ローダン 430-439

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　宇宙英雄ローダン　430～439　

巻数	書　名	作　家
430	時間超越者の帰還	ハンス・クナイフェル＆ウィリアム・フォルツ
431	脳搬送	ウィリアム・フォルツ＆クラーク・ダールトン
432	眠れる女神	H・G・フランシス
433	災いのオーラ	H・G・エーヴェルス
434	＜バジス＞発進！	H・G・フランシス＆クルト・マール
435	怪物とアフィリカー	クルト・マール＆ウィリアム・フォルツ
436	影の世界	ウィリアム・フォルツ＆ハンス・クナイフェル
437	ヴェルガースペアの監視者	H・G・フランシス
438	支配者ラルド	マリアンネ・シドウ＆クルト・マール
439	ルーワー登場	クルト・マール＆エルンスト・ヴルチェク

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		Ver. 3.00

管理番号：R400-430	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 430巻					出版社：早川書房
書名：時間超越者の帰還	ハヤカワ文庫SF1864　ウ1-430　早川文庫7050					ISBN978-4-15-011864-8 C0197

859 暴力リング		Ring der Gewalt				ハンス・クナイフェル			1978/2/7	翻訳：赤坂桃子
860 時間超越者の帰還		Rückkehr des Zeitlosen				ウィリアム・フォルツ			1978/2/14

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/8/15		購入：2012/8/12	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　859 暴力リング
　惑星ヴォルチャー・プール、3586年。宇宙船＜カルマ＞が不時着してより数十年。三千人のテラナーは、ここでサヴァイバル生活を余儀なくさせられています。この中で、ハイタワス・ボールは少し変わった男。
　飛び立てなくなった宇宙船の周りにある集落を囲むように、住民たちが暴力リングと名付けたテラナーを敵視する動植物のゾーンがあります。ここでは、互いには自然のルールに従って共存しているのに、テラナーに対してはまるで意志を持っているかのように攻撃してくるのです。ここを抜けると、比較的平穏な世界になるのですが、テラナーの居住区の周りはそうはいかない。
　しかも、ここの動植物はテラナーの防衛武器あるいは攻撃武器に対応して、次々と短期間で進化して、より強く、より凶暴になっていくのです。
　しかしその中でも、ハイタワス・ボールは特殊なサヴァイバル能力があり、この惑星の友好的な原住民を仲間にすることができたのでした。

　あれ、と思った鐵太郎は、さらにその先の、

　メラルダは今もブラスターを装着したままだ。これは人間工学に基づいて設計されており、前腕にベルトで固定するタイプ。筋肉反射を感知しただけで、射撃紗の手の中に移動するようになっている。　　（P71)

　という描写で気づきました。
　これは、まさしくハリイ・ハリスンの「死の世界１」（1960）の世界です。なるほど、面白いね。
　クナイフェルはこれを読んでいたのか。あるいは、この設定がこの頃ほかのSFにもあったのか。

　後半のおマヌケなエルトルス人のお話を経て、とりあえずハッピー・エンドになります。

　この話は、マルペたちが揶揄する「ジャングル惑星エピソード」の一つですね。何巻かに一度、ジャングルの世界で苦闘する人々の挿話が必ず挟まれることは、「ローダン七不思議」の一つと言ってもいいかも。
　ラール人が権力の座から滑り降りたあとの混乱の中での、単発ストーリーの一つとして終わりそうですが、ハイタワス・ボールはこの先ちょっと出てきそうです。

　　860 時間超越者の帰還
　バルディオクの惑星でのローダンの話。
　そもそもがバルディオクの配下であったはずの第四具象ブルロクは、いまだに目覚めないで夢の中にいるバルディオクに反旗を翻し、その本体たる〝始原脳〟を発見してバルディオクを殺害しようとしています。しかし惑星全体に植物細胞を利用してその神経組織を広げたバルディオクですから、〝始原脳〟のありかはなかなか見つからず、ブルロクは捕らえていたローダンさえも逃がしてしまう。
　ブルロクは、テラナーが「小陛下」と呼ぶバルディオクの〝挿し木〟を運ぶフルクースの円盤形宇宙船を支配下に置いて、探索を続けています。
　片やローダンは、バルディオクと何とかコンタクトを取ろうと考え、この怪物の夢の中に入って自分の長い生涯の中で体験した悪夢のような記憶をその夢に紛れ込ませようとします。それにより、バルディオクは目覚めることができるのか。

　フルクースが〝バルクセフト〟と名付けた銀河に侵入した＜ソル＞は、バルディオクを起源とすると思われるインパルスをキャッチ、ついに一つの星系を特定しました。そこにバルディオク、そしてローダンがいるに違いない。

　カリブソと名のるかつての七強者の一人ガネルクは、シルクハットと殲滅スーツに身を固めてブルロクと交渉しようとしますが、決裂。そこで出会ったのは、かつてケモアウクに力を貰ったという謎の少女キトマ。彼女はなんのために現れのか。

　そしてついに、バルディオクが覚醒し、＜ソル＞はローダンと邂逅。おお。

　あとがきにかえて　は、赤坂桃子さん。
　ドイツ語通訳者、翻訳者はいまたいへんなのだそうな。下手をすると、職業として絶滅しかねないらしい。
　ある、四半世紀以上前から仕事をしているベテラン産業翻訳者が新規に翻訳会社に登録してみたら、提示された翻訳料金は駆け出し当時の額を大幅に下回っていたとのこと。
　そんな時代になってしまったのですねぇ。　　　（2013/01/9）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-431	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 431巻					出版社：早川書房
書名：脳搬送	ハヤカワ文庫SF1865　ウ1-431　早川文庫7051					ISBN978-4-15-011865-5 C0197

