球に移住を望む人ル餓全体の60パーセントであることに落胆しています。こんな状態では、いざ事を動かすときになって内乱が起きる可能性すらある。
　このさなか、７Ｄ人間ケルシュル・ヴァンネはティフラーに告げます。〝それ〟は人類をガヌール銀河に導くことを望んでいない、と。さらに付け加えます。〝それ〟は、地球を太陽系に戻そうとしているらしい。
　はたして、この情報をどう扱えばいいのか。

　　844 オリンプの異人
　今回は、ヴォリオ=500型スーパー・ロボットであるかつての自由商人の皇帝アンソン・アーガイリスの視点で描かれます。正確には、アーガイリスの姿はヴォリオ=500が持つ48の〝疑似ヴァリアブル繭マスク〟の一つに過ぎないのですが、
　ＮＥＩの隠れ場である暗黒星雲プロヴコン・ファウストからオリンプに戻る途中、そのオリンプに不可解な異人が現れたという報告を受けます。この情報からすると、かつてオリンプに侵入したことがあるガイズ=ヴォールビーラーたちは、実はもっと大量に侵入していたらしい。
　彼らの意図はなにか。彼らは人類に何をもたらすのか。

　ところで、宇宙空間でガイズ=ヴォールビーラーたちに発見されたテラナーの宇宙船＜ハー・ブリタニック・マジェスティ＞を管理するロボット、ジョージは、自分の主人をガイ・ネルソン、かの有名なホレイショ・ネルソンの子孫なのだと言います。
　はて、ネルソン提督の直系の子孫というと、愛人であったレディ・ハミルトンの娘ホレイシアの家系だけだろうけど、ネルソン姓は名乗っていないはずですが．．．？

　あとがきにかえて　は　渡辺広佐さん。
　今年も小田原に行って、たくあんを買ってきたのだそうな。そこで一句。
　　　　たくあんの浅漬け旨し梅の里
　ほう。　　（2012/7/2）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-423	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 423巻					出版社：早川書房
書名：ラール人の逃避行	ハヤカワ文庫SF1847　ウ1-423　早川文庫7001					ISBN978-4-15-011847-1 C0197

845 星の漂流物		Treibgut der Sterne				ハンス・クナイフェル			1977/11/1	翻訳：赤坂桃子
846 ラール人の逃避行		Die Flucht des Laren				エルンスト・ヴルチェク			1977/11/8

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/4/25		購入：2012/4/21	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　845 星の漂流物
　＜ハスの花＞という華麗な名前を付けた宇宙船が航行しています。
　もとは超弩級戦艦の強力な高速搭載艇〝SK=8909〟だった60メートル級の球形コルヴェットで、パトリシア・デラ・バリーという美貌の指揮官率いる宙賊の宇宙船、というと、宇宙狭しと暴れ回る物語を創造しますよね。まァ普通。
　ところがクナイフェルはヒネています。

　この＜ハスの花＞は、いたるところにヒビや錆びや傷があり、満身創痍。乗り組んでいるのはパトリシアの息子ソル・ケインを含めてもわずか５人ですが、補給物資は底をつき、いつ破船になるかもわからない状態。命を預ける宇宙服も、一番まともなものでさえ穴だらけ。
　＜ハスの花＞がある衛星軌道から回収した物体、乗員が〝トランク〟と名付けたものの中から現れたイモムシ状の生物が、この小型艇を危機に陥れます。
　この映画「エイリアン」的騒動の中で、宇宙を漂う動けないラール人宇宙艦57隻の中に潜んでいたかつてのヘトソンの告知者、ホトレノル=タアクが、この小型宇宙艇を発見したのでした。

　　846 ラール人の逃避行
　惑星オリンプに向かう宇宙艇＜ハスの花＞を操縦するのは、ラール人ホトレノル=タアクただ一人。宙賊からこの艇を奪い取った彼は、意気揚々と人類の最重要基地惑星に向かうのでした。
　しかし計算外だったのは、この＜ハスの花＞の老朽具合。このオンボロ船のために、新アルコン人、ブルー族、アコン人などの連合パトロール隊に捕まってしまったとは、不運と言うべきか。
　正体がホトレノル=タアクと知られれば、即座に命はない。彼はただの兵士であるホオルグ=ハムポトゥルと名乗って人道的な処置を願うこととしますが、新アルコン人はともかく、ラール人への恨みが重なるブルー族やアコン人は、冷静な判断など出来ない。
　さらに不運なことに、このパトロール隊はホトレノル=タアクを救出した直後に、奇妙な超重族を発見したのでした。彼はトルーカンと名乗り、なんとあの、ローダンの後に銀河第一へトランとなったレティクロンのクローンなのだそうな。

