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読んだ本の分類


PerryRhodanリスト
　宇宙英雄ローダン　040～049　
巻数 　書　名 　作　家
040 核地獄グレイ・ビースト クルト・マール＆クルト・マール
041 偽装の銀河ゲーム クラーク・ダールトン＆クルト・マール
042 アルコンの兵士狩り クルト・ブラント＆クラーク・ダールトン
043 権力への鍵 クラーク・ダールトン＆カール・H・シェール
044 ドルーフ艦隊襲来 ウィリアム・フォルツ＆カール・H・シェール
045 アトランの危機 クルト・ブラント＆クルト・ブラント
046 秘密使命モルク クラーク・ダールトン＆ウィリアム・フォルツ
047 闇に潜む敵 クルト・マール＆クラーク・ダールトン
048 虚無への探索 クラーク・ダールトン＆カール・H・シェール
049 危うし惑星トラムプ！ クルト・ブラント＆クルト・ブラント
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管理番号：R400-040 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 040 出版社：早川書房
書名：核地獄グレイ・ビースト ハヤカワ文庫SF283　早川文庫741 発行　1967年
079 核地獄グレイ・ビースト Die Atomhölle von Gray Beast クルト・マール
080 ドルーフの本拠にて In den Höhlen der Druuf クルト・マール
翻訳：松谷健二 価格：300Yen ページ数：240P 本のサイズ：文庫
初版発行：1978/3/15 購入：1978/3/15 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン040 核地獄グレイ・ビースト　　079 核地獄グレイ・ビースト　
　原因は事故によるものだった。　と記録されています。
　テラ艦隊巡洋戦艦＜リゲル＞がグレイ・ビースト基地に戻るための遷移を行ったとき、固有振動ダンパーの動作が不安定になり、遷移の五次元エネルギーが消去しきれず残余が宇宙空間に漏れてしまったのでした。これに気付いたポール・ブラケット艦長は、瞬時にグレイ・ビースト基地と連絡を取り、基地へ帰還コースを取らずそのままグレイ・ビーストから30光年彼方に遷移しました。
　ときに2043年10月23日、テラの艦隊が総力を挙げてアルコンへ示威行動を取ろうと出撃した直後でした。
　仮にアルコン帝国が、テラ艦隊の秘密基地のありかを探知すれば、その瞬間に牙を剥き大艦隊を差し向けてくる恐れは十分にあります。そのためにも、＜リゲル＞はこのミスが単なる一時的なものであると装う必要があったのです。
　警報を受けたグレイ・ビースト基地のローダンらは、息をのんで見守るのみ。
　しかし希望は裏切られ、千以上のアルコン艦がグレイ・ビースト前面に遷移してきます。テラの秘密基地であることが暴露されたのは明白。
　原子番号10番以上にセットされたアルコン爆弾の投下は、たちまちのうちにグレイ・ビーストを核火災に巻き込み、脱出し損ねたローダン、アトラン、ブリー、フェルマー・ロイドは行方不明となります。

　　080 ドルーフの本拠にて
　アルコン艦に「救出」されたあと脱出を計ったものの、そのあとドルーフ艦に「救出」されたローダンら4人は、アルコン艦の破壊と共に公式には死んだものとされます。アンモニアの大気の惑星の中で、はたして脱出できるのか。

　ローダン死亡の発表を受けて、隠されてきた息子であるトマス・カーディフが声を上げる。われこそはローダンの後継者であり、太陽系帝国を次ぐ正統な権利ありと。逮捕する命令を出したものの、マイケル・フレイト元帥やデリングハウス将軍にとっては、頭の痛いことです。この大変なときに、この馬鹿息子は何をしているのか、と。

　ペリー・ローダン百科は、木星の月、土星、土星の月、天王星、天王星の月。
　訳者あとがき　は、グレイ・ビーストの最期。あの惑星にいたおどけた原生物も、もう今はいない。それと、「赤い」太陽のこと。日本人からするとそんなに変な言い回しではないのだが、西欧人は太陽は「黄色い」のだそうな。「赤い」太陽は、「緑の」太陽と同じくらい異様なものなのだそうな。なるほどねぇ。　　　（09/5/12）
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管理番号：R400-041 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 041 出版社：早川書房
書名：偽装の銀河ゲーム ハヤカワ文庫SF290　早川文庫769 発行　1967年
081 祖先の宇宙船 Raumshiff der Ahnen クラーク・ダールトン
082 偽装の銀河ゲーム Schach dem Universum クルト・マール
翻訳：松谷健二 価格：320Yen ページ数：263P 本のサイズ：文庫
初版発行：1978/5/15 購入：1978/5/14 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン041 偽装の銀河ゲーム　　081 祖先の宇宙船
　直径1500mの球形宇宙船が虚空を漂います。銀河系中心より外縁に向かって、光速以下の速度でしずしずと飛んでいます。ビーム屈折フィールドによって電子機器により探知されることはありません。船内では、何世代にもわたって外のことも知らず、目的地も知らず、乗組員が勤務について船内を維持管理しています。
　船長（K1号）は、年齢を重ねると、士官1号（O1号）にその任を譲り、「コンヴァータ」に入ります。O1号の地位はO2号が受け継ぎます。その時期は、K1号が定めるのですが、そのときO1号に地位の秘密も引き継ぐのです。
　その他、船内の機関士（M7号）は、自分の生活に疑問を抱き、医師（A3号）や心理学者（Ps5号）と共に禁じられた区画の探索を行います。そんな事が見つかれば即座にコンヴァータ送りになる、正しいと思っていた生活に、納得できなくなっているのです。そこで見つけたものは、濁った水槽の中に沈む裸体の男女。
　一生の中で一年間しか女を見たことがない彼らは、驚愕するばかり。いったいこれは何なのか。