861 脳搬送		Gehirntransport				ウィリアム・フォルツ			1978/2/21	翻訳：嶋田洋一
862 時の冷風		Eiswind der Zeit				クラーク・ダールトン			1978/2/28

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/8/25		購入：2012/8/25	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　861 脳搬送
　ついに＜ソル＞と邂逅したローダンの願いは、それまで人類の敵であったはずのバルディオクをその惑星から引きはがしてテルムの女帝の元に運ぶこと。エピソード表紙の登場人物のリストにあるように、この巻から ソルのエグゼク１ つまり巨大な世代宇宙船＜ソル＞のナンバー１の地位に返り咲いたローダンは、その「願い」を事実上の命令、決定事項とできる立場。このあたり、ローダン・シリーズにおける「民主主義」のありようが、なんともご都合主義的。SF作家ハインラインやオールディスの描く世代宇宙船についてローダンが言及する（P95)のも、その辺になにかありそうな。(笑)
　むろんローダンという人物について、＜ソル＞生まれのテラナーが否定しているわけではない。尊敬と言うよりは反射的な畏敬の念を持っているようです。なんといっても、二千年以上にわたって人類の指導者であった伝説の人物ですから。
　とはいえ、悪夢からようやく目覚め、それまでの行為に慚愧の念を持つらしいバルディオクを船内に入れて運ぶと言うことは、＜ソル＞乗員にとって抵抗がある。ソラナーだけでなく、少数派となったテラナーにとっても。
　その反目の兆しの中で、バルディオクの始原脳がようやく発見されます。

　この間も、バルディオクによって生を受けた第四の具象ブルロクは、フルクースの艦隊でバルディオクを抹殺しようとします。これをどう防ぐか。

　最後に、少し正気を取り戻したバルディオクは、播種船について語り始めます。「物質の泉」の向こうにある未知の存在から胞子を積み、それを宇宙に配布して回ったというこの船の一つが、かくれているのだそうな。
　ローダンは、この船について問います。

　《せめて、あなたの播種船の名前を教えてくれないか》
　《そんな事が重要なのか？》脳が驚いてたずねる。
　《別に》とローダン。《それで．．．船の名前はなんというのだ？》
　バルディオクは眠そうに答えた。
　《特別な名前ではない、テラナー。船は＜パン=タウ=ラ＞と呼ばれていた》　　（P136)

　　862 時の冷風
　〝巡礼の父〟計画が完了し、自由テラナー連盟（ＬＦＴ）が発足してGAVÖKとの協力関係もかためられ、世情は安定しつつあります。しかし、ＬＦＴの首席テラナーであるジュリアン・ティフラーには、難問山積。
　その最大のものが、全長12キロメートルにも及ぶ巨大宇宙船＜バジス＞。ソルから２億８００光年離れたチューシク銀河へ発進しようとしているらしい。
　その他にもいろいろトラブルの元はあるのですが、ここへ来てあの過去の救い主の話がいきなり浮上。ダールトンお得意のデウス=エクス=マキナの一つ、万能の何でもテレビ(笑)、ハルノ。無限のエネルギーを持ち、どの時代、どの世界でもその球体のボディに投影できる能力を持ちます。持っていたはず。
　ところが最近、いつもエネルギーがなくて休息ばかりしています。困ったね。
　このハルノが、「迎えを求めている」とのこと。ティフラーは、半ミュータントのホーマー・G・アダムスに旧ミュータントのベティ・タウフリーの精神を宿らせて行かせます。これまた昔のキャラの虫干し状態か。
　アダムズが来る前に、かつてヘトソンの告知者として銀河系を支配していたホトレノル=タアクと、ラール人ロクティン＝パルの二人がハルノを連れてムグナム星系に向かいます。そこで彼らが見たものは、時の真空というか、時の冷風というかに流された先の、テラの古代クレタ島。これが時間泡か。

　ガイア・ミュータントである7ボイト・マルゴルに支配されたペイン・ハミラーの話も絡め、＜パン=タウ=ラ＞の謎は深まるばかり。

　あとがきにかえて　は、嶋田洋一さん。
　今年の夏のSF大会のこと。今年は第51回大会として、北海道の夕張で行われたのだそうな。Varicon と銘打って。
　その時の思い出話いろいろが、ネタ。　　（2013/01/19）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-432	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 432巻					出版社：早川書房
書名：眠れる女神	ハヤカワ文庫SF1868　ウ1-432　早川文庫7066					ISBN978-4-15-011868-6 C0197

863 眠れる女神		Die schlafende Göttin				H・G・フランシス			1978/3/7	翻訳：嶋田洋一
864 デメテルの逃走		Demeters Flucht							1978/3/14

		価格：580Yen	ページ数：256P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/9/15		購入：2012/9/13	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　863 眠れる女神
　惑星タラオからテラへ移住してきたジャンドラ・カイスが、ギリシャ、デルファイの神殿で出会ったもの、それが何だったのか。それが何かにかかわらず、彼女が元々の自分を失い、ペルセと名乗るようになります。それは運命だったのか。新しい人格は、いったい何？
　ガイア・ミュータントであるボイト・マルゴルは、相変わらずテラの支配を目論み、科学担当テラ評議員であるペイン・ハミラーを使って様々な計画、というか思いつきのような陰謀を企み、進めているのですが、そのハミラーに不思議な報告が来ます。クレタ島の地下で、古代ギリシャからさらに最低二千年は遡る、奇妙な遺跡が発見されたという。レムール人のものでもない。テルコニット鋼より融点は低い（摂氏9,200℃程度）ものの、それに匹敵する強靱さを持った隔壁に守られた、不思議な空間。
　建造された時代は、レムール大帝国がとっくに没落して、水晶王子アトランが築いたアトランティス要塞も壊滅した後の時代。
　この奥にあったのは、不思議な透明面な棺らしきもの。その中には、こ今にも目覚めそうな、薄ものをまとっただけの女性の姿。ブロンズ色の肌、古典的な、美を感じさせる顔立ち。穏やかに微笑む表情。長いシルバーの髪。