　このややこしい状況の中で、ホトレノル=タアクの生き残り策は。

　あとがきにかえて　は　赤坂桃子さん。
　ハンス・クナイフェルが3月7日に亡くなったとのこと。享年75歳。
　菓子職人からSF作家となり、30代で職業学校の教師となった苦労人だったそうな。
　　「大作家（Dichter)ではなく、単なるストーリーテラーだ」
　　「私のことを〝腕のいい職人〟といってくれる人がいたら、抱きしめたい」
　いろいろと文章に難があり、粗製濫造の点もある作家ですが、こんなクナイフェルに感謝、だそうな。　　（2012/8/6）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-424	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 424巻					出版社：早川書房
書名：最終要塞タイタン	ハヤカワ文庫SF1849　ウ1-424　早川文庫7011					ISBN978-4-15-011849-5 C0197

847 メタモルフォーゼ		Metamorphose				H・G・エーヴェルス			1977/11/15	翻訳：増田久美子
848 最終要塞タイタン		Titan － die letzte Bastion				クルト・マール			1977/11/22

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/5/15		購入：2012/5/12	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　847 メタモルフォーゼ
　惑星オリンプの地下で詠唱される、ガイズ=ヴォールビーラーと〝法〟とトバの歴史。アンソン・アーガイリスの支配下にあるこの重要基地にまんまと潜入した278名ものガイズ=ヴォールビーラーの前で過去を語るのは、クロイブニツァー。生物的返信能力を持つガイズ=ヴォールビーラーの一人として、今は巨大な昆虫型生物であるチュルムチュの姿をしています。
　彼らガイズ=ヴォールビーラーは、この銀河系からだけでなく、アンドロメダ、M-33、ＮＧＣ２６８、ＮＧＣ２４０３の四つの銀河系から派遣された代表です。クロイブニツァーは銀河系から3300万光年離れたＮＧＣ２６８からきたスポークスマン。
　敗残者として大宇宙にちりぢりに点在していた彼らは、トバを再発見してかつての栄光を取り戻そうとしています。その橋頭堡として得たのが、かつて公会議の先鋒として銀河系を支配したラール人の恐怖時代の中でもしぶとくしたたかに生き抜いた人類の、最重要基地である惑星オリンプ。

　しかしこの様子は、オリンプ皇帝アンソン・アーガイリスによってこっそり監視されていたのでした。分子変形能力者であるこの古代種族の末裔の意図に困惑しつつ、彼らを敵でなく友と出来ないものかと考えるのでした。

　鐵太郎としては、このガイズ=ヴォールビーラーについては、欧州史の中で、ユダヤ人の歴史、ディアスポラと最後の審判に勝利する夢のようなものがうかがえます。とすると、これを天から見おろして彼らの古色蒼然たる目的に苦笑しつつ連携の道を探るアンソン・アーガイリスは、キリスト教の神なのか。(笑)
　いろいろメタファーが見えて面白い。

　かのネルソン提督の子孫だというガイ・ネルソンの船＜ハー・ブリタニック・マジェスティ＞を駆るロボットのジョージなども絡め、事態はますます急展開。

　　848 最終要塞タイタン
　超重族のデトロランクは、宇宙要塞スナイダーオストから誘い出され、宇宙空間でGAVÖKの艦隊に捕捉されます。僚艦83隻の重装備艦はたちまち駆逐され、デトロランクは搭載艇で危うく脱出。
　逃れる先は、もはや太陽系の土星の衛星、徹底的に改造をほどこされて鋼要塞となったタイタンしかない。上位の〝英雄〟であるデトロランクは、超重族が占拠しているこのタイタンならば、歓迎され、司令官として受け入れられると確信してここにむかうのでした。
　しかしタイタンには、すでにＮＥＩ新アインシュタイン帝国と手を組んだラール人ホトレノル=タアクが、ヘトソンの告知者の肩書きを振りかざして乗りこんでいたのでした。