　軽巡洋艦＜アークティック＞は、パトロール任務から帰還する途中、偶然この宇宙船を発見します。正確には、発見したのは「たまたま」この艦に一人だけで乗っていたミュータントのグッキー。太陽系帝国の重要人物でありミュータント部隊のエースであるグッキーを知らないで、動物だと思ってからかう候補生が出てくるのはお約束ですな。

　さて、一万年もの間特殊な歪んだ社会制度を維持しつつ銀河系を漂っていたこのアルコン艦は、勝手にグッキーの手で圧政から救われたのち、コースと位置だけが記録に残され、そのまま放置され、記録上は乗員なしとして無視されます。
　いずれこの設定が役立つ日もあるのかも知れませんが、グッキーを活躍させるだけのこういうエピソードって、ダールトンの好みかな。

　　082 偽装の銀河ゲーム
　2043年12月、テラニアのど真ん中で、ジュリアン・ティフラー大佐は数人の暴漢に拉致されます。彼らの目的は、やがてわかってきますが、アルコン帝国とドルーフの挟撃の中で、両方について生き残りを願うテラの姿勢に不安を覚えた軍人グループが、アルコン人に投降しようと考え、重要人物であるティフラー大佐を洗脳してリーダーになってもらおうとしたらしい。そして彼らはそれに成功します。
　しかし、これこそがローダンの立てた作戦でした。かくして艦隊勤務60年になっても生命延長細胞シャワーによって30代の若さを保つティフラーは、体内にテレパシー発信器を取り付けられたまま、人類の裏切り者になります。仲間となる14人の中に、ミュータント部隊の精鋭たちが入っているのはお約束かな。
　かくして直径90メートルの老朽巡洋艦＜インファント＞が乗っ取られ、宇宙に逃走をはたします。数度の超空間ジャンプのあとでアルコン艦隊に発見されるのは必然か。そのままドルーフの放電漏斗を封鎖するアルコン艦隊とドルーフとの戦闘に巻き込まれます。
　ドルーフに捕らえられたのち、太陽系帝国の裏切り者としてドルーフと交渉する彼らですが、ドルーフ艦隊の一部を預けられ、アルコンとの戦いに参加する羽目になるとは。一万四千のドルーフ艦隊がティフラーの指揮で、速度比2倍もなんのその、アルコン・ロボット艦隊二万隻を蹴散らします。なんだかなぁ。
　かくしてローダンは、ロボット摂政に一杯くわせるためにドルーフを利用したという訳。
　ここで新しい発見があります。ドルーフの持っている、遷移すなわち超空間ジャンプではない「なめらかな」超空間航行エンジンと、対探知艤装システム。

　アルコンやドルーフの技術を得てそれを改良し、自分たちの新技術はいっさい相手に提供しないという「利口」な方法により、今まで太陽系帝国は生き残ってきました。これからもこれを踏襲することとなります。
　強大な競争相手に対して、自分の手の内を明かさずに追いつき追い越せの奮闘を続けるのです。戦前戦後の日本に似ていますなぁ。

　ペリー・ローダン百科は、海王星、冥王星、黄道、黄道帯、黄道光。
　訳者あとがき　は、原文の細かいミスのこと。週刊だし、これだけの量になると、ミスもあるし矛盾も出てくる。しかたないよね、という話。
　それと、アメリカのエースブックスはもうローダンをやめちゃったらしいね、という話。　　（09/5/18）
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管理番号：R400-042 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 042 出版社：早川書房
書名：アルコンの兵士狩り ハヤカワ文庫SF296　早川文庫786 発行　1967年
083 ハロー、トプシド、応答せよ Hello, Topsid, bitte melden クルト・ブラント
084 アルコンの兵士狩り Rekruten für Arkon クラーク・ダールトン
翻訳：松谷健二 価格：320Yen ページ数：258P 本のサイズ：文庫
初版発行：1978/6/15 購入：1978/6/11 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン042 アルコンの兵士狩り　　083 ハロー、トプシド、応答せよ
　出だしは2043年の大晦日。トーラの死とそのあとの混乱があり、多難な一年でした。集まった太陽系帝国の要人たちは、レジナルド・ブルの言葉に憮然とします。彼はうっかりコニャックの入った割れないはずのグラスを割ってしまい、ガラスで切った親指をくわえながら 「凶兆でなけりゃいいんだが・・・」 とつぶやいたもの。
　ドルーフ宇宙とこの宇宙の境界線となる放電ゾーンは、徐々にその領域を狭めています。この容赦ない敵が消えたとき、ドルーフという未曾有の脅威のため軍事的に活性化したアルコン帝国は、次なる目標を帝国の安寧と脅かす敵に目を向けるのは必然。その最右翼に太陽系帝国がある。
　アルコン帝国を現時点で支配しているロボット摂政は、ロボットだけで操艦された艦隊が役立たずであることに気付きましたそのため補助種族を動員して艦隊に載せ始めたのですが、そのなかでトプシダーにもその任を与えたらしいと言う情報が太陽系秘密情報局長官アラン・D・マーカントの手元に入ります。70年以上昔、テラと敵対した事があるトカゲ族です。テラの座標は知らないはずですが、テラの近傍にあったヴェガ星系の座標は知っているはず。宇宙空間で27光年の距離はわずかなもの。
　彼らの中にヴェガの情報が残っていたら、太陽系帝国の命取りになりかねない。さあ、どうする。
　ローダンはこの作戦で、1500m級の巨艦＜クビライ・カン＞と、かけがいのないフィクティヴ転送機一基を失いました。