　「これがだれなのか、推測はついているのか？　」　ハミラーはたずねた。
　「もちろん」とマツリュフ。　「多分これこそギリシャ神話の豊穣の女神、デメテルです」　　（P37)

　ペルセと名乗ったジャンドラ・カイスが急行したのがここ。
　彼女は、「デメテル」の発掘作業に激怒し、棺を奪い返すために現れたのですが、すでにそれが南アフリカに送られた後と知って、その後を追いかけます。彼女の正体とは一体何だったのか。
　奇妙で強烈なインパクトがあるペルセと言うキャラクターは、実はこのエピソードあっさり姿を消し、デメテルが甦ることとなります。これで何が起きるのか。
　
　権力って、そんなに魅力のあるものなのか、と毎度毎度考える鐵太郎であります。なんのために他人を支配したいのか、支配してどうしたいのか、よくわからん。

　　864 デメテルの逃走
　ボイト・マルボロを追う3人のガイア・ミュータント、ブラン・ホワツァー、ダン・ヴァピド、エアウィ・テル・ゲダンたちは、デメテルとともに逃走したマルゴルのアジトで警官に捕まります。カタストロフィを逃れたものの、再びマルボロに逃げられた3人は、そこに視察に来たハミラーに会うことができました。
　マルボロがデメテルの棺を力ずくで開いたために起きたプシオン性衝撃波によって施設内の人々が死んだことを告げると、ハミラーは驚きます。しかしハミラーをマルボロの呪縛から救出させる事は、結局できませんでした。

　やがてデメテルは、マルボロの意思で動くつもりはないことを示し、逃走。一体どこへ、どうやって消えたのか。

　あとがきにかえて　は、嶋田洋一さん。　1ページのみ。
　今回はゆるキャラネットネタですね。　「くまモン」のこともあります。
　ふーむ、鐵太郎はどうも流行に遅れてるなぁ。　　（2013/3/29）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-433	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 433巻					出版社：早川書房
書名：災いのオーラ	ハヤカワ文庫SF1869　ウ1-433　早川文庫7067					ISBN978-4-15-011869-3 C0197

865 宇宙の迷走		Kosmische Irrfahrt				H・G・エーヴェルス			1978/3/21	翻訳：林啓子
866 災いのオーラ		Aura des unheils							1978/3/28

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/9/25		購入：2012/9/29	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　865 宇宙の迷走
　元プロスペクター、プヨン・“サボテン”・アルザチェナから始まります。人の住めない辺境の、恒星ファインロイト第五惑星で、インケロニウムの鉱脈を発見したのですが、もはや食料も生命維持装置も尽きており、谷サラマンダーであるチルダ以外と思っない彼は、宝の山の上で死を待つばかり。
　そこへ現れたのが、SVE艦＜ゴルセル＞に乗るラール人、本ヘトソンの告知者であるホトレノル=タアク。彼はこの老いたテラナーを救出し、孤独な旅の慰め半分で、パートナーとして同乗させることにしたのでした。
　プヨンを伴って、分子変形能力者のシュプールを追って皇帝アンソン・アーガイリスのいる惑星オリンプにむかうホトレノル=タアク。

　テラでも事件が起きます。激務に疲れた最高テラ評議員マイクル・ローダンの元に現れた謎の美人ドゥンジャ・ヴァレンシー。

　「きみの助けになるなら、可能なかぎりなんでもしよう！」　　（P81）

　ヤレヤレ、1970年代のヒーローとは、こんなものさ。　┐(-＿-)┌
　しかし、彼女の望みが＜バジス＞に乗せるということだと知ると、一瞬にして冷静に戻り、不信感を示した、と描写されます。でも結局、記憶喪失を主張する美女の求めに屈してしまうんだから、何をか言わんや。（爆）

　さて、敵として警戒される分子変形能力者ガイズ=ヴォールビーラーらの目的とは何か。まずはまだまだ解けません。

　　866 災いのオーラ
　分子変形能力者が変身した姿だと思い込まれた、ホトレノル=タアクとプヨン・アルザチェナに捕らえられたテングリ・レトス、光の守護者は、自分の正体をどうすれば彼らに納得させられるのか、悩んでいます。
　しかし、彼らが惑星オリンプの皇帝アーガイリスにこれを知らせようとすると、状況は一変します。
　プヨンがインケロニウム数百トンの権利を２０億ソラー、プラス純利益の３％でアンソン・アーガイリスに売却する間に、この捕虜はあっさり逃走してしまったのでした。
　この捕虜、テングリ・レトスは何者なのか。そして本物の分子変形能力者の目指すトバとは、結局何だったのか。

　テングリ・レトスは、アンソン・アーガイリスに面会を求め、ホトレノル=タアクらの前で、自分の行動の影には〝それ〟の姿が見える、と説明します。
　ならば〝それ〟は、一体何を企んでいるのか。

　あとがきにかえて　は、林啓子さん。
　「悪」の象徴のような存在だったホトレノル=タアクの変心。長年支配した銀河系を故郷のように感じるようになり、かつての行為を悔い、銀河を旅する彼にできた奇妙な仲間。そしてラール人の遠い祖先はかつてこの銀河を訪れたことがあり、その時は今と違ってインガ系種族を庇護していたことを知って当惑する様子。
　極悪人キャラが、全く違う側面を見せたこの回は、林さんにとって最も印象深い1冊となったのだそうです。　　（2013/4/16）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-434	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 434巻					出版社：早川書房
書名：＜バジス＞発進！	ハヤカワ文庫SF1873　ウ1-434　早川文庫7083					ISBN978-4-15-011873-0 C0197