　混迷する情勢を評してＮＥＩ首席ジュリアン・ティフラーは、

　「典型的な〝それ〟のやり方だな」と叫んだ。「あちこちに暗示がある．．．　問題に気づくのに十分なほど。しかし、解決へのヒントはまったくない！」　　（P156)

　とぼやく。事態はますますややこしくなるばかり。

　テラとルナが太陽系に帰ってくる、かも、という、人類テクノロジーのレベルでは荒唐無稽な計画が再びもたらされます。はたしてこれは実現するのか。

　あとがきにかえて　は　増田久美子さん。
　「メタモルフォーゼ」の扉に、G・K・チェスタートンの　「機械は嘘をつくことができない。しかし真実を語ることもできない」　という言葉があります。これは、うそ発見器、ポリグラフの原型のことを指すらしい。
　そしてこの器械の話から、それを使いこなす手法のこと、そして機械つながりでローダンに出てくる魅力的なロボットの話。アンソン・アーガイリス、アウグストゥスのこと。
　なんか楽しいネタです。　　（2012/5/24）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-425	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 425巻					出版社：早川書房
書名：バルディオク	ハヤカワ文庫SF1850　ウ1-425　早川文庫7012					ISBN978-4-15-011850-1 C0197

849 奈落への跳躍		Sprung über den Abgrund				クルト・マール			1977/11/29	翻訳：五十嵐洋
850 バルディオク		BARDIOC				ウィリアム・フォルツ			1977/12/6

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/5/25		購入：2012/6/2	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　849 奈落への跳躍
　恒星メダイロンがブラックホール化しつつある今、テラ=ルナ系は無事に太陽系に転送されるのか、発生するであろう重力渦流はどの程度の被害を及ぼすのか。いまだに予断を許さない情勢です。　人工惑星エデンⅡに向かうこととなった自称〝堕落したコンセプト〟であるホーマー・G・アダムスは、エデンⅡにいるコンセプトたちなら、この情勢に関する〝それ〟の意図を多少でも知っているのではないか、という希望を持っていたのでした。なにしろ、かつてテラが消滅したあとに重力のバランスを取るために太陽系に現れたミニ矮星コボルトは、テラが復帰しつつある今もまだ太陽系内にあり、しかもブラックホール化しつつあるのです。これでは、カタストロフィがおきても不思議はない。
　〝それ〟はいったい何を考えているのか。

　テラ・パトロールに反抗的なボスケッチ・グループのリーダー、グラウス・ボスケッチが、ワリク・カウクの妻であるマルボオことマーラ・ボオテスを誘拐する事件が起きます。転送されるテラの上で
起こるであろうカタストロフィを考え、残された数日をどう楽しむかという歪んだ思いの表れらしい。
　マルボオが連れ込まれたのは、かつてプロフォスの独裁者だったイラチオ・ホンドロの別荘で、のちにアフィリーの手によって記念碑とされたもの。
　さあ、テラ・パトロールの面々は迫り来る破滅的な重力渦流の中で、マルボオを救出できるのか。

　標準暦3585年6月28日、テラとルナは無事、メダイロン=コボルト転送回廊を抜けて太陽系に帰還しました。

　　850 バルディオク
　超越知性対バルディオクの生涯が描かれます。いよいよバルディオクの正体がわかるのです。o(^-^)o ﾜｸﾜｸ
　並行して、ブルロクに拉致されたままのペリー・ローダンの旅も描かれますが、実はこの話は旅の途中でブルロクがローダンにバルディオクの歴史を語る、と言う形式なのです。
　むろん、ブルロクの別な意図もあるはず。
　いずれは人類社会に帰るはずですが、テラは元の太陽系に戻ったというのに、シリーズのタイトル・ロールであるローダンはいまだに宇宙のはるか彼方。

　このブルロクがローダンを伴っての旅の果てに、ようやくバルディオクのいる世界につきます。しかし、降りた惑星のどこを見ても、ローダンの目にそれらしい姿はありませんでした。
　しかし、ローダンの目は驚愕に見開かれます。