　　084 アルコンの兵士狩り
　ドルーフの危機はあと12ヶ月足らず。そのあとでアルコンは正面切ってテラを最大の敵とするはず。貴重な1500m級の超戦艦を一隻失って残るは7隻、フィクティヴ転送機は残り一基。その他の宇宙艦隊は月面に建造された造船廠で次々と建造される艦船を含めて強力ですが、数万単位の艦隊を動員できるアルコン帝国が相手では、物量で全く歯が立たない。
　アルコンのロボット摂政のプログラミングを変え、太陽系帝国を敵ではなく味方と認識でいるようにできないだろうか、という案が出たのはこの頃です。厳重に防備されたアルコン帝国の中枢に潜入してはるか数千年前にプログラムされた巨大な人工知能に手を加え、単に敵味方の識別を変えるだけではなく、ロボット摂政の衰退したアルコン帝国を維持管理する機能をそのまま残さなくてはならない。
　困難なその計画を行う第一歩として、アルコン星系の近くにある星系に橋頭堡を築く作戦が発動します。
　まず、アルコンからわずか3光年のところにある恒星ヴォガの第4惑星ツァリトに潜入する作戦が。

　マーカントのエージェントが一人、すでにツァリトに潜入して情報を得ていましたが、ここにローダンその人を長とする200人の工作員が潜入します。目的は、ここで行われている強制的な徴兵、通称「アルコンの兵士狩り」を利用してアルコン艦隊にツァリト人として参加すること。

　アルコン帝国が、忠実な臣下である麾下の星系群から、強制的に男たちを「強制徴募」して艦隊に送りこみます。その結果、各星系はアルコンへの反感をつのらせる。ローダン世界の常識ですが、何か強制すると必ず虐げられた人々は徒党を組んで命知らずの地下組織を作りますので、かえって問題をややこしくすることになります。しかも、訓練もせずに超技術のかたまりである宇宙艦隊に素人を兵士として送りこんで、戦力になると思っているのか。18世紀の帆装海軍じゃないんですよ、ここは。(笑)

　ペリー・ローダン百科は、環境適応、同化、退化、頽廃（デカダン）、元素周期律表。環境適応の項目に「クロムンド」、「オクストルネ」の文字が出ますが、この意味がわかるのははるか先のこととなります。
　訳者あとがき　は、1000巻で打ち止めになるという噂があったけど大丈夫、1990年まで続けるなんて景気のいいこと言ってるよという話。それから、ドイツでは通算で三億部売れたというすごい話。聖書が全世界で推定二億五千万だから、とかなんとか。
　売れたから叩かれるのはしかたがないけれど、として、ローダン世界に見るナチズムの亡霊、という話。
　こういうケチのつけられ方が有名税というものだろうか、という斜めの見方ができるのは、松谷さんならではかな。　　（09/6/10）
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管理番号：R400-043 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 043 出版社：早川書房
書名：権力への鍵 ハヤカワ文庫SF308　早川文庫818 発行　1967年
085 ナートル戦闘学校 Kampfschule Naator クラーク・ダールトン
086 権力への鍵 Der Schlüssel zur Macht カール・H・シェール
翻訳：松谷健二 価格：300Yen ページ数：258P 本のサイズ：文庫
初版発行：1978/8/15 購入：1978/8/19 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン043 権力への鍵　　085 ナートル戦闘学校
　ツァリト人の反政府組織、というか、反アルコン地下組織のお話がメインです。
　強制徴募によって根こそぎツァリト人の兵役適齢年代をひっくくろうと言う悪辣なアルコンへの抵抗組織。何か強制されると、命がけで既得権を守ろうとする連中は、必ず秘密組織を作って立てこもってテロをします。ああこの時代、WW2が終わってからまだわずか22年なんですねぇ。
　さてこいつらが、メンバーの中で血気にはやる傾向のあるログを、カルス暗殺に送り出したのが事の始まり。
　カルスとは、ツァリトの軍政官として駐留しているアルコンの提督。この提督を衆人環視の元で殺せば、自分たちの立場が良くなると考える発想がさっぱりわかりませんが、テロリストとはそんなものでしょうか。
　困った事に、このカルス提督は、偽装したテラの秘密工作員がすでに入れ替わって、極秘任務に就いていたのでした。しかもツァリトには、ローダン、アトラン、ブリーを含むテラナーが潜入し、作戦を進めているのです。
　アルコンの従者種族、ナート人の世界で、何が行われたのでしょうか。