867 バルディオクと女帝		Bardioc und die Kaiserin				H・G・フランシス			1978/4/4	翻訳：五十嵐洋
868 ＜バジス＞発進！		Aufbruch der BASIS				クルト・マール			1978/4/11

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/10/15		購入：2012/10/5	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　867 バルディオクと女帝
　バルディオクを取り巻く生命維持システムが危機にひんしている、という報告から始まります。前回あったような、バルディオクの自殺の試みがまた起きたのか、という疑いもありますが、今回はそうではないらしい。このままではあと3日と持たない。しかし、エルムの女帝の世界までの行程は、あと70時間。さあ、どうする。

　バルディオクの周囲を取り囲むのは、かつてのバルディオクの生存していた惑星の土地、微生物、鉱物、大小の動植物などの環境を全て切り取った生体的生命維持システムです。長期間ならともかく、数日ぐらい全く問題にならないはずあるなぜこれが、植物の急激な水薬から始まって全体のシステムがいきなり枯死し始めているのか。
　原因は、＜ソル＞のスタートに伴う加減速のせい、と断じたのは、テラナーのグループではなく、ソラナーの宇宙生物学者、ガヴロ・ヤール。

　ローダンはかぶりをふり、
　「ばかげたことを」と、いう。「すべての加減速はポジトロニクスが管理する反重力ジェネレーターにより、中和されているではないか。だらでも知っているとおり」
　「たしかに。ですが、惑星バルディオクの重力は0.88Gで、＜ソル＞内部の標準重力は１Gです。ここが重要な点でして。生命維持システムを運びこんでスタートしたさい、最初の加速にポジトロニクスが反応した瞬間、倉庫内は１Gになり、その直後、0.88Gに再調整されました。この誤差が生態系にネガティブな効果をもたらしたことを、今日、確認したわけです」　　（P44～45)

　正解を引き当てたガヴロ・ヤールですが、それによってか、奇妙で危険な思想にとりつかれます。しかも、＜ソル＞を管理するバイオ・ポジトロニクスの頭脳セネカまで、おかしな行動をとる。さらに現れたのは、フルクースの艦隊。そしてそれを指揮するブルロク。
　はたして＜ソル＞の運命は。
　ローダンの胸にある、テルムの女帝のクリスタルとは、一体何だったのか。今回その謎が明らかになります。
　テルムの女帝は、バルディオクを一体どうしようとしているのか。

　「テルムの女帝はバルディオクを手に入れるためなら、手段を選ばない。また、それを阻止できる者もいないのだ」　　（P107)

　クライマックスが迫ります。

　　868 ＜バジス＞発進！
　第14サイクル『＜パン=タウ=ラ＞』の開幕です。

　“収集者”と呼ばれる存在の描写から始まります。
　散乱しているそれらが集結した時、ダルキストが目覚めます。そして決定的シグナルを待つのです。“インデックス”の数値が0から1になったとき、彼らの闘いが始まるのでした。

　ボイト・マルゴルの影響から少しでも逃れたいペイン・ハミラー。無事超大型航行船＜バジス＞遠征隊の最高指揮官として出港します。　3586年5月1日。＜バジス＞自体の指揮をとるのは、船長ジェント・カンタル。飛行要員400名が彼の配下に入りますが、他の多種多様な任務に就く1万450名は、最終的に飛行要員も含めハミラーの指揮下に入ります。
　しかし、いくつか問題が出発前に指摘されていました。その一つ、かつてのテラ・パトロールの一員であったマーラ・ボオテス・カウク、愛称マルボオが、船載ポジトロニクスの不調を訴えます。しかしハミラーは、それを些事と考えて問題としませんでした。
　これがのちに火を吹くことになろうとは。

　スタートした直後、乗船していたケルシュル・ヴァンネは、不気味なメッセージを受けます。

　＜助けようとしたが、むだだった！　わたしは近づきすぎたのだ！　いま、わたしは落ち、消えつつある．．．＞　　（P204)

　なんと、〝それ〟の悲鳴にも似たメッセージ。いったい何があったのか。
　そして、出港した＜バジス＞の中で何かが目覚める。
　まさか、アフィリカーの遺産が、いま罠となって作動するとは。

　かつて大活躍したロボット、K=2、アウグストゥスが大活躍。表紙に出てくる彼は、まるで「ロボット刑事K」ですね。

　あとがきにかえて　は、五十嵐さん
　＜バジス＞が“艦”なのか“船”なのか、というお話。そう、日本語独特のこの区別は、いささかややこしい。軍艦なら単純に〝艦〟なのですが、それ以外を全て〝船〟でいいのか、となるとそうはいかない。こ
　結局、かつての松谷先生のやり方を踏襲し、＜バジス＞自体は〝船〟とし、搭載される戦闘艦は、〝艦〟です。
　ちなみに、南極に行く〝しらせ〟は、実は現役自衛艦として〝砕氷艦〟なのですが、マスコミ的には普通〝南極観測船〟か〝砕氷船〟となっています。まァ、そんなもんさ。　　　（2013/5/2）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-435	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 435巻					出版社：早川書房
書名：怪物とアフィリカー	ハヤカワ文庫SF1874　ウ1-435　早川文庫7084					ISBN978-4-15-011874-7 C0197

869 怪物とアフィリカー		Die Tage des Ungeheuers				クルト・マール			1978/4/18	翻訳：渡辺広佐
870 プロンドフェア、招聘されし者		Plondfair, der Berufene				ウィリアム・フォルツ			1978/4/25