　何度も否定しようとしてたが、そのたびに事実だと思いしらされる
　この大陸全体　・・・いや、惑星全体をおおうもつれあったネットは、それ自体がひとつの巨大な〝脳〟であった。
　つまり、〝これ〟がバルディオクなのである！　　（P179)

　なんということか。
　これだけスケールの違う相手が、卑小な人類の一人の事をとりたてて意識しうるものなのか。

　バルディオクがかつて属していた「七強者」のひとりガネルクが「監視者」となり、カリブソと名乗り、小人のマスクを付けて殲滅スーツを武器に選んだ、というのが新しい情報でしょうか。
　そしてかつてローダンら人類をおそった「大群」の正体も。

　しかし鐵太郎は、こまったことにこのかつてのエピソードをすっかり忘れちゃっています。(-＿-)；

　あとがきにかえて　は　五十嵐洋さん。
　諸事情により、たった1ページのみ。
　ホンドロの別荘が1200年以上にわたり地球の史跡として残った事、ずっと完璧に維持管理されていた事、帯ネズミの姿蒸しというゲテモノ料理を好物として、千年以上冷凍保存していた事、すべてどうもへんだよね、と言う突っ込みです。
　たしかに、変だね。　　（2012/10/17）　

		Ver. 2.23

管理番号：R400-426	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 426巻					出版社：早川書房
書名：星々のあいだの孤島	ハヤカワ文庫SF1855　ウ1-426　早川文庫7024					ISBN978-4-15-011855-6 C0197

851 大宇宙の悪夢		Kosmischer Alptraum				ウィリアム・フォルツ			1977/12/13	翻訳：嶋田洋一
852 星々のあいだの島		lnsel zwischen den Sternen				クラーク・ダールトン			1977/12/20

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/6/15		購入：2012/6/8	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　851 大宇宙の悪夢
　脳のみの存在となって追放されたバルディオクと、第四具象ブルロクに捕らえられたローダンの話。
　故障することのない生命維持システムに守られ、自分でなにをすることもできないバルディオクは、唯一残った意識的な生命活動である思考を止めることすら、できない。自分を包む牢獄であるカプセルが、とある惑星の洞窟にあることすら、分からない。
　孤独な生の中で思うのは、彼を追放した六強者、かつての兄弟たちへの憎悪と報復、それしかない。
　気の遠くなるような時間の果てに、いくつかの偶然が重なり、カプセルが崩壊します。そして外部に繁茂する植物の根がバルディオクを包む。

　数十万年ののち、バルディオクは自らの意識を惑星上の大陸すべてにまで広げます。しかし、はっきり意識、意志がある状態ではない。半ば眠り、夢の中にある。その不安定な状態の中で、その勢力を宇宙の中に徐々に伸ばしていったのでした。
　その中で生み出された三つの具象。クレルマク、ヴェルノク、シェルノク。そして究極の具象、ブルロク。
　このブルロクとバルディオクの関係はどうだったのか。ブルロクに支配され、バルディオクの惑星に連れて来られたペリー・ローダンはなにをすればいいのか。自由を得られるのか。

　カリブソと名乗るようになった元の七強者の一人ガネルクは、バルディオクと対決することとなるのか。

　　852 星々のあいだの島
　巨大世代宇宙船＜ソル＞の内部では、この宇宙船で生まれて育つソラナーはすでに7,100人に至っており、それに対しテラ生まれは2,832人と少数派。ソラナーたちは、過去の歴史を捏造し、＜ソル＞こそが楽園でありテラを含む惑星上の生活は、悪の巣窟だと若者に教育し、ソラナー以外の人類、＜ソル＞の外の世界への嫌悪、憎悪を煽っています。
　この状況は、＜ソル＞の指揮を執るアトランとして、頭が痛い。彼らソラナーの反発いや反乱をどう抑え込むのか、どう引き延ばすのかに腐心する日々。

　「ぼくたち、少数派政権なの？」ネズミ=ビーバーがいつになく真剣にたずねた。
　「じつのところ．．．そのとおりだ」と、アトラン。　　（P136)