　　086 権力への鍵
　直系800mのアルコンの新造戦艦＜コン=ヴェレテ＞の艦長に補されたのは、アルコン植民者の末裔、イグル艦長。
　実は、年齢が一万歳を超える純粋アルコン人であるわたし、アトラン。副長セセテ少佐、副長補ロアケ少佐はローダンとブリー。乗組員200名のうち、150名はテラナー。残りはツァリトの志願兵。
　地球暦2044年3月18日、この戦艦はわずか200名の要員でナートの宇宙港を出港し、アルコンⅢに向かいます。アルコン摂政との、何らかの交渉の糸口はないか考えるアトランですが、テラナーの目的は違った。
　交渉の余地なし、アルコン摂政を破壊する以外にテラの生き残るすべはない、と断じたローダンは、150名のテラ兵がそれぞれ分解して持ち込んだ各種兵器を使用して、このロボット脳を破壊する作戦に取りかかる。しかしアトランにとっては、地球の生き残りが一番大事とは思うが、ロボット摂政が破壊されて銀河系にアルコン帝国のくびきがなくなったときの無政府状態が怖い。何とか交渉の余地はないのかと考えます。
　ここでしばし、ローダンとアトランの、深刻な対立が起きます。
　「お決めなさい！　それとも、これ以上摂政の支配を許すおつもりか？」
　「地獄の現出、ということになるだろうな。このホールでだけじゃない。銀河全域でだ。摂政が倒れても、平和調停はやりたくないね、わたしは」
　「いずれは避けられぬこと。不安の念は当然だが、数年前より今の方が耐えられるはずですぞ。理性からいえばそうなる。今ならテラの力であなたを援助できるが、待ち時間が長引けば、あなたはひとりになる」
　「力･･･？　力といわれたか？　眇たる地球人よ。きみは不死かもしれぬ。が、真の力をもったことがあるのか？　それにはたえざる発展の数世紀が必要なのだ。忘れたのかね、ここ数ヶ月で受けた打撃のことを？　この結果生じる混乱をどう治めるおつもりなのかな？　きみの貧弱な艦隊でかね？」

　「帝国を破壊するのか」　わたしの舌はうまく動かなかった。「われわれが二万年かけて築いてきたものを･･･。それは許せない！　この瞬間を待ちかまえている種族も無数にいる。それについてきみは何を知っている？　連中は襲いかかってくるだろう、狼のように。非ヒューマノイド系のやつらは、これを手がかりに力を伸ばすだろうし」
　「それはやむを得ません、アトラン、あなたにはそこを変えることはできない」
　過去の多くの大帝国の崩壊と、そのあとの権力の真空地帯になだれ込んだ蛮族の群れ、そして文明の後退を何度もその目で見てきたアトラン。今行動しなければ人類は死滅するという危機を間近に見ているローダン。
　この決着は、意外な形でつきます。衰退するアルコン帝国は、それでも帝国の名に恥じなかった、という。
　安全システム＜セネカ＞の発動とはいささか安直ですけど、これしかまとめようがなかったのでしょう、シェール的にね。

　ペリー・ローダン百科は、レーダーとプラズマ・エンジン。レーダーの説明がいささか時代遅れなのはしかたがないよね。
　訳者あとがき　は、アブの話。VTOLであり、ヘリコプターのようにホバリングもする。高速で飛び、曲芸飛行もお手のもの。このアブのレベルでSFを書いたら面白いね、だって。　　（09/6/23）
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管理番号：R400-044 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 044 出版社：早川書房
書名：ドルーフ艦隊襲来！ ハヤカワ文庫SF313　早川文庫847 発行　1967年
087 ＩＳＣの冬眠者 Die Schläfer der ISC ウィリアム・フォルツ
088 ドルーフ艦隊襲来！ Der Fall kolumbus カール・H・シェール
翻訳：松谷健二 価格：300Yen ページ数：261P 本のサイズ：文庫
初版発行：1978/10/15 購入：1978/10/19 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン044 ドルーフ艦隊襲来！　　087 ＩＳＣの冬眠者
　ISC、インターナショナル・スリーピング・コーポレーションとは、“人生に幻滅した人たちの救い主”をキャッチフレーズに作られた会社です。契約すると、最大300年間の間深層睡眠状態に入って「冬眠」できるのだそうな。
　生活に疲れた人、人生に絶望した人の避難場所として、ひそやかに流行っているそうな。
　48歳で出世のルートを外れて絶望したモーリス・ダンビーは、発作的に300年の睡眠を申込みにワイオミングに向かい、予備テストを行って契約します。
　不審に思ったその夫人が、ISCのことをある私立探偵に依頼します。調査にかかった探偵、元太陽系帝国秘密情報局特殊部隊工作員リチャード・ケノフがそこで見たものとは。
　あいかわらず、人類には必ず敵に媚びる裏切り者が出るようです。それが、人類とは全く異なるドルーフであっても、手を握れば自分だけは助かると信じる発想って、根拠がわかりません。

　　088 ドルーフ艦隊襲来！
　アルコンⅢから地球に、アルコン摂政がアルコン帝国の支配権をアトランに明け渡したという情報が入ったのは、2044年5月11日でした。知らせを受けたアラン・D・マーカントは、超弩級戦艦＜ドルスス＞をただちにアルコンに送れというローダンの命令をマイケル・フレイト元帥に伝えます。大佐に昇進したバルドゥル・ジケルマンの指揮の下、＜ドルスス＞は2044年5月12日5時13分に発進しす。
　ローダンとアトランの交渉は、一時険悪な情勢になります。ローダンの不審と、アトランの不安。
　アルコン帝国は眇たる太陽系帝国を、いままで敵視していた不倶戴天の敵を、庇護できるのか。それも、テラナーのごく一部とアトラン以外には知らない秘密を守りつつ。
　しかしここで、前回テラの裏切り者が漏らした情報が引き金になり、ドルーフとの戦端が開きます。
　この巻で、たくさんの艦名が出てきますね。国名クラスの巡洋艦に、＜ニッポン＞が出てきたのが面白いかな？　でも、艦名がニッポンでも日本人の艦長マツロ少佐がいなければならない理由はないと思うのですがね。人種隔離政策じゃあるまいし。（くすくす）
　最終局面で投入されたのが、最新の1500m級の超弩級戦艦群。＜ドルスス＞、＜タイタン＞、＜ハンニバル＞、＜ジェネラル・パウンダー＞、＜バルバロッサ＞、＜ウェリントン＞、＜アレクサンダー＞の強力な弾幕がドルーフ艦隊を食い止めます。
　最後の最後に現れたのは、いったい何だったのか。