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/10/25		購入：2012/10/26	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　869 怪物とアフィリカー
　アフィリカーが残した遺産、＜バジス＞に巣くうダルギストとの戦いが続きます。K=2ロボット、アウグストゥスの「機転」で一時対抗できたものの、いまだダルギストは＜バジス＞を支配しています。
この最中、テラからインペリウム級艦＜バイコ＞を発進させ、＜バジス＞まで行こうと考えた人物がいました。なんと最高テラ評議員ロワ・ダントンその人。
　3586年5月4日朝、この報告を聞いたジュリアン・ティフラーは憮然とします。ロワ・ダントンの行動は、たとえ何と言い訳しようと、女の尻を追いかけて職権乱用するエロ爺ィに過ぎない。しかし、その行動には何か特殊な原因があるのではないか？
　かくして＜バジス＞上で、美女ドゥンジャ・ヴァレンシーとしっぽりやっている最高テラ評議員を遠巻きに見る同船乗組員、という構図が出来上がります。

　さて、かつてアフィリカー社会にあって第二の地位だったジェント・カンタルは、一つの提案をします。人為的な方法で＜バジス＞の中でアフィリカーを一人作り、この＜バジス＞がダルギストが望むアフィリー化された状態であると偽装しようではないか。
　ぎょっとする、旧テラ・パトロールの面々。

　ペイン・ハミラーは跳びあがり、
　「ちょっと待ってほしい」と、いう。「その種の暴挙には賛成しかねる。まずは、そもそも成功の見こみがあるのかどうか、ためす必要があるだろう。ふたつめには、危険なく適用できるかチェックしなくてはならないし、三つめに・・・」
　「三つめに」ジェント・カンタルがつっけんどんにあとをひきとる。「きみはすっかり見すごしているが、われわれには時間がない。一秒たりともむだにはできないのだ！」
　ハミラーはもうそれ以上いえなかった。カンタルが正しいのはわかっている。　　（P29)

　ダルギストは無事排除できるのか。ロワ・ダントンはどうするのか。

　　870 プロンドフェア、招聘されし者
　惑星クシュールに居住する種族ウィンガーの中で、平均身長1.5メートルの中で1.71メートルという長身を誇るプロンドフェアは、27歳となって兵士、ウルトラエネルギー征服者、超空間感知能力者としての専門訓練を修了し、自他共に認める最優秀の訓練生でした。自分が秀でた存在であり、他人より偉いはずということに何の疑問も感じていません。
　ちょうどその時、彼の養母であるコスジャルタが事故で重傷を負い、宇宙の全車輪の助けを求めて、巡礼の旅に出ることとなります
最高の卒業生として、巨大惑星ヴェルガースペアへ招聘されるという栄誉を得たプロンドフェアは、養母が巡礼として同じトルグンシュ星系に行くのならば、それに付き添ってクリン船に乗りたいと願いでます。そんなことはできない、規則に反する、前例がない暴挙だと言われても、平然とそれを押し切るプロンドフェア。自分の希望が叶えられるのは当然なのだから。

　3586年6月14日、＜バジス＞はチューシク銀河に到着します。ここは故郷銀河より二億八百万光年の彼方。ここにパン=タウ=ラはあるのか。そこで傍受した通信映像を、最初ペイン・ハミラーはクマのようだと形容します。しかしその鮮明なものが得られたとき、彼らは驚愕しました。

　ロワ・ダントンは、この映像をドゥンジャ・ヴァレンシーに見せます。

　「きみの同胞だね」　と、ダントンが補う。「まちがいなく」
　「これをどこから手に入れたの？」
　「わかっているはずだ」ダントンは怒ったようにいった。
　「わからないわ」と、女は断言する。それから、驚いたように目を挙げ、「もしかしたら．．．　〝ここ〟で手に入れたの？」
　ダントンはきびしい顔でうなずき、
　「チューシクの知性体とコンタクトをとろうとするなかで入手したものだよ。かれらが自由意志であたえたのではなく通信コンタクト傍受に成功してね」　　(P268)

　はて、あの映像はいったい何なのか。

　あとがきにかえて　は、渡辺広佐さん。
吉祥寺駅にある＜PARADA＞、スペイン語で停留所を意味する名前のカフェで、渡辺さんは四、五年前、清水昶（しみず・あきら）という詩人の姿を見たのだそうな。この方が2011年5月にひっそりと亡くなったのち、故人作の句を見たそうです。
　　　女独り伸び縮みするプールかな
　渡辺さんはこの句に感激したそうです。　いい！、とてもいい！　と。
　・・・無粋な鐵太郎は、この句の意味もどこがいいのかも、さっぱりわかりません。（； ´Д｀)　　（2013/05/13）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-436	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 436巻					出版社：早川書房
書名：影の世界	ハヤカワ文庫SF1879　ウ1-436　早川文庫7096					ISBN978-4-15-011865-5 C0197

871 いつわりの中枢		Zentrum der Lüge				ウィリアム・フォルツ			1978/5/2	翻訳：五十嵐洋
872 影の世界		Die Schattenwelt				ハンス・クナイフェル			1978/5/9

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/11/15		購入：2012/11/10	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　871 いつわりの中枢
　ワルズの都市トイコアンの神田地下を逃げ回るプロンドフェアから始まります。
　宇宙の全車輪と言う彼らウィンガーを統制する宗教がまやかしであることを知ってしまった彼は、この謎を解き、甘かっなくてはならないと考え、ともかく官憲の手から逃れようと逃避行をけます。そこに現れたのは、ゾルベ氏族のでっぷり太った男。
　商人のような風体をしたアドマイスと名乗るこの男は、地下の秘密組織（またですか？ｗ）の一員らしい。彼を通じて出会った、氏族を捨てた泥棒パイノトに、巨大惑星ヴェルガースペア25番目の衛星ボステルに行くよう求められます。そこに何があるのか。