　外に目を向けさせてみたら、と考えた＜ソル＞首脳部は、たまたま現れた宇宙空間の未知の物体の探査を、ソラナーとテラナーの合同チームで行おうと考えます。まるでリクゾウガメのような形状のこの物体は、長さ5.2キロメートル、幅3.9キロメートル、厚さ3.7キロメートル。

　バルディオクの配下であるフルクースの宇宙船＜キイレクス＞は、銀河系宇宙のただ中で故障し、超光速航行ができなくなった中で、古い放棄された前哨ステーション＜パルクストルヴ＞に到着します。
　この巨大なステーションには、食糧や生活支援物資は大量にあるものの、技術的な補給物資は残っていません。乗り組んでいた3,500体のフルクースは、やむを得ずここで生活することとなります。
　それから数ヶ月後、ステーションに迫るダンベル型の巨船＜ソル＞。
　フルクースたちは、この船をおびき寄せ、占拠して脱出しようと考えます。

　しかしこのステーションには、もうひとつ、別な種族がひそかに居住していたのでした。

　あとがきにかえて　は　嶋田洋一さん。
　なんと、花見の話。いい花見ができたよ、と言う報告。
　うーむ、すっかりため込んじゃったな。　　（2012/11/7）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-427	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 427巻					出版社：早川書房
書名：人類の故郷	ハヤカワ文庫SF1856　ウ1-427　早川文庫7025					ISBN978-4-15-011856-3 C0197

853 人類の故郷		Heimat der Menschen				H・G・フランシス			1977/12/27	翻訳：嶋田洋一
854 ガイア・ミュータント		Mutanten von Gäa							1978/1/3

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/6/25		購入：2012/6/22	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　853 人類の故郷
　まず、3460年3月7日に起きた事件、テラ＝ルナ系が太陽系から丸ごと脱出しようとしたとき何があったかが語られます。そしてローダンが望んだ転送先、大質量の天体がひしめく銀河系中心に現れず、はるか彼方のメールストロームに出現してしまった理由も。おそらく、ですが。
　しかし、125年後にテラ＝ルナ系が太陽系に帰還したとき、時代はすでに大きく変わっています。

　この巻では、多くの惑星上で息を潜めていたテラナーたちのテラへの帰還と、ヴォルサー・スロインビーという謎のミュータントの探索及びその最後、そしてテラが新しい政府をつくる過程が描かれます。
　3586年1月1日を期して、テラ評議会統一選挙が行われます。首席テラナー１名と、最高テラ評議員１名と、テラ評議員11名を選出するもの。
　評議員、といいますが、立法府のメンバーというより行政担当っぽい。立法は首席テラナーが行うんでしょうか？
　その、科学担当評議員として推薦されたのが、ペイン・ハミラー。なぜ彼の名が上がったのか。

　テラ復活の兆しを受けて、かつての強権を持つ太陽系帝国復活を危惧するGAVÖKは、この先の未来への不信を隠しません。そこにつけいろうとしたスロインビーの策略は何か。だれのために動いていたのか。何をしようとしたのか。
　あばたの男ロナルド・テケナーの捜査の中で、何かが起きたのでした。

　　854 ガイア・ミュータント
　エルトルス人たちに支配された惑星トラリオパから始まります。地球から17,803光年離れたこの惑星は、テラから派遣された宇宙船によってようやく解放されたのですが、そこに住んでいた他の住民、アコン人、アラス、ブルー族たちはこれからどう扱われるのか懸念します。テラナーがヘゲモニーを握って新たな支配種族になるのであれば、世界は何も変わらないではないか。
　この騒乱を孕む火種は、実は銀河の至る所にあったのでした。

　首席テラナーに選出されたジュリアン・ティフラーは、この問題に取りかかる前に目の前の火種、かつての強大な太陽系帝国第執政官であったローダンの名を継ぐ人間、ロワ・ダントンすなわちレジナルド・マイクル・ローダンが次点をわずかに上回る得票で最高テラ評議員として選出された古都への対応を迫られます。ローダンの名を持つ人物が政権の首座については、過去の復活とも取られかねない。
　しかしティフラーはロワ・ダントンの手腕と人物を信じています。