　ペリー・ローダン百科は、プラズマ・エンジン、宇宙グライダー。
　このプラズマ・エンジンの説明ですが、1963年シュトゥットガルトで開かれた第三回ヨーロッパ宇宙飛行会議のおりにDVL（ドイツ宇宙航空）が実験を行ったものだそうな。噴射速度が速いのに、推力は数百ポンドしか出なかったが、比推力が高いのでいずれ宇宙で使えるんじゃないか、とのこと。
ジェイムス・T・カーク・・・ウィリアム・シャトナー　ポンド（pond）とは、一時使われた力を示す単位で、1Gの地球上で1gの質量が及ぼす力。我々が学生の時代に、重量と力を区別するために使われました。表記は「P」。キロポンドをkP（ケーピー）と呼び、5kP/cm2 のことは、「ファイヴ・ケーピー・パー・スクェア・センチメータ」などと言っていたもの。今は単位系が再び整備され、力や圧力の単位としては、パスカル（Pa）という単位を使います。気象通報で使われる「ヘクトパスカル　hPa」は、この仲間です。
　この原理の推進エンジンが、いま小惑星探査機「はやぶさ」に使われています。あれから40年経ったんですね。

　訳者あとがき　は昆虫取りのお話。松谷健二氏の少年時代。このネタは、まだ引っ張りますとのこと。
　そういえば気になっていたんだけど、この表紙絵はむろんローダンなのでしょうが、TOS（STAR TREKシリーズの一番最初のもの）のカーク船長（ウィリアム・シャトナー　右写真）に似てませんか？(笑)　　　（09/7/4）
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管理番号：R400-045 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 045 出版社：早川書房
書名：アトランの危機 ハヤカワ文庫SF319　早川文庫861 発行　1967年
089 グッキーの出番 Guckys grosse Stunde クルト・ブラント
090 アトランの危機 Atlan in Not クルト・ブラント
翻訳：松谷健二 価格：300Yen ページ数：253P 本のサイズ：文庫
初版発行：1978/11/15 購入：1978/11/18 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン045 アトランの危機　　089 グッキーの出番
　地球を守るためあらゆる努力を惜しまなかったローダンと太陽系帝国首脳に対し、太陽系のマスコミは彼らを英雄視しません。国家の安寧に関わる大事を、国民には何も知らせず、太陽系帝国の軍隊という名の私兵化された子飼いの軍隊と不気味な「ミュータント部隊」なるものを使って勝手に戦い、祖国の運命を危機に陥れ、多大な被害を与えて戦ったこと。そしてその上で、なんと不倶戴天の敵であるはずのアルコン帝国と手を組むと宣言したこと。これでは民衆が納得しない。
　さらに納得しがたいのは、アルコン帝国の命令を受けて太陽系に進駐したのが、かつて地球を破壊しようとした銀河商人スプリンガーたちであること。彼らは族長コカツェの指揮の元、3000隻もの大艦隊となって金星及び火星を実効支配しようとしています。これでは、ローダンらに不信の目がむくのは当たり前か。
　ブリーの親指で始まった2044年は、6月を迎えたばかり。

　無断で金星に偵察に向かったグッキーは、驚くべきニュースを持って帰還します。
　トマス・カーディフがスプリンガーに味方したこと、その原因は、ローダンが母親を見捨てたためと信じていること。

　　090 アトランの危機
　スプリンガー側に付いたトマス・カーディフは、アルコン皇帝の家系だったトーラの息子としてアルコン貴族を名乗りつつ、ローダンの息子としての能力を発揮して、たちまち族長コカツェの腹心の地位に就きます。彼が、それまで知らなかったアルコン帝国の秘密、銀河系では誰もその名を知らないアトランが摂政の地位を継承したことを知ってしまったことで、銀河に大混乱が。
　このトマス・カーディフ、無名なアトランがアルコン帝国の皇帝の地位に就いたことで、今までアルコン摂政が力で押さえ込んで崩壊を抑えていた政治情勢のバランスを狂わすことが自分の権力の元となると信じて、その点最適な才能をふるいます。あやうし、アトラン。
　ミュータント部隊の活躍、ローダンの起死回生の作戦、アトランの決断によるゴノツァル8世としての即位宣言、そして太陽系帝国のアルコン帝国への臣従宣言によって、ひとつの時代が始まりまるのでした。
　で、トマス・カーディフはローダンと彼を取り巻く友人たちの暖かい好意によって、何千万が虐殺される事件を引き起こしても、殺しちゃ可哀想だよねといつも言ってもらえます。しかも、ローダンの息子、トーラの息子というだけで威張っています。いいなぁ、こんな人。
　今回も大迷惑な事件を引き起こして大失敗したけれど、まだ生きているらしい。