　＜バジス＞が傍受した映像に映っていたのは、ドゥンジャ・ヴァレンシーによく似た銀色の髪を持つヒューマノイドと、彼らが使用する涙滴型宇宙船。それでは、記憶喪失を訴えるドゥンジャは、このチューシク銀河の住人であったに違いない。（なぜその結論になる？ｗ）ならばドゥンジャが地球に来た目的は何か。
　議論の末、〝パン=タウ=ラ〟が存在していると言う、〝それ〟が伝えてくれた座標に、少数の部隊を送り込むこと、そのメンバーにドゥンジャを加えることが決定されます。チューシク銀河の知性体も、〝同胞〟に発砲することはあるまい、という考えに従って。（なぜそんな話で皆が納得できる？ｗ）

　＜ソル＞は、内部に問題を抱えたままチューシク銀河にむかっています。二つのグループの対立が決定的になり、緊張感も高まっていくばかり。
　一つののグループは、ローダンとその仲間、そしてテラ生まれと非テラナー。彼らはバルディオクの播種船＜パン=タウ=ラ＞を発見し、本来の目的に復帰させることを望んでいます。もう一つのグループは、＜ソル＞生まれのソラナーたち。チューシク銀河でローダンらがこの大遠距離船を彼らに引き渡して退去するという約束の、少しでも早い履行を求めています。

　そして、＜ソル＞の数千光年後に、この巨船を追う二つの影。 1つは時間超越者ガネルク=カリブソ。もうひとつは具象ブルロク。
　ブルロクの最期の時が迫る。

　　872 影の世界
　＜バジス＞より発進する軽巡＜カール・セーガン＞。直径100メートルの球形船で、正式名称はLK=23。乗員40名。ここに、ドゥンジャを含めたエイド・チーム9名が加わります。
　チームの指揮をとるのは、ハイタワス・ボール。向かうは、ケルシュル・ヴァンネの示した座標。強力なハイパーエネルギー性タービュランスの中の、膨張する恒星。
　この恒星の近傍にある奇妙な暗黒物体は、ファースト・インプレッションと名付けられます。大きさは火星ほど。軌道からして、この恒星の惑星ではありえない。スペース・ジェットを使ってこの星に接近するエイド・チーム。

　この世界に、〝パン=タウ=ラ〟は存在しない、らしい。
　しかしここで、チューシク人を発見したことは驚きでした。しかも、その言語をドゥンジャが理解できることがわかりました。

　この広大なチューシク銀河は、どうやら同一の、しかも数千年前から全く変化しない言語が使われているらしい。なんと素晴らしきローダン世界。

　発見されたのはウインナーと言う人々。この銀河を支配しているらしい。主要な６氏族と、枝分かれした支族からなる氏族種族。
　戦士であるルフケ氏族はグルシン星系の惑星クシュールが故郷。他に、政治家や商人のゾルベ氏族、宙航士やエンジニアのドプラー氏族、哲学者や科学者のアゴルファー、農業や食糧技術者のグリセ、芸術家のベルテなど。

　やがてこの世界に現れた＜ソル＞、ついに、＜バジス＞との邂逅が実現したのでした。
　そこに悲劇が。傷心のロワ・ダントンを慰めることとなったローダンの心境はいかに。

　あとがきにかえて　は、五十嵐洋さん
　55歳になった事を期に、それまでの生涯を振り返り、高校時代からずっと働きづめだったなぁと感慨しきり。
日本では、55歳から先を「白秋」と言うのだそうな。この年は、人生の節目なんでしょうか。
節目もへったくれもない鐵太郎には、なんとも。(笑)　　（2013/5/22）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-437	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 437巻					出版社：早川書房
書名：ヴェルガースペアの監視者	ハヤカワ文庫SF1880　ウ1-437　早川文庫7097					ISBN978-4-15-011879-2 C0197

873 被操作者		Die Manipulierten				H・G・フランシス			1978/5/16	翻訳：増田久美子
874 ヴェルガースペアの監視者		Die Gravo‐Hölle							1978/5/23

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/11/25		購入：2012/11/22	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　873 被操作者
　アルグストゲルマート銀河の各地から集まるウィンガーたちで混雑する衛星スタルショにいるプロンドフェアから始まります。あれだけこの社会の欺瞞を暴こうと画策し、反社会的な行為を繰り返したプロンドフェアが、いまだ惑星ヴェルガースペアの欺瞞に満ちた政府から任ぜられた

　招聘を辞退するつもりはない。名誉だと思っている。　　（P10)

　という思いは、いくつかの面から見ておかしいと思うのですがまあいいか。ローダン世界は摩訶不思議。
　この世界に「巡礼」に来た重病人たち、その中にはプロンドフェアの養母であるコスジャルタもいますが、彼らの無残な運命をプロンドフェアは見てしまうこととなります。そののち、出会った同じく招聘されたものである美女ヴェルテと共に捕らえられ、ヴェルガースペアに送りこまれます。
　ここで出会った三老人、クロドヴァン、ゴッドファート、カースケンらに、この世界と招聘の意味を教えられ、愕然。
　招聘された者たちは、〝加工〟されて長寿命となり、〝目〟と呼ばれるものを探求するために宇宙に送り出されるのだそうな。いまだ何千年もの間その〝目〟は発見されておらず、一度送り出された者たちは、期間5死ぬまでここで過ごすらしい。
　プロンドフェアは、当然ながらそんな運命に自分を委ねるつもりはない。この高重力惑星の保護ドームの中から脱出するため、「耐圧防護服」を奪うことを計画します。
　首尾よく手に入れたものの、共に戦った美女ヴェルテの運命はあっさりと途絶えます。サブキャラの悲哀、ですか。
　そうしてまでプロンドフェアが見つけようとしたものは、一体何だったのか。