　ティフラーが宣言した今後のテラの方針は、選挙中に何度も公言していたことですが、画期的なものでした。
　まず、自由テラナー連盟（LFT）を設立させる、と。
　これは、テラニア・シティに本部を置き、かつての太陽系帝国とＮＥＩの後継者であり、自由を求めるすべてのテラナーによって構成されるものとします。そしてこの組織は、GAVÖKと連帯して平和を求めるすべての種族と友好関係を持つ、とも言います。
　今後、銀河系には支配種族は存在しない、存在させない、という信念であると宣言します。　
　はたしてこの計画、綱領はそのまま敷衍させることができるのか。

　陰に暗躍する謎のミュータントたちがいます。はたして彼らの目的は何か。

　そしてもう一つ、3586年1月10日、テラのクレタ島にある前ミノア文明の発掘現場で、ある文書が発見されて解読されました。その中に興味深い言葉があり、ティフラーその人に報告されます。
　あらゆる邪悪をもたらすもの、パン=タウ=ラ。

　あとがきにかえて　は　再び嶋田洋一さん。
　今度はゴールデン・ウィークのこと。バーベキューの話。
　ところで、バーベキューをBBQと略するのは、欧米でも同じなのだそうな。しかしこれは、普通の英語の略し方と違うよね、とのこと。
　むしろ、　秋葉原→アキバ→AKB、栄→SKE、難波→NMB、などの省略法に似てないか、だってさ。
　なるほど．．．？　　（2012/12/5）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-428	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 428巻					出版社：早川書房
書名：精神スペクトル	ハヤカワ文庫SF1860　ウ1-428　早川文庫7037					ISBN978-4-15-011856-3 C0197

855 精神スペクトル		Spektrum des Geistes				エルンスト・ヴルチェク			1978/1/10	翻訳：青山茜
856 死の惑星での邂逅		Treffpunkt Totenwet				H・G・エーヴェルス			1978/1/17

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/7/15		購入：2012/7/7	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　855 精神スペクトル
　3586年と3491年の双方を行き来しながらストーリーが進行します。
　3491年とは、むろんいまだラール人の元で超重族が銀河系を支配していた時代。お話は暗黒星雲の中の聖域に逃げ込もうとする避難民であふれかえった＜グルスメス＞の描写から始まります。
　自由なテラナーの隠れ場所であるプロヴコン・ファウストのガイア人であるヴィルナ・マルロイは、この救援艦の中で避難民の世話係として20回以上も支援航行に参加しています。
　この時代の、（このエピソードの）ヒロイン女性ですから、むろん美人でしかも頭が軽い。言い寄る男にすぐなびく。信用ならないと噂されるヴィンクラン人ハルツェル。コルドに言い寄られ、愛していると言われてすぐツォッタートラクトなる惑星に行くことに。それまで深い仲だったらしい艦の首席将校ヴィク・ロンバートは、あっさり振られてしまう。
　一応後半で、自分の我を通して我が子と共にコルドの元を離れますが、まともな向上心や計画性はない。あるのは「無私無欲の犠牲心」なるものだけ。
　かくしてガイア人つまりテラナーである彼女と、謎のヴィンクラン人との間に生まれたガイア・ミュータント、ボイト・マルゴルが世に現れたのでした。

　　856 死の惑星での邂逅
　進化に対する冒頭の論が面白い。
　〝人類〟とは、生物進化の頂点なのだという。そして36世紀の今、動物から人類へと〝進化〟するのが正しい進化の方向であるという概念が正義であり、しかも〝人類〟という概念は単にテラナーのことだけではなく、あらゆる知性体に拡大するものなのだ、という。
　そうなんだ、当時は進化とは人類を頂点として変化していく事をさしていると考える事が一般的だったのかな。無邪気な時代でしたね。

　テラ暦3585年12月20日、ケルシュル・ヴァンネは〝それ〟のメッセージを受けて緊張しています。〝それ〟これを告げただけなのですが。

　オリンプをはなれ、人間にとり宇宙の意義に関わる出来事に備えておくように。　　（P151-152)