　ペリー・ローダン百科は、量子、量子力学、低温冬眠、ノイロレプティカ。
　訳者あとがき　は蝶と松谷氏のかかわりあい。学徒動員で旋盤工場で働いていた頃は虫取り網でろくに取れなかったのに、数十年経って年取った今、素手で蝶を捕ってしまったよ、というお話。のどかですな。　　　（09/7/6）
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管理番号：R400-046 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 046 出版社：早川書房
書名：秘密使命モルク ハヤカワ文庫SF324　早川文庫878 発行　1967年
091 エラートの帰還 Ernst Ellerts Rückkehr クラーク・ダールトン
092 秘密使命モルク Geheimmission Moluk ウィリアム・フォルツ
翻訳：松谷健二 価格：320Yen ページ数：266P 本のサイズ：文庫
初版発行：1978/12/15 購入：1978/12/18 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン046 秘密指令モルク　　091 エラートの帰還
　日本版第4巻「謎の金星基地」で失われ、その肉体だけが霊廟に納められたエルンスト・エラートの精神が、時空のかなたを漂流し、人類の属するアインシュタイン宇宙の7200倍の時間差があるドルーフの世界にたどり着いてから数万年、現代の人類とドルーフ世界の再接触の中で、ついに帰還します。かつて一度、約1万年前にこの世界との接触があったのですが、その時点で気付かなかったのは天の配剤か。
　エラートがその精神を支配するドルーフの超科学者オノトは、エラートの力が弱るにつれてだんだん自分への支配を取り戻しつつあります。祖国への裏切り者として裁判にかけられつつ、じっと時を待つ。
　アルコン帝国の新皇帝を正式に承認することによって星間帝国の中で一定の地位を確立し、数ヶ月後の迫ったドルーフ世界との別離を前にした太陽系帝国としては、ドルーフとの最後の決戦に備え、エルンスト・エラートを早く帰還させたい。
　ドルーフの本拠は、連星シアメドの第16惑星ドルーフォン。同星系第13惑星ハーデスに潜入しているマルセル・ルゥ大尉。グッキーらの救援を得て、地球から運ばれたエラートの体に、本人を戻すことはできるのか。
　ドルーフォンの属する連星は、赤い恒星と緑の伴星との二重星の星系です。おどろおどろしい舞台の演出なのでしょうが、やはり緑の太陽というのは、イメージが湧きませんねぇ。
　エラートは人類に、ドルーフの星間エンジンという歴史を変える土産物を持って帰還します。

　　092 秘密使命モルク
　日本版第37巻「三人の裏切り者」の後半「戦慄」でデビューしたフォルツの描く、エヴァンソン大佐とゴルトシュタイン少尉と、物質の分子構造を精神力で変えられる不思議な種族の一員マタールの後日談です。
　死んだマタールの母星の位置を確認した太陽系帝国は、この種族と同盟を結べないかと考えます。
　ドルーフとの決戦を前にして、味方になりそうなものは猫の手でも欲しい。世知辛い世の中ですな。
　かくして、人類への悪意しか見せなかった彼らとコンタクトするために、超高速巡洋艦＜メキシコ＞をエヴァンソン大佐に指揮させ、派遣することとなります。むろん、ゴルトシュタイン少尉も同道。目的地は、アルコン星座カタログでMEG=1453=AS=34。地球から2万光年のところにあるグリーンの太陽グルーノルの第二惑星、モルク。
　まともに役に立たない弱いテレパスの少尉とか、36歳の少尉などという変な奴も出てきますが、一番変なのは、このお話が全体の大きなストーリーの中で何の意味もないことでしょうか。
　穴埋め記事みたいなもんじゃないかな、これ。　　（09/7/9）

　ペリー・ローダン百科は、原子炉。なかなか細かく書いてありますね。
　訳者あとがき　は、スキーの話にしばらく付き合って欲しいとのこと。まずは、40歳にして我流スキーを始めた話から。
　いよいよ、のちにマルペどもの語りぐさとなる松谷先生のあとがきが始まります。　o(^-^)o ワクワク
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管理番号：R400-047 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 047 出版社：早川書房
書名：闇に潜む敵 ハヤカワ文庫SF328　早川文庫890 発行　1967年
093 闇に潜む敵 Der Feind im Dunkel クルト・マール
094 燃える太陽 Die flammende Sonne クラーク・ダールトン
翻訳：松谷健二 価格：300Yen ページ数：257P 本のサイズ：文庫
初版発行：1979/1/15 購入：1979/1/16 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン047 闇に潜む敵　　093 闇に潜む敵
　エプ=ホグ星系第二惑星オプガンに駐在するアルコン帝国の司政官プタルは、実は精密に作られたロボットでした。不穏な情勢のこの惑星では、普通のアルコン人では対応しきれないという判断でしょう。このプタルが、見知らぬテロリストに殺されたことで、事態は急展開。
　オプガンの表面は99.9％までが水といわれます。そのわずかな陸地を頼みにして、水棲生物はかつて惑星上の広大な海をえんえんと泳いでいたもの。この惑星の自転速度があまりに遅く、夜の側の低温では生き残ることができなかったため。しかし異星人とのコンタクトののち、テクノロジーの進歩と共に、人口的な海底都市の保温された環境で定住できることとなったのでした。
　その異星人たちが、住民を搾取して奴隷化させる支配を始めたとき、彼らは友として公正に異星人を扱ってくれるという伝説のテラナーとの接触を試みます。
　テラナーがテラから10283光年離れたこの惑星に介入したのは、この星でアラス、すなわちアルコン人の末裔でありながら医療、生物学などに秀でた種族が暗躍しているという情報を得たため。アラスの主要な取引物である麻薬より恐ろしい生物学的な、精神に作用する毒物があるらしい。はたして軽巡洋艦＜フィンマルク＞はその謎を突き止められるのか。