　　874 ヴェルガースペアの監視者
　で、再びプロンドフェア。
　重力の異様な変動など、数々の秘密を持つ巨大惑星ヴェルガースペアには、宇宙船で行く事はできません。すべて、転送機を使うしかない。
　（では、最初どうやってそこに、転送機を据え付けたのかって？　さあねｗ）
　この奇妙な世界の謎を解かねばならない、と考えるプロンドフェアの使命感は、自分を不当にも拘束する秘密のシステムへの憎悪となり、愛した美女ヴェルテを無残に殺されたことで、執念ともなります。目標は、この世界を支配している監視者モルグデーン。
　モルグデーンにはヴェルテが死んだことに対する責任は無いのですが、むろんプロンドフェアにとってそれは関係ない。敵は皆同じ。
　プロンドフェアは老人たちの助力によって監視者とついに対決しますが、あっさりと叩きのめされます。ようやくステーションに戻った彼が見たものは、モルグデーンに捕らえられた謎の侵入者の男女。
　女はウインナーで、デメテルと名乗る美女。もう1人は地球と呼ばれる惑星で発達した生物の末裔で、〝狩人〟と呼ばれるハイタワス・ボール。
　数千年前から地球とやらにいたと言うデメテルは、むろんウィンガーであるから言葉も通じます。しかも、数千年前からまったく変わらないらしい宇宙の全車輪のことも、車輪巡礼のことも知っています。
　（素晴らしきかな、ローダン世界！）
　彼女に当然のことながら恋に落ちるプロンドフェア。なにしろこのデメテル、死んだ恋人ヴェルテとよく似ているから。
　（聞くな、疑問に思うな、これはローダン世界だ！）
　このデメテルとは、むろんドゥンジャ・ヴァレンシー。生きていた彼女はここヴェルガースペアで何を見つけるのか。

　あとがきにかえて　は、増田久美子さん。
　またまたドイツに行った話と、帰りに飛行場でｉＰａｄを紛失してしまったお話。
　運良くこれが見つかり、数週間後ようやく戻ってきたのだとか。

　．．．その二日後の夜、シュレッダーで裁断した書類の紙屑の中に埋まって、わたしのｉＰａｄは帰ってきた。さすがリサイクルの国！　二ヶ月ぶりの再開でうれしさのあまり、写真をとって友だちに送った。執念深さにあきれたのか、わたしの感情移入についてこられなかったのか、だれからも返事はなかった。
　ちなみに〝うっかりミス〟をなくす方法は無いだろうか。　　（Ｐ268）

　　　　　　・・・ありませんよ。orz　　　（2013/05/28）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-438	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 438巻					出版社：早川書房
書名：支配者ラルド	ハヤカワ文庫SF1882　ウ1-438　早川文庫7110					ISBN978-4-15-011880-8 C0197

875 プシオン放射		Der Psionen‐Strahler				マリアンネ・シドウ			1978/5/30	翻訳：五十嵐洋
876 支配者ラルド		Die Welt des LARD				クルト・マール			1978/6/6

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2012/12/15		購入：2012/12/14	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　875 プシオン放射
　＜ソル＞のイルミナ・コチストワから始まります。今回の表紙の人。178歳の不死者。
　ミュータント部隊の、メタバイオ変換能力者。他人の細胞を手を触れずに「細工」できる能力を持った女性。女性ですから、むろん美人と決まっています。（おい）
　スターファイアと言う10歳の少女と、トルボロスと言うすでに100歳を超えた老人が、彼女に関わってきます。前者は彼女の崇拝者として、後者は彼女の被治療者として。
　＜バジス＞とランデブーしている今、ローダンがテラナーが＜ソル＞を去ってここをソラナーにあけ渡してもいいのでは、という声が出始めています。その中で、ソラナーであるスターファイアは、何やら思うところがありそう。

　ウィンガーが駐留している赤い小恒星ロックファイアで、彼らと平和裏にコンタクトできないか、という計画があります。そのために使用されるのは、小さいスペース・ジェット、S=SJ=13。＜バルテュス＞という固有名を持ったこの小型艇に乗るのは、イルミナ・コチストワをリーダーとし、宇宙心理学者のバーク・ムン=ヤンら＜ソル＞から来た100歳を超える三人。そして＜バジス＞から三十代の三人。
　ここで＜パン=タウ=ラ＞の謎を解明する鍵を得られるか。

　しかしこれを迎えるウィンガーの17隻の船団を率いる旗艦＜3・トレトン＞では、対応が別れています。このアルグストゲルマート銀河の禁断ゾーンに侵入した異人を、どうすべきなのかについて。
　不意に現れた小型船の動きに注目するうち、これは異人の突撃部隊に違いない、とルフケ族のオルフォルスは言う。ドプラー族のジェラールはそうは思わない。

　そのとき、イルミナ・コチストワが指揮するスペース・ジェット＜バルテュス＞で、イルミナが異常な行動を示す。理不尽な激怒に駆られた彼女の行動の原因は、この惑星が発する何かによるものではないのか。
　禁断ゾーンとは、一体何だったのか。

　そうそう、今回の執筆は紅一点のマリアンネ・シドウですが、イルミナの狂気は彼女の筆と関係あるのかな？

　　876 支配者ラルド
　惑星クオストートのウィンガーであるタルマイルは、「嘲笑する者」と呼ばれます。
　この世界の中で、支配者であるラルドの意に沿わない言動をする者を見つけ、ラルドの指示によって「無害化」するために「処置」するのが任務。
　この世界だけが全てと思っていた彼が、カインストルと言う読書家の友人を処置するよう命ぜられます。はたして、この命令は正しいのか。悩むタルマイル。
　タルマイルの家に「従者」として住んでいる不定形生物である愚かなアソゲンのライルトとか、知り合ったゾルベ氏族のナバリクとか、変な彩り的なキャラが、あれっと思う働きをして、消えていく。