　なににそなえろと？
　ヴァンネは次のメッセージ、　ポルポウロ=デンジャーへ飛べ！　（P154)　に従ってこの謎の星に向かいます。塵カバーに覆われたこの赤色巨星で、彼、いや彼を構成する合計7人のコンセプトは、いったい何を見たのか。
　現れた謎の男女、かの子爵ホレーショ・ネルソン提督の末裔である、不老不死となったメイベルとガイ・ネルソンの姉弟は、いったい何のために現れたのか。
　そして再び現れた謎の言葉、パン=タウ=ラ　PAN-THAU-RA。

　ヴァンネはテラに帰還し、首席テラナーとなったジュリアン・ティフラーにこれを報告すると、ティフラーは青ざめます。昨日、クレタ島で出土した古代の記録文書の解読により、

　〝パン=タウ=ラ〟は病原菌や、そのほか災いを呼ぶものがいっぱいにつまった容器を、先ミノア文明の上にぶちまけた・・・　　（P266)

　事がわかったのでした。これはやはり、パンドラの神話なのか。

　あとがきにかえて　は　青山茜さん。
　松谷健二氏翻訳の『Uボート』（ロータル=ギュンター・ブーハイム）のこと。
　昔、現存するUボート、ドイツ、ブレーメンから一時間ほどのブレｰマーハーフェンで、U2540というXXI型潜水艦を見たことがあること、この小さな艦内で生き、戦った将兵のこと。
　そして、潜水艦って宇宙船と似ていないか、という話。ふうむ。　　（2012/12/13）

		Ver. 2.23

管理番号：R400-429	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 429巻					出版社：早川書房
書名：アフィリーの遺産	ハヤカワ文庫SF1861　ウ1-429　早川文庫7038					ISBN978-4-15-011856-3 C0197

857 アフィリーの遺産		Erbe der Aphilie				クルト・マール			1978/1/24	翻訳：五十嵐洋
858 ＜バジス＞		Die BASIS							1978/1/31

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/7/25		購入：2012/7/21	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　857 アフィリーの遺産
　ネーサンの活動が命令もないのにいきなり活発化し、時に18兆キロワットもの電力を消費したりする状態が観測されます。これは、異常。かつてここがアフィリーの世界だったとき、彼らがなにかのプログラムをネーサンの中に残したのか。
　ペイン・ハミラー科学担当評議員を中心に、かつてのテラ・パトロールのジェット・カンタルにまで声がかかって調査が開始されます。しかしハミラーは、謎のミュータントに支配されているし、カンタルはかつての独裁者トレヴォル・カサルの副官であった上、最高テラ評議員の地位を争ってダントンに敗北したという経歴を持つ。この微妙な情勢の中で、月の内部、ゲルミア・セクターで彼らは何を見つけたのか。

　　858 ＜バジス＞
　発見されたネーサンの秘密とは、3586年1月21日に月面で発生した大爆発であらわにされます。
　月表面の一セクターが跡形もなく消滅し、月面に開いた穴から謎の物体が宇宙空間に放出されたのでした。物体の総数は10万ないし11万、その質量は合計で1ギガトン。すなわち10億トン。
　この質量の物体が虚空の中で合体し、巨大な、ネーサン名付ける＜バジス＞となる。
　＜バジス＞とは、すさまじく巨大な宇宙船、らしい。
　アフィリカーはなぜ＜バジス＞建造計画を開始したのか。アフィリカーの影響が消えたあと、ネーサンはこの＜バジス＞計画をどのように改変したのか。＜バジス＞とは、結局なになのか。
　すべては、まだ謎のまま。しかし謎のミュータントボイト・マルゴルは、自分の支配下にあるペイン・ハミラーをこの船長として指揮させ、自分の権力を確立しようと画策しています。

　あとがきにかえて　は　五十嵐洋さん。
　原文では18兆ワットだったのだそうな。これはあまりに少なすぎるのでは、ということで、18兆キロワットに単位を換えたそうな。ふうん。
　それと、＜バジス＞の質量10億トンというのが、ちょっと小さくないか、とのこと。これはなんとも言えないのでそのまま。
　巨大であることを売りにしたSFというものは、その数字で圧倒しようとすると共にその数字の整合性に問題が出たりしますね。
　あ、ウルトラマンの体重とかで、突っ込んでいる人がいたっけ。そんなことをネタにして本まで書いちゃったんだから、なんだかなぁですけどね。(笑)　　（2013/01/05）