　　094 燃える太陽
　41巻：偽装の銀河ゲームの081 祖先の宇宙船で登場した、アルコンの祖先が宇宙にはなった植民宇宙船がありましたね。5000人の乗組員を乗せてはるかな世界に旅立ったのですが、いつの間にか超空間ジャンプ航法技術が失われ、亜光速で宇宙を漂っています。知能が劣化した乗組員を、精密にプログラミングされたロボットたちが支配し、最初の世代を冷凍冬眠したのでした。そののち、わずかな人々を支配しつつ彼らが成年に達するとその世界から自主的に去らせ、そのまま冷凍冬眠させていたのでした。
　1万年の長きにわたり飛んでいくうちに、冷凍された人類は10万人に達していたらしい。
　軽巡洋艦＜アークティック＞に乗り組んでいたグッキーによって真実を告げられた乗組員は、グッキーが去った後で船の機関部を点検し、超空間ジャンプの方法を再発見したのでした。しかし、それを決行した瞬間に、その衝撃によって冷凍睡眠装置が活性化し、すべての冬眠者が一斉に覚醒したのでした。
　直径1500mを誇る超大型船体とはいえ、空気・食料・スペースを考えると、居住できる人口は最大でも1万人いるかどうか。
　船内はパニックのあと、カタストロフに見舞われます。ついには共食いまで始まったのでした。

　ドルーフとの最後の決戦が進行しつつある銀河系では、人員の不足が重大問題となります。大執政官ローダンとアルコン皇帝ゴノツァル8世すなわちアトランとの協定により、テラ艦隊はアルコン帝国の全面的な支援を受けつつ警備活動を行っているのですが、なにしろ数が足りない。ドルーフの脅威が減少しつつあることを見越した帝国の被支配各種族の動向も気がかり。
　このとき、そういえば精神の衰退していない活力ある世代のアルコン人たちがいたではないか、と思い出したのは誰だったか。

　かくして、一日でも早くと願う祖先の宇宙船の捜索隊が出発しますが、それが一分一秒を争う事になるとは誰も思わなかったのでした。

　ペリー・ローダン百科は 原子炉の種類。今さらですが、誰がこのコーナーを担当したのかな。理系のＳＦマニアの子供たちが喜びそうなネタですね。
　訳者あとがき　は、スキーの話その２。ゲレンデ（Gelände）とは、英語の（ドイツ語も同じだけど）「Land」の集合形みたいなものなんだって。
　また、せっかく蔵王にいるのだからと始めてゲレンデでスキーですべった話。松谷氏らしいへそ曲がりな楽しみ方の話です。ああ、この方はこうやってのめり込んでいったんだっけ。昔を読み直すと、楽しいと同時にちょっともの悲しくなります。　　（09/11/2）
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管理番号：R400-048 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 048 出版社：早川書房
書名：虚無への探索 ハヤカワ文庫SF334　早川文庫914 発行　1967年
095 虚無への探索 Himmel ohne Steme クラーク・ダールトン
096 謎のアンティ Der Anti カール・H・シェール
翻訳：松谷健二 価格：320Yen ページ数：270P 本のサイズ：文庫
初版発行：1979/3/15 購入：1979/3/15 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン048 虚無への探索　　095 虚無への探索
　第48巻の前半、虚無への探索で出てきた、銀河系宇宙を放浪するバルコンの物語、再び。
　　なぜか48巻と49巻が消えていることを発見。まいった。まぁ、なんとかしなくっちゃ．．．そのうちね。
　アルコンⅢで皇帝ゴノツァル8世となったアトランに、健全なアルコン人10万人を捜し出したことの礼を言われたローダンですが、その直後、脳に直接超空間からのインパルスを受けます。同時に、テレパスたちもその衝撃を受けます。
　＜ペリー・ローダン　─　応答を！＞
　ある疑いがローダンの心をかすめた。宇宙広しといえども、これほどのテレパシー能力を持つ生物は一体しかいない。しかし、それはアルコンから何千光年もへだたったところなのだ。
　そう、かれがコンタクトしてきたのです。のちにそれ（Es）と訳されることになった謎のエネルギー性物。
　その導きにより、ローダンは今度はグッキーとウリウ・セングを連れて再び惑星バルコンに向かいます。
　なぜかれがこれほどバルコンにこだわるのか。そしてかれが言う「見えぬ存在」とは何か。
　「では、見えぬ存在とは？　何者？　出会ったことがあるのですか？」
　＜わたしの現在は、かれらのおかげなのだ。それ以上はいえぬ＞
　「かれらのおかげ？　わかりません。すると敵ではない？　なぜバルコンを攻撃したのです？」
　＜ペリー・ローダン、敵がきみを殺せば、きみの死は敵のおかげなのだ。これでいいか？＞
　いったい何を言いたいのか。
　のちにこれが、壮大な伏線になりました．．．　よね？
　スペシャリストの対極にある概念、ネクシャリズム（総合科学）という言葉が再び出てきます。バルコンのネクシャリストについて、前回と異なる見解が出ているのが面白い。ダールトンさん、ちょっと考えを変えたかな？