　ごく当たり前の終わり方を迎えるに違いないと思われたこのエピソード、ひとひねりした後、面白い終幕を迎えます。へえ。

　あとがきにかえて　は、五十嵐洋さん
　55歳になって、自分のことを色々見直し中なのだそうな。生活をスリムにしようと考えて手をつけたのは、まず保険のたぐい。そして生活の中のムダ。
　しかし一番頭が痛いのが、蜜柑山だったりするそうな。密柑山とは、プラモデルのストックのこと。製作を中断したもの、買ったあとただ保存しているもの、その他。つまり、未完のキットの山。だから、密柑山。
　そして買い損ねたという8月出荷の戦艦大和をデフォルメした新作キットについての愚痴。こんなことがあるから、つい買ってしまって、在庫ばかりが増えていくことになるんですよね。
　ちなみに、2012年8月に出たキットとは、どうやらこれらしい。なるほど。(笑)　　　（2013/6/3）

		Ver. 3.00

管理番号：R400-439	10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 439巻					出版社：早川書房
書名：ルーワー登場	ハヤカワ文庫SF1883　ウ1-439　早川文庫7111					ISBN978-4-15-011883-9 C0197

877 ラルドの勢力下で		In der Gewalt des LARD				クルト・マール			1978/6/13	翻訳：林啓子
878 ルーワー登場		Impulse aus dem Nichts				エルンスト・ヴルチェク			1978/6/20

		価格：580Yen	ページ数：272P				本のサイズ：文庫
初版発行：2013/12/25		購入：2013/1/1	表紙イラスト：工藤稜（くどう・りょう）

　　877 ラルドの勢力下で
　捕らえられた三人、タフさと活力を失っていないハイタワス・ボールと、意気消沈としたウィンガーの二人、デメテルとプロンドフェアから始まります。このままではいかん、脱出しなくてはと考えるハイタワスですが、他の二人はどうもあてになりそうにない。かつて横紙破りの反骨漢だったプロンドフェア、今回まったくのお荷物キャラに転落。
　脱走した三人が出会ったのは、同じく三人のウィンガー、カインストルとタルマイル、そしてクオストート。〝嘲笑する者〟タルマイルたちのグループが彼らと合流したのは、どんな偶然だったのか。

　ハイタワスたちは、タルマイルのグループと行動を共にすることになりますが、彼らにどうやってここに来たのか聞いて、唖然。

　「この世界については、きみたち同様、ほとんど知らないのだ」と告げる。「われわれ、クオストートから、ここにやって来たばかりだから」
　「どうやってきたの？」デメテルがたずねる。
　「長いトンネルを歩いてきた」と、タルマイル。　　（P57）

　それも、急勾配の下りのトンネルを抜けて来たのだという。
　ハイタワスは、だんだんこの世界のことと、自分たちでは抜け目ないと思っている彼らウィンガーの様子から、この種族が、その極度に狭い世界しか知らないことがわかってきます。なにしろ、脱走するにあたって、食料をどう確保するかも考えていない。せっかく手に入れた必殺兵器を、邪魔であれば何の気なしに置いてきてしまう。ハイタワスの命令に唯々諾々と従って、何の疑問もない様子。
　何より、歩く過程でハイタワスが算出したこの世界の大きさについて、まったく考えようともしない。

　ハイタワスは気がつきます。この世界は、直径千百キロメートル以上の球体であること。
　そして、彼らの行動は、この世界をコントロールするもの、宇宙の全車輪伝説の創始者とも支配者ラルドとも呼んでいいのですが、その存在にずっと監視されていることを。

　　878 ルーワー登場
　９、という風にやたらこだわる種族、ルーワーの住む惑星アルキラⅡから始まります。ルーワーはプシオン能力を持つデュアデに支配されています。デュアデとは、単細胞生物モナデが突然変異したもの。巨大化したアメーバ状生物。
　実は、プシオン能力によって思考を常に監視されてデュアデに支配されているはずのルーワー、通常意識と言うデュアデに筒抜けの思考面ともうひとつ、実現態意識という特殊な思考面を持ち、これによって他のルーワーとコミュニケートできるのです。この思考面は、デュアデはまったくわからない。

　ジュリアン・ティフラーが、市民を監視する治安維持組織の設立提案を真っ向から否定する場面から始まります。　ひとりの人間が支配する秘密警察の存在など、絶対に認めない、と言う。
　提案したのは、治安担当官ヴァルガス・デンナー。彼の目的が、実は彼自身の権力を得るためでなく、彼を支配するボイト・マルゴルのためであることは、ティフラーはまだ知らない。
　しかしそのマルゴル、奇妙な状態になっています。原因はそれまで彼が自由に操っていたプシオン・エネルギーの異常な蓄積。未知の存在が、マルゴルに対してインパルスを次々と送り付けてくるらしい。これをなんとか放出しなければ、例えばうかつに近づいたデンナーのように、周囲の人間をあっという間に抹殺してしまう。
　そこに登場したのは、知恵遅れの少年、ニキ。彼はマルゴルのプシオン・エネルギーを、まるで空腹を満たすように吸収できるのでした。
　これは、マルゴルに何をもたらすのか。

　あとがきにかえて　は、林啓子さん。
　前半のマールの話で、エベレストに登る理由についての有名なセリフをヒラリー卿が言ったという箇所があります。これは実はジョージ・マロリーなのですが、これだけではなくこの話では、登山に関する話が多い。マールは山好きなのか。
　それと、林さんがピアノに打ち込む話。
　この人のエッセイ風な「あとがきにかえて」って、色々面白いよね。　　（2013/6/11）