　　096 謎のアンティ
　皇帝ゴノツァル8世となったアトランですが、ロボット摂政の全面的支持があるとはいえ、アルコン帝国の中でその地位が盤石な訳ではありません。皇帝を補佐する大評議会のメンバーも、頽廃しきった活力のない、しかし反抗的な貴族ばかり。ローダンらの活躍によって一万年前にアルコンを旅立ち、冷凍冬眠状態でさまよっていた10万人の古代のアルコン人が手に入ったものの、即使える訳ではない。
　煩悶するアトランに事件が発生します。なんと彼の細胞活性装置が就寝中に盗まれるという事件が。皇帝の寝室と言う事で厳重に守られていたし、なにより護衛としてミュータントのジョン・マーシャルがいたにもかかわらず。
　細胞活性装置とは、卵形の特殊装置。アトランに永遠の寿命を保証するものです。それさえあれば、アトランは常に若さを保てる。ローダンらが「それ」から得た不死の方法は、惑星ワンダラーで「細胞シャワー」を浴びるものですが、アトランが「それ」から得たのはこれ。
　これがなければ、約60時間後にはアトランの細胞は急激に老化を始め、たちまちのうちに惨い死に至るはず。
　急遽アルコン帝国に三隻の小部隊と共に急行したローダンと共に、アトランは必死の捜索にかかります。犯人はいったいだれか。

　テラのミュータント部隊の超能力をキャンセルできる超能力を備えた「アンティ」が実行犯であると推定されました。しかしその背後に、アトランが持つ細胞活性装置の秘密を知っていたものがいる。だれか。
　アトランもローダンも瞬時に考えた、一人の名を。　　─　トマス・カーディフ。
　しかし、彼の姿はない。どこで糸を引いているのか。

　ペリー・ローダン百科は 原子炉の種類の追加。沸騰水型原子炉とか、均質型原子炉とか。「高速増殖炉」という名は当時まだなかったようです。その機能を持つ原子炉はあったのですが。
　訳者あとがき　は、スキーの話、三回目。スキーを二本揃えてターンする方法を会得したこととか、山人間として長年足腰を鍛えてあったから変な転び方をしてもなんとかなった話とか、楽しそうですな。　　　（09/11/17）
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管理番号：R400-049 10R 宇宙英雄ペリー・ローダン 049 出版社：早川書房
書名：危うし惑星トラムプ！ ハヤカワ文庫SF338　早川文庫926 発行　1967年
097 権力の代償 Preis der Macht クルト・ブラント
098 危うし惑星トラムプ！ Entfesslte Gewalter クルト・ブラント
翻訳：松谷健二 価格：300Yen ページ数：254P 本のサイズ：文庫
初版発行：1979/4/15 購入：1979/4/21 表紙・イラスト：依光　隆
ローダン049 危うし惑星トラムプ！　　097 権力の代償
　2043年大晦日に割れないはずのグラスを割って親指を切ったブリーにとり、魔の2044年はまだ終わっていません。あと40日を残した2044年11月24日、ブリーがアトランの前でローダンに指摘するのは、トマス・カーディフをどうするつもりなのか、ということ。
　アルコン人の末裔で、アルコン帝国の拠点M-13球状星雲より248光年のところにあるフォリト星系の第二惑星ソルテンに、ソルテン人という種族が居住しています。彼らの特徴は、アルコンのカタログによると
　ソルテン人。アルコン人より発し、退化せるもの。平均身長1.70メートル、脊椎がせむし様にゆがみ、顔も同じ。母権制、悪魔の存在を信ず。虚言を好む。
　つまり、嘘つきであると。
　またなんというか、このソルテン人の描写というのも、偏見というか変なステレオタイプというか、笑えますな。
　悪魔の存在なんて、善のアンチテーゼとして悪魔的なものを教義で謳っている宗教を受け入れていればみな信じるもの。脊椎が歪んだから退化って言うのもどうなのか。また女どもに支配されこき使われたあげく、しくじると罵声を浴びせられて鞭打たれるという奇妙な母権制をでっち上げるってのは、笑えるネタなのでしょうかねぇ？
　ソルテン人になりすましたテラナーの工作により、スプリンガーの中からついにあぶり出されたトマス・カーディフ。
　自らの息子をどのように裁くべきなのか。親子の情を示すことで不正義を行う事も、親子の間柄を非常に切り捨てることで冷酷な独裁者と思われることも、どちらもローダンの立場を危うくする。
　権力の代償とは、こういうものなのか。
　読み返してみると、けっこうシビアですね、このテーマ。

　　098 危うし惑星トラムプ！
　イルツ族であるグッキーの故郷の惑星は、寒冷なトラムプです。その惑星をいきなり襲ったモンスターの宇宙船は、二つの涙滴型を結合させた形をしていました。その目的はなんだったのか。しかし彼らが最後に行ったものは、惑星トラムプの破壊という結果を招きました。
　70年ぶりにホームシックにかかったグッキーが、2045年1月4日に地球を立ってトラムプに向かったとき、彼が見たものは。
　危うし、ではありません。一つの世界の終わりとなりました。何千万のイルツの中で、生き残ったものは。
　ジョー・パスギン艦長の軽巡＜ビルマ＞は間に合うのか。
　グッキーはローダン・シリーズの中で、遊び好きで思慮も分別もなくテレキネシスを駆使して悪戯をするトリックスターという役割を果たしています。この独特の存在感は、読者にとって魅力があるのでしょうか。他のイルツ族もシリーズの中で同じ役割を果たすことになるのか。
　“オグ・ティレ・ドゥ”という楽しい言葉は、この先また使われることはあるのかな。

　ペリー・ローダン百科は フィールド・エンジン、制御フィールド、制御映像走査機、エネルギー・バリア。SF用語の解説ですが、今の知識レベルからすると、ちょっとずれているような気がします。説明しようという努力はわかりますが、イマイチな感じ。
　訳者あとがき　は、スキーその４　だそうな。山スキーに興ずる松谷氏の説明が、楽しげです。　　（09/11/